Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」

目次:

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

② ウイルスはバカじゃない

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

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ゴルゴ13の持病「ギラン・バレー症候群

ゴルゴが病気になるエピソードって結構ありますね。

「病原体レベル4」というエピソードでは、なんとエボラウイルスに感染し、医療器具の限られた船内で発症。ゴルゴもこれまでか!?

 

感染したサルに唾を吐きかけられたのですが、銃弾すらかわしてしまう反射神経の持ち主が、サルのツバ吐きぐらいかわせなかったのですかねぇ?

 

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ツバかけられたときのゴルゴの無念な表情!

 

さて、古くはダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレーク」。

致死率はエボラ以上、感染力はインフルエンザ以上という最恐のウイルスがアメリカ全土に蔓延の危機! 果たして阻止できるのか⁈というお話でした。

 

さらに、小松左京大先生の「復活の日」に至っては、南極の数百人を残して、人類は絶滅したのでした。

 

でも断言できます。人類はウイルスで絶滅したりしません。

その一つの根拠となった事件が1950年代に起こりました。

 

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

 

イギリス生まれのピーターラビットアナウサギという種類のイギリスではなじみの深い動物です。

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19世紀、イギリス人がオーストラリアに入植する際、このアナウサギを何匹か(ウサギは「1羽」「2羽」って数えるんでしたっけ?)持ち込みました。

別に愛玩用としてではなく、世界で最も狩猟好きなイギリス人が、ハンティングを楽しむために持ち込んだのです。

動物を追い回して打ち殺す娯楽、ハンティングは「紳士淑女のたしなみ」というわけですねぇ。

 

さて、天敵のいないオーストラリアで、野に放たれたアナウサギは爆発的に繁殖しました。

それが牧草を食い尽くしてしまい、牧羊に甚大な被害が出たのです。

毎年、何百万匹単位で駆除しても到底追いつきません。

 

そこで、オーストラリア政府が取った策が、恐るべき生物兵器の使用です。

その名をミクソーマウイルス!

ウサギだけに感染し、他の生物には全くの無害。

致死率はほぼ100%! 治療法なし!

なんと理想的な!!

 

このウイルスに感染すると、兎粘液腫(うさぎねんえきしゅ)という病気を発症します。

その症状は、ウィキによると「発熱、結膜眼瞼炎、鼻、耳、肛門、生殖器周辺の粘膜と皮膚の境界部皮下にゼラチン様腫瘤を形成する。死亡率はほぼ100%であり、発症後2週間前後で死亡する」とあります。

かなりの苦痛を長期に与えて死に至らしめる、非常に残酷な病気のようですねぇ。

こんなもん使っておいて、「捕鯨は非人道的だ」とか言ってんじゃねぇ!!

いや別に豪州人の方に敵意は御座いません。

 

それは置いといて、この作戦、顛末はどうなったか? 思惑通りに事は進んだのでしょうか?

 

② ウイルスはバカじゃない

 

我々すべての生物種の最大の目的は、できるだけ多くの子孫を残して種の繁栄を築くことです。

ウイルスも例外ではありあません。

 

さてウサギの話に戻りましょう。

1950年にオーストラリアにおいて、このウイルスが野生化したアナウサギに対して使用されました。

ほぼ100%と思われていた致死率でしたが、数百匹に1匹ぐらい、病気を発症しないウサギが現れたのです。

そして、ついに撲滅することができずに終わりました。

 

理由は二つありますが、ひとつは、感染が広まるにつれ、ウイルスの毒性が弱まったのです。

ウイルスは宿主がいてこそ繫栄できます。

すべて殺していたのでは、自分たちの未来もありません。

ですので、毒性が強すぎて、「このままではいかん」と思ったら、自分たちの生存率を最大化するために、毒性の弱いウイルスが優勢になるのです。

そして、ほどほどに宿主を生かし続けます。

結局、数年後には、このミクソーマウイルスの致死率は、およそ50%程度で落ち着いたとさ。

 

このことは、おそらくエボラウイルスでもHIVでも同じです。

決して人類を根絶やしになんかしやしません。

実際、HIVに感染しても発症しない人や、HIVに感染すらしない人がいることが分かっています。

 

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

みなさんABO式の血液型はご存知ですね?

これは赤血球の型です。

型を誤って輸血すると、赤血球が壊れて死んでしまいますので、血液型検査は重要です。

ちなみに、この赤血球が破壊される現象、これもまた免疫の働きによるものです。

 

では、白血球にも血液型があるのをご存知でしょうか?

HLAと言えばお分かりの人もいるでしょうか?

骨髄移植や臓器移植では、このHLAの型をできるだけ合わせることが重要です。

拒絶反応を防ぐためです。

 

HLAはABO式のように単純ではなく、計算上は数百億通りの型があることになります。

ですから、一卵性の双子を除いては、この地球上に二人とまったく同じ型の人はいないことになります。

このように、たくさんの型があることを「多様性」といいます。

 

このHLAの型は「免疫の型」と言ってもいいでしょう。

免疫の型に多様性があるということは、ヒトの免疫は人それぞれに異なり、それこそ「千差万別」、「万差億別」です!

 

先ほど、HIVに感染してもエイズを発症しない人がいると言いました。

このような人は「エリートコントローラー」と呼ばれ、特にHIVに感染したヘルパーT細胞を早期に発見し、排除する免疫力を備えています。

ですから、ウイルスはいることはいるのですが、発症するところまでウイルスが増えるのを防ぐことができます。

これは、特定のHLAの型を持っている人であることが分かっています。

 

オーストラリアのウサギ駆除の話に戻りましょう。

撲滅に失敗した原因は二つ。

ひとつは、ウイルス自らが弱毒化したこと。

もうひとつは、アナウサギにも、ミクソーマウイルスに対するエリートコントローラーがいたということです。

 

免疫には多様性があり、人それぞれすべて異なります。

人類は「ある病気にはめっぽう強いが、その他のある病気には弱い」という人の集団です。

ですから、ある疫病が猛威を振るっても、必ず生き延びる人がおり、絶滅することはないのです。

 

う~ん! だから何だというのだ!?

オチなく話が終わってしまった!!

 

ただ、免疫には多様性があるということだけ覚えておいて下さいね。

 

次はお役立ち情報をお届けできるように書きます(ペコリ)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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