目次:
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ガン免疫療法は「オオカミ少年」?
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全く新しい考え方のガン免疫療法
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免疫細胞にはブレーキボタンが付いている!?
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ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!
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免疫力本来のパワー!!
結論:日頃から免疫本来の力を発揮できるように努めましょう!
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前回の最後で、「次回は免疫のブレーキとアクセルの話をする」と言いましたっけ?
確かに言いましたが、内容変更させて下さい。
ブレーキの話をします。アクセルは出てきません。
今回は、ガンと免疫のブレーキの話を中心に、私たちが本来もつ免疫の力がどれほど強力かというお話を致します。
① ガン免疫療法は「オオカミ少年」?
免疫力を増強することでガンをやっつける「免疫療法」という考え方は、何十年も前からありました。
しかし、どの方法もあまりうまくいかず、「効く、効く」と言っているうちに、ついには「オオカミ少年化」してしまい、「新しい免疫療法」が出てきても、「眉唾モノ」みたくみられるようになりました。
そう、「免疫療法」というだけで、なんか「代替療法」か「民間療法」みたいに、胡散臭さを感じる人も多かったのです。
例えば、ガン患者の血液から免疫細胞を取り出して、免疫力を増強する試薬を加えて試験管の中で培養し、充分パワーアップしたところで患者の体内に戻す免疫療法があります。
パワーアップした免疫細胞は、活発に炎症性物質やなんかを出しているので、体に戻すと強い炎症が起こり、高熱が出たりします。
こんな感じで使えなかったり、何かしらの問題があって、費用が高い割に決め手に欠けるのが従来のガン免疫療法でした。
② 全く新しい考え方のガン免疫療法
従来のガン免疫療法は、どうにかして免疫力をアップさせてやろうという考え方でした。
皆、やたらアクセルを踏むことばかり考えていた訳です。
今話題の新しいガン免疫療法の考え方は、アクセルを踏み込むのではなく、免疫系にかかっているブレーキを外してやろうというものです。
逆の発想です。
私たちの免疫系は当然、ガン細胞をやっつけようと頑張ります。
一方で、ガン細胞もなかなか賢くて、何とか免疫系をだまくらかして、生き延びてやろうとします。
実は、免疫系から逃れるために、ガン細胞が免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞にブレーキをかけていることが分かりました。
ヘルパーT細胞が機能しないと、免疫系全体がダウンすることは、前回のAIDSのお話の通りです。
だったら、このブレーキを解除する方法を見つければ、私たちが本来持つ免疫力が回復するのではないかという訳です。
この考えに基づいた新しいガン免疫療法の薬は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、非常に関心が高まっています。
③ 免疫細胞にはブレーキボタンが付いている?
制御性T細胞(Treg)は免疫系のブレーキだと言いました。
もっと正確に言うと、Tregは免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」を持っているということです。
本当のブレーキボタンは免疫細胞の表面に付いていて、Tregがそれを押すことによって免疫反応を抑える仕組みです。
免疫細胞の表面にあるブレーキボタンとは、PD-1というタンパク質です。
Tregは、このPD-1と結合するタンパク質(PD-L1)を持っていますが、言ってみれば、このPD-L1が免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」だということですね。
アレルギーとか自己免疫疾患とか、好ましくない免疫反応を抑えたいとき、Tregの「手」(PD-L1)がヘルパーT細胞の「ブレーキボタン」(PD-1)を押すことで、ヘルパーT細胞に活動停止命令が出されます。
これが、Tregがアレルギーとか自己免疫疾患の余剰な免疫反応を抑える仕組みのひとつです。
で、我々の免疫系が自らの免疫反応を抑えるこの仕組みを、ガン細胞は巧みに利用しているのです。
④ ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!
ある種のガン細胞は、Tregの「手」と同様のものを持っていて、ヘルパーT細胞のブレーキボタンを押すことができるのです。
これを押されては、免疫系の攻撃力は著しくパワーダウンです。
なんと狡猾なことでしょう!
ガン細胞も賢いが、しかし人間も賢い!
そこで人間が考えたのは、「ヘルパーT細胞のブレーキボタンにカバーをかけて、ガン細胞がボタンを押せないようにすればいいんだ」ということです。
そのカバーというのが、タンパク質でできた抗体です。
人工的に作られた抗体が、ヘルパーT細胞のブレーキボタンであるPD-1と結合して、カバーします。
カバーで守られていては、ガン細胞はブレーキボタンに手出しができません。
これで免疫系は本来の力を発揮できます。
この抗体が「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しいタイプの薬なわけです。
⑤ 免疫力本来のパワー!!
免疫チェックポイント阻害剤が初めて認可されたのは、末期のメラノーマ(悪性黒色腫;ホクロからガン化して、転移しやすい)患者に対してでした。
抗がん剤療法、放射線療法とも期待できず、打つ手がない患者のみを対象にして約40%の人に延命効果がありました。
この40%という数字が高いとみるのか、低いとみるのか?
従来なら助からなかったはずの人のうちの40%です。
さて、私が言いたいのは40%という数字の評価ではなく、従来の医療で助からないはずだった人でも、「免疫だけの力」で回復するのだということです。
末期がんから回復するのですから、免疫力のパワーというのは、改めて凄いのだということが分かりますね。
病気になったときはもちろんですが、日頃から免疫力をバランスのいい状態に保つことがいかに重要かということ。
これが今回の結論です。
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
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