目次:
1.老化は病気か?必然か?
2.寿命が遺伝子に規定されている証拠ってあるの?
3.よく聞くけど、「テロメア」ってなに?
4.テロメアを伸ばせば若返る?
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1.老化は病気か?必然か?
まずは、下のサイトに目を通してみてください。
近年、老化が病気かどうか?というのが議論の的になっています。
専門家たちが、それぞれ科学的根拠を示して、「病気だ」、「いや違う」と是々非々でやるのは結構なことです。それぞれに主張が異なるのもいいでしょう。
私も過去ブログで、老化は病気ではなく、プログラムされた「必然だ」と言いましたが、これもひとりの主張にすぎません。
「老化は病気だから治せる」という主張は、「加齢」と「老化」は違うという考え方に基づいているようです。
つまり、「加齢」はプログラムに従った過程だが、「老化」は長年にわたり、様々な有害な環境要因にさらされた結果、DNAや細胞に損傷が蓄積して修正しきれない病的な状態だということのようです。
だから、損傷を予防したり、医学的な処置によって修復したりできれば、病気としての老化は治せるというのですね。なるほど、それはそうだと思います。
でも、「加齢」による様々な体の機能低下が、「老化」といわれる病気の原因になっているのは確かで、このふたつを完全に切り離して「別物」と言えるのでしょうか?
別物と断じて「病気だから治せる」というのは、どうも無茶なロジックのように思えてなりません。
確かに、年齢を重ねるごとに、細胞やDNAレベルでの損傷が蓄積し、多くの不都合、つまり病気の原因になっているのでしょう。
年齢とともに、修復能力も免疫力も低下します。これらは加齢による必然であり、現代医学では、まだ制御できるところではありません。
どうも上の二つ目の記事「『 老化』は抗えない現象か?治療可能な『病気』か?」を読むと、私のような考え方は「時代遅れ」と言われているみたいですね。
でも、急進的な考えがいつも正しいとは限りませんし。
まあ、どのように主張するのも個人の自由ですからね。
健康寿命を延ばすための研究は、もちろん重要です。
ですが、中には人を惑わし、間違った方向に誘導し、間違ったことにお金を使わせていることもあるのではないかと心配するのです。(具体的にどれが、とは言いませんが、、、)
健康寿命を延ばすためには、本ブログで繰り返している通り、食生活と運動習慣の改善。これに尽きると思うのです。
あっ、それから睡眠もね。
2.寿命が遺伝子に規定されている証拠ってあるの?
繰り返しますが、私は過去ブログでも、老化と寿命はプログラムされた必然の結果だと言いました。
大半の生物は、種の存続のために世代交代しないといけないので、個体レベルで適切なタイミングで寿命が尽きるように規定されているんだと。
でも、そんな証拠あるんですか?
あります。そのプログラムが目で見て分かるようなものが。
鉛筆を使うほど短くなっていく様子は、見ればわかりますね。やがて短くなりすぎて、もう使えなくなると、つまり鉛筆の寿命が来たと、見ればわかります。
そんなみたいに、あとどれだけ細胞の寿命が残されているのか、見て分かるものがあります。
「テロメア」がそれです。
ヒトでもマウスでも、だいたい哺乳類の細胞は分裂できる回数に制限があります。
細胞を容器の中で培養したとき、普通、数十回分裂すると終わりです。どんなに頑張っても100回とか分裂できません。
この分裂回数に限界がある現象は、発見者の名をとって「ヘイフリック限界」と呼ばれます。
なぜ分裂回数に限界があるのか?
それは染色体(二本鎖DNA)の末端にある特徴的な塩基配列構造「テロメア」の長さと関係のあることが判っています。
3.よく聞くけど、「テロメア」ってなに?
染色体は、私たちのゲノムの本体である長大な二本鎖DNAが折りたたまれ、束ねられたものです。
二本鎖DNAはひも状ですので、端っこが二つあります。
この端っこというのが、DNA分解酵素の攻撃を受けやすかったり、他のDNAと結合しやすかったりと、何かと不安定なのです。
大切な遺伝子本体を守るため、この端っこを守る必要があります。
その役目を担うのが「テロメア」と呼ばれる、6塩基(GGGATT)の短い配列が何百何千回と繰り返された特有の配列構造なのです。(下図参照)
細胞が分裂するとき、ゲノムである二本鎖DNAが複製されます。この時、塩基配列に寸分の間違いもあってはなりません。
しかしながら、完全に同じDNA鎖が複製されて、分裂後の細胞に受け継がれるのかというと、そうではありません。この両末端だけは、完全に複製できないのです。
細胞内でのDNA合成の原理上、細胞が1回分裂するたびに、両末端は少し短くならざるを得ないのです。
そうすると、細胞分裂を何度も繰り返すと、末端に近い大事な遺伝子が壊れてしまいます。
それを防ぐために、両末端に長いテロメアの配列構造でキャップをし、テロメア自らが短くなることで、大事な遺伝子を守っているわけです。
細胞分裂を数十回繰り返してテロメアが短くなると、プログラムされた通り分裂が止まります。
そして、その細胞は、はじめから規定されていたとおり、その役目を終えるのです。
ろうそくの灯が消えるように、、、
また、テロメアの短くなった状態は「細胞老化」の状態にあり、様々な病気と関係があることもわかってきました。(下の記事が解りやすいです)
そうすると、多くの人が考えるのが、テロメア長を回復させることができれば老化を止められる? さらに、細胞を若返らせ、寿命を延ばすことすらできるのではないか?ということです。
かもしれません。
ですが、そんなに単純なものなのでしょうか?
4.テロメアを伸ばせば若返る?
骨髄の造血細胞や、皮膚、小腸の細胞は増殖し続けています。
ヘイフリック限界に達すれば、増殖が止まるんじゃなかったの?
いえいえ、いつも生命のご都合主義には驚かされるのですが、こういう幹細胞には、分裂後に短くなったテロメア末端を修復する酵素「テロメラーゼ」が働いているので、いつまでも増殖することができます。
無限に増殖し続けるガン細胞。こいつらもテロメラーゼ遺伝子がONになっています。
普通の細胞にもテロメラーゼ遺伝子はあります。でも、スイッチはOFFです。
これをONにしてやることができれば、細胞を若返らせられるのでは?と考える人がいても、まったく不思議ではありませんね。
ずいぶん前のことです。
米国人のドクターなんちゃらという人が当時、私が勤めていた会社に「ウチの商品を日本で売らないか」と売り込みに来ました。
それはハンドクリームで、皮膚細胞のテロメラーゼをONにすることができるので、いつまでもみずみずしく若々しいお肌を保つんだそうな。
「眉唾眉唾・・・」
だいたい、そのドクターとっちゃんも歳相応というか、決して実際の年齢より若々しくは見えんしなぁ。
分厚い資料を渡され、検討して報告するように社長に言われました。
科学的エビデンスはあるのか?
なんか、そのドクターとっちゃんが、どこそこの講演会に招待されてプレゼンしたとか、なんかのメディアで取り上げられたとか、他には、テロメアとテロメラーゼに関する一般的な解説とか、、、そんなんばっかり。
成分不明 メカニズム不明
論文一本ないんかいッ!
皮膚の細胞は、28日ほどで完全に入れ替わります(ターンオーバー)。
皮膚の下層の方で生まれた皮膚細胞は、上へ上へと昇っていきます。
表面の近くで死に、角質化したのが一番外側の薄いペラペラした表皮です。
表皮はやがて、垢として脱落し、後からあとから新しい細胞がせり上がってきて、入れ替わります。
つまり、皮膚の細胞は決められたタイミングで死なねばなりません。
ドクターとっちゃんのクリームで皮膚細胞を若返らせ、みずみずしいお肌にできればいいですよ。
でも、テロメアを長くしたせいで、皮膚の細胞が死ぬべきときに死ななくなったらどうでしょう?
皮膚細胞が表皮近くまで上がって来ても死なず、脱落することなく、その場にとどまり続けるかもしれません。
しかし、下からは若い皮膚細胞が次々とせり上がってくるわけです。
これでは、上がってくる皮膚細胞の行き場がなくなります。
もう一人も乗れない満員電車に、次々と多くの乗客が乗り込もうと押し寄せるような状態。
これはもう、健康な皮膚の状態ではないのではないか?
ってか病気、それも、今まで誰もみたことがないような奇病じゃないのか?
テロメアとテロメラーゼが細胞の寿命と老化に及ぼす影響、そのメカニズムは、まだ十分に理解されていません。
テロメアの短さと、細胞や体(見た目とか)の老化度、病気発症のリスクとの間に関係のあるらしいことが観察されています。
でもそれは、現象として観察されているだけで、なぜ?どういう仕組みで?何が起こって?ということになると、ほとんどわかっていないのです。
いつか、テロメアとテロメアーゼの仕組みの理解が進み、細胞のテロメラーゼ遺伝子を適切に制御する技術を人類が手にすることができれば、ヒトを個体レベルで若返らせたり、寿命を延ばしたりできるようになるかもしれません。
でもそれは、まだまだ先の様な気がします。
結局、今のところ分かっていることは、テロメアの急速な短縮防止と病気予防には、ストレス溜めない、適度な運動と適切な食事、質のいい睡眠、だということのようです。
これなら、今日からでもできますよね。
どうか、「テロメラーゼで若返り」みたいなものにお金を取られないように、十分にお気を付けください。
読者の皆さまには、日ごろの生活習慣にご留意いただき、健康で長生きできるように努めて頂ければ、このブログの本望とするところです。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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