Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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067【食物アレルギーは食べさせて防げ!(その2)】専門家のお話を聴きました!

子供の食物アレルギーを予防するために大切なこと

結論:

1.妊娠時、授乳期に母親が特定の食物を避けることは意味がない!

2.これが大事!! アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、病院に行って徹底的に治せ!!

3.蕎麦も初めから食べさせて大丈夫だが、注意が必要

4.食べてもいい? それともよくない? 血液検査の結果で判断しない!

おまけ:大人になってから発症する食物アレルギー<大人も子供もお肌のケアはとっても大事>

 

本ブログ【058】にて、子供の食物アレルギーを防ぐために大切な、正しい、最新の情報をお届けしました。

そこでは、卵アレルギーを防ぐには離乳食の初期のころから卵を食べさせる方が良いという論文を、世界でも屈指の医学雑誌「Lancet」から発表した国立成育医療研究センターの研究結果についてお伝えしました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

昨日、この研究グループのメンバーである成育医療研究センターの松本健治先生の講演を聴く機会があり、新たに重要な情報を得ましたので、小さなお子さんをお持ちのお母さん、これからお母さんになられる多くの女性にお伝えしたく、「食物アレルギーは食べさせて防げ!(その2)」をお送りします。

 

 

(前回の【066】「新型インフルエンザ(その1)」の続きは後日お送りします)

 

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1.妊娠時、授乳期に母親が特定の食物を避けることは意味がない!

 

子供が卵アレルギーになると、「妊娠中に自分が卵を食べたからだ」と自分を責めるお母さんは、以前は普通にたくさんいたようです。

だって、医療機関でも、特定の食べ物を避けるように指導していたというのですから無理もありません。

現在では、いくつもの試験が行われており、その結果から、妊娠時、授乳期の食物の除去は全く意味がないことが明らかになっています。

 

妊婦さんをくじ引きで2つのグループに分け、ひとつのグループは妊娠後期から授乳期にかけて卵や牛乳や、その他の特定の食物を徹底的に避ける食事をしてもらい、もう片方のグループには卵も牛乳も、色々なものを努めて摂ってもらいました。

その結果、2つのグループの子供の食物アレルギーの発生率に全く差はありませんでした。

それよりも、特定の食物を避けたお母さんたちでは、望ましい体重まで増えない人が多かったそうです。

必要な栄養素を摂れるよう、妊娠中も色々なものをまんべんなく食べましょう、と言うことです。

 

2.これが大事!! アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、病院に行って徹底的に治せ!!

 

これからお話する点は、これから出産される方や赤ちゃんの離乳食を始められる前の方には非常に重要です。

 

アトピーや湿疹のある赤ちゃんの皮膚は、バリア機能が著しく低下しています。

空気中には、小麦など、食物の成分の微粒子が浮遊しており、バリア機能が低下した皮膚から、本ブログ【065】でお話した皮膚の樹状細胞、「ランゲルハンス細胞」のセンサーに補足されて感作(免疫ができること)が成立します。

この皮膚を介しての感作が、食物アレルギーを引き起こすケースが多いことが分かってきました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

食物アレルギーを防ぐためには、避けるのではなく、積極的に食べさせるべきだと言いました。

不思議なことに、食物を食べるとアレルギーを防げるのに、皮膚を通して取り込むとアレルギーになりやすい。

食べることによって働く免疫系は「腸管免疫」です。

異物である食物の内、危険なものとそうでないものを正しく見分ける能力を養うには、食べることによって腸の免疫を鍛えなければなりません

ところが、皮膚から侵入すると、無害な食べ物でも「異物」と認識されてしまうのですね

 

ですから、まず、「アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、離乳食を始める前に徹底的に治療することが大事」だと、松本先生は強調されます。

そして、日々、お肌の保湿に努めて下さい。

 

アナフィラキシー反応によるショック死の可能性のあるピーナッツですが、日本人には少なく、なぜか欧米人には多いですね。

これは今まで謎だったのですが、原因のひとつが分かってきました。

欧米では、赤ちゃんの入浴後、保湿のためのベビーオイルを塗る人が多いです。

そのベビーオイルに、ピーナッツの成分が含まれているものがあるそうです。

ベビーオイルを作っている方も、使う方も、ピーナッツ成分が赤ちゃんの肌にいいと信じてのことでしょうけれども、なんと、毎日ご丁寧に、赤ちゃんの皮膚からピーナッツに感作させて、わざわざピーナッツアレルギーにしているという訳ですね。

知らないのだから仕方ありませんが、これはもう、子供に対する「罪」です。

 

私は知らなかったのですが、「茶のしずく石鹸」という、小麦成分を含んだ石鹸を使った多くの人が小麦アレルギーになり、訴訟にまでなった問題があったそうです。

皮膚から小麦を感作せることによって、アレルギーを誘発させてしまったと考えられます。

timesteps.net

 

ですから皆さんも、赤ちゃんの肌に付けるものには充分に注意が必要です。

出来る限り、余分なものを含まないものがいいです。

「天然成分」とか謳っていても安心できません。

小麦だって、ピーナッツだって、天然成分。アレルゲンの多くが天然成分なのですから。

 

3.蕎麦も初めから食べさせて大丈夫だが、注意が必要

 

ピーナッツと並び、死のリスクすらある蕎麦。

会場の一般の人から、「(早い時期から)蕎麦も食べさせてもいいのですか?」という質問がありました。

答えは「Yes」です。

 

逆に言えば、蕎麦を恐れるあまり、最初に蕎麦を避けておいて、大きくなってから食べさせる方が蕎麦アレルギーを誘発するリスクが高いでしょう。

松本先生は、「蕎麦が空気中に浮遊しているかどうかは分からないが、、、」と前置をした上で、やはり、「経皮的に蕎麦に感作するのが危険」と仰っていました。

蕎麦アレルギーの人は、蕎麦屋の前を通っただけで具合が悪くなるという話を聞いたことがあります。

皮膚を通して蕎麦に感作してしまう前に、食べさせる方が安全だと言えます。

 

赤ちゃんへの蕎麦の食べさせ方ですが、やはり注意が必要ですね。

松本先生は、最初は蕎麦の麺そのものを食べさせる前に、蕎麦のゆで汁(蕎麦湯)を薄めて少量飲ませるとか、少量の蕎麦湯を食事に入れるのが良いと話されていました。

麺を食べさせるのは、蕎麦湯の量を徐々に増やしていってからにしましょう。

もちろん、蕎麦アレルギーと思われる症状が出たら、すぐに受診して下さい。

 

4.食べてもいい? それともよくない? 血液検査の結果で判断しない!

 

リスクの高い食べ物や、特に心配な食べ物は、耳かきの先ぐらいの本当に少量から始めましょう。

たとえ症状が出ても、「じゃあ、どのくらいの量なら大丈夫なのか」を見極めて、症状の出ない少量を食べさせるべきです。

「食べられるのなら食べさせる」 これが鉄則です!

 

食べてもいい量については、本当は「食物経口負荷試験」と言って、実際にある量を食べさせて反応をみる試験を行って、医師が判断します。

負荷試験は、どこの医療機関でも行っている訳ではありませんが、全国で結構ありますので、調べてから受診しましょう。

下のサイトが参考になるでしょう。

負荷試験実施施設一覧

 

それから、【058】でもお話しましたが、血液検査である食物に対する抗体が多いという結果が出ても、必ずしもその食物にアレルギーを示す訳ではないと、松本先生も強調されていました。

実際にアレルギーを示すかどうかは、やはり負荷試験を行って判断すべきとのことです。

抗体が多いことにビビってしまって、子供にその食物を与えないとしたら、逆にその子をアレルギーにするリスクを高めることになるのです。

本末転倒です。

 

おまけ:大人になってから発症する食物アレルギー<大人も子供もお肌のケアはとっても大事>

 

今まで普通に食べてたのに、成人してから突如食べられなくなるってこと、結構ありますね。(私はないのですが、よく聞きます)

成人してからの食物アレルギーで多いのは、断然、カニ・エビ、次いで小麦、大豆だそうです。

松本先生によれば、大人になってからの食物アレルギーの感作経路は不明だそうです。

先生の仮説によれば、カニ・エビを食べるときに、どうしても口の周りに身や汁がついてしまう。そのことで、経皮感作するのではないか。

確かに、カニ・エビが口の周りに付くと、カニ・エビアレルギーの無い私でも、かぶれてかゆくなります。

これは明らかに過剰な免疫反応によるものですね。

 

今まで平気に食べていたのに、経皮感作によって、ある日突然、免疫システムに狂いが生じるのではないか、と言うお話ですが、あくまでも仮説であって、証明さている訳ではないとのことでした。

ひとつの根拠としては、アトピー性皮膚炎の皮膚に出ているあるタンパク質が、制御性T細胞を邪魔するという報告があるそうです。

 

成人の食物アレルギーを治すのは難しいそうですが、皮膚を通したアレルゲンの感作を防ぐために、子供も大人も、お肌のケアは非常に重要だということです。

 

お肌と食物アレルギー

一見何の関係もないように見えますが、非常に重要な因果関係のあることが分かり、今回の松本健治先生のお話は大変勉強になりました。

 

なお、今回の松本先生のお話の内容は、以下のサイトで簡単にまとめられていますので、こちらもご覧下さい。

 

www.nikkei.com

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

お願いです。

出来るだけ多くのお母さん方、これからお母さんになられる方に知って頂きたく、シェアリンクをよろしくお願いします。

 

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066【パンデミックは起きるのか!?】新型インフルエンザ(その1)

真夏にインフルエンザの話とは、「真冬の稲川淳二」より季節外れですが、冬まで待っていたら、それまで、このブログが続いているのやどうやら分かりません。。。(苦笑)

でも、わずか4ヶ月もすれば、もうインフルエンザの季節到来ですからね〜。

 

目次:

1.トリインフルエンザ

コラム:鳥とトリ、人とヒト、、、どう違うの? 考えると夜も眠れない・・・

2.新型インフルエンザ

 

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冬になると、新型インフルだとか、トリインフルだとか騒ぎますが、何がそんなに怖いんでしょうかね?

トリインフルエンザと新型インフルエンザって違うんですか?

それから、「高病原性トリインフルエンザ」って言葉も聞きますが、これが怖いのかな??

新型インフルエンザって、何がどう「新型」なんですか?

 

何がどう違うのか、私が明快にお答えしましょう!

 

  • トリインフルエンザとは・・・トリに感染するインフルエンザウイルス、またはトリインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされるトリの病気
  • 高病原性トリインフルエンザとは・・・病原性の高いトリインフルエンザウイルス、または高病原性トリインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされるトリの病気
  • ヒトインフルエンザとは・・・ヒトに感染するインフルエンザウイルス、またはヒトインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされるヒトの病気
  • 新型インフルエンザとは・・・人類がかつて経験したことの無い性質(ヒト-ヒト感染能力)を有する、新たに発生したヒトインフルエンザウイルス、または新型インフルエンザウイルスの感染によって引き起こされるヒトの病気

 

「全部、そのまんまやんけ!」(怒)

だって、そうなんだもん・・・

 

じゃあ、もう少し具体的にお話しましょう。

 

あッ、大事なことを言い忘れていましたが、インフルエンザウイルスにはA型とB型とC型があります。

毎年、型の違うウイルスが出回って、ワクチンが効かないだとか、来年はどの型のウイルスが流行るんだろうかとか、何かと関係方面を悩ませるのはA型で、世界的大流行(パンデミック)の可能性があるのもA型です。

今回話題にしているトリインフルエンザも新型インフルエンザもA型の話です。

 

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1.トリインフルエンザ

 

トリインフルエンザウイルスというのは、早い話が「トリに感染するインフルエンザウイルス」のことです。

実に、そのまんまです。

 

多くのウイルスには「種特異性」と言うのがあって、感染できる生物種が限られています。

本ブログ【025】でお話しましたが、ミクソーマウイルスはウサギだけに感染し、ほぼ100%近くを死に至らしめます。

「高病原性」、「強毒性」もいいところで、実に恐るべきウイルスです。

でも、このミクソーマウイルス、他の動植物には一切無害なのです。

不思議じゃないですか?

takyamamoto.hatenablog.com

 

ウイルスが宿主の細胞に感染するためには、ほとんどの場合、ウイルスの表面にあるタンパク質が、宿主の細胞の表面にある「受容体」に特異的に結合する必要があります。

この受容体の違いによって、ウイルスの種特異性が決まります。

ミクソーマウイルスの場合、ウサギの細胞にだけあるタンパク質を受容体としている訳です。

ですから、どんなに根性出しても、ヒトとか、ミクソーマウイルスの受容体を持たない他の生物に感染することは出来っこないのです。

プログラムされていないことは出来ない。これが生物です。

でも、後で話しますが、ウイルスは、あとから新たなプログラムを得て、新たな能力を獲得することがあります。

これによって、今までできなかったことができるようになるのです。

例えば、これまで感染できなかった生物種に感染できるようになるとか。

これが新型ウイルスと言えます。

 

 

もとゑ!

トリインフルエンザの話に戻りましょう。

トリインフルエンザウイルスは、広く自然界に普通に存在している、ありふれたものです。

「トリインフルエンザ」と聞くと、悪者だと決めつけられ、目の敵にされて、本当に気の毒です。😢

 

トリインフルエンザウイルスは、普段はアヒルやカモなんかの水鳥(水禽類)の腸管にいます。

腸管で増えて、糞といっしょに排泄されたウイルスが別の鳥に感染して広がります。

水鳥では、ほとんど症状は出なくって、せいぜい下痢する程度のもので、水禽類はトリインフルエンザウイルスの「自然宿主」と考えられます。

 

ところが、なぜか、これがニワトリやウズラなどの家禽類に感染すると、増殖を繰り返すうちに高い病原性を獲得するのです。

ですから、我国では、養鶏農家などでトリインフルエンザ感染が発生した場合、その病原性の高い低いに関わらず、全殺処分が行われます。

農家には大打撃ですが、それ以上、被害を拡散させないためには、致し方のない処置です。

 

ここで、ひとつの大きな誤解があります。

ニワトリがバッタバッタと死んでいく高病原性トリインフルエンザウイルス。

これが人間に感染して広がるという誤解です。

鶏肉食べると、トリインフルエンザになるんじゃないか、とか。

このような誤解があるからこそ、トリインフルエンザのニュースを聞くと、世間が大騒ぎするのでしょう。

まずは、冷静に考えて下さい。基本的にトリインフルエンザウイルスはヒトには感染しません。

あくまでも「基本的には」ですが。。。

 

というのも、これまでに、絶対にヒトには感染しないと言い切れない事象が何度か発生しています。

1997年に、香港で非常に病原性の高いトリインフルエンザが流行し、たくさんのニワトリが死にました。

驚いたことには、ニワトリからこのウイルスに感染して死んだと考えられる人が6人出たのです。

この人たちは、鶏肉解体業者とか、ニワトリとの濃厚接触があった人たちだったようです。

つまり、大量のウイルスに曝されることて感染する可能性があるということです。

それに、トリインフルエンザウイルスの感染を許すタイプの受容体をもつ人が稀にいるという専門家の指摘もあり、多くの人がトリインフルエンザウイルスに感染し、世界中に蔓延するという話では決してありません。

 

基本的にはヒトには感染しないトリインフルエンザウイルスですが、わずか6名とは言え、死者が出たとなると、本当に恐ろしいのはヒトからヒトへ感染するウイルスの出現です。

高病原性のトリインフルエンザウイルスがトリからヒトに感染した後、さらにヒトに感染する能力を備えたウイルスが現れると、これは人類にとって脅威です。

なぜなら、人間はトリインフルエンザウイルスに対する免疫を持っていないからです。

ただ、これまでに、トリからヒトに感染したあと、さらにヒトに感染した「トリ⇒ヒト⇒ヒト」感染は確認されていません。

 

コラム:「鳥とトリ」、「人とヒト」、、、どう違うの? 考えると夜も眠れない・・・

 

う~~~~ん、「鳥インフルエンザ」か「トリインフルエンザ」か?

どっちが正しいと思います?

そんなことどっちでもいい?

そうですよね。

でも私は、春日三球師匠のように、考えると夜も眠れないのです。

 

「鳥」と「トリ」のどっちが正しいのかなんて、そんなこと分かり切ってます。

私が考えると眠れないと言うのは、専門家らしき多くの人達が、「トリインフルエンザ」ではなく、「鳥インフルエンザ」と書いていることです。

 

生物学において、生物種として人とか、猿とか、豚とか、鳥とかいう場合には、必ずカタカナを使う決まりです。

ですから、「ヒト」、「サル」、「ブタ」、「トリ」と書かなければなりません。

www.nhk.or.jp

NHKも「そうだ、そうだ」と言ってるぞ!

 

「あのはいい」と言った場合、「あのヒトはいいヒト」とは書きませんよね。

でもね、「を対象とした臨床試験」ではなく、「ヒトを対象とした臨床試験」が正しいのです。

本ブログ【041】でご紹介したラウス肉腫ウイルスは、「トリRNAウイルス」であって、「RNAウイルス」ではありません。

ヒト(「」ではない)のAIDSの原因となるウイルスは、「ヒト免疫不全ウイルス」であって、「免疫不全ウイルス」では決してありません。

 

スッゴク不愉快なことに、「トリインフルエンザウイルス」でググってみると、「次の検索結果を表示しています:鳥インフルエンザウイルス」だとッ!?

ムカッ!!

あたかも「トリ」が間違っていると言わんばかり!!

たかが検索エンジンプログラムの分際で、チョームカつく!!

そして、検索結果で表示された記事は、「鳥」、「鳥」、「鳥」、「鳥」、「鳥インフルエンザウイルス」ばっか。

果ては、厚生労働省も、農林水産省も、はたまた国立感染症研究所のウイルスの専門家までもが、軒並み「鳥インフルエンザウイルス」と書いているじゃぁあ~~りませんか!?

なんでなの???

なんでみんな、「トリ」って書かない訳???

 

どなたか訳をご存知の方、是非お教え下さい。

でないと、明日も睡眠不足だよ!

 

2.新型インフルエンザ

 

次に「新型インフルエンザ」に行きましょう。

ウィキを見ると、新型インフルエンザについて、法律で定義されているとのこと。知りませんでしたねぇ。

それによると、「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速な蔓延により、国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがあると認められるもの」(感染症予防法第6条第7項第1号)だそうです。

 

新型インフルエンザウイルスの怖いところは、文字通り新しいウイルスのため、人類のほとんどが免疫を持っていないことです。

そのために、世界的大流行(パンデミック)を引き起こす可能性があるのです。

 

1918年のスペイン風邪は、近代において人類が経験した最大のパンデミックです。

当時、スペイン風邪は、まさに新型インフルエンザでした。

新型のウイルスはどうやって生まれるのでしょうか?

 

A型インフルエンザウイルスが遺伝子の変異を起こしやすく、毎年違うタイプのウイルスが出現することをご存知の方も多いでしょう。

でも、この毎年起きるタイプの変異と言うのは、すごく小さな変化で、その影響は大したことはないのです。

とても「新型」と言えるほどの大きな変化ではありません。

確かに、去年獲得した免疫が、今年のウイルスには余り役に立たないということはありますが、それでも、今までに経験したインフルエンザと似ているタイプであれば、ある程度の抵抗性はあります。

それに、このような小さな変異では、高い病原性を獲得することは難しいのです。

 

これまでになく高い病原性と強い感染力を備え持ち、人類が免疫を持たない恐怖の新型インフルエンザウイルスの出現。

そのためには、毎年繰り返し起こしている小さな変異ではなく、ドラスティックな「大変身」が必要です。

この大変身は、一体どうやったら起きるのか?

いつ、どこで起きる可能性があるのか??

次回お話致します。お楽しみに。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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065【女性に知って頂きたい「皮膚のトラブルや老化と免疫との密接な関係」】

目次:

1.腸内細菌叢とお肌の密接な関係

2.肌にも細菌叢がある

3.皮膚免疫の主役 ~ランゲルハンス細胞~

4.皮膚組織で無害な物質に免疫系が反応したのが「アレルギー性皮膚炎」

 

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1.腸内細菌叢とお肌の密接な関係

 

女性にとって、皮膚のトラブルや老化の防止は一大関心事です。

「便秘がお肌に悪い」という話はよく聞きますが、本当なのか? 悪いとして、便秘がなぜ肌に悪いのでしょうか?

 

まず、「皮膚 & 腸内細菌」でググってみて下さい。

沢山ヒットしますよねぇ。

多いのはアトピーですが、一般的な肌荒れや皮膚の老化に関する情報も結構ありますね。

 

要するに、これまで本ブログで繰り返し申し上げている通り、腸内細菌叢の乱れは、免疫系に不調を来たし、慢性炎症を引き起こすのです。

もちろん皮膚の炎症の原因にもなります。

ですから、便秘もそうですし、下痢症も肌にいい訳がありません。

 

乱れた腸内細菌が炎症を引き起こす主な原因は、好ましくない細菌が増えて、こいつらが作り出している毒素が血管内に入り込み、ひどくなると、バリア機能の低下した血管に隙間ができ、そこから悪い菌そのものが血管内に侵入します。

 

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腸管からリポ多糖(LPS)や菌が血管内に侵入し、慢性炎症へ!

 

もちろん、免疫系が悪い菌や毒素を見逃すはずがなく、免疫細胞がそれらに反応した結果が慢性炎症です。

ちなみに、悪い菌が作りだす毒素とは、主に、本ブログ【063】と【064】でお話した、トール様受容体に結合するリポ多糖(LPS)です。

063【自然免疫の概念を変えたトール様受容体の発見】トール様受容体の大切さ(その2) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

064【病原体をいち早く発見する外部センサー】トール様受容体の大切さ(その3) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

リポ多糖は、マウスに(多量に)注射するとショック死してしまうほどの強力な毒素なのです。

想像してみて下さい。こんなもんが貴女の血管の中に侵入して、いいことあるはずありませんよね。

 

バランスの良い腸内細菌は免疫の状態を良好にし、皮膚を含め、体のあらゆる状態を整えます。

すなわち、「恒常性の維持」機能が正しく働いている訳です。

(「恒常性の維持」については過去ブログ【043】をご参照)

takyamamoto.hatenablog.com

 

もし、腸に細菌が一切いなかったらどうなるのか?

母体から帝王切開で仔(こ)を取り出し、無菌環境下で飼育することで腸内細菌のいない「無菌マウス」を作ることができます。

実は、無菌マウスでは、制御性T細胞(Treg)が十分に育たないのです。

つまり、自己免疫疾患やアレルギー性疾患を引き起こしたり、増悪したりするリスクが高まります。

 

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左は普通のマウスで、Tregは34.2%。右が無菌マウスで、Tregはわずかに9.36%しかない。

 

とにもかくにも、腸内環境が宜しくないと自覚している貴女。食事内容の改善(特に食物繊維の摂取)と適度な運動が大事です。

運動は自律神経に働きかけて腸のぜん動運動を活発にし、便秘改善に一役買ってくれます。

 

2.肌にも細菌叢がある

 

次に、「皮膚 & 細菌叢」でググってみて下さい。

Natureなどの学術的なウェブサイトもヒットしますね。

www.natureasia.com

 

皮膚にも細菌叢があることがお分かり頂けると思います。

この皮膚細菌叢。腸内細菌叢と同じように免疫、特に皮膚の免疫と密接な関係があります。

 

腸内細菌と同じように、バランスの良い皮膚細菌叢は、お肌の健康を保つ上で、この上なく大切なのですが、度が過ぎてキレイ好きな人は、この大事な大事な皮膚細菌叢をメチャクチャにしているってことが分かっていません。

次のような人ですね。

  • 必ず薬用石鹸か消毒液を使って手洗いする
  • 1日に何十回も手を洗う
  • 気合を入れて念入りにゴシゴシ洗う

これら全てNGです。

清潔が肌に良いと思ってやっているのでしょうけれども、全くの逆効果!!

 

バランスの取れた皮膚細菌叢は、お肌の健康のためにとっても大切です。

ですから、この皮膚細菌叢を根こそぎぶち壊すような洗い方は、今すぐやめましょう!!

「ドーン!! あなたの洗い方、免疫的にヤバいですよ!」

 

正しい手の洗い方

  • 普段の手洗いは水だけで10秒で充分
  • 使うなら、薬用石鹸や消毒薬ではなく、天然石鹸にする
  • 石鹸で洗うのは、油汚れとか、汚れのひどい時だけ

 

ただし、インフルエンザウイルスやノロウイルスの感染予防、多剤耐性黄色ブドウ球菌MRSA)の蔓延予防などには、薬用石鹸や消毒薬は非常に有効です。

人命のかかっているときには、個人の皮膚細菌叢がどうのとは言ってられないでしょう。

 

手だけでなく、頭皮も体も同じです。

「えぇ~、不潔っ」と思われるかもしれませんが、実は私、頭と体は毎日洗う訳ではありません。(さすがに夏場は毎日シャワーしますが。。。)

体を洗うのも、タオルやスポンジでゴシゴシするのではなく、手のひらで撫でるように洗います。

 

キレイにした方がいいと思って、1日に何回も頭や体を洗うとか、しない方がいいです。

フケ症で悩んでる人が、良かれと思って1日に何度も頭を洗ったり、親のカタキみたいに、ゴシゴシと皮脂を根こそぎ除去するような洗い方をしているとすれば、逆効果ですよ。

 

体の皮膚も頭皮も、良い菌まで除かないように!

そして、皮膚にも頭皮にも適度な脂分が必要です。皮膚細菌叢を保護するにも皮脂は欠かせません。

 

3.皮膚免疫の主役 ~ランゲルハンス細胞~

 

最後にお約束の免疫。皮膚の免疫の仕組みについてお話しておきましょう。

 

皮膚は外界と直接接しているため、自然免疫による重点的な防衛機能が働いています。

皮膚免疫で主役を張るのは、外敵を見つけては食べて、その抗原の情報をヘルパーT細胞に提示する樹状細胞です。

熱心な読者の方には、もうおなじみの樹状細胞ですが、皮膚には、特に皮膚免疫に特化した特別な樹状細胞がおり、「ランゲルハンス細胞」と呼ばれます。

(インスリンを作る、すい臓のランゲルハンス島とは全くの別物ですから、混同しないで下さいね)

 

普通の樹状細胞は、外敵を食べてテンパると、つまり活性化すると、たくさんの触手を伸ばしてトゲトゲな姿に変身します。

でも、皮膚の樹状細胞であるランゲルハンス細胞は、活性化する前からたくさんの触手を伸ばしており、他の樹状細胞とはちょっと違う姿をしています。

これには、皮膚防衛に当たるランゲル君ならではの訳があります。

表皮のランゲルハンス細胞(黒っぽく染まっている細胞)

 

皮膚は、外側の「表皮」と内側の「真皮」の2層からなります。

表皮は一番外側の「角層」から一番内側の「基底層」までを言います。(下図)

外側の角層というのは、皆さんご存知の通り、日々、垢となって剥がれ落ちていく部分ですね。

 

ランゲル君としては、できるだけ外側の最前線まで出張って行って、防衛に当たりたいところですが、だいたいは、下図の「有棘層」のところにいて、それでも外界の様子を探りたいので、そこから角層まで触手を伸ばして警戒に当たっているという訳です。

「仕事熱心」(^^)

 

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表皮のランゲルハンス細胞(角層まで触手を伸ばしている)

  

ランゲル君は細胞表面や、突起部分にたくさんの受容体を持っており(前回の【064】でお話した「パターン認識受容体」です)、これで外敵を察知すると、最寄りのリンパ節に移動して外敵襲来をヘルパーT細胞に伝えます。

活性化したヘルパーT細胞は獲得免疫を発動し、獲得免疫の細胞たちは、皮膚の戦闘現場に駆け付けます。

当然この戦闘現場では、炎症性物質である各種サイトカインや抗体が飛び交うことになり、炎症が起こります。

 

4.皮膚組織で無害な物質に免疫系が反応したのが「アレルギー性皮膚炎」

 

外敵が襲来した皮膚現場に駆け付けた獲得免疫の細胞たち。

敵が病原菌であれば、抗体を浴びせかけて撃退しようとします。(下図の①)

通常、外敵に向けて発射する抗体は「IgG(アイジージー)」というタイプです。

 

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外敵ではなく、無害な花粉やダニの糞に反応してしまったのがアレルギーです。

アレルギー反応では、IgGではなくIgEというタイプの抗体が作られますが、このIgEがアレルゲンに反応すると、肥満細胞から化学物質が多量に放出されて、アレルギーの辛い症状が出ます。

 

IgE抗体とアレルギーについての詳しくは、過去ブログ【028】をご参照下さい。

takyamamoto.hatenablog.com

 

また、炎症を起こした皮膚ではバリア機能が低下し、なんと、免疫系が皮膚を通して小麦などの食物成分にまで反応し、その食物に対するIgE抗体を作ってしまいます。(上図の②)

つまり、食べなくっても、皮膚から食物に感作して(免疫が出来て)、食物アレルギーになることもあるのですね。

皮膚を健康に保つことの大切さがよく分かります。

 

保湿剤を塗ったりのお肌ケアも重要ではありますが、腸内環境が良くないという自覚のある方は、まず「腸活」から始めて下さい。

加えて、くれぐれもお肌を清潔にし過ぎないように。

良い菌まで殺してしまったり、皮脂を根こそぎ取り去ってしまわないように、キレイ好きもほどほどに

手や体や頭の洗い方にも気を付けて (*^^)v

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

064【病原体をいち早く発見する外部センサー】トール様受容体の大切さ(その3)

目次:

1.免疫系は体の「防衛隊」

2.敵を感知する自然免疫のセンサーは大雑把

3.パターン認識受容体とβグルカンの潜在能力

 

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1.免疫系は体の「防衛隊」

 

抗体やT細胞による獲得免疫というのは、強力ではありますが、起動するのに時間がかかります。

特に初めて出会う敵の場合、充分な戦闘能力を発揮するのに、実に1週間から2週間もかかります。

そこで、初期防衛に当たるのが自然免疫、すなわち、マクロファージや好中球、樹状細胞などの貪食細胞です。

彼らは、獲得免疫の戦闘力が整うようになるまで、なんとか持ちこたえなければなりません。

 

自然免疫にとっては初動が大事です。

そのため、マクロファージをはじめとする自然免疫の細胞は、異物をいち早く感知するためのセンサーを細胞表面に多種類備えています。

そのひとつがトール様受容体(TLR)です。

 

TLRはヒトで10種類、マウスで10数種類が知られており、TLR1、TLR2・・・という風に、連番を付けて区別しています。

ノーベル賞を受賞したボイトラー博士が発見したのも、審良(あきら)静男先生が発見したのも、偶然にも同じマウスのTLR4です。

 

TLR1とTLR2が合わさったヒトのTLR1/2の立体構造

 

前回【063】でお話した通り、審良先生らは、TLR4を細菌のリポ多糖に反応するセンサーとして発見しました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

リポ多糖というのは、多くの細菌類が産生している成分です。

私たちの体の中にリポ多糖があるということは、細菌の侵入が疑われます

細菌の侵入をいち早く察知するために、自然免疫の細胞たちは、リポ多糖を検知するセンサーを備えているのですね。

 

私たちの体の防衛隊である免疫は、敵の侵入を察知してから、どのように動くのでしょうか。

まず、マクロファージなどの自然免疫細胞のTLR4にリポ多糖が結合したとします。

「リポ多糖発見。敵侵入の可能性あり。総員、警戒態勢!!」という訳で、防衛隊の各方面に警戒警報を発令します。

どうやって発令するのかって? 本当の部隊なら、通信システムとか、警報システムとかを使うのでしょうけれども、免疫の場合、サイトカインを使って他の免疫細胞に警戒情報を伝えます。

免疫系の警戒物質とも言えるサイトカインは、マクロファージから放出されて血流にのって体の隅々にまで行きわたり、遠隔の免疫細胞にも敵襲来の可能性を伝えます。

そうすると、(擬人的な表現ではありますが)他の免疫細胞たちもザワつき始めます。

緊張が走り、あらゆる免疫細胞がいつでも戦闘態勢に移れるように備えます。

果たして、敵が来襲したという情報は正しいのか? 固唾を呑んで新たな情報を待ちます。

まあ、要するに、有り体に言えば、警戒物質であるサイトカインを受けた様々な免疫細胞が「活性化する」ということですな(^^)

 

一方、最前線でゲリラ戦を展開しなければならないマクロファージは、リポ多糖を検知したことで自身を活性化して戦闘能力をアップさせます。その結果、大喰らいに拍車がかかり、異物という異物を食べまくります。

そして、さらに種々・大量のサイトカインを放出し、他の免疫細胞をさらに活性化します。

 

樹状細胞は本来、マクロファージほどの食いしん坊ではありませんが、TLR4のセンサーでリポ多糖を検知すると、貪食能がパワーアップし、さらにマクロファージのサイトカインを浴びることで、ヘルパーT細胞への抗原提示能力も増強します。

そして、まだ敵と遭遇したことのないヘルパーT細胞(「ナイーブヘルパーT細胞」と言います)に抗原提示を行うことで活性化ヘルパーT細胞に変身させます。

 

獲得免疫は免疫系の本隊です。

ナイーブヘルパーT細胞は、活性化ヘルパーT細胞となったからにば、部隊の司令官に就任して、がぜん忙しくなります。

敵が自然免疫の防衛線を突破した場合に備えて、各方面に指令を出し(つまり、まだ抗原と出会っていないナイーブキラーT細胞や抗体産生B細胞などにサイトカインを浴びせたりして)、部隊の戦闘態勢を整えます。

前にもお話した通り、司令官である活性化ヘルパーT細胞は、樹状細胞から得た敵の情報、つまり抗原の種類に応じて、1型作戦(細胞性免疫、すなわちキラーT細胞が主力)で戦うべきか、それとも2型作戦(液性免疫、すなわち抗体が主力)でいくか、あるいは、その2つの作戦を組み合わせて戦うのが得策か、を判断します。

賢いですよねェ~。

(1型、2型は過去ブログ【028】を参照してください)

takyamamoto.hatenablog.com

 

2.敵を感知する自然免疫のセンサーは大雑把

 

皆さん、もうご存知の通り、キラーT細胞にせよ、B細胞が作り出す抗体にせよ、抗原に特異的です。

水疱瘡には水疱瘡ウイルスに対する抗体を作って、ピンポイント集中攻撃です。

でも、この抗体はおたふく風邪ウイルスには全くの無力です。

おたふく風邪にはおたふく風邪の抗体を作り出すわけです。

このように、獲得免疫は敵の顔までよく見て、敵に応じてもっとも威力の高い攻撃を行います。

ところが、自然免疫は敵か味方かくらいは見分けられますが、敵だとして、それがどんな敵なのかまでは見分けられません。

 

ヒトのTLRには10種類ほどあると言いましたが、それらをまとめて下の図に示します。

 

f:id:takyamamoto:20170728162304p:plain

講談社ブルーバックス「新しい免疫入門」(審良静雄、黒崎知博著)から転載

 

TLR4はリポ多糖に結合します。

リポ多糖は、多くの細菌が持っていますので、これを検知したからと言って、どんな種類の細菌なのかまでは分かりません。

でも、自然免疫にとっては、それで十分なのです。

 

他のTLRを見てみましょう。

例えば、TLR3は二本鎖のRNAを、TLR7は一本鎖のRNAを感知します。

これらはどちらも、RNAウイルスの感染に備えたセンサーです。

TLR9は細菌やウイルスなど、外来のDNAを検知します。

でも、それ以上は、どんなウイルス、どんな細菌であるのかまでは分かりません。

自然免疫においては、それでいいのです。

 

審良先生は、TLRのこのゆる~~い認識能力について、スポーツチームのユニフォームで例えています。

例えば、あるTLRはタイガースの縦じまユニフォームだけを認識するとします。

このTLRには、そのユニフォームを着ているのが掛布なのか、バースなのかまでは区別できません。

 

「掛布 画像」の画像検索結果

あっ、タイガースのユニフォーム、め~~~っけ!

誰かって? 知らんわい‼︎

 

また、ある別のTLRはジャイアンツのユニフォームを認識します。

同じく、その選手が原なのか、江川なのかは知りようもありません。

でも、それでいいのです。

 

一方で獲得免疫では、どのチームのユニフォームかよりも、そのユニフォームを着ているのが、どんな選手なのかの方が重要です。

それが掛布なら掛布の抗体を作り、江川なら江川に対するキラーT細胞を活性化するというように、個々の敵に応じた戦い方をするのです。

 

このように、TLRは「同じユニフォーム」という共通したパターンを認識する訳です。

そのため、TLRのような受容体は、パターン認識受容体」と呼ばれます。

実に大雑把な認識能力ですが、それで充分実用に耐えているのです。

 

実は、トール様受容体(TLR)の他にも数種類のパターン認識受容体があります。

RIG-I(リグアイ)様受容体(RLR)、Cタイプレクチン様受容体(CLR)、NOD様受容体(NLR)などです。

これらの名称まで覚えて頂く必要はありません。ただ、TLR以外にもあるということだけ知っておいて頂ければ結構です。

 

3.パターン認識受容体とβグルカンの潜在能力

 

私が良く話題に出す水溶性食物繊維のβグルカンですが、実は、これも小腸の中にいるマクロファージや樹状細胞のパターン認識受容体によって感知されます。

(βグルカンについては、過去ブログ【016】や【026】【027】などをご参照ください)

016【βグルカンって?】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

026【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その1)】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

027【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その2)】「抗がん剤との併用で原発性大腸がんからの肝臓転移がん2つが見事消失!!~ヒトでの症例報告~」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

βグルカンを感知する受容体はいくつかありますが、TLR2/6(TLR2とTLR6が合体したもの)やCLRの一種であるDectin-1(デクチンワン)などがあります。

 

βグルカンは真菌類の細胞壁の成分ですから、これが体内にあるということは、真菌が侵入したのではないか、と免疫細胞たちは勘違いするのですね。

βグルカンを飲み続けていると、小腸のマクロファージや樹状細胞が常に刺激を受け続け、自然免疫が鋭敏な状態に保たれます。

それにより、何かあったとき、例えばウイルスが感染したとか、がん細胞を発見したとか、そのような有事が起きると免疫系が素早く発動し、サッサとカタを付ける訳です。

ですので、かつてβグルカンは「免疫賦活剤(immune-activator)」と呼ばれていました。

ちなみに、βグルカンは、細菌のリポ多糖のような強い毒性はないので、飲み続けても特に害はありません。人によって、お腹が緩くなる程度です(笑)

  

さらに近年、βグルカンは免疫を賦活化してガンや感染症に効果を示すだけではなく、アレルギーや自己免疫疾患を抑えるという報告が増えてきています。

複数の論文によって、自己免疫反応が原因のひとつである1型糖尿病のモデルマウスには顕著に効くことが示されています。

 

パターン認識受容体を刺激し過ぎると、自然免疫を過剰に活性化して、自己免疫疾患やアレルギー性疾患を増悪させると指摘する声がありました。

しかし、事実は違うようです。

少なくとも、TLR2/6やDectin-1に認識されるβグルカンは、感染症やガンに対する攻撃力を増強すると同時に、免疫反応を抑制する制御性T細胞を誘導して、余計な免疫反応が起こらないように、絶妙な調整をしているようなのです。

攻撃力の増強と過剰な攻撃の抑制という、真逆のことを同時にやってのけるのですから、いまだに不思議でなりません。

このように、最近では、βグルカンは「免疫賦活剤(immune-activator)」というよりも、「免疫調整剤(immune-modulator)」と見なされるようになってきています。

 

パターン認識受容体は、元々は下等な無脊椎動物のなかで、感染防御システムの一部として進化してきました。

しかしながら、人間の医療への応用を考えた場合、何も感染症に限ったことではないのですね。

なぜなら、過去ブログ【061】で述べたように、我われ高等哺乳類の免疫系は、感染防御だけに関わっているシステムではないからです。

takyamamoto.hatenablog.com

 

私は、βグルカンには、まだまだ未知の潜在能力があり、今後、医療の進歩に大きく貢献し得る成果が見出されると信じています。

ガンや感染症の制覇、生活習慣病における慢性炎症の抑制、自己免疫反応やアレルギー反応の制御、臓器移植時の拒絶反応の抑制、怪我の治癒促進、等々です。

中でも特筆したいのは、現在でも治療困難な、原因不明の不妊への応用が期待できると思い始めています。

「応用」ったって、ただβグルカンを飲むだけなんですけどね(笑)

不妊について詳しくは、以下の過去ブログをご参照ください。

takyamamoto.hatenablog.com

 

このように私は、今後のβグルカン研究の進展に大いに期待しているのですが、まだまだβグルカンを知らない研究者やお医者様が多いのも事実です。

βグルカンを含むキノコ類(アガリクスなど)が、がんや感染症に効果があるということは、漢方家の人達には古くから知られていました。それこそ中国では、数千年も前からです。

しかし、なぜ効くのかを明快に説明するには、20世紀末に自然免疫のパターン認識受容体の仕組みが解明されるまで待たねばなりませんでした。

ですから、以前は、βグルカンのような健康食品の類(たぐい)に胡散臭さを感じる人が多かったのも無理からぬことだと思います。

しかし、現在では、βグルカンの働きは、細胞生物学的および分子生物学的に説明できます

まだ偏見をお持ちの方々には、是非、科学的な理解を深めて頂きたいです。

 

 

  

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

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063【自然免疫の概念を変えたトール様受容体の発見】トール様受容体の大切さ(その2)

目次:

1.ボクはただの大喰らいじゃない!!(by マクロファージ)

2.毒素を打っても死なないマウス??

3.カビまみれになって死ぬハエ!

4.ノーベル賞を逃した男から、研究者が選んだ「研究者の中の研究者」へ

 

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1.ボクはただの大喰らいじゃない!!(by マクロファージ)

 

免疫系は大きく2つ、「自然免疫」と「獲得免疫(「適応免疫」とも)」に分けられます。

詳しくは、本ブログ【019】ご参照下さい。

takyamamoto.hatenablog.com

 

自然免疫で中心的な働きをするのが、マクロファージや好中球、樹状細胞といった貪食(どんしょく)細胞です。

特にマクロファージは大喰らいで、異物と見るや、ガラス玉だろうがなんだろうが、お構いなく食べてしまいます。

異物に長~~~い触手を伸ばしてまで捕まえる様子など、意地汚さすら感じますねェ(笑)

 

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こんなもん食べて、お腹痛くなんないのかね?(触手を伸ばしてガラスビーズを捕食するマクロファージ )

 

抗原に特異的な抗体やT細胞による獲得免疫の働きは強力であり、魚類以上の脊椎動物だけが持つ精緻で高度なシステムです。

ヤツメウナギなどの無顎類を除いて、ほとんどの無脊椎動物は自然免疫だけです。つまり、抗体やT細胞を持ちません。

ですので、自然免疫の細胞で、ただバカみたいに異物を喰らうだけのマクロファージなんかは、原始的で下等な免疫細胞だと考えられていました。

 

しかし、ブルース・ボイトラー博士(2011年、ノーベル生理学・医学賞受賞)によるトール様受容体(Toll-like receptor; 以下「TLR」と言います)の発見の後、審良(あきら)静雄先生らがTLRのなぞを次々と解き明かしていくにつれ、その考え方が大間違いであったことが分かってきたのです。

免疫学にこのような大変革が起きたのは、以外にもつい最近、ちょうど世紀が変わる頃のことです。

 

2.毒素を打っても死なないマウス??

 

審良先生がマウスのTLRを発見したきっかけは、まったくの偶然からでした。

当時、審良研究室では、望みのままに特定の遺伝子を破壊したノックアウトマウス(KOマウス)を次々と作り出していました。

KOマウスというのは、ある遺伝子の機能を知りたいときに、マウスでその遺伝子を狙って破壊してやることで作られます。

マウスのある遺伝子を破壊した結果、そのマウスにどんな変化が現れるのかを観察することで、その遺伝子の機能がある程度推測することができます。

例えば、ある遺伝子を壊したKOマウスの血圧が、普通のマウスに比べて異常に高いとすると、破壊した遺伝子が血圧の制御に関わっているのかもしれないと予測できるという具合です。

そうすると、このようなKOマウスは、高血圧の原因解明の研究に役立ったりする訳ですね。

KOマウスは非常に有用です。

 

普通のマウスに、細菌の毒素であるリポ多糖(細菌の細胞壁の構成成分です)を大量に接種すると、そのマウスはショックで死にます。

ある日、審良先生のところの大学院生が、ある実験のために、MyD88という遺伝子を破壊したKOマウスにリポ多糖を投与していたところ、全然死なないことを偶然にも発見しました。

これは一体どういうことか?

詳しいことは省略しますが、MyD88というのは細胞内で情報伝達に働いていて、様々な遺伝子の働きを制御しています。

通常は、マクロファージなどの免疫細胞がリポ多糖に反応してMyD88が活性化すると、情報が細胞核の中の様々な遺伝子に伝わり、その結果、たくさんのサイトカインが放出されます。

リポ多糖を投与してマウスが死ぬのは、マクロファージなどで過剰に作られたサイトカインが全身を駆け巡ることによって免疫反応が暴走し、それによってショック死するという訳です。

 

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さて、MyD88のKOマウスがリポ多糖で死なないということは、マクロファージがリポ多糖と反応することによって、MyD88に情報を伝えている仕組みがあるということが考えられます。

MyD88が破壊されたKOマウスでは、マクロファージがリポ多糖に反応しても、情報は破壊されたMyD88のところで遮断され、細胞核まで届きません。

ですから、過剰なサイトカインの産生も起こらないし、ショック死もしないのだと。

審良先生らは、マクロファージの表面にリポ多糖と結合するタンパク質があるという仮説を立て、このタンパク質を探索しました。

その結果、見つかったのが、ショウジョウバエトール受容体と呼ばれるものによく似たタンパク質だったのです。

それは20世紀も末の、1998年のことでした。

 

3.カビまみれになって死ぬハエ!

 

それより2年前の1996年、フランスのジュール・ホフマン博士(2011年、ノーベル生理学・医学賞受賞)は、体がカビだらけになって死んでしまうショウジョウバエの変異体を見つけました。(下写真)

ハエにだって自然免疫が備わっており、通常はこんなカビで死んだりはしません。

 

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考えられることは、このハエには、遺伝子のどこかに異常があるはずだということです。。

果たして、自然免疫しか持たないショウジョウバエに、病原体であるカビを認識する受容体のあることが分かったのです。

この受容体は、トール受容体(Toll receptor)と呼ばれます。(ウィキによると「Toll」とはドイツ語で「規格外れ」という意味だとか)

 

自然免疫の細胞は、何でもかんでも異物をただ喰らうだけの「掃除屋さん」。少なくとも当時はそう考えられていました。

ところが、ショウジョウバエトール受容体の発見は、自然免疫が特定の病原体を認識する能力を持っていることを示すものです。

そうすると当然、マウスやヒトなどの哺乳類の自然免疫の細胞にも同様の受容体があるのではないかと考えられます。

 

世界中で哺乳類のトール受容体の探索研究が始まりました。

果たして、このレースの勝者は一体誰になるのか?

ノーベル賞級の大発見になることは疑いようがありません。

みんな、目の色が変わります。

 

4.ノーベル賞を逃した男から、研究者が選んだ「研究者の中の研究者」へ

 

審良先生が、リポ多糖の受容体としてマウスのマクロファージで発見したタンパク質は、ショウジョウバエトール受容体によく似たトール様受容体(TLR)」でした。

審良先生は当初、別にマウスのトール受容体を見つけようとしていた訳ではなかったようです。

リポ多糖を打っても死なないマウスの発見は、全くの偶然だったと言います。

この予想外の結果を見逃さず、そこからより重要な真理を見つけ出す能力(これをserendipityと言い、優れた研究者は、皆これを備えています)。

これがあったからこそのTLRの発見でした。

 

審良先生ご自身、この話題に触れられるのは好まれないかもしれません。

恐らく、あちこちで言われ続けて、感想を求められたりして、ウンザリされているのではと思います。

でも、あえて書きたいと思います。

 

審良先生は、この20世紀最後の大発見について、Natureに論文投稿しようとしていました。

出来るだけいい論文にしたくって、英語の文章とかを念入りに推敲したために時間がかかってしまったそうです。

そして、いよいよ今日投稿しようと思っていた1998年12月のある日、ボイトラーのTLR発見の論文がScienceに掲載されたのです。

審良先生は「一番」を逃しました。

 

ショウジョウバエトール受容体を発見したホフマン博士と、最初にマウスTLRの発見を報告したボイトラー博士は、2011年にノーベル賞を受賞しました。

最初の報告者の功績を重視した結果ですね。

 

科学という、競争世界の厳しい一面です。

仕分けだとか、仕置きだとかで、「2位じゃダメなんでしょうか?」というマヌケな質問をしたアホな政治家がいましたが、実に一番と二番とではこれだけ違うのですよ!

特許でも、一番以外は全てドベ(関西弁で最下位のこと)と同じで、もたらされる商業的利益は大違いです。

 

でも、ボイトラーのTLR発見の後、10数種類もあるマウスのTLRの大半のなぞを解いたのは審良先生であり、そのために「下等」だとか「原始的」だとかと蔑まされて来た自然免疫の重要性が見直され、免疫学の教科書が大幅に書き換えられることになったのです。

ノーベル賞は逃したものの、審良先生の免疫学の発展に対する貢献は、「世界で最も多く論文が引用された研究者」という、誰もが認めざるを得ない形となって称賛されました。

 

次回は、TLRがどのようにして病原体をいち早く察知し、獲得免疫を含めた免疫系全体に寄与しているのか、その仕組みについて具体的に見ていくことで、TLRの大切さを理解したいと思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

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062【免疫チェックポイント阻害剤が効かない訳が解ってきたって?】トール様受容体の大切さ(その1)

 

本ブログ【021】にて、第4のがん療法と目される、がん免疫療法の薬「免疫チェックポイント阻害剤」のお話をしました。

なにしろ、既存の治療法に見放された末期のメラノーマ(悪性黒色腫)患者の何割かが延命するのですから、凄い薬だということでした。

そして、これこそ本来私たちが持つ免疫力の凄さなのだということでした。

takyamamoto.hatenablog.com

 

一方、本ブログ【048】では、免疫チェックポイント阻害剤が効かない患者、効きにくいがん種というのが存在し、そのような人や、そのようなガンに効かない理由が、まだあまり解っていないのだということでした。

takyamamoto.hatenablog.com

 

ところが、極々最近(5月末)に、免疫チェックポイント阻害剤によって、がん細胞が免疫細胞にブレーキをかけているのを解除するだけでは、免疫力本来のパワーを引き出すには不十分なことを示す論文が、北大から発表されました。

http://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(17)30640-X?_returnURL=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S221112471730640X?showall=true

 

私はしばしば、「免疫チェックポイント阻害剤が、私たちが持つ免疫本来の力を引き出す」と言いましたが、この論文によって、この薬だけでは、本来の免疫力を十分には引き出せていないことが示されたのです。

 

この論文では、がんのマウスに免疫チェックポイント阻害剤を投与すると同時に、自然免疫を賦活化する成分を投与しています。

このような、免疫賦活能を持つものをアジュバントと言います。

 

皆さん、予防接種(ワクチン)を打ったことがありますよね。

多くのワクチン接種の目的は、特定の病原体に対する抗体を作らせることですが、ただ抗原を注射しただけでは抗体なんて簡単にはできないものなのです。

ではどうするかというと、免疫を上げる成分をいっしょに打つことで免疫系を敏感にし、それによって抗体ができやすくすることができます。

古くから、抗原といっしょに結核菌の死菌体や鉱物油を打つことで免疫ができやすくなることが知られており、今では効果の高いアジュバントが開発され、ワクチンに利用されています。

 

さて、今回の論文では、免疫チェックポイント阻害剤といっしょに、免疫を賦活化するアジュバントをいっしょに投与しています。

これは、北大が独自に開発した新しいアジュバントです。

 

さて、このアジュバント。どうやって免疫を賦活化するのかというと、自然免疫の細胞で、異物を食べて、その情報をヘルパーT細胞に教える役割をもつ「樹状細胞」を活性化します。

樹状細胞については【019】でお話しています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

樹状細胞が活性化すると、ヘルパーT細胞を活性化し、ヘルパーT細胞が活性化すると、がん細胞を殺傷するキラーT細胞が活性化します。

しかし、多くのがんでは、がん細胞がヘルパーT細胞にブレーキをかけているため、樹状細胞がヘルパーT細胞を活性化しにくい状況になっています。

つまり、がん細胞が自ら、自身にとってパラダイスの環境を作り出し、この世の春を謳歌している訳です。

 

さて、そこに免疫チェックポイント阻害剤に加え、アジュバントを同時に投与すると、パワーアップした樹状細胞により、ヘルパーT細胞の活性化がずっと起こりやすくなります。

こういう訳で、免疫チェックポイント阻害剤とアジュバントのダブル効果で、がん細胞をやっつけるキラーT細胞が最大パワーを発揮できるという理屈ですね。

 

さて、このアジュバントが樹状細胞を活性化する仕組みですが、まず、アジュバントが樹状細胞の中に在る、ある種のタンパク質に結合するところから始まります。

このタンパク質はトール様受容体(Toll-like receptor; TLR)」と呼ばれます。

 

制御性T細胞を発見した坂口志文先生曰く、「現代免疫学の3大本流は『樹状細胞』と『トール様受容体』と『制御性T細胞』である!」

私は、本ブログにて制御性T細胞については、さんざん触れ回ってきました。

樹状細胞についても少しだけ触れました。

ところが、トール様受容体については全く話していませんでしたね。

 

米国のブルース・ボイトラー博士は、2011年にトール様受容体発見の業績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

しかし、トール様受容体の研究に関しては、日本がブッチギリで世界の先頭を走ってきました。

その世界的第一人者が大阪大学教授の審良(「アキラ」と読みます)静男先生です。

 

「審良静男」の画像検索結果

審良静男 大阪大学免疫フロンティア研究センター教授

 

審良先生は、単にトール様受容体研究の第一人者というだけでなく、世界で最も多く論文が引用された研究者(つまり、研究者からもっとも評価された「研究者の中の研究者」)No.1にランクされた、免疫学研究の「世界王者」なのです。

審良静男 - Wikipedia

 

今まで、これだけ免疫の話をしながら、審良先生の話を全くしなかったとは如何なることかっ!!とお叱りを受けても致し方ない(笑)

 

今後、免疫チェックポイント阻害剤の問題の解決にトール様受容体が重要なカギを握っていることが明らかにされるとなると、益々、審良先生の業績が高く評価されることになりそうです。

 

次回以降、トール様受容体発見の物語と、引き続き、トール様受容体が免疫系にとって如何に重要な存在であるのかについてお話します。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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イベントのお知らせ【8月6日(日)免疫ふしぎ未来2017(お台場)】

日本免疫学会が、毎年夏にこんなイベントやってます。

学会主催と言っても、ちっとも堅っ苦しくなく、細胞からDNAを取り出す実験体験とか、実際にiPS細胞から作られた心筋細胞がシャーレの中で拍動する様子を観察したり、パネル展示や紙芝居で免疫についてやさしく勉強出来たりします。

 

学会と国(文科省)が「一般の方々に、もっと広く免疫について馴染んでもらいたい」という目的で行うイベントですね。

これは、ななナイスです。

スッゴクお薦めです!!

下のサイトでポスターのご確認を!

http://www.jsi-men-eki.org/general/mirai/menekifushigimirai2017.pdf

 

研究者のお話しコーナーでは、なな、なんと、制御性T細胞の発見者であり、学会理事長である坂口志文先生が開会のご挨拶と、先頭打者として、ご自身発見の制御性T細胞についてお話してくれます。

制御性T細胞の話を触れまわっているこの身からすれば、志文先生は私のアイドルですから、是非お会いしに行きたいと思います。

 

場所は東京お台場の「日本化学未来館です。

最寄りは、ゆりかもめの「船の科学館駅」か「テレコムセンター駅」ですね。

もちろん入場無料ですよ。

 

会場で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています(*^^)v

見かけたら、「読んでるよ」と声をかけて下さい。猿回しのサルみたく喜びますから(笑)

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

 

061の補足【免疫現象についての最古の記録!】

前回の【061】にて、人類が免疫現象を認識した最古の記録について触れ、詳しくは「こちらをご覧下さい」と、リンクを張りました。

このリンク、PCからはちゃんと見られるのですが、どうやらスマホからだと文字化けするようです。

でも、とても勉強になるいい文章なので、今回、コピペして補足とさせて頂きます。

 

そんな訳ですので、コピペしますこと、権利関係者の方々には、何卒ご容赦の程お願い致します。

 

この文章は、広島大学医学部の菅野雅元先生という方が書かれたもので、免疫現象に関する最古の記録に加えて、なぜ「Immunity(免疫)」というのか、その言葉の由来についてもお話されています。

そして最後には、【061】にて私が申し上げたかったこと、「一般に、免疫について誤解されている」と締めくくられています。

 

では、どうぞ。

 

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文 ・菅野 雅元

 

人類が認識した「免疫」の歴史


 一体、免疫という現象を、いつごろから人間は気がついていたのでしょうか。

少なくとも、紀元前五世紀のギリシャカルタゴの戦争の記述に、今でいう「免疫」ということが「二度なし」という言葉で書かれています。


 その当時カルタゴ軍がギリシャ植民地を次々と攻略していたが、特にシチリア島シラクサの攻防戦は二度にわたるものでありました。

はじめのカルタゴ軍とシラクサ防衛軍との戦いは熾烈をきわめたが、ペストが発生し、両軍とも大きなダメージを受けて、カルタゴ軍は撤退しました。

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 それから八年後、カルタゴは再びシラクサを攻撃してきました。

しかし、再び戦線にペストが流行したのです。このとき八年前のペストを経験し、生き残っていたシラクサ防衛軍はペストに対しほとんど無傷であったが、新しく部隊を編成したペストの経験のないカルタゴ軍は、八年前と同様大被害を被り敗退したのでした。


 このペスト流行の時期(紀元前五百年)はトゥキュディデス(ツキジデス)の「戦記」に記載されています。

この事実は十九世紀末の微生物学ルイ・パスツールによって「二度なし(non reidive)現象」として再発見されています。これが、いまのところ人類最初の「二度なし」の記述です。

 

 さらに時代は進んで、中世(例えば一三四〇年代後半)にもまたペストの大流行がヨーロッパを襲うことになります。

その当時のことが描かれている絵画の代表作の一つがピーター・ブリューゲルの「死の勝利」です。


 当時の教会にはヨハネ騎士団のように医療に従事し、慈善活動を行うキリスト教騎士団が病人の介護に活躍していたが、これらの人々の多くもペストの犠牲になったことは言うまでもありません。

しかし、その中で奇跡的に助かった僧侶やキリスト教騎士たちは、それ以後いくらペスト患者と接触しても二度とこの病に倒れることがなかったのです。


 これこそ神のご加護であると彼らが信じたのも無理からぬことでした。

この「神のご加護」を得た者に対してローマ法王が課役や課税を免除したことから im-munitas・(免除){つまり法王の課税(munitas)を免がれる(im-)という意味}という単語が用いられ、それが今日のImmunity(免疫)という言葉の語源になっています。


 しかし、この奇跡が神の力によるものではなく、生体の持つ免疫反応によるものであることが証明されるまでには、それから四百~六百年間待たなければなりません。

このような歴史的事実を踏まえれば、免疫系が、外敵から個体を守るための生体防御機構である、と一般に理解されていることも無理からぬことです。

 

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061【免疫についての最大の誤解】「異物の排除だけが免疫ではない!」

目次:

1.人類が「免疫現象」に初めて気が付いたのは?

2.抗体の種類とIgA抗体の働き

3.菌を取り込むIgA抗体

4.「免疫」って名称、変えちゃって下さい(笑)

 

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本ブログでも、しばしば、「自己と非自己を認識し、非自己(異物)を排除するのが免疫の基本」と書いてきたと思います。

今さら白状するのですが、実は、この説明は正確ではありません。

「自己と非自己を認識する」というのが「基本」であることは間違いありませんが、「異物を排除するのが免疫」というのが、必ずしも正しくないのです。

 

1.人類が「免疫現象」に初めて気が付いたのは?

 

日本語で「免疫」とは、「疫を免れる」と書きます。「疫」とは疫病、すなわち感染症のことです。

感染症に対抗する仕組み、それが古い免疫の概念でした。

 

人類が免疫現象の存在について認識したことについて記録に残っている最古のものと言えば、紀元前5世紀のギリシアカルタゴ戦争についての戦記だそうです。

詳しくは、以下のサイトをご参照ください。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/forum/30-3/hirakareta.html

 

ある疫病に一度かかれば二度とかからない「二度なし現象」、これが免疫の最初の概念です。

よく「免疫ができた」とか「抗体ができた」と言います。

抗体というと、病原体などと闘う「武器」のイメージですね。

ところがこの抗体、異物を排除するばかりでなく、むしろ、積極的に異物を取り込み、攻撃するどころか守る働きのあることが分かってきました。

 

2.抗体の種類とIgA抗体の働き

 

一口に抗体と言っても、何種類かあります。

いわゆる病原体と闘い、排除する抗体は「IgG(アイジージー)」という種類の抗体です。

予防接種の多くは、このIgGを作らせるのが目的です。

他にIgEという種類の抗体があり、本来は寄生虫の感染防御に働く抗体ですが、寄生虫のいなくなった現代の環境では、このIgEの異常な産生が原因となって、アレルギー性疾患を引き起こします。

それから、粘膜の生体防御に関わっているIgAという抗体があります。

 

私たちの体が外部の環境と接する部分というと、皮膚か粘膜です。

皮膚組織というのは、何層もの構造からなり、物理的に異物をシャットアウトする強い「バリア機能」を有しています。

それに対して、粘膜は非常に脆弱で、免疫系の働きがなければ異物の侵入を防ぎきれません。

因みに、口の中とか胃や腸の消化管の中、鼻や気管支や肺の中とかが粘膜です。

 

意外かもしれませんが、消化管の中というのは「体の内部」ではなく、「体外」なのです。

消化管の中には食物といっしょに、たくさんの種類の異物が入ってきます。

この異物を取捨選択し、体に必要な栄養素は吸収し、有害なものは取り込まず、排泄しなければなりません。

その取捨選択に一役買っているのが免疫であり、IgA抗体なのです。

 

このように、「IgA抗体は粘膜の生体防御に重要な働きをする」というのが、私たちが若い頃に習った常識でした。

しかし、このIgA抗体。異物を排除するのとは全く逆の働きを同時に持っていることが分かってきました。

 

3.菌を取り込むIgA抗体

 

私たちの大切な腸内細菌叢というのは、子供のころに決まってしまい、大人になってからこれを変えようとしても変わるものではありません。

腸内環境を整えるために、乳酸菌飲料やヨーグルトを摂るのは、確かに効果はありますが、それは一時的なものであり、良い菌が貴方の腸内に定着して、腸内フローラが変わるというものではありません。

これは、免疫の働きによるものです。

子供の間に出来上がった貴方の免疫系は、一度要らないものと決めたのならば、いくら体にいい菌でも絶対に取り入れてくれません。

それが免疫というものです。

この腸内における菌の取捨選択に重要な働きをしているのがIgA抗体です。

 

2014年、理化学研究所のグループは、腸内における菌の取捨選択にIgA抗体が重要な役割を担っていることを発表しました。

腸内細菌叢と免疫系との間に新たな双方向制御機構を発見 | 60秒でわかるプレスリリース | 理化学研究所

 

なんとIgAは、抗体らしく、要らない菌を排除に働く一方で、必要な菌に結合することで、その菌を守り、腸管表面の粘膜層に定着させる働きのあることが分かったのです。

腸管内壁の粘膜層というのは、ネバネバした粘液で覆われており、これによって余計な菌の侵入を防いでいます。

この粘液層に菌を取り込むのに働くのがIgA抗体です。

 

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2015年2月NHK放送「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」より

 

上の写真で青く光っているのが菌表面にくっついたIgA抗体です。

IgA抗体がくっついた菌は、積極的に腸管内壁の粘液層に取り込まれ、庇護されることが分かったのです。

 

4.「免疫」って名称、変えちゃって下さい(笑)

 

免疫系は異物を排除するだけでなく、好ましい菌を取り込んで定着させます。

その他にも免疫系は、怪我の修復に中心的な役割を果たし、今この瞬間にも体中の様々な場所で行われている組織の「破壊と再生」にも働いています。

つまり、免疫系は、ただ単に外敵から身を守るだけの「生体防御システム」ではなく、本ブログ【043】でお話したように、私たちが健康を保つために重要な「恒常性」を維持するために、神経系と内分泌系と連携して、非常にダイナミックな働きをしているのです。

takyamamoto.hatenablog.com

 

2017年5月29日の本ブログで、「本来、細胞増殖の制御に重要な働きをしている遺伝子に、『がん原遺伝子』という、がん化を強く示唆する名前が付けられたことはおかしい」と言いました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

それと同じように、免疫系が「疫を免れる」という意味の名称で呼び続けられていることは、21世紀の現在になって考えてみると、適切だとは思われません。

私は、多くの人に誤解を与える、この「免疫」という名称は変えた方がいいと思うくらいなのですが、でも、長年使われてきて浸透した名称を、今さら変えることは出来ないのですね。

 

このように、「免疫」というのは、多くの人が考えている以上に、私たちの体にとって、この上なく重要な存在であるということを覚えておいて頂きたいのです。

そして、この免疫系をベストな状態に保つことを強く意識して、日々の生活に留意して頂きたいと思います。

 

 

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号外【珍事!故人にノーベル賞授与??】樹状細胞発見のラルフ・スタインマン

医学の進歩は、ノーベル生理学・医学賞を受賞したような偉大な業績を抜きにはあり得ません。

私にとって、秋の同賞の発表は、毎年恒例の楽しみなイベントです。

 

ところで、どんなに偉大な業績を残したとしても、早く死んでしまってはノーベル賞が授与されないことをご存知の方も多いでしょう。

しかし、近年において、故人にノーベル賞が贈られるという珍事が起きたのです。

2011年のことです。

 

2011年10月3日、同年のノーベル生理学・医学賞は、現代免疫学に飛躍的な進歩をもたらした3人に贈られることが発表されました。

現代免疫学の三大本流と言われる「樹状細胞」、「トール様受容体」、「制御性T細胞」ですが、トール様受容体を発見した米国のブルース・ボイトラー博士、ボイトラーのトール様受容体発見に道筋をつけたフランスのジュール・ホフマン博士、そして樹状細胞を発見したカナダのラルフ・スタインマン博士の3人です。

 

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Dr. Ralph M. Steinman, The Nobel Prize winner, 2011.

 

ところが、この発表のすぐ後、スタインマンの家族が、彼が既に亡くなっていることを公表したのです。

なんとノーベル生理学・医学賞受賞者発表のわずか3日前、9月30日のことです。

そりゃあ、ご家族も、悲しみも癒えない中でビックリ仰天したでしょうね。

悲しみの中での喜び? 喜んでいいのやらどうなのやら?

 

ここでまた仰天して慌てたのがノーベル財団と同賞の選考委員会であるカロリンスカ研究所です。

「ええ〜〜っ!?」ってなもんです。

なにしろ前例のない事態なのですから。

協議の結果、発表前の死亡ではあるが、受賞決定後のことであったとして、授与を撤回することはなく、スタインマンはめでたく受賞となったのです。

 

スタインマンの死因はすい臓がんです。

すい臓がんは、発見されたときにはかなり進行していることが多く、予後は概して良くありません。

スタインマンのすい臓がんは、2007年に診断されました。

自身発見の樹状細胞を活性化する「免疫療法」を施しながらの闘病だったそうですが、すい臓がんで4年も生き永らえたとは驚きです。

やはりこれも、我われが持つ本来の免疫力のなせる業なのでしょうか?

 

ノーベル賞を狙っている若い方。

業績は若いうちにあげておく方がいいですよ。

がんウイルスを発見したラウスみたいに、研究成果の発表から55年もかかった例もありますから。。。

takyamamoto.hatenablog.com

 

もし、歳とってからの業績であれば、本ブログを参考にして、健康にはくれぐれも留意して下さいね(笑)

 

近年で受賞が早かったと言えば、ヒトのiPS細胞の樹立からわずか5年で生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生の例があります。

一方で、開発成功の当初から「ノーベル賞確実」とか、「日本で最もノーベル賞に近い男」などとの下馬評が高かったのにも関わらず、受賞に20年以上もかかった例があります。

1980年代に、「今世紀(20世紀)中の実用化は不可能」とまで言われた青色発光ダイオードでしたが、1986年か87年頃だったでしょうか? 確信はないのですが、とにかくその頃に、何の予備知識もないゼロの状態から開発に着手し、1990年代初頭には早くも実用化を果たした中村修二さんなんかは、2014年にやっとこさ物理学賞を受賞されました。

前年の2013年には、本人も「もう無理かもしれない」と漏らしていたそうです。

まぁ、あの方の場合は、世界中の注目を集めた元の会社との訴訟とか、色々お騒がせがありましたから、そんなことも影響したのかもしれません。

 

という訳で皆さん、「健康寿命」を延ばして、いつまでもお元気で。

そしたら、いいこともありますよ(笑)

 

 

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060【再生医療の切り札「iPS細胞」】山中伸弥先生自ら語る、医療応用に向けて(後編)

前回【059】の続きです。

 

目次:

1.iPS細胞の再生医療導入第1例目

2.自家移植療法の限界

3.iPS細胞による他家移植療法??

4.未来に向けてのさらなる可能性の探求

 

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1.iPS細胞の再生医療導入第1例目

 

iPS細胞の再生医療に向けての実用化研究は、日本が世界の先頭を走っています。

中でも、最も実用化に近いのは、神戸の理化学研究所高橋政代プロジェクトリーダー率いる、加齢黄斑変性への応用です。

眼の網膜の一番奥に、色素上皮細胞と言う黒い細胞が一層のシートを形成していますが、このシートが加齢によってゆがんだり破れたりして、視力が失われていくのが加齢黄斑変性で、患者は年々増加傾向にあります。

 

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 網膜色素上皮

 

高橋先生のチームは、患者さんの皮膚の細胞からiPS細胞を作り、そのiPS細胞から色素上皮細胞のシートを作りました。

 

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高橋政代 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー

 

さて、そのシートを手術によって患者さんの痛んだ網膜部分と入れ替えました。

2年以上が経過した現在も視力を保ち、がん化など、心配された副作用もないとのことです。

これが、iPS細胞を実際に病気の治療に応用した、記念すべき第1例目です。

 

まだまだ、iPS細胞から心臓やすい臓などといった、複雑な構造を持つ「臓器」を作り出すことは出来ません。

しかし、一層の細胞の並びから成るシートなど、構造が単純なものは比較的作りやすく、加齢黄斑変性は最初のチャレンジに適した病気だったのでしょう。

 

現在、大阪大学が進めているのは、心筋のシートです。

シャーレの中で、細胞が同調して拍動する様には驚きを禁じ得ません。まるでマジックですね。

動画をご覧下さい。

www.dailymotion.com

 

さて、大成功に見える第1例目ですが、実際にiPS細胞を治療に応用してみて見えてきた大きな問題があります。

それは、「自家移植療法」の限界です。

 

2.自家移植療法の限界

 

私は、iPS細胞が出てきたときには、それはもう「画期的」だと思ったものです。

ビフォー・ヤマナカ時代には、再生医療の実現に最も近かったのはES細胞です。

しかし、受精卵から作製されるES細胞から作られた細胞や組織は、誰に移植したところで「異物」です。

つまり、ES細胞を利用した再生医療では、「他家移植」にならざるを得ないのですね。

ということは、拒絶反応の問題が常に付きまとう訳です。

 

しかし、iPS細胞なら、自分の細胞を元に作製された組織の移植、即ち「自家移植」が可能なのです。

これで拒絶反応の問題とは永久にオサラバです。

メデタシ、メデタシ。

 

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ところがどっこい、そうは問屋が卸しません。

最初から分かっていたことですが、患者の皮膚や血液の細胞からのiPS細胞の樹立、iPS細胞から所望の細胞に分化を誘導し、望みの組織の形態を形作り、そして、医療品レベルの厳しい品質検査を経ての手術。

これはもう、容易なことではありません。

一人の患者のために、どれだけの人間の労力と時間と財を費やさねばならないのか!?

それに、そんなことをしている間に半年、一年と経過し、患者の容体は悪化して手遅れなんて事態もあり得ます。

だいたい、iPS細胞に必要な培養液や試薬と言うのはものすごく高価なのです。

加えて、腕のいい培養技術者が必要です。

カネはあるところにはあるでしょう。でも、人はそう簡単には育ちません。

これは普遍的な医療技術とするには、極めて非現実的です。

実際にやってみて、そのことが確実になりました。

 

ここで、山中先生らは、大きく方向転換をします。

 

3.iPS細胞による他家移植療法??

 

せっかくのiPS細胞なのに、「他家移植」??

それっじゃあ、他人の細胞を移植するES細胞とおんなじじゃん。意味ないじゃん!

いやいや、おんなじじゃぁありません。全然違います。

他家移植とは言え、iPS細胞を用いた場合は、ある程度HLAを適合させることが可能なのです。

ES細胞では、こうはいきません。

 

他家移植においては、拒絶反応を抑えるため、白血球の型(山中先生は「免疫の型」と表現されます)であるHLAをできる限り一致させることが望ましいです。

(HLAについては、過去ブログ【025】をお読み下さい)

takyamamoto.hatenablog.com

 

HLAの型は、計算上は何百億通りもあります。これを完全一致させて、他人から移植するのは、実質的に不可能です。

その何百億通りもあるHLAですが、大きなグループに分けることができます。

その同じグループに該当する人同士の移植なら、比較的うまくいきます。

たとえ話でご説明しましょう。

 

日本人の苗字っていくつあるのか知りませんが、「佐藤」さんや「鈴木」さんのように多い苗字もあれば、「御手洗」(みたらい)さんや「一口」(いもあらい)さんみたいな珍しいのもあります。

そして、こう考えて下さい。同じ苗字の人の間では、他家移植が上手くいくと。

同じHLAのグループに属する人を、同じ苗字の人に例えているのです。

鈴木さん同士なら、下の名前はイチローさんとか二郎さんとか、細かいところは違っても、移植が上手くいくことが多いという訳ですね。

こんな例えで分かるでしょうか? 不安だなぁ~。

 

通常の骨髄移植や臓器移植でも、HLAの細かい部分の不一致には目をつむって、大きなグループ分けで、同じグループに該当するドナー(提供者)とレシピエント(受け手)の組合せを選んで行われることが多い訳です。

そこで、iPS細胞の他家移植療法を実現する上で考えられた方法が、まず日本人に多い型、たとえば全国の佐藤さんと鈴木さんに適合するiPS細胞を樹立して、ストックしておこうというものです。

 

患者本人の細胞を用いたiPS細胞の自家移植は、いわば「オーダーメイド」です。

一人ひとりに合わせて個別の処置をしなければなりません。大変な手間です。

しかし、iPS細胞の他家移植療法では、できるだけ多くの人に適合する「レディメイド」の細胞ストックをあらかじめ凍結保存しておき、適合する患者が現れたら、凍結細胞を融かして培養し、分化誘導すれば、治療に使用できる訳です。

 

4.未来に向けてのさらなる可能性の探求

 

山中先生らは、細胞の提供者のHLAの型が登録されている骨髄バンクや臍帯血バンクの協力を得て、既に、日本人で一番目と二番目に多いHLAグループのiPS細胞を樹立、外部への提供を開始しており、これによって日本人の約24%、約三千万人がカバーできると言います。

提供先は各大学や研究機関、民間企業等であり、様々な病気に対するiPS細胞の臨床応用や医薬品開発、難病の原因解明などへの研究が広がりを見せています。

 

全国三千万人の佐藤さんと鈴木さん(あくまでも例え話ですよ、例え話)に使用可能な細胞ストックはできました。

次には、田中さん、山本さん、加藤さんと広げていけばいい訳です。

でも、御手洗さんや一口さんなど、非常に珍しいHLAを持つ患者への対応はどうなるのかという問題はあります。

そういう人に対しては、第1例目の患者さんのように、オーダーメイドで個別対応するしかないのでしょうか?

そうなると、医療費の制度の改革も必要になってくるかもしれません。

 

 

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 京都大学iPS研究所

 

山中先生によると、現在、iPS研究所では、70名程度で細胞ストックの作製を行い、総勢500名以上のスタッフで再生医療の他、創薬、さらには未来に向け、iPS細胞の新たな可能性を探る研究が行われているとのことです。

 

果たして、私が爺さんになるころには、医療は様変わりしているのでしょうか?

今から歳とるのが楽しみです(笑)

 

 

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059【再生医療の切り札「iPS細胞」】山中伸弥先生自ら語る、医療への応用に向けて(前編)

皆さんよくご存じの、iPS細胞の開発で2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞された京都大学教授・iPS細胞研究所所長の山中伸弥先生。

本年の2月に、一般市民向けの再生医療公開シンポジウムに参加し、iPS細胞を用いた再生医療の実現に向けた現状について、山中先生ご自身がお話されるのを聴く機会がありましたので、今回は、山中先生のお話をかいつまんで、分かりやすくお伝えしたいと思います。

その前に今回の前編では、iPS細胞について理解するために、予備知識としてどうしても必要なES細胞のことと、そして、iPS細胞とはどういうものか、さらに、山中先生がiPS細胞の作製が可能だと確信を持った経緯についてお話します。

 

目次:

1.ES細胞とは ~ビフォー・ヤマナカ時代の再生医療の試み~

2.山中先生の苦闘

3.山中先生の信念

次回予告:山中先生自身が語るiPS細胞の医療への応用の取り組み

 

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1.ES細胞とは ~ビフォー・ヤマナカ時代の再生医療の試み~

 

例えば、骨髄から出て間もない未熟な(未分化な)血液細胞の赤ちゃんは、これから赤血球、白血球、血小板と、どんな種類の血液細胞にもなり得ます。

ところが、心臓の筋肉である心筋の細胞や脳神経の細胞なんかは高度に分化しきった細胞で、今さら他の細胞に変身(分化)することは出来ません。

このように、一旦ある種の細胞に分化が進んでしまった細胞は、後戻りして、別の種類の細胞になることは出来ないのです。

 

これからどんな細胞にでもなり得る「多能性」を持つものと言うと「受精卵」です。

精子卵子とが受精してできた、たった1個の受精卵から、様々なタイプの細胞に分化し、全ての組織や臓器を形作り、人間の形と組織や臓器の機能を形成して私たちは生まれてくるのです。

 

この受精卵の万能的な能力を何とか医療に利用できないものか。

目の網膜の損傷で失明する病気、パーキンソン病のように神経が変性して運動機能が損なわれる病気。

このような病気に、正常な網膜組織や神経細胞を再生して移植できれば、このような難病も克服できるのではないか?

そういう多能性細胞から再生させた組織を用いた「再生医療」の基本的な治療概念は古くからありました。

 

最大の課題は、どんな細胞にでも変身(分化)できる能力を持つ受精卵ですが、これを際限なく培養できる技術を確立し、さらに、望みの通りの細胞に分化させる方法を見出さなければなりません。

この受精卵を基にして、人間の人工的な操作によって増殖と分化を制御可能とすることにより、再生医療に使えるような仮想の細胞はES細胞(embryonic stem cell;胚性幹細胞)と呼ばれました。

 

そして、ついに1981年、初めてマウスの受精卵を利用したES細胞の樹立が報告されました。

この後、マウスの様々な病気のモデルで、マウスES細胞を用いた再生医療の研究が進められ、ヒトへの応用に向けての手応えを得たのです。

しかし、ヒトのES細胞の樹立は困難を極め、なんと17年後の1998年にやっと実現されました。

 

ところが、ヒトのES細胞には(初めから分かっていたことではありますが)倫理的に大きな問題があります。

つまり、受精卵と言う、生まれたばかりの生命を破壊してしか作れないと言うことです。

極論を言うと、これは殺人ではないのか!?

当時、再生医療先進国であった米国では様々な議論を呼びました。

かの国は宗教上の問題もあり、妊娠中絶の是非についても激しい議論が展開されるお国柄です。

 

我国においてはどうか?

体外受精においては、試験管内で複数の卵子に対して精子を受精させますが、受精した複数の受精卵のうち、母体に戻すのはたった1個です。

つまり、その他の受精卵は一部凍結保存されたり、なかには廃棄されるものもあります。

我国では、この廃棄される運命の受精卵をES細胞樹立に使用することが認められているのですが、これってどうなのでしょうか?

 

そんな訳で、ES細胞を用いた再生医療の研究は、国際的な議論が展開されましたが、各国の足並みはそろわず、結論に至らず、実用化に向けた研究は思う様には進展せず、医療への実用化には程遠いのが現状です。

 

そんな中で、ついにiPS細胞の登場です。

 

2.山中先生の苦闘

 

「iPS細胞」というのは、「induced Pluripotent Stem cell」の略で、人工多能性幹細胞と訳されます。

多能性幹細胞とは、受精卵のように、これからどのような種類の細胞にも変身(分化)し、様々な組織、臓器を形作っていく能力を有する、文字通り「多能性」を備えた細胞です。

 

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ヒトのiPS細胞

 

ちなみに、IPS細胞ではなく、「i」の字が小文字になっているのは、当時爆発的に売れていたアップル社のiPodのように、世界中に広まって欲しいとの想いから、山中先生ご自身が、敢えて「i」の文字を小文字にして名付けたそうです。

それ以上の深い意味はないとのことで、山中先生の遊び心を感じるところですね。

 

さて、iPS細胞は皮膚や血液など、理論的には分化したどんな細胞からでも作製が可能です。

かつては、分化した細胞が未分化な細胞に逆戻りし、そこから別の細胞に分化するなんて事はあり得ないと考えられていました。生物学の常識中の常識です。

山中先生だって、そのことは認めていたと思います。

しかし、山中先生は、逆戻りとまったく別のことを考えていたのです。

それは、「逆戻り」ではなく「初期化(リセット)」です。

 

皮膚や血液の細胞が、前の未分化の細胞の状態に逆戻りすることはありません。

しかし例外があるのです。

それは、卵子精子生殖細胞です。

ヒトの細胞は、年齢とともに老いていき、細胞の機能は低下し、そのために様々な不都合が生じて、その結果として病気になったりします。

しかし、そのような歳とった両親の精子卵子であっても、受精すれば見事に若返って元気な赤ちゃんが生まれてくるわけではありませんか!

卵子精子だって、分化した細胞にも関わらずです。

これは一体どういうことなのか!?

受精後に何か大きな変化が起きていることは間違いありません。

それを起こすものは何なのか?

 

この受精卵の若返り現象は、分化の「逆戻り」というよりは、「初期化(リセット)」と考えられます。

分化した生殖細胞一気にデフォルト状態に「リセット」されるのです。

受精卵が分化した細胞の状態からリセットされているのであれば、そのリセットを行う仕組みが働いているはずです。

そのリセットを行うのは、何らかの遺伝子の働きによるものだとしか考えられません。

いや、どう考えても他にはあり得ません。

今から思えばですが、山中先生のこの考え方は、非常に合理的です。

 

ところが当時は、どこに行っても、誰に話をしても、決まって言われるのは「そんなことができる訳がない」でした。

信念を貫くために研究費集めに奔走しましたが、本当に苦労されたと言います。

とにかく、こんなSFまがいの研究には、ほとんどの人が研究費を付けてくれなかったのです。

 

ほとんどの研究には流れがあります。

しかし、過去ブログ【054】でお話した、坂口志文先生の制御性T細胞探索の研究は、誰からも注目されない、いわば当時の免疫学研究の流れから外れたものでした。

takyamamoto.hatenablog.com

 

山中先生と同様、当時の志文先生も研究費集めに苦労されました。

ところが今や、制御性T細胞は現代免疫学の「本流」となり、世界中の多くの研究者が制御性T細胞の研究に集まって来ています。

なぜなら、このような本流にのった研究をした方が、研究費の獲得も容易だし、結果も出やすい、つまり論文もたくさん書けるし、それによって自分の研究者としての業績も上がる訳です。

山中先生が訴えたiPS細胞も、志文先生の制御性T細胞と同様、当時の如何なる研究の流れにものらないもので、事実、ほとんどの人から支持が得られなかったのです。

 

山中先生は、何度となくくじけそうになったと言いますが、そんなある時、当時、世界最高峰の大学のひとつであるマサチューセッツ工科大学教授であった利根川進先生(1987年、日本人初のノーベル生理学・医学賞受賞)の講演を聴き、講演終了後の質疑応答の時間に、勇気を振り絞って利根川教授に質問をぶつけました。

「研究者は研究の本流にのったテーマをやるべきなのでしょうか? 本流に乗らないテーマは、なかなか評価されず、研究費も付けてはもらえません。そのような研究はすべきではないのでしょうか?」

私はこの時の動画を観ましたが、質問に立った山中先生は、今とはまるで別人のようでした。自信は失せ、緊張し、恐る恐る利根川先生に話しかけるのでした。

そして利根川教授はこう答えました。「君に信じるものがあるのなら、信じることをやるべきだ」と。

尊敬する利根川教授にこう言われて、山中先生は決意を新たにしたと言います。

その山中先生がノーベル賞を受賞した後で、利根川先生はその時のことを思い出して、こう言いました。「『面白いことをいう若い奴がいるもんだなぁ』と思ってねぇ」と。

 

3.山中先生の信念

 

生殖細胞である卵子精子が受精した受精卵では、全ての老化と分化の状態が何らかの遺伝子の働きによってリセット(初期化)されるのではないか?

だから、そのリセットを行う遺伝子が存在するはずだ!

受精卵では自然に起こっているその生命現象を人工的に起こす。

ただそれだけのことなのだ! そのからくりが解れば、造作もないはず。

 

この信念に基づいて研究を重ね、ついに山中先生は、皮膚の細胞でも、血液の細胞でも、たった4つの遺伝子を導入し、その細胞の中で起動させることによって細胞の全ての状態がリセットできることを、ついに発見したのです。

この4つの遺伝子を皮膚細胞なり、血液細胞なりに導入すると、ES細胞に非常に良く似た状態にすることができ、ES細胞と同様、ほぼ無限に培養でき、様々な刺激によって様々な細胞に分化できる「多能性」を有することが分かったのです。

 

iPS細胞樹立を成功させた4つの遺伝子

これらは「ヤマナカ・ファクター」と呼ばれています。

 

次回予告:

山中先生は2006年にマウスのiPS細胞を樹立し、そして、翌2007年には早くもヒトのiPS細胞を樹立されました。

そして、わずか5年後の2012年にはノーベル生理学・医学賞を受賞されています。

この生理学・医学賞受賞の速さは、近年では異例のことです。

それだけ医療界に対してインパクトのある業績だと、高く評価されたのでしょう。当然のことではありますが。

ヒトのiPS細胞の樹立からちょうど10年の節目を迎えた今年、初めて生で山中先生のお話を聴けた訳ですが、次回は、山中先生のお話から、ご自身がけん引されている、iPS細胞の医療への応用の取り組みついて、たとえ話を交えて、出来るだけ解りやすくお話したいと思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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