子供の食物アレルギーを予防するために大切なこと
結論:
1.妊娠時、授乳期に母親が特定の食物を避けることは意味がない!
2.これが大事!! アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、病院に行って徹底的に治せ!!
3.蕎麦も初めから食べさせて大丈夫だが、注意が必要
4.食べてもいい? それともよくない? 血液検査の結果で判断しない!
おまけ:大人になってから発症する食物アレルギー<大人も子供もお肌のケアはとっても大事>
本ブログ【058】にて、子供の食物アレルギーを防ぐために大切な、正しい、最新の情報をお届けしました。
そこでは、卵アレルギーを防ぐには離乳食の初期のころから卵を食べさせる方が良いという論文を、世界でも屈指の医学雑誌「Lancet」から発表した国立成育医療研究センターの研究結果についてお伝えしました。
昨日、この研究グループのメンバーである成育医療研究センターの松本健治先生の講演を聴く機会があり、新たに重要な情報を得ましたので、小さなお子さんをお持ちのお母さん、これからお母さんになられる多くの女性にお伝えしたく、「食物アレルギーは食べさせて防げ!(その2)」をお送りします。
(前回の【066】「新型インフルエンザ(その1)」の続きは後日お送りします)
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1.妊娠時、授乳期に母親が特定の食物を避けることは意味がない!
子供が卵アレルギーになると、「妊娠中に自分が卵を食べたからだ」と自分を責めるお母さんは、以前は普通にたくさんいたようです。
だって、医療機関でも、特定の食べ物を避けるように指導していたというのですから無理もありません。
現在では、いくつもの試験が行われており、その結果から、妊娠時、授乳期の食物の除去は全く意味がないことが明らかになっています。
妊婦さんをくじ引きで2つのグループに分け、ひとつのグループは妊娠後期から授乳期にかけて卵や牛乳や、その他の特定の食物を徹底的に避ける食事をしてもらい、もう片方のグループには卵も牛乳も、色々なものを努めて摂ってもらいました。
その結果、2つのグループの子供の食物アレルギーの発生率に全く差はありませんでした。
それよりも、特定の食物を避けたお母さんたちでは、望ましい体重まで増えない人が多かったそうです。
必要な栄養素を摂れるよう、妊娠中も色々なものをまんべんなく食べましょう、と言うことです。
2.これが大事!! アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、病院に行って徹底的に治せ!!
これからお話する点は、これから出産される方や赤ちゃんの離乳食を始められる前の方には非常に重要です。
アトピーや湿疹のある赤ちゃんの皮膚は、バリア機能が著しく低下しています。
空気中には、小麦など、食物の成分の微粒子が浮遊しており、バリア機能が低下した皮膚から、本ブログ【065】でお話した皮膚の樹状細胞、「ランゲルハンス細胞」のセンサーに補足されて感作(免疫ができること)が成立します。
この皮膚を介しての感作が、食物アレルギーを引き起こすケースが多いことが分かってきました。
食物アレルギーを防ぐためには、避けるのではなく、積極的に食べさせるべきだと言いました。
不思議なことに、食物を食べるとアレルギーを防げるのに、皮膚を通して取り込むとアレルギーになりやすい。
食べることによって働く免疫系は「腸管免疫」です。
異物である食物の内、危険なものとそうでないものを正しく見分ける能力を養うには、食べることによって腸の免疫を鍛えなければなりません
ところが、皮膚から侵入すると、無害な食べ物でも「異物」と認識されてしまうのですね
ですから、まず、「アトピーや湿疹のある赤ちゃんは、離乳食を始める前に徹底的に治療することが大事」だと、松本先生は強調されます。
そして、日々、お肌の保湿に努めて下さい。
アナフィラキシー反応によるショック死の可能性のあるピーナッツですが、日本人には少なく、なぜか欧米人には多いですね。
これは今まで謎だったのですが、原因のひとつが分かってきました。
欧米では、赤ちゃんの入浴後、保湿のためのベビーオイルを塗る人が多いです。
そのベビーオイルに、ピーナッツの成分が含まれているものがあるそうです。
ベビーオイルを作っている方も、使う方も、ピーナッツ成分が赤ちゃんの肌にいいと信じてのことでしょうけれども、なんと、毎日ご丁寧に、赤ちゃんの皮膚からピーナッツに感作させて、わざわざピーナッツアレルギーにしているという訳ですね。
知らないのだから仕方ありませんが、これはもう、子供に対する「罪」です。
私は知らなかったのですが、「茶のしずく石鹸」という、小麦成分を含んだ石鹸を使った多くの人が小麦アレルギーになり、訴訟にまでなった問題があったそうです。
皮膚から小麦を感作せることによって、アレルギーを誘発させてしまったと考えられます。
ですから皆さんも、赤ちゃんの肌に付けるものには充分に注意が必要です。
出来る限り、余分なものを含まないものがいいです。
「天然成分」とか謳っていても安心できません。
小麦だって、ピーナッツだって、天然成分。アレルゲンの多くが天然成分なのですから。
3.蕎麦も初めから食べさせて大丈夫だが、注意が必要
ピーナッツと並び、死のリスクすらある蕎麦。
会場の一般の人から、「(早い時期から)蕎麦も食べさせてもいいのですか?」という質問がありました。
答えは「Yes」です。
逆に言えば、蕎麦を恐れるあまり、最初に蕎麦を避けておいて、大きくなってから食べさせる方が蕎麦アレルギーを誘発するリスクが高いでしょう。
松本先生は、「蕎麦が空気中に浮遊しているかどうかは分からないが、、、」と前置をした上で、やはり、「経皮的に蕎麦に感作するのが危険」と仰っていました。
蕎麦アレルギーの人は、蕎麦屋の前を通っただけで具合が悪くなるという話を聞いたことがあります。
皮膚を通して蕎麦に感作してしまう前に、食べさせる方が安全だと言えます。
赤ちゃんへの蕎麦の食べさせ方ですが、やはり注意が必要ですね。
松本先生は、最初は蕎麦の麺そのものを食べさせる前に、蕎麦のゆで汁(蕎麦湯)を薄めて少量飲ませるとか、少量の蕎麦湯を食事に入れるのが良いと話されていました。
麺を食べさせるのは、蕎麦湯の量を徐々に増やしていってからにしましょう。
もちろん、蕎麦アレルギーと思われる症状が出たら、すぐに受診して下さい。
4.食べてもいい? それともよくない? 血液検査の結果で判断しない!
リスクの高い食べ物や、特に心配な食べ物は、耳かきの先ぐらいの本当に少量から始めましょう。
たとえ症状が出ても、「じゃあ、どのくらいの量なら大丈夫なのか」を見極めて、症状の出ない少量を食べさせるべきです。
「食べられるのなら食べさせる」 これが鉄則です!
食べてもいい量については、本当は「食物経口負荷試験」と言って、実際にある量を食べさせて反応をみる試験を行って、医師が判断します。
負荷試験は、どこの医療機関でも行っている訳ではありませんが、全国で結構ありますので、調べてから受診しましょう。
下のサイトが参考になるでしょう。
それから、【058】でもお話しましたが、血液検査である食物に対する抗体が多いという結果が出ても、必ずしもその食物にアレルギーを示す訳ではないと、松本先生も強調されていました。
実際にアレルギーを示すかどうかは、やはり負荷試験を行って判断すべきとのことです。
抗体が多いことにビビってしまって、子供にその食物を与えないとしたら、逆にその子をアレルギーにするリスクを高めることになるのです。
本末転倒です。
おまけ:大人になってから発症する食物アレルギー<大人も子供もお肌のケアはとっても大事>
今まで普通に食べてたのに、成人してから突如食べられなくなるってこと、結構ありますね。(私はないのですが、よく聞きます)
成人してからの食物アレルギーで多いのは、断然、カニ・エビ、次いで小麦、大豆だそうです。
松本先生によれば、大人になってからの食物アレルギーの感作経路は不明だそうです。
先生の仮説によれば、カニ・エビを食べるときに、どうしても口の周りに身や汁がついてしまう。そのことで、経皮感作するのではないか。
確かに、カニ・エビが口の周りに付くと、カニ・エビアレルギーの無い私でも、かぶれてかゆくなります。
これは明らかに過剰な免疫反応によるものですね。
今まで平気に食べていたのに、経皮感作によって、ある日突然、免疫システムに狂いが生じるのではないか、と言うお話ですが、あくまでも仮説であって、証明さている訳ではないとのことでした。
ひとつの根拠としては、アトピー性皮膚炎の皮膚に出ているあるタンパク質が、制御性T細胞を邪魔するという報告があるそうです。
成人の食物アレルギーを治すのは難しいそうですが、皮膚を通したアレルゲンの感作を防ぐために、子供も大人も、お肌のケアは非常に重要だということです。
お肌と食物アレルギー
一見何の関係もないように見えますが、非常に重要な因果関係のあることが分かり、今回の松本健治先生のお話は大変勉強になりました。
なお、今回の松本先生のお話の内容は、以下のサイトで簡単にまとめられていますので、こちらもご覧下さい。
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
お願いです。
出来るだけ多くのお母さん方、これからお母さんになられる方に知って頂きたく、シェアやリンクをよろしくお願いします。
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