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号外【免疫学史上最大の謎??に挑む】「サプレッサーT細胞」は何処へ消えた?

今回は、健康の話でも病気の話でも御座いませんので、悪しからずご了承のほどを。

 

でも、免疫学に関心のある方の中には、同じ疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな疑問について、勝手に迫ります(笑)

 

目次:

① サプレッサーT細胞は何処へ消えたのか?

② サプレッサーT細胞には発見者がいた!

③ 細胞マーカー分子とは?

④ 引導は分子生物学者によって渡された!

⑤ 坂口志文(しもん)の登場

⑥ なぜ、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのか?

⑦ 「サプレッサーT細胞」という呼称を今でも使う人

 

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① サプレッサーT細胞は何処へ消えたのか?

 

これまでの私の記事の中で、皆様に最もたくさん読んで頂いているのが【017】の「自己免疫疾患と制御性T細胞」です。

制御性T細胞について、こんなにも多くの人が高い関心を持たれていることを知ることができましたし、大変な励みになりました。

皆さま、本当にありがとう御座います。

takyamamoto.hatenablog.com

 

この記事を投稿した後、ある方から、「昔、『サプレッサーT細胞』というのがありましたが、『制御性T細胞』に名前変わったんですか?」というご質問を頂きました。

 

1983年だったと思います。私が大学生だったときに読んだ本(講談社ブルーバックス)には、「T細胞には、ヘルパーT細胞とキラーT細胞とサプレッサーT細胞とがある」と書かれていました。

その本には、確かに、「サプレッサーT細胞はある」と明記されていたのです。

実は、その本を読んだその当時の時点で、既にサプレッサーT細胞の存在が否定されていたことを、私は全く知る由もありませんでした。

その時以来、20年近くにもわたって、「サプレッサーT細胞はある」と信じ込んでいたのです。

(それまでの私は、免疫学は専門ではありませんでしたので)

 

で、気が付いたのは、わが国の免疫学の世界では、サプレッサーT細胞の話題に触れることが、あたかもタブーであるかのように、誰もサプレッサーT細胞の話をしない雰囲気があることでした。

早くも1960年代に、洞察力に優れた免疫学者によって、「免疫を抑える細胞」の存在が予言され、サプレッサーT細胞は否定されたとは言え、1995年の制御性T細胞の発見によって、その予言が正しかったことが見事に証明されたにも関わらずです!

なんでなのか??

 

どういういきさつでサプレッサーT細胞は消え去ったのか?

質問を頂いたことをきっかけに調べてみました。

 

② サプレッサーT細胞には発見者がいた!

 

サプレッサーT細胞の発見者は、当時、千葉大学教授だった多田富雄先生だとされているようです。1971年の事です。

 

60年代から「免疫現象は、免疫を抑制(suppress)する細胞の存在を仮定しないと説明できない」と考える人たちがいました。その先端を走っていたのが多田先生であったようです。

多田先生が、どんな証拠に基づいてサプレッサーT細胞を発見したと言われたのかはよく分かりません。

 

当時の定義によれば、サプレッサーT細胞の最も重要な特徴は、I‐Jと呼ばれるタンパク質が細胞に発現していたことです。

言い換えると、I‐Jタンパク質はサプレッサーT細胞の目印と言えます。

つまり、サプレッサーT細胞であればI‐Jタンパク質を発現しているし、逆にI‐Jタンパク質を発現している細胞はサプレッサーT細胞だと言えるとされていたのです。

 

③ 細胞マーカー分子とは?

 

先ほど、I‐Jというタンパク質は、サプレッサーT細胞の目印だと言いました。

このように、ある細胞の特徴を表す目印となるタンパク質、言い換えると、その細胞がどんな種類の細胞であるのかを決定するのに使われるタンパク質を、「細胞マーカー分子(単に「マーカー分子」とも)」と言います。

 

免疫細胞のうち、T細胞の最も重要なマーカー分子に、「CD4」「CD8」と呼ばれるタンパク質があります。

例外もありますが、ほとんどのT細胞は、CD4を発現する「CD4陽性T細胞」とCD8を発現する「CD8陽性T細胞」の2つに分類されます。

 

T細胞は、現在では大きく「キラーT細胞」、「ヘルパーT細胞」、「制御性T細胞」の3つに分類されますが、キラーT細胞はCD8陽性細胞(CD8を発現する細胞)であり、ヘルパーT細胞と制御性T細胞はCD4陽性細胞(CD4を発現する細胞)なのです。

 

そして、ここが重要なのですが、当時、「サプレッサーT細胞」は「CD8陽性細胞」、すなわち、キラーT細胞のお仲間だと信じられていたのです。

 

④ 引導は分子生物学者によって渡された!

 

1970年代後半には、多田先生が発見したとされる「CD8陽性/I‐J陽性」のサプレッサーT細胞の遺伝子の働きや、免疫を抑える仕組みの研究が、世界中の研究者によって競うように行われたようです。

その研究には、免疫学者だけでなく、遺伝子やタンパク質の構造や機能を研究する、いわゆる「分子生物学者」たちも参入してきたのです。

 

そして1981年、私には詳しいことは分かりませんが、ついに、I‐Jタンパク質は、遺伝子的にサプレッサーT細胞の「分子マーカーではあり得ない」ことが、分子生物学者によって決定的にされたそうです。

 

その後、免疫学者たちの「サプレッサー熱」は急速に冷めていき、また、多くの研究者が落胆したのです。

「あぁ、免疫を抑える細胞の存在を信じていた俺たちは間違っていたのだろうか?」

「あの熱く燃え上がった情熱を研究に注ぎこんだ日々は何だったのか?」

 

⑤ 坂口志文(しもん)の登場

 

現、大阪大学教授の坂口志文先生は、その後も免疫を抑える免疫細胞の存在を信じていました。

多くの免疫学者が、免疫を抑える免疫細胞の探究から去っていく中でです。

80年代から既に、志文先生は、「CD8陽性細胞」に囚われず、一から免疫を抑える細胞の探索を行っていたようです。

 

そしてついに、免疫を抑える細胞の発見に至るのですが、それはなんと「CD8陽性細胞」ではなく、「CD4陽性細胞」だったのです。

 

80年代の多くの研究者が、免疫を抑える細胞は「CD8陽性細胞」だという先入観に囚われて、疑うことすら知りませんでした。

このことは、かつてサプレッサーT細胞の研究に打ち込んでいた研究者にとっては、非常に大きな失策のように思われたのかもしれません。

一方、志文先生は、過去の先入観を完全に捨て去っていたのですね。

 

⑥ なぜ、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのか?

 

本ブログ【017】でお話しした通り、制御性T細胞は、「自己免疫反応を示す細胞を抑制する細胞」として発見されました。

「抑制」する者とは、英語でまさしく「suppresor」です。

ですが、「サプレッサー(suppresor)T細胞」ではなく、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられました。

何故なのか?

 

志文先生は、阪大のご自身のホームページの中で、制御性T細胞が自己免疫反応を抑える働きを、「抑制」ではなく「調整作用」と表現しています。

www.osaka-u.ac.jp

 

「Regulatory」とは、「制御性」とか「調整的な」とか「調節の」という意味です。

なので、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのでしょう。

 

でも、こんな邪推をすると叱られるかもしれませんが、敢えて「サップレッサーT細胞」の呼称を避けたのかもしれません。

しかし、その真実の事情については、私などの知るところではありません。

 

⑦ 「サプレッサーT細胞」という呼称を今でも使う人

 

「サプレッサーT細胞」という呼称は、当時、多田先生が海外の研究者仲間2人とワイガヤで話し合って決めたそうです。

つまり、多田先生は、名付け親の一人なのです。

 

1960年代の時点で既に、免疫を抑える免疫細胞の存在を予言していた点で、多田先生の功績は大きいと言えます。

ところが、1981年にサプレッサーT細胞の存在が分子生物学者によって完全否定されたことにより、多くの免疫学者たちは面目を失ったのでしょう。

そして、わが国でそのフロントランナーであった多田先生も、その後、非常に辛い目に会われたようです。

多田先生は、ご自身の手記の中で、「ある国際学術雑誌のなかで、『それでも地球は動く』という論説を書いた」と記しています。

ご存知の通り、「地動説」を唱えて、異端審問で追及されたときのガリレオの有名な言葉です。

 

そんな多田先生の胸中を思ってか、当時のわが国の免疫学者たちは、「サプレッサーT細胞」という言葉を使わなくなったのではないでしょうか。

それが今日にまで続いているように思えます。

 

また逆に、当時、多田先生のお弟子さんとしてサプレッサーT細胞の研究に情熱を燃やしていた人などは、当時の「熱き探究の日々」を懐かしむかの如く、制御性T細胞の事を「CD4陽性/CD25陽性サプレッサーT細胞」などと呼ぶのです。

(CD25は、制御性T細胞の主要な分子マーカーです)

JSI Newsletter Vol11 No1. p7

サプレッサーT細胞は「CD8陽性」やっ、ちゅうねん(笑)

 

本ブログ【041】と【042】の「がん遺伝子発見物語」でも、科学の舞台の裏側で繰り広げられる研究者たちの人間物語についてお話しましたが、偉大な科学の発展は、研究者たちの苦悩と葛藤、栄光と挫折に支えられているのですね。

takyamamoto.hatenablog.com

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

本記事の真偽の程について、正しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ともお教え頂きたく思います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

049【内科では分からない?】心の病気「過敏性腸症候群」

目次:

① 緊張する状況で下痢、って経験あります?

② 心療内科は怖くない(笑)

③ この俺が心の病気に? じゃぁ、誰でもなり得るってことか!?

④ この病気には絶対に立ち向かうな!

 

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① 不安な状況で下痢、って経験あります?

 

私の弟が中学生の時、定期考査試験の前になると、必ずお腹壊してました。

 

私はというと、大学生のころ、急行列車なんかに乗ると急にお腹が痛くなり、吊革につかまって体ねじりながら、冷や汗かいて、顔面蒼白になりながら、「駅まであと5分・・・」、「あと2分・・・頑張れ!」と自分を励ましながら、次の駅まで耐えに耐えました。

ところが、不思議なもので、駅に着くと腹痛が治まるのです。

「あっ、大丈夫や、治まった。これやったら次の駅まで行けるなぁ」なぁ~んて思って、ドアがピシャリと閉まった瞬間に、再び激しい痛みが襲ってくるのです。

そして、さらに「恐怖の15分間」との闘いが始まるのです。

死にそうな思いで耐えに耐え、やっと駅のトイレに駆け込んだとき、個室の前に列なんかできていると、もう失神しそうになりましたね。

そして、その刹那にこう思うのです。

「この苦しみから解放されるのなら、クソまみれになって死んだ方がマシ」と(笑)

いや、当の本人にとっては、笑いごとでは御座いません。

(今は腸内の状態がとてもいいので、そんな恐怖体験は皆無です)

 

子供であれば、人前でのピアノの発表会の前とか。。。

大人では、会社や取引先での大事なプレゼンの前。

それから、前述の私の経験のように、すぐにはトイレに行けないという状況で強い不安を感じているようなとき。

これは、緊張や不安、プレッシャーなどからくるストレスが一因となっている心因性の疾患であろうと考えられます。

 

この病気、過敏性腸症候群は、内科で内視鏡などの検査を行っても炎症や潰瘍などの身体的異常が認められないにも関わらず、下痢や便秘、腹痛、ガス過多などの症状を示す病気の総称です。

わが国の患者総数は約1,200万人とみつもられており、子供から20~40歳代の比較的若い世代に多く見られます。

 

大きくは「下痢型」、「便秘型」、「下痢と便秘を交互に繰り返す型」の3つに分けられます。

断然、「下痢型」が多いですね。

 

大腸のぜん動運動が活発になると、大腸の内容物(つまりウンコ)からの水分の吸収が不十分となり、下痢します。

逆に、ぜん動運動が鈍くなると、内容物が大腸内に留まる時間が長くなり、その間に水分が過剰に吸収されて便秘になります。

腸のぜん動運動は自律神経に支配されており、自律神経の失調が一因となっていると思われます。

 

前に、ある状況でお腹が痛くなった体験があると、再び同じ状況に置かれたときに、「またお腹が痛くなるのでは?」と意識すればするほど不安に襲われ、その強い不安が神経を失調させます。

そのような経験を何度も繰り返すことで、不安とストレスが強化され、恐怖心すら覚えるようになります。

このような悪循環にまで陥ると、何らかの精神的な診療が必要になります。

 

② 心療内科は怖くない(笑)

 

前述の通り、内視鏡所見に異常がなく、このような症状でお悩みの方は、心療内科や精神科を受診されてみて下さい。

この病気は実際、内科ではなく、心療内科や精神科で診断されることが多いのです。

 

「診療内科」や「精神科」というと抵抗を感じる方も多いかも知れませんが、今はそんなことありません。

「病気」であるのにも関わらず、昔だったら「根性がない」とか「気合が足りん」とか一蹴されていたのが、今ではれっきとした病気であるとの認識が一般にも広まってきました。

私も心療内科に通ったことがありますので分かりますが、老若男女、本当に患者さん多いですよ。

待合室でテレビ見たり、本読んだりして順番待ちしている人たちを見ていると、とても病人には見えません。

それでも、それぞれに他人には分からない苦痛に悩んでる人たちなのです。

実際、私もその一人でした。

ただ、たまにテーブルの上に突っ伏してピクリとも動かないような、「うわっ、この人凄っげぇ具合悪そ~」っていう人もいましたが。。。

 

③ この俺が心の病気に? じゃぁ、誰でもなり得るってことか!?

 

ちょっとここで、私の話をさせて下さい。

もう何年も前のことです。

仕事が順調の反対で、上司の役員とも折り合いが悪くなり、強い不安と焦燥感を感じるようになり、不眠に悩まされました。

眠れないのと、不安感を解消するために、毎晩多量に飲酒し、そのことで荒れた生活になっていました。

これがまた、症状を悪化させていたのだと思います。

「このままここにいたら、俺の人間の部分は完全に壊れてしまう」と思ったものです。

 

思い立って心療内科に行き、「社会不安障害」と診断されました。

病気と診断されたとき、不思議と、なんだか安心しましたね〜。

でも、なかなか良くならず、ついには重度のうつ患者と同じ最大用量の抗うつ薬(選択的セロトニン再取込阻害剤)を飲むまでに至ったのです。

それで私の取った選択。結局、その状況から逃れるしか道はありませんでした。

 

④ この病気には絶対に立ち向かうな!

 

多くの心の病気では、「頑張って」はいけません。

「根性で克服してやる!」などと思わないことです。

取り返しのつかないことになりかねません!

 

急行列車がダメな過敏性大腸炎の人は、1時間早く家を出て、各駅停車に乗って通勤したりとか。

いつでも最寄りの駅で降りてトイレに行ける状況だと、不安から解放され、それだけでお腹が痛くなることもありません。

仕事でのプレゼンが苦痛な人は、上司に相談して他の仕事に回してもらうとか。。。

 

逃げていいんです‼︎

 

この病気に限らないのですが、心因性の病気は薬だけに頼っても、なかなか完治は難しいかも知れません。

やはり不安の原因となっているものを取り除くことが一番です。

私の場合、その会社を辞めたら、半年もしない内に治りました。

おかげさまで、今は超元気じゃけん(なんで急に広島弁になる?)

 

過敏性腸症候群にかかっていながら、「たかが下痢(便秘)程度で」とか、「下痢(便秘)しやすい体質なだけ」などと軽く考えて受診せず、市販の下痢止め(便秘薬)でしのぎながら、相変わらず急行列車やプレゼンの恐怖と闘い続けていると、不安と緊張が増強し、やがてうつや不安障害を併発する可能性があります。

 

消化器内科を受診しても異常が見つからず、しかし確かにこのような症状で強いストレスを感じているのなら、是非、心療内科か精神科を受診して下さい。

そこでは、貴方のストレスや不安の程度を測るテストが行われるかもしれません。

テストと言っても、アンケートに答えるようなもので、何の苦痛もありませんし、身構える必要もありません。

質問事項に対して率直に答えれば、かなり精度高く、貴方の精神状態を数値化してくれます。

私も何度か受けましたが、確かに症状が良くなってくると、このテストの数値も下がってくるのです。

 

症状の程度に応じて、不安を和らげるための精神安定剤や、時には抗うつ剤が処方されるかもしれません。

薬はお医者さまの言う通りに服用して下さい。

その上で、症状をうまくコントロールしながら、原因となっている生活環境や職場環境の改善を試みて下さい。

 

いいですか? 絶対にこの手の病気に立ち向かってはダメですよ!!

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

048【「免疫チェックポイント阻害剤」に期待し過ぎてはいけない!】がん(その9)

目次:

① 「免疫チェックポイント阻害剤」は誰にでも有効という訳ではない!

② どんながんに効きやすいかが解ってきた!?

③ どうやったら、簡単にDNA修復遺伝子に異常があるのかどうかを調べられるのか?

④ 壊れたガードレールを探せって??

⑤ 21世紀のがん治療は「免疫力」!

 

10回はやると言いていた「がん」シリーズですが、8回で息切れしてお休みしてしまいました。

断言したからには男の子! 何が何でもやるぞッ!

久しぶりの9回目をお届けします。

 

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① 「免疫チェックポイント阻害剤」は誰にでも有効という訳ではない!

 

本ブログ【021】にて、今期待の「免疫チェックポイント阻害剤」のお話をしました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

なにせ、「手術」「抗がん剤」「放射線」の3大療法に見放された末期のメラノーマ(悪性黒色腫)で4割の人が延命するのですから、画期的な薬です!

でも、4割と言うことは、皆が皆、これで治る訳ではありません。

それはそうです。まだこの世に、誰にでもがんに効く薬なんてありません。

ましてや末期の患者さんに対してですから。

なので、過度に期待するのではなく、今一度、冷静になって、この薬の問題点について考えてみる必要があります。

 

免疫チェックポイント阻害剤にも、いくつかの問題点があります。

人間本来の免疫力を引き出す薬ですから、元々免疫力の落ちている高齢者には、それほど効果は期待できないようです。

また、重度の自己免疫疾患の人にこれを使うのは、自己免疫疾患の病状を悪化させるリスクがあります。

 

② どんながんに効きやすいかが解ってきた!?

 

メラノーマは悪性度の高いがんではありますが、「免疫チェックポイント阻害剤」が比較的効きやすいがんです

しかし、悪性度にかかわらず、がんの種類によっては、効きにくいものもたくさんあります。

 

f:id:takyamamoto:20170614002343p:plain

 

この違いはどこにあるのか?

高額な薬ですから、あらかじめ効きやすい人とそうでない人とを見分けられると、非常に有効です。

 

そのことはまだ、ほとんど分かっていませんが、ひとつのヒントが15年10月放送のNHKの「クローズアップ現代」で示されていました。

www.nhk.or.jp

 

 

実は、この薬が効きにくいと言われる大腸がんにも関わらず、中にはよく効く人のいることがわかったのです。

それが「リンチ症候群」と呼ばれる、家族性(すなわち遺伝性)の大腸がんなのです。

このリンチ症候群については、がんシリーズ(その3)でお話しました。

是非もう一度おさらいを。

takyamamoto.hatenablog.com

 

リンチ症候群は、がんの原因となる遺伝子の変異を修復する遺伝子、すなわちDNA修復遺伝子に生まれつき変異のある人が発症しやすい家族性腫瘍です。

DNA修復遺伝子は、遺伝子の故障を修理する「修理工」です。

その修理工が故障したら、いったい誰がその修理工を修理するのか?という先天性のがんなのですね。

 

リンチ症候群患者の大腸がんに、なぜ免疫チェックポイント阻害剤がよく効くのか?

そのメカニズムは、まだほとんど分かっていないようです。

とにかく、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいかどうか、本当にこの「DNA修復遺伝子の異常」が「カギ」なのでしょうか?

 

③ どうやったら、簡単にDNA修復遺伝子に異常があるのかどうかを調べられるのか?

 

さてさて、DNA修復遺伝子に変異があるのは、何も先天的なリンチ症候群だけではありません。

後天的な原発性がんの多くでDNA修復遺伝子に変異がみられます。

つまり、がん患者のがん組織を採って(生検)、DNA修復遺伝子に変異があるかどうかを調べて、そのような人に免疫チェックポイント阻害剤が効くかどうかを調べればいいのです!!

 

過去ブログ【035】でお話しましたが、リ・フラウメニ症候群ならp53遺伝子を、家族性乳がんならBRCA1BRCA2のふたつの遺伝子の塩基配列を調べれば、変異のあるなしが分かります。

実際それで、アンジーのBRCA1遺伝子の変異が見つかりました。

035【遺伝するガン「家族性腫瘍」】がん(その3) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

ところが一口でDNA修復遺伝子と言いますが、実は種類がたくさんあるのです。

例えばMsh2Mlh1Msh6PMS1、、、それから、それから、ええ~っと、ええ~っと。。。

とにかく何種類もあるので、こんなんいちいちDNA配列の検査なんかしてられん訳ですわい。

じゃぁどうするのか?

たとえ、よく効くことが分かっていても、それを検査することが難しいんじゃ、しょうがないんじゃないの!?

 

いや、いい手があります。

DNA修復遺伝子の機能異常のために、DNAに変異が起きても修復できないということは、DNAの変異は放置されたまま残ります。

ですから、変異が起こって修復されずに放置されている現場を押さえれば、それを状況証拠として、間接的にDNA修復遺伝子の機能異常が疑われます。

じゃあ、ゲノム(遺伝子の全部)のどこを探せば修復されずに放置されたままの現場を押さえられるというのか?

60億もある塩基配列のどこをどう探せばいいのか?

太平洋でメダカを探すようなもんですよ。ハロウィンの日に渋谷でウォーリーを探すようなもんでしょう(泣)

 

④ 壊れたガードレールを探せって??

 

安心して下さい。スッゴク簡単な方法があります。

 

ガードレールに車がぶつかって壊れたら、修理に来ますよね(車じゃなくって、ガードレールの話ですよ)。

もし、修理屋さんが働けなくなったら、壊れたガードレールは修理されずにほったらかしになります。

だから、壊れたガードレールがいつまでも修理されずに放置されていたとしたら、それは修理屋さんがどうにかなってしまった、と言うふうに考えることができる訳です。

なので、そういう壊れたまま放置されたガードレールがたくさん見つかれば、修理屋さんに、とても具合の悪いこと、つまり「ご不幸」が起きてしまったということが分かるわけですよ。

わっかるかなぁ? 分かんねぇだろうな~(でんでん調)

 

なので、日本中の道路の壊れたまま修理されていないガードレールを探す訳ですが、貴方ならどこを探しますか?

どこを探せばいいか、分かります?

 

答えは、スッゲェ車がぶつかりやすいところです。

某国道の急カーブの先にある人家前のガードレールとか、山道の狭くて曲がりくねったところで、ローリング族(知ってます? ローリング族って?)がドリフトで攻めるコーナーの立ち上がりの外側部分のガードレールとか(具体的には六甲山のドライブウェイとか旧阪奈道路がそれだな)、そう言うところです。

それから、首都高や阪神高速の急カーブ部分で合流する地点なんて、まさにガードレール損傷のホットスポットですよ!

 

実は、ゲノムにもそういう壊れやすいホットスポットがあります。

つまり、スッゴク塩基配列に変異が起こりやすい場所がたくさんあり、それがどこにあるのか、ほとんど分っているため、そのような部分の遺伝子配列を集中的に異常が無いかを調べればいいわけです。

ガードレールが壊れやすい場所で、壊れたらちゃんと修理されてるのかどうかを監視するように、DNAに異常が起こりやすいところを監視して、修復されているかどうかを確かめることによって、DNA修復遺伝子がちゃんと働いているのか否か、が分かるというのでありまする。。。

こんな下手なたとえ話でお分かり頂けます? 心配だなぁ。

 

DNAの4種類の塩基(G, A, T, C)のうちCとAが何度も繰り返している配列部分があります。

例えば、(CA)の2塩基が3回繰り返されたCACACAみたいな感じです。

この繰り返しが数回から数十回、時に百回以上に及ぶ部分があります。

このような繰り返し配列は「マイクロサテライト」と呼ばれ、その繰り返し回数は人ごとに一定です。

このマイクロサテライトの特徴として、細胞の分裂に伴ってDNAが複製されるときに「滑り」やすく、繰り返し回数が変わりやすいということがあります。

 

f:id:takyamamoto:20170614002930p:plain

 

でも、DNA修復遺伝子が正常に機能していれば、この「滑り」は修復されるので、この繰り返しの回数が変わることはありません。

しかし、DNA修復遺伝子がうまく機能しないと、そのまま修復されずに放置され、この回数が長くなったり、短くなったりするのです。

 

下の図を見て下さい。

f:id:takyamamoto:20170614003029p:plain

 

マイクロサテライト部分のDNAを電気泳動した図です。

DNAは、図の上方から下に向かって、電気の引き付ける力によって寒天の中を移動します。

短いDNAほど早く(より下の方に)、長いほどゆっくりと移動するので、この移動度によってDNAの長さが分かります。

 

電気泳動では、DNAの位置は黒いバンドとして現れます。

図のNは正常な大腸の組織のマイクロサテライトのDNAのバンドの位置。Tは大腸がん細胞のマイクロサテライトのDNAのバンドの位置です。

正常な場合は、繰り返し回数が一定ですから、長さも一定なので、バンドは一本です。

でも、がん細胞では、正常細胞と同じ長さのバンドに加え、短いバンドも見られますね。

正常な長さのメインのバンドの少し上に、薄っすらとバンドらしきものが観られますね。

もしかしたら、長くなったマイクロサテライトを持つがん細胞も少しあるのかも知れません。

 

これが、短くなったり、長くなったり、異常を起こしているのに、修復されずに放置されたまんまのマイクロサテライトDNAなのです。

 

このように、マイクロサテライトの長さを一定に保てない状態を、「マイクロサテライト不安定性」といって、これはDNA修復遺伝子の異常の証拠となり、このようながん患者さんを対象に免疫チェックポイント阻害剤が効くのかどうかを検証すればいいのです。

 

それに第一、この検査法は非常に簡単なので、DNA修復遺伝子異常の研究に、とっても有効なのです。

ほんと、ちょっとした装置さえあれば、中学校の理科室でもできる程度のものなのですから。。。

 

⑤ 21世紀のがん治療は「免疫力」

 

2015年、非常に権威のある医学雑誌「The New England Journal of Medicine」から、大腸がんの他、胆道がん、子宮内膜がん、小腸がん、胃がんなどについて、マイクロサテライト不安定性のあるがんと、ないがんとで、免疫チェックポイント阻害剤の効果を検証した論文が発表されました。

果たして、リンチ症候群と同様に、マイクロサテライト不安定性の大きいがん、それも大腸がんに限らず、DNA修復遺伝子に異常があるであろう多くの後天性のがんで、免疫チェックポイント阻害剤が有効であると報告されました。

 

まあ、ひとつの画期的な論文も、他者が追試・再現できなければ、本当かどうかは断言できません。

「断言」はもう少し待ちましょう、 

 

今後も様々な研究により、免疫チェックポイント阻害剤が有効ながんの特徴が明らかにされていくことでしょう。

まさにこれからのがん治療は「免疫力」!

21世紀のがん治療のキーワードは「免疫力」といっても過言ではないのではと思うのです。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

047【橋本病と制御性T細胞】自己免疫疾患(その2)

 

前回の「関節リウマチ」に続いて、「自己免疫疾患(その2)」をお送りします。

 

なぜ、この病名に日本人の名が冠せられているのか?

橋本病発見の歴史を紐解きながら、自己免疫疾患であるこの病気の寛解(かんかい)(病気の症状が良くなること)に重要な役割を担っていると考えられる制御性T細胞(Treg)についても考えてみましょう。

 

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目次:

① 橋本って、誰、それ?(笑)

② あってはならない自己抗体

③ 自己免疫疾患克服の切り札となり得るのか?--現在の研究状況

 

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① 橋本って、誰、それ?(笑)

 

慢性甲状腺炎の患者数は正確には把握されていませんが、40歳代以降に限ると人口の約10%程度にも達すると思われます。

意外とありふれた病気なのですねぇ。

 

慢性甲状腺炎は、「橋本病」という名称で広く知られています。

橋本病の歴史は古く、医師の橋本策(はかる)が1912年に(くしくもヴェーゲナーの「大陸移動説」発表と同じ年です)、ある甲状腺疾患の女性患者の病理組織像を詳細に観察し、「リンパ球性甲状腺腫」として発表しました。

ヴェーゲナーの「悲劇」については過去ブログをご参照)

041【がん遺伝子発見物語(前編)「50年早く行き過ぎた男」】がん(その7) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

しかし、これも反響がなく、やがて忘れ去られていったのです。

彼の論文が注目されるのには、免疫学が進歩する1940年代まで待たねばなりませんでした。

 

「橋本策 写真」の画像検索結果

 

米英の研究者らが、古い橋本の論文と類似した慢性甲状腺炎患者の血清中に、甲状腺に対する自己抗体が存在することを見出しました。

彼らは、さかのぼること数十年も前に慢性甲状腺炎の病理所見を詳細に記録した橋本の見識に敬意を払い、この疾患をHashimoto's thyroiditis(橋本の甲状腺炎)と名付けたのです。

 

橋本先生のご存命中に、この栄誉にあずかれればよかったのですが、橋本先生と言い、ヴェーゲナーと言い、ラウスと言い、他人より何十年も先を見通す優れた洞察力を持っている人って、いるものですねぇ。

 

② あってはならない自己抗体

 

本ブログを熱心にお読み下さっている方には、もう「自己抗体」の説明は不要だと思いますが、念のために言っておくと、その名の通り自己の細胞や組織の成分に反応する抗体の事です。

抗体とは、自己以外の「異物」に結合して、これを不活化したり、免疫細胞の力を借りて排除し、体を外敵から守っています。

 

抗体は本来、自己の成分には反応しません。いや、反応してはいけないものです。

しかしながら、ある種の疾患では自己に反応する抗体が多量に存在し、これが自己の細胞や組織を破壊します。

これは「自己免疫疾患」と呼ばれ、橋本病では甲状腺に対する抗体が複数種類確認されています。

 

橋本病は免疫が自己を攻撃する自己免疫疾患ですので、免疫力が弱まると症状が軽減します。

その証拠の一つとして、妊娠中の女性は一時的に橋本病の症状が緩和することが知られています。

胎児は母体にとっては異物ですから、これを攻撃しないよう、妊娠中は免疫が抑えられているわけです。

 

③ 自己免疫疾患克服の切り札となり得るのか?--現在の研究状況

 

近年、この自己免疫疾患の抑制に、制御性T細胞(Treg)が重要な役割を担っていると考えられています。

先日、βグルカンがTregを誘導し、受精卵や胎児に対する免疫系の攻撃を抑えているのかもしれないと言いました。

takyamamoto.hatenablog.com

証拠が乏しく、ハッキリとは断言できないのですが、可能性はあります。

 

βグルカンは、同じく自己免疫疾患である1型糖尿病のモデルマウスには顕著に効きます。

炎症性大腸疾患モデルマウスにβグルカンを飲ませると、Tregが増えるという論文もあります。

ただ、これらの論文を引用したところで、単に状況証拠を拾い集めたにすぎません。

これらがつながって、一本の線にならないと断定はできないのです。

今後のTreg研究の進展によって明らかになっていくことを期待したいです。

 

これまで多くのTreg研究は、マウスなどの小動物でなされてきました。

ヒトでの研究を難しくしているのが、抗原特異的なTregというのが、ヒトの血液中にほんのわずかしかないことです。

最近、このごく微少なTregを高感度で解析する手法が開発されました。

Cell 167, 1067-1078, 2016

(かなり煩雑で時間のかかる方法で、慣れが必要ではありますが。。。)

 

このような技術革新によってTregの謎が解明され、やがては人類が自己免疫疾患を制御できるようになる時代がやってくることでしょう。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

今回も実にまじめにやりました(笑)

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

046【関節リウマチ】自己免疫疾患(その1)

目次:

① 人類最大の自己免疫疾患

② リウマチになる仕組み

③ リウマチの治療薬

④ リウマチへの効果――根拠はまだないが、βグルカンは期待できるはず

 

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① 人類最大の自己免疫疾患

 

関節リウマチ(以下「リウマチ」と言います)は、人類最大の自己免疫疾患です。

平成23年度の報告では、わが国のリウマチ患者は70~80万人と推計されており、毎年1万5千人もの人が新たに発症しています。

 

リウマチは、すぐに生命にかかわるような病気ではありませんので、軽視されがちですが、長年にわたって炎症がくすぶり続け、徐々に関節の痛みと腫れ、変形が強くなり、やがては関節の線維化、癒着が起こって曲がらなくなり、日常生活に大いに支障を来たすようになります。

男性に対して4倍と、なぜか女性に圧倒的に多く(その理由を私は知りません。どなたかご存知の方、是非お教え下さい)、それも仕事・家事・育児に忙しい30~50代で発病することが多いのですから大変です。

 

しかし近年、リウマチは早期発見・早期治療によって予後(病気の経過や結末)が著しく改善することが分かってきました。

いい薬も出て来ていますが、薬に頼りっきりになるのではなく、やはり、リウマチの原因を知ることで、自身で予防や治療の促進に努めるべきです。

 

② リウマチになる仕組み

 

自己免疫疾患であるリウマチ、標的となるのは自己の関節の細胞です。

抗体やT細胞によって関節の細胞が攻撃されると、滑膜(かつまく)細胞と言う細胞が異常増殖を始め、増えた滑膜細胞は大量の炎症性サイトカインを放出するようになり、毎度お馴染み「慢性炎症」が引き起こされます。

 

関節には関節液があり、関節の動きをスムーズにしています。潤滑油のような役割ですね。

滑膜細胞は栄養源を血管からではなく、関節液に頼っていますので、増殖した滑膜細胞が関節液を食い尽くしていきます。

潤滑油が足りなくなった関節が動きづらくなり、痛みが生じるのも無理からぬことです。

 

更に滑膜細胞が産生する炎症性サイトカインは、滑膜細胞自分自身に作用して、軟骨を破壊するMMPというタンパク質を作らせ、軟骨をゆっくりと崩壊させていきます。

炎症性サイトカインの中でも、TNF-α(ティーエヌエフアルファ)IL-6(アイエルシックス)は、「破骨細胞」を活性化し、骨組織の破壊に拍車をかけます。

 

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このように、ひとつのこと(自己免疫反応)をキッカケに、次から次へと悪いことばかりが連鎖的に起こっていくのです。

炎症が長引くことで骨の破壊も長期に継続し、長い時間を経て痛みや変形が徐々に進行していきます。

 

因みに、破骨細胞とは、その名の通り骨を破壊(骨吸収)する細胞です。

なんで、そんな細胞がいるのかというと、骨も皮膚や小腸粘膜などと同じように、細胞が絶えず入れ替わっています(この現象を「ターンオーバー」と言います)。

つまり、常に細胞の「破壊と再生」が行われている訳ですね。

そのターンオーバーのために、骨細胞を破壊する破骨細胞が必要なのです。

その細胞が、リウマチでは暴走するのですね。

 

③ リウマチの治療薬

 

さて、上記のような骨破壊の進行の仕組みが解っていなかったときには、痛みや腫れを抑えるなどの対症療法しかできず、病気の進行そのものを止めることができませんでした。

しかし、今では、メトトレキサーという薬の登場で、骨破壊に関わっている酵素の産生を阻害することで、病気の進行を抑えることができるようになりました。

また、この薬は、リウマチのごく初期には予防にも有効なことが分ってきています。

現在では、メトトレキサートはリウマチ治療の第一選択薬となっています。

 

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メトトレキサートの構造式

 

リウマチの重症化に関わっているものとして、上述の炎症性サイトカイン、TNF-αとIL-6があります。

近年、この二つのサイトカインに対する生物学的製剤(抗体医薬など)が、かなり良い効果を上げています。

ただ、炎症性サイトカインを抑える薬と言うことは、一種の免疫抑制剤であると言えますので、細菌・真菌・ウイルスの感染症に注意が必要です。

それに、生物学的製剤は高額ですから、医療費削減を声高に唱える私としては、これを使うようになる前に何とかしたいところです。

 

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④ リウマチへの効果――根拠はまだないが、βグルカンは期待できるはず

 

リウマチの根源的な原因は自己免疫反応です。

ですから、生物学的製剤で自己免疫反応の結果として誘導されているサイトカインを抑えたとしても、本当の原因は残ったままです。

元をたたかなければなりません。

とは言っても、元から持っている自己反応性免疫細胞を除くことはできません。

では、どうするか?

 

思い出して下さい。

ひとつの有効な方法は、免疫のバランスを調整することで、制御性T細胞(Treg)を元気にするのです。

免疫のバランス調整と言うとβグルカンでしょう。

 

βグルカンでリウマチが劇的に良くなったという人は結構います。

しかし、しかしです。βグルカンが「リウマチに効く」という論文は、実は非常に少ないので、私もあまり声高には言えないのです。

「治った」、「良くなった」と言う人の「体験談」では、根拠とは言えません。

 

βグルカンは、糖尿病には確かに効きます。

1型糖尿病モデルマウスには顕著に効きます。

理由として、自己免疫疾患が原因で起こるタイプの1型糖尿病で、βグルカンがTregを誘導していることが十分に考えられます。

ただ、まだそのことを証明した論文はありません。

 

ですから、断言はできませんが、リウマチでも1型糖尿病と同様に、βグルカンによってTregを誘導することにより、自己免疫反応を抑えてくれることが期待できます。

 

私たちは、ヒトの自己免疫疾患やアレルギー性疾患において、βグルカンがTregを誘導するのかどうかに非常に高い関心を持っています。

今、大学との共同研究にて、このことを確かめようと、実験を計画中です。

 

βグルカンがTregを誘導、活性化することが証明されれば、自己免疫疾患やアレルギー性疾患に悩む多くの人たちへの福音となるはずです。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

今回は実にまじめにやったぞ!(笑)

 

 

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045【原因不明の不妊はTregの不調が原因か?】驚異のグルカンベイビー!

目次:

① 驚異のグルカンベイビー

② タマタマじゃない!?

③ 本当に不妊に効果があるのか!?

 

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昨晩、健康と病気についての情報交換会と言う名の「飲み会」(笑)に参加したのですが、そこで驚くべき話を聞きました。

 

① 驚異のグルカンベイビー

 

まずは、昨年の秋の話から。

 

写真の母子。我が師匠・飯沼一茂博士と私の講演会に来て下さった方です。

 

この方は長年不妊に悩んでいました。

不妊治療を受けても原因が解らず、効果なく、ダメモトのヤケクソでβグルカンを飲み始めてみたら、しばらくして見事に妊娠したと言うではあ~りませんか!!

こうして生まれて来たのが写真の子。

この方は、このお子さんを「グルカンベイビー」と呼んでいました。

 

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グルカンベイビー(2016年秋、品川にて) 

 

以前から、妊婦では免疫力が落ちていることが知られていました。

母体にとって異物である受精卵や胎児を攻撃しないためと考えられます。

マウスなどの動物では、妊娠動物の子宮で制御性T細胞(Treg)が増えていることも分かっています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

このTregの働きによって、母体の免疫系が胎児(胎仔)を攻撃するのを防いでいるのだと考えられます。

 

しかし、βグルカンがTregを誘導すると考えられているとは言え、正直、こんなこと、つまり、βグルカンが不妊に効くなんて。。。

 

タマタマだろうと思っていました。まぁ、そんなこともあるだろうと。

そして、この話は、私の記憶から薄れていきました。

 

② タマタマじゃない!?

 

昨晩聞いた凄い話。

 

不妊に悩むある夫婦。

長年にわたる二人そろっての不妊治療に疲れ果て、夫婦間でいさかいも絶えないようになっていました。

「こんなことなら、子どもなんか諦めてしまった方がいい」

そう思ったそうです。

 

ある時、私にこの話をしてくれたこの人の勧めで、飯沼師匠の講演会に行かれたそうです。

ドクター飯沼の話を聴いて、半信半疑でβグルカンを飲み始めて約1年。

なんと見事に妊娠したというのです。

現在、妊娠3ヶ月。順調だそうです^ ^

 

いや、正直驚きましたよ。

こんな話が2つも3つも出てくるようでは、信じるしかありません。

でもまだ半信半疑です。

 

③ 本当に不妊に効果があるのか??

 

精子にも卵子にも機能的な異常がなく、原因が分からない不妊の原因の一つにTregの不調があるのではないか?

受精はしているのだが、免疫系が受精卵を攻撃し、着床にまで至っていないのでは?

だから本人も知らないうちに流産している?

そして、βグルカンは、この攻撃を抑えるTregを誘導して、見事、妊娠に導き得るのか??

 

しかし、そのことを示す根拠はあまりにも乏しい。

全部、状況証拠に過ぎません。

 

まず、βグルカンがTregを誘導するという論文はあるにはありますが、決して多いとは言えません。

だいたい、妊婦でTregが増えていると言うだけでは、それが本当に胎児への攻撃を抑えていると言う、少なくとも決定的な証拠にはならないのです。

 

さすがに今回は、私も「断言」できません

不妊に効くとは、とても。。。言えない。。。

 

この話をして下さった方は、他の女性にもβグルカンを勧めているそうですので、果たして第3、第4のグルカンベイビーが現れるのか? ウォッチしていきます。

 

これが本当なら、凄いことですよ。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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号外【「がん遺伝子の発見」黒木登志夫著】生命科学に興味のある高校生・大学生に絶対お奨めの良書

1996年初版発行のこの本、当時、ウイルスの研究をしていた私が、発がんメカニズムを分子生物学的に理解することに対して興味を抱くキッカケになった本です。

 

がん遺伝子の発見|新書|中央公論新社

 

がん遺伝子やがん抑制遺伝子、DNA修復遺伝子の発見の過程には、研究者同士の壮絶な競争と、泥臭い人間物語がありました。

それらを生々しく描写した著者(著名ながん研究者です)の力量に、当時、私は深く感銘を受けました。

本ブログ【041】と【042】の2回にわたってお送りした「がん遺伝子発見物語」は、この本の影響を色濃く受けています。

041【がん遺伝子発見物語(前編)「50年早く行き過ぎた男」】がん(その7) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

042【がん遺伝子発見物語(後編)「内なる敵か!? がん原遺伝子の発見!!」】がん(その8) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

発刊から20年以上も経ち、この分野の研究も飛躍的な進歩を遂げましたが、それでも、この名著を超えるものは、まだ出てきていないのではないでしょうか?

そのことを確かめるため、もう一度読み返してみようとウチ中を探したのですが、残念ながら、とうとう見つかりませんでした。

 

読み返すことはできませんでしたが、それでもこれだけは確信を持って言えます。

生命科学系の大学生はもちろん、生命科学に興味のある高校生にも断然お薦めです。

これにより、きっと、科学の面白さ、醍醐味、社会的意義などに思いを寄せられることでしょう。

もしかすると、その人の人生に大きな影響を与えることになるかも知れません。私がそうだったように。。。

そのようなお子さんをお持ちの方、是非教えてあげて下さい。

 

また、必ずしも生命科学に関心のある方に限らないかもしれません。

がん研究の分野に関わらず、全てのサイエンスにおいて、共通の命題や使命があるはずですから。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

 

044【「俺は飲まないので大丈夫」な~んて思ってません? ねぇ、そこの貴方!】肥満の人は要注意! 肝炎、肝硬変から肝細胞がんへ!「NASH(ナッシュ)」

目次:

    誰も知らなかった!? 飲まなくっても肝炎になる!

    とっても怖い!「異所性脂肪」

    今回の断言:それはもう「悪」そのものです!!

    デブキャラの芸人さんたちはプロ!

    最後に、肥満の方には厳しいことを言いましたが。。。

 

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私、大好きでした。90年代後半のアメリカの刑事ドラマ「刑事ナッシュ」(NASH BRIDGES)。

今は亡き野沢那智さんと青野武さんの掛け合い、もう最高!(笑)もはや芸術の域です😲

そんでもって、個性的な出演者たちの、とてもデカとは思えないファッション(そんなド派手な服で尾行すんなっ、つうの)と、会話がこれまた最高にオシャレ!!

でも、このシリーズ、日本では受けが悪かったのか、どこのツ○ヤさんにも置いてないんですね~。私やカミさんみたいなヘビーな愛好家がおるっちゅうのに。。。

カミさんは「なんでやッ!?」て怒ってました。

「置いてるとこ探して来い!」って、んな無体な(泣)

でも、最近CSNASH観ることができたので、やっとお怒りを鎮めてくれました(笑)

 

今回はNASHについて語ります。

 

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過去ブログで、具体的な病気としては、ガンと糖尿病を取り上げて来ましたが、別の病気のお話もしましょう。

 

    誰も知らなかった!? 飲まなくっても肝炎になる!

 

1970年代後半に、アルコールの多飲歴が無いにも関わらず、アルコール性肝障害によく似た「非アルコール性脂肪性肝疾患」(non-alcoholic fatty liver disease ; NAFLD)の存在が認められました。

さらにその中から、アルコール性肝炎に似た病態に進展する例のあることも見出されました。

1980年に、アメリカのLudwigらは、これを「非アルコール性脂肪性肝炎」(non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と名付けました。

 

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NASHの肝臓組織の所見 

 

当時、アルコール性肝障害と違って、NAFLDは深刻な病態につながるとは考えられておらず、結構、軽く見られていました。

ところがギッチョン、その後、NAFLDの約2割が10年間のうちにNASHを経て肝硬変になり、更にその一部が肝細胞がんに移行することが分かったじゃあ~りませんか!!(チャーリー浜調)

でも、この重大な事実に気づいていたのはごく一部の人だけで、NAFLDNASHは、「肥満人口の急増」を背景に突如出現した病気であるがために、新しい疾患概念として広く認識されるようになるまでには、なな、なんと20年近くもかかったのです。

 

肝硬変とは。

肝臓組織が肝炎ウイルスや長期の多量飲酒などによってダメージを受けると、これを再生・修復しようと肝細胞が頑張ります。

頑張りすぎて逆効果! コラーゲン繊維を作りすぎた結果、組織が線維化を起こして硬くなります。

線維化した肝組織は機能せず、元には戻りません。

 

わが国のNASHの患者数は、100万~300万人と推定されていますが、この数字にはずい分と幅がありますよねぇ。

つまり、正確には把握できていないということですな。

実は、もっと多いかもしれません。

これはエライこっちゃと、日本肝臓学会は、「NASHNAFLDガイド2010」を発表し、肝がん対策におけるNAFLD及びNASHのケアの重要性を訴えました。

 

    とっても怖い!「異所性脂肪」

 

NASH発症のメカニズムについては、よく解っていませんが、「ツーヒット理論」(two hit theory)ちゅうもんが提唱されています。

 

私、この理論の説明、読んでもよう解らんのですが(何で2つのヒットに明確に分けなあかんのかが解らん!)、一応書いておくと、糖尿病、肥満、高脂血症などのインスリン抵抗性(インスリンは出てはいるのだが、効き目が悪い状態)によって異所性脂肪(皮下脂肪、内臓脂肪とは異なる第3の脂肪)が肝臓に蓄積し、脂肪肝となる(どうやら、これが第一のヒットらしいわ)。

ほんでから、炎症性サイトカイン、脂質過酸化/鉄酸化などの酸化ストレスが加わってNASHを引き起こす(これが第二のヒットやてか?)、というものです。

解ります?

 

脂肪肝から肝炎という「段階」を経るというのは解りますが、多段階的な遺伝子変異が必須なガンなんかと違い、原因となる酸化ストレスやインスリン抵抗性やらを明確に2段階に分けられるとは思えへんのですがねぇ~。

こういった慢性疾患の原因と言うのは、多くの要因が複合的に絡み合っているものですが。。。

まっ、えっか!

 

そんな小難しい説明ではなく、簡単に言えば、NAFLDを引き起こすひとつの重要な原因は「慢性炎症」であり、更には「肥満」が、その「慢性炎症」を引き起こす重要なリスクファクターであるということ。

どうです? 分かりやすいでしょ?

 

脂肪の主な貯蔵場所は脂肪細胞からなる脂肪組織ですが、肥満においては、しばしば脂肪組織以外の組織への脂肪の蓄積が見られます。

これがメチャンコ危険な「異所性脂肪」であり、それが肝臓に蓄積した結果がNAFLDであると言えます。

NAFLDは、肥満の他、2型糖尿病を併発することが多く、とっても危険なのです。

 

    今回の断言:それはもう「悪」そのものです!!

 

脂肪を蓄積させた脂肪細胞はロクなことを致しません。

003【健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”その1 】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

022【慢性炎症】「ほとんどすべての病気に共通した本当の原因とは?」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

脂肪細胞が分泌するアディポサイトカインのひとつ「レプチン」は、正常な状態では食欲を抑え、インスリン感受性を高める働きを持つため、肥満や糖尿病の特効薬になるのではないかと期待された時期がありました。(1990年代後半のことだったと思います。記憶が確かなら。。。)

ところがギッチョンチョン、肥満ではこのレプチンの分泌が低下しているだけでなく、何の恨みをかったのか、視床下部におけるレプチンの感受性までが妨げられているようなのです。つまり、レプチンがあっても効かない!と言うことです。

これでは、レプチンを薬として投与する意味がありません。

この「レプチン抵抗性」(レプチンが効かない状態)のために、NASH患者では肝臓の線維化(肝硬変)が促進されるとの論文があります。

そして、肝硬変の行きつく先は? 肝細胞がんです。

 

NASHに対する決定的な治療薬は、残念ながらまだありません。

薬がないから絶望的かと言うとそうではありません。

国と糖尿病学会が「既存の糖尿病治療薬よりも生活習慣の改善の方が有効」と認めたように、まずはNAFLDNASHにならないように、なってからでも、病状の進行を防ぐために、生活習慣を見直すことが重要です。

031【ついに国と糖尿病学会が認めた!「糖尿病治療薬は役に立たない!!」】糖尿病(その2) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

そこで断言します!(今回の断言!)

肥満はあらゆる病気をもたらす病気の中の病気です!

単なる栄養過多の状態では決して御座いません!!

 

何っ!?

肥満で、大飯食らいで、甘いもん好きで、運動嫌いで、大酒飲みやって!?

断言しよう!!(今回の断言2回目!)

それはもう「悪」そのものです!!  暗黒面に堕ちたも同じ!!

アナキンと罵られようが、ダミアン(古っ!)と唾棄されようが、弁解の余地なし!!

(おォッ!奇しくも今日6月6日はダミアンのお誕生日じゃあ~りませんか❤ Happy Birthday, Damian🎶  666 あんなにちっちゃかったけど、いくつになったのかな? キリストはやっつけることができたのかな?(冗談ですよ))

 

    デブキャラの芸人さんたちはプロ!

 

デブキャラの芸人さん達。

彼らは、自らの命を縮めてまでも芸の道を究めんとする求道者です。

でも私たちは、彼らと違って、デブで飯食ってる訳じゃありません。

(実際には、飯食ってデブになっている訳ですが。。。順序逆にすると全然意味違います)(笑)

 

メタボリックシンドロームの予防のためには、過食を控え、適度な運動による肥満防止が何より重要なのです!!

それと、腸内環境を整え、「デブ菌」をのさばらせないことです。それにはやっぱり、食事と運動ですよ~。

 

    最後に

 

今回、肥満の方には厳しい言葉となってしまいましたが、健康寿命の延長と医療費の削減を実現するには、まずは肥満防止からです。

隠れた病気の原因を見つけて予防に努めるのは難しいですが、「万病の元」肥満は誰の目にも見えますから。

隠れ肥満」(痩せの2型糖尿病とか)ってのもあって、これはこれで問題なのですが、まずは見えているところには手を打ちましょう

これが今回、私が申し上げたかったことだとご理解頂ければ幸いです。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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大変励みになります。

 

 

043【そもそも健康とは何か? 病気とは? なぜ病気になるのか?】

今回は、とてつもなくデカい人類永遠のテーマについて、改めて考え直してみましょう。

 

目次:

    「被褐懐玉(ひかつかいぎょく)」

    じゃあ、病気って何?

    ホメオスタシス(恒常性の維持)とは

    3つの系のバランスを保つには?

 

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    「被褐懐玉(ひかつかいぎょく)」

 

単純に考えれば、「病気」とは「健康でない状態」なので、病気の定義について考えるのに、まず健康の定義を調べてみました。

 

「健康」の定義のゴールデン・スタンダードとも言うべき、世界保健機関WHO)の有名な定義によると、「健康とは、完全に、身体的、精神的及び社会的に安寧(あんねい)な状態であることを意味し、単に病気でないとか、虚弱でないということではない」です。

「身体的」と「精神的」というのは理解できますよ。

でもね、この「社会的」というのが私には馴染まない。

 

「社会的」というのは、職場や家庭の環境に恵まれて良好な人間関係が築けているとか、経済的にも不安なく、物質的にも満たされている状態なんかを含むのだそうです。

私に言わせれば「えェ~!? そんなんあり得んし、無意味!!」と断言します!(今回は早くも出ました「本日の断言!」(笑))

 

このWHOの定義は、世界中の貧困にあえぐ多くの人たちをも救わんと言う崇高な理念に基づいているのでしょうが、あまりに崇高過ぎて現実味を感じませんし、返って「絵に描いた餅」化しているように思います。

それに、経済的、物質的に満たされていることが健康の必須条件でしょうか?

 

私が子供だった昭和の時代に比べると、現在では、あまりにも物質的に満たされ過ぎているがために、社会構造の変化のみならず、我々の価値観までをも変えてしまったような気がします。

私が子供のころは、食べたいもの、欲しいものが簡単に手に入った訳ではなく、それなので、我慢することを覚えさせられました。

それだけに、たまに食べた御馳走がこの上なく美味しく、欲しかったオモチャを買ってもらったときには、世界一の幸せ者のような幸福感を感じたものです(笑)

 

でも、今の時代は物質的に満たされ過ぎており、欲しいものが簡単に手に入る分、忍耐力を身に付ける必要がなく、幸福感や感激を感じることも少なくなったような気がします。

これが果たして本当の「健康」と言えるのか?

 

WHOの「健康」の定義。もはや無意味なので変えちゃって下さい(笑)

 

財の無い私ですが、「被褐懐玉(ひかつかいぎょく)」でありたい。

「ボロは着てても心の錦」とチーターが唄った様に。。。

 

    じゃあ、病気って何?

 

病気とは「健康でない状態」。なので、「健康」とは何かを調べようとしたのですが、上述の通り、結局よく分かりません。

少なくとも、ネット上に溢れている「健康」についての記述の多くが、私の考えに馴染みません。

そうなると、世間一般の「健康」の定義に頼らずに、「病気とは何か」を考えざるを得ません。

 

またもやネットで「病気」について調べると、「体や心に生理的な不具合が生じた状態」、簡単にまとめると、だいたいこんなとこでしょうか?

まぁ、当たり前ですね。

でも、生理的な不具合ってすごく曖昧です。

具体的にはどういうことか?って問いに明快に答えるとすれば、なんと言えばいいでしょうか?

 

    ホメオスタシス(恒常性の維持)とは

 

私たちの体には、状態を常に一定に保とうとする仕組みが備わっています。

例えば、夏でも冬でも、体温を一定に持とうとします。

正常な状態では、血液検査の数値なんかは大体一定です。

一例としては、食事の後、急激に血糖値が上がると具合が悪い(食後に急激に血糖値が上昇する「血糖値スパイク」というのが今問題になっています)ので、必要に応じてインスリンが働き、血糖値をできるだけ一定に保とうとします。

逆にエネルギーが不足がちになると、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンを使います。

 

このような体の働きをホメオスタシス(恒常性の維持)」と言います。

「恒」も「常」も、「つね」ですね。

「つね」に「つね」の状態を保つこと、これがホメオスタシスです。

 

では、このホメオスタシスがどのようにして機能するかと言うと、それは私たちの体に備わった、大切な3つの「系」、即ち、「免疫系」、「神経系」、「内分泌系」の働きによります。

 

免疫系については、このブログで何度もお話してきました。

神経系は、交感神経と副交感神経のバランスとリズムによって、体の状態を維持します。

内分泌系とは、言い換えると「ホルモンの系」です。

インスリンもホルモンの一種であり、ホルモンであるインスリンが血糖値の維持に重要なことは、上述した通りです。

 

何らかの原因で、この3つの系のバランスが崩れた時に、「生理的な不具合」が生じます。

 

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この3つの系のバランスが崩れたことによる「生理的な不具合」。これが病気の状態であると私は定義しています。

(注:あくまでもこれは「私の」病気の定義であって、他の人はまた違う定義を持っていることでしょう)

 

このように定義することにより、病気になる理由や原因を理解することができるようになります。

それらが理解できると、今度は、病気を防ぐ工夫や、健康を維持する心がけをすることに役立ちます。

 

    3つの系のバランスを保つには?

 

この3つの系は互いに影響しあって、恒常性を維持しています。

どれかひとつが不調に陥ることで、他の2つの系にも影響が及び、その結果としてホメオスタシスが崩れて「病気」になると言えます。

私は「神経系」と「内分泌系」については詳しくありませんので、免疫系にフォーカスしてお話します。

 

免疫系に影響を及ぼす重要なものに細菌叢があります。

この細菌叢には、腸内細菌叢はもちろん、口腔内細菌叢や皮膚細菌叢なども含みます。

この細菌叢と免疫系も互いに影響し合ってバランスを保っています。

どちらかが不調になると、もう一方にも影響を与えます。

さらに、免疫系や細菌叢の不調は、様々な病気の原因となる慢性炎症を引き起こし、さらに慢性炎症が免疫系と細菌叢のバランスを崩すという悪循環に陥ります。

 

細菌叢の大切さ、慢性炎症の恐ろしさ、そして免疫系の調子を保つ具体的な方法については、過去ブログで何度も繰り返しお話してきましたので、ここでは控えます。

 

神経系のバランスとリズムを保つには、規則正しい生活、質の高い休息、ストレスマネジメントが重要です。

 

内分泌系については、私はよく分かりません。

成書などをご参照ください。

 

この3つの系のバランスの維持に重要で、効果の高いのが「運動」です。

近年、このことを示す科学的根拠が多く得られています。

 

この3つの系のどこからでも身体の不調を来たし、ホメオスタシスが破たんして、病気になり得るのだということを覚えておいて頂ければ、皆さんの健康維持のお役に立つと思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外【がん遺伝子発見物語(番外編)】がん原遺伝子くんの言い分「ボクはガンを引き起こす遺伝子じゃない!!」

【041】、【042】と2回にわたってお送りした「がん遺伝子発見物語」は、大変ご好評を頂き、私も驚いています。

お読み頂いた皆様、本当にありがとう御座います。

 

これに気を良くして、「がん遺伝子発見物語」の「番外編」をお送りします。

今回もよろしくお願いします。

 

目次:

①    「がん原遺伝子」というネーミングはへんちくりん

②    がん研究に飛躍的な発展をもたらした、がん原遺伝子の発見

③    研究者たちは「がん原遺伝子」と名付けてしまったことを後悔している?

 

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①    「がん原遺伝子」というネーミングはへんちくりん

 

2回にわたってお送りした「がん遺伝子発見物語」。

041【がん遺伝子発見物語(前編)「50年早く行き過ぎた男」】がん(その7) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

042【がん遺伝子発見物語(後編)「内なる敵か!? がん原遺伝子の発見!!」】がん(その8) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

また、それ以前の記事でも、ガンになる仕組みとして、がん原遺伝子とがん抑制遺伝子の変異・異常が大きく関与していることをお話してきました。

034【どのようにして細胞に遺伝子の変異が蓄積するのか?】がん(その2) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

多くのがん細胞で、「がん原遺伝子」、「がん抑制遺伝子」、「DNA修復遺伝子」に変異があります。

これらの遺伝子の機能異常によりガンが引き起こされることに疑いの余地はありません。

 

それにしても「がん原遺伝子」と言うのはおかしなネーミングです。

元々は細胞増殖の制御に関わる「まともな」遺伝子です。

なのに、本来の機能を表現した名前ではなく、ガンとの関連を強く示唆するような名前になっていることに、私は昔から違和感を覚えてきました。

 

②    がん研究に飛躍的な発展をもたらした、がん原遺伝子の発見

 

「がん遺伝子発見物語」をお読み下さった読者の方は、がん遺伝子とがん原遺伝子発見の経緯についてはご存知ですね。

src遺伝子は、まさにガンを引き起こす遺伝子としてラウス肉腫ウイルスから発見されました。

「がん遺伝子」と名付けられて当然です。

 

しかし、がん原遺伝子は、当時はまだどんな働きがあるのかも分からず、ただ単に、がん遺伝子であるsrcに似た遺伝子として発見されただけです。(「だけ」なんて言うと、ビショップ先生とヴァ―マス先生に怒られますが。。。)

で、後になって、やはりビショップとヴァーマスが、これが変異するとがん遺伝子に豹変するのだと解明したのです。

なので、がん遺伝子(oncogene)の原型(プロトタイプ)であるとして、がん原遺伝子(proto-oncogene)と名付けられた、というか、話の流れ的に、発見の経緯的に、そう名付けざるを得なかったのですね。

ちなみに名付け親はビショップです。

 

もっと、遺伝子の機能とかが解ってから名付けていれば、こんなへんちくりんな名前じゃなく、その機能に見合ったふさわしい名前を得たはずです。

可哀そうながん原遺伝子くん。

 

さて、「だけ」なんて無礼なことを言ってしまいましたが、ビショップとヴァーマスの業績は、ガンが遺伝子の異常による病気であることを決定づけ、発がんメカニズムへの深い理解と、それらの知見に基づいた新たな診断方法、新たな治療薬の開発につながりました。

がんの分子標的薬などは、まさにこのような多くの科学的な知見の積み重ねがあってこそ生まれてきたものです。

これらのことは全て、ビショップとヴァーマスの業績があったればこそです。

 

ビショップは、自身の業績についてこう評しています。

「がん解明に向けて、人類はついに確かな手掛かりを得ました。この発見を糸口として、がんという致命的な病気の秘密もいずれ明らかにされるでしょう。(中略)がん征服はもはや夢物語ではありません。生物医学に30年もたずさわって来て、初めてそう信じるに至りました」

 

③    研究者たちは「がん原遺伝子」と名付けてしまったことを後悔している?

 

「名は体を表す」と言いますが、「がん原遺伝子」という呼び名は如何にも誤解を生みます。

全然、体を表していません。

 

おかげで私は、がん原遺伝子の説明をするときに、いちいち、「いや、別にこの遺伝子がガンを引き起こすわけではありませんよ。本来の機能は、、、」と、がん原遺伝子くんの弁護から始めるのが常です。

正直、めんどくさいです。

名付けた研究者たちも、きっと同じ思いをしてきたはずです。

「いちいちめんどくさい。別の名前にすりゃあよかった」と(笑)

 

実際、研究者たちも「がん原遺伝子」と言う言葉を使うことはほとんどありません。(少なくとも私はほとんど聞いたことがありありません)

なんと、日本語版ウィキペディアには「がん原遺伝子」という項目はありません。

生物学史上の重大発見にもかかわらずです!

ウィキでは、「がん遺伝子」の項目の中で、がん遺伝子について説明するために、必要に迫られて「がん原遺伝子」について触れているみたいな体(てい)です。

(しかも間違ってるし。。。)

がん遺伝子 - Wikipedia

何たる不当な扱い!

 

実際には、多くの研究者が「細胞増殖調節遺伝子」とか、その他、より本来の機能を表すような呼称を便宜的に使っていることが多いようです。

それはやはり、「がん原遺伝子」と言う名称を使うことで、ひとに誤解を与えることを恐れてのことではないでしょうか。

 

断言します!

もはや「がん原遺伝子」という名称は無意味です!

 

「がん原遺伝子は、がん遺伝子の元になる遺伝子」ではなく、「細胞増殖を制御するある種の遺伝子が変異を起こすことによって、時にがん化の原因になる」という正しい理解を得られるよう、是非、今からでも名前変えちゃって下さい。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外補足【なぜ白血病は「がん」扱いされないのか?】考えると夜も眠れない(笑)

目次:

1.辞典で用語の定義を調べてみたら・・・

2.白血病をガン扱いしない理由とは!?

3.断言:白血病もリンパ腫もガンだよ~ 当たり前だろ~?

 

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若い方はご存じない? 春日三球・照代師匠。

あなた、地下鉄はどこから入れるか分かります?

考えてごらん。夜も眠れないから(笑)

 

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前回の【号外】で、白血病もリンパ腫もガンなのに、あまり「がん」とは呼ばれないようだと言いました。

そして私は、

「癌」+「肉腫」+(血液のがん)=がん(ガン)=悪性腫瘍

と説明しました。

 

いやぁ、「血液のがん」を括弧つきにしておいて正解でしたね。

 

いろいろ調べても、「ガンには癌腫と肉腫の2つに分類される」と書かれていることが多いです(それもお医者さんとかが書いてるんですよ!)。

私は「えッ? 血液ガンはどうしたの!?」って思うのですがねぇ。

なんでシカトすんのか分からん!

 

どう考えても、白血病もリンパ腫も、病理学的にも発症メカニズムの点からも、立派に「がん」です。

中には、白血病・リンパ腫を「液性ガン」という分類にして、ガンとして扱っている人もいますが、「液性ガン」という言葉はあまり一般的ではありませんね。

 

医学会には、昔からの習慣というか、伝統というのか、適切ではないと分かっていながら、皆使い続けてる、みたいなことがよくあります。

白血病も立派なガンでありながら、あまり「がん」という言葉が使われないのは、その辺の習慣的なものによるのではないかと思うのです。

そこで、、、

 

1.辞典で用語の定義を調べてみたら・・・

 

なぜ「がん」は「癌腫」と「肉腫」の二つであって、血液がんはシカトされるのか?

前回の号外の記事を書いた後、ず~っと考えてました。(夜も眠れないほどじゃないですよ)

 

「がん」はすべての悪性腫瘍の総称であって、そのうち、上皮組織にできるものが「癌(腫)」です。

実は昔は、今で言う「がん」、つまり悪性腫瘍全体のことを「癌」と言っていました。

だから、「日本癌学会」なのです。(歴史と伝統ある学会なので、学会名を変えることはないでしょう)

「がん(ガン)」と「癌」の定義が現在のように変わったのは、ごく近年のことです。

このように病気の定義や分類や用語も、必要に応じて見直され、学会などでの議論を経て変更されることがあります。

 

白血病がガンと呼ばれないのには、医学会の歴史的な事情があるように思います。

そこで、埃をかぶった古い医学事典を引っ張り出してきて、調べてみました。

昔の定義はどうだったのかと。。。(ゲホッ、ゲホッ。スゲー埃)

 

南山堂「医学大辞典」(第16版、1978年初発行)によると、「腫瘍」(tumor)とは、「身体の細胞あるいは組織が自律的に過剰増殖したものと定義される」とあります。

「見ろッ! 白血病も細胞の自律的な過剰増殖じゃないかッ! 立派なガンだろッ!」

 

同じく同辞典から、「白血病」とは、「造血組織の原発腫瘍性疾患で、流血中に病的な幼弱血球(白血病細胞)が出現し・・・(後略)」とある。

「見ろ、見ろ!! 『腫瘍性疾患』って書いてあるし!!」

 

このように、昔の定義では白血病腫瘍であり、それが悪性であれば、まぎれもなく「がん」です。

 

じゃぁ、今の定義ではどうなのか? ズバリ最新版だと思われるウェブの「デジタル大辞林」で調べてみました。

「腫瘍」とは、「身体の一部の組織や細胞が、病的に増殖したもの。ほとんどの場合、増殖した細胞が腫れものをつくるが、白血病のように塊をつくらないものもある。筋腫脂肪腫などの良性腫瘍と、癌腫 肉腫などの悪性腫瘍とがある」です。

 

なんと、これによれば、今でも白血病腫瘍であると、明記されているじゃぁあ~りませんか。

 

でも、この短い文章をよく読むと、いろいろと血液がんがガンとは認められない理由がいくつか書き散りばめられていることに気が付きます。

 

まず、「癌腫 肉腫などの悪性腫瘍とがある」とあります。

血液がんは癌腫でも肉腫でもありません。

そのどちらでもない血液がんは、やはりガンではないと示唆するものです。

 

また、腫瘍の重要な特徴として、「ほとんどの場合」と断りながらも、「腫れもの」という言葉があります。

血液がんでは腫れものはできないことが多いですからねぇ。

(リンパ腫では、リンパ節が腫れることがあります)

 

ただし、「癌腫 (がんしゅ) 肉腫など」の「など」を付けているところがミソですねぇ。

癌腫と肉腫以外にも「血液のガンもありますよ」なんて、暗に言ってるつもりかもしれません。

 

つまり、この辞典の文章は、血液がんはガンであるとも捉えられるし、ガンではないようにも、どちらにでも解釈できるような、ダブル・ミーニングな説明です。

 

「こんな曖昧な定義しか示せなくって、『辞典』だとか言ってんじゃねぇ!!」(怒)

 

つまり、どこを見ても、何を調べても、血液のガンは腫瘍と言えるような、言えないような、そんな歯切れの悪い記述しかないのですよねぇ。

なんでこうなの?

 

2.白血病をガン扱いしない理由とは!?

 

その他、ネットで色々と調べました。

その結果、まとめると以下のような背景があって、それがあまり白血病をガン扱いしない事情ではないかとの結論に至ったのです。

 

Tumorは日本語の「腫瘍」に当たる言葉ですが、元々は、ラテン語「腫れたもの」という意味だそうです。

つまり、腫脹した塊ですね。

 

がん遺伝子は英語でoncogene。

Oncoは「がん」。Geneは「遺伝子」。

このonco、ギリシャ語で「塊」を意味するそうです。

 

また、日本では、江戸時代にはガンのことを「いわ」と言いました。

やはり硬いしこりを岩に例えたのでしょう。

 

つまり、昔からガンについては、硬い「塊」を作ることが大きな特徴でした。

このガンに対する「塊」のイメージが、今でも大きな影響を残しているようです。

 

白血病など、血液のガンの多くでは塊を造りません。

この固まらないところに、「がん」と呼ぶのをためらわせるものがあるのではないか?

そういう風に思うに至ったのです。

 

ちなみに、がん細胞が塊を造るかどうかの違いは、「細胞接着因子」という、細胞同士がくっつくために必要なたんぱく質の違いにあります。

固形ガンと血液ガンの最大の違いのひとつはそこです。

 

3.断言:白血病もリンパ腫もガンだよ~ 当たり前だろ~?

 

「がん」にまつわる用語について、いろいろと調べてきましたが、結局のところ、実際かなりテキトーで、ころころ変わりもするものなのですねぇ~。

反対に、医学的におかしいことが分かっていながら、修正せず、昔の定義を踏襲し続けることも多いのですね~。

 

結局、白血病もリンパ腫もガン。断言できます!

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

また、今回の記事は、医師でもない私が素朴に思った疑問について独自に調べた結果です。

お医者様や医療関係者、その他専門家の皆様、もし記述に間違いがありましたら、ご指摘をお願い致します。

また、是非正しい答えをお教え頂きたいと思います。

 

 

 

号外【「がん」と「ガン」と「癌」 違いは??】

プチ知識:

    「がん」と「ガン」と「癌」。違い分かります?

    なんで「蟹」なの?

 

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    「がん」と「ガン」と「癌」。違い分かります?

 

「がん」と「ガン」と「癌」。それから「悪性腫瘍」。

違い分かります?

 

「がん」と「ガン」は同じです。別にどちらを使っても構いません。

私は、ひらがなの方をよく使いますが、「がんががんがん増える」なんて書くと意味分かんないでしょ? そんなときは「ガンがガンガン増える」って書きます。

 

「悪性腫瘍」は? 「がん」と同じと考えて差し支えありません。

「がん(ガン)」は全ての悪性腫瘍の総称です。

なので、良性腫瘍はガンには含まれません。

 

じゃあ「癌」は?

 

「がん」は二つに分けられます。

上皮組織にできる「癌」と骨・神経・筋組織にできる「肉腫」です。

二つ合わせて「がん(ガン)」です。

 

上皮組織にできるガン(癌)とは、内臓にできるガンと考えていいと思います。

肺がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、肝臓がん、エトセトラ、エトセトラ。みんな「癌」です。

 

サインはV」のジュン・サンダースがかかったことで一躍知名度を上げた「骨肉腫」。

当時、私みたいな小学生でも知らない子はいませんでしたね〜(知らない? それは貴方が若いということです(^^))

肉腫なので、「がん」ではありますが、「癌」ではありませんので、お間違えなきよう。

(ジュンが骨肉腫で死んだ時には泣きましたね〜。范文雀さんだったですよ、多分。違う?)

 

あっ、それから、白血病とかリンパ腫とか、「血液のがん」もありますよね? これはどうなの?

なぜだか知りませんが、血液のがんは、あんまり「がん」とは言わないですね。

でも、ガンですよね。

ガンは全ての悪性腫瘍の総称ですから、血液のガンも「がん」のはずですが。。。

 

こんがらがって来ました?

 

つまり、まとめるとこんな感じかな?

癌+肉腫+(血液のガン)=がん(ガン)=悪性腫瘍

 

あっ、それから「悪性新生物」なんて言葉もありますね。

Malignant neoplasiaまたはMalignant neoplasmの訳語ですが、これもイコールがんです。

生命保険なんかではよく使われますね、この言葉。

それから厚労省の統計データでもこの用語が使われていますが、他ではあんまり見ないですね〜。

実際、言いにくいし、使いにくいですよね。

業界用語のようなものでしょうか?

 

と言うことなので、「国立癌センター」というのはなくって、「国立がんセンター」といいます。

だって、「癌センター」だったら、「ウチは肉腫や白血病はお断り」と門前払いを食わされます(笑)

 

でも、「日本癌学会」は「日本がん学会」ではないのですね。

これには歴史ある当学会の事情があるようです。

あえて変ないことで、歴史の重みと威厳を感じさせます。

「日本がん学会」じゃチャラくないですか?(笑)

 

あと、お医者さんはカルチ(Carcinoma)とかチューモア(Tumor)とか言いますね。

どちらも論文なんかでよく使われます。

どう違うの⁇

ひとつの論文の中で、時にcancerと言ったり、時にtumorと書いたり、Carcinomaを使ったり、一体どう使い分けてるのか分かんないことも多いです。

かく言う私も、「ここはcancerだろ」、「ここは絶対tumorだ」ってな具合に書き分けてましたが、別に確たる根拠も理由も御座いません。

つまり、3つともほとんど同義だと思います。(違う?)

 

まあ、こんな風に、みんな結構テキトーですよ。

 

だいたい、医学用語として、「がん」に関わるこれらの言葉の定義は、そんなに厳密ではありません。

 

とりあえず、「がん(ガン)」と書いておけば、間違いないですね。

 

それから、テレビドラマ「仁」では、乳がんのことを「ちちのいわ」と言ってました。

ネットで調べたら、「乳岩」転じて「乳癌」になったとか。

なるほどねぇ~~。

 

    なんで「蟹」なの?

 

ガンは英語でCancer、ドイツ語でKrebs。どちらもカニです。

なんでカニなのか? 私、知りません。

ネットで調べたら、ガンを最初にカニに例えたのは、古代ギリシャの医学の祖、ヒポクラテスだとか。。。

で、なんでカニなの、ヒポちゃん?

 

以前、日本癌学会のロゴマークには、リアルな蟹の絵があしらわれていました。

たぶん、ワタリガニです。ちがう?

どうも最近、ロゴマーク変わったようです。

新しいロゴマーク、やはりカニのハサミと蟹座をモチーフにしているそうですが、知らなければピンときませんね。

 

日本癌学会 ロゴマーク(サンプル)

日本癌学会のHPから拝借 ニュー・シンボル・ロゴマーク

 

前のロゴマークの方が歴史と伝統と権威が感じられてよかったです(^^)

 

以上、ガンの用語にまつわるプチ知識でした。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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