目次:
1.私はアトピーもち
2.どうしてアレルギーになるの?
3.免疫バランスについて、もう少し詳しく
4.デュピクセントはTh2サイトカインの作用を邪魔する
5.で、おいくら万円くらいかかるの?
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1.私はアトピーもち
私にはアトピー性皮膚炎の持病があります。
子供のころからひどいアレルギー体質です。
小さいときは小児喘息に卵アレルギーがありましたが、これらは大きくなるにつれ治癒しました。
でも、アレルギー性鼻炎は子供のころから今も続いています。
そして、大人になってから、30歳くらいのころにアトピーを発症し、それ以来25年以上、この病気と付き合い続けています。
「最近、症状がひどい」と主治医に告げると、先生は「デュピクセントって薬知っていますか?」と言います。
「知らない」と言うと、サノフィ株式会社(製薬メーカー)の「デュピクセントを使用される患者さんへ」という小冊子を渡されました。
2.どうしてアレルギーになるの?
私のブログの読者なら、もうご存じかもしれませんが、アレルギー反応とは私たちの体を守るための生体防御反応、すなわち免疫反応です。
免疫系は絶妙な制御によりバランスが保たれており、攻撃するべき相手と、攻撃してはいけないものとを見分けています。
しかし、その人の体質(遺伝的要因)と近年の生活環境の変化(衛生環境や食生活の欧米化など)によって、本来攻撃してはけないものに免疫が過剰に反応する。これがアレルギー性疾患です。
過去ブログでもお話ししましたが、免疫系にはバランスを保つためのブレーキとアクセルとハンドルがあります。
過去ブログもご参照
アレルギー反応とは、この免疫のアクセルが踏まれて過剰に強くなり、ハンドルが右側の液性免疫(2型ヘルパーT/Th2)の方へきられた状態であると言えます。
Th2側にシフトすることによって抗体、抗体の中でもアレルギー反応を引き起こすIgE(アイジーイー)という種類の抗体を大量に産生する状態になっているのです。
3.免疫バランスについて、もう少し詳しく
もう少し詳しくお話ししましょう。(少し小難しくなるので、ここは読み飛ばして、4に進んで下さって構いません)
免疫のブレーキとアクセルはどうやって踏むのか? ハンドルはどうやってきるのか?
それにはサイトカインという免疫物質が大きく関わっています。
サイトカインは百種類以上もあって、その全部の役割が分かっている訳ではなく、また全部を覚えきれるものではないのですが、主要なサイトカインがどういう働きをするのかを下の図にまとめました。
幼弱なT細胞(ナイーブT細胞)は、細胞性免疫をつかさどるTh1細胞や液性免疫(抗体)をつかさどるTh2細胞に分化します。
図の右側のTh2細胞はある種のサイトカインを出しています。
IL-4, 5, 6, 10, 13と呼ばれるものです。
これらのサイトカインが、抗体産生B細胞に作用して、アレルギーの原因になるIgE抗体の産生を強力に促すわけです。
ですから、アレルギーを防ぐためには、Th2の方にハンドルが切れないようにしてやればいいことが分かります。
口で言うのは簡単ですが、そのような薬ができるものなのでしょうか?
4.デュピクセントはTh2サイトカインの作用を邪魔する
さて、デュピクセントですが、これは抗体医薬、すなわち生物学的製剤です。
生物学的製剤については、過去ブログご参照
抗体医薬品には、特定の物質に特異的に結合して、その働きを妨害するタイプのものがあります。
過去ブログでご紹介した、昨年の本庶先生のノーベル賞受賞で脚光を浴びた「オプジーボ」も抗体医薬です。
オプジーボについては過去ブログご参照
デュピクセントは、Th2サイトカインであるIL-4とIL-13の働きを妨害することで、皮膚の炎症を沈め、皮膚のバリア機能を回復させる効果・効能があるのです。
5.で、おいくら万円くらいかかるの?
生物学的製剤というと、すぐに思い浮かぶのが高い薬価です。
オプジーボなんかは、一人分で1000万円以上かかります。
デュピクセントも数百万円かかるようです。
でも、高額医療制度があるので、申請すれば一部は戻ってきますので、自己負担額は年収によって異なるのですが、実質一人、数十万円のようですね。
主治医は「劇的に効く」といいますが、それでも私には手が出ない金額ですので、「今回はとりあえず見送ります」と答えました。
この治療が受けられるのは、従来の治療法、例えばステロイド剤でも症状をコントロールできない患者です。
町医者ではこの治療は行っていないので、かかりつけ医に紹介状を書いてもらい、大病院に数カ月にわたって数回通うことになります。
ただ、自己投与、つまりインスリンみたいに自分でも注射できるので、忙しくて頻繁に通院できない人でも大丈夫なようですね。
デュピクセントは、喘息の患者さんも投与の対象になっています。
ひどいアレルギーで長年悩んでおられるのなら、一度、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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