Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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017【自己免疫疾患と制御性T細胞】

1.「自己免疫疾患」って?

2.制御性T細胞(Treg; ティーレグ)って?

3.Tregの働き

4.病気と免疫とβグルカン

 

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1.「自己免疫疾患」って?

 

免疫は本来、異物を認識し、排除するシステムとして定義されました。

だから、免疫をパワーアップするβグルカンが、がんや感染症に効果があるというのは理解できると思います。

 

でも、βグルカンは、リウマチなどの自己免疫疾患にも有効であることが示されています。

異常な免疫反応による自己免疫疾患に、免疫力を増強するβグルカンが効くなんて、すっごく矛盾しているように思えますね。

 

自己と非自己(異物)の認識。これが免疫系の基本です。

本来、免疫系は自己を攻撃しないものです。

 

でも、何らかの原因で免疫系の制御が狂うと、自己を攻撃する免疫細胞が活動しはじめます。

それが「自己免疫疾患」です。

 

主な自己免疫疾患

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代表的な自己免疫疾患は、なんと言っても関節リウマチでしょう。

リウマチでは、攻撃型のT細胞という免疫細胞が自分の関節の滑膜(かつまく)という組織を攻撃し、炎症、変形する病気です。

 

リウマチに次いで患者が多いのがSLE(全身性エリテマトーデス)で、これはいろんな臓器が攻撃を受けます。

 

若い男性に多いクローン病では、口から肛門までの消化器がやられるため、激しい下痢で、常にトイレの場所をチェックしていないと、外出もままならないと言います。

 

ゴルゴ13の持病として有名なギラン・バレー症候群は運動神経が侵されるため、運動機能に障害が出ます。

 

以前は、なぜ自分の組織や細胞を攻撃する免疫細胞が存在するのか謎でした。

しかし、1995年に坂口志文(しもん)先生が、免疫を抑える機能を持つ制御性T細胞(Treg; ティーレグ)を発見されてから、なぞが解明されました。

 

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 坂口志文 大阪大学教授

 

2.制御性T細胞(Treg)って?

 

下の図を見て下さい。

(少し難しい話になりますので、2は飛ばして読んで下さっても結構です。免疫反応を抑える細胞である「Treg」という言葉だけは覚えて下さいね)

 

 

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以下が坂口先生らが行った画期的な実験です。

 

普通のマウスからT細胞という種類のリンパ球を採ってきます。

このリンパ球をヌードマウスという毛のないマウスに移植します。

その結果どうなるか?

何も起こりません。(なんじゃ、そりゃ?)

 

次に、普通のマウスのT細胞全体から、ある種類のT細胞を取り除きます。

そして、除いた後のT細胞をヌードマウスに移植します。

そうすると、様々な自己免疫疾患を発症するのです。

T細胞の提供元のマウスは健康なマウスです。なのになぜ自己免疫疾患に??

 

ヌードマウス(文字通り、毛のない裸のマウス)というのは、免疫系に異常のあるマウスで、T細胞を持っていません。

T細胞がないので、自己反応性T細胞による自己免疫疾患には絶対ならないのです。

なのになぜ、健康なマウスのT細胞を移植することで自己免疫疾患になるのか?

 

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ヌードマウスは胸腺がないので、成熟T細胞が育たない。成熟T細胞がないので、抗体も作れない。

 

初めの実験では、全部のT細胞を移植して、何も起きませんでした。

次の実験で、ある種のT細胞を除いたところ、自己免疫疾患になりました。

このことから導き出される結論はただひとつ。

「健康なマウスも、元々自己反応性T細胞を持っている。その中には、自己反応性T細胞の働きを止めるある種のT細胞がある。だから、そのT細胞を除くと、自己反応性T細胞を抑えられなくなり、移植されたヌードマウスは自己免疫疾患になる」です。

 

今では、誰でも(健康な人でも)自己反応性の免疫細胞を持っていることが分かっています。

それでも自己免疫疾患にならないのは、Tregが自己反応性免疫細胞の働きを抑えてくれているからです。

自己免疫疾患の人は、何らかの理由でTregが上手く機能していないのですね。

 

坂口先生はTreg発見の功績で、毎年ノーベル賞候補になっていますね。

それだけ重大な発見でした。

早く受賞して頂きたいです。

 

3.Tregの働き

 

Tregは必要な時に働いて、好ましくない免疫反応を抑えます。

 

好ましくない免疫反応といえば、アレルギー性疾患なんかもそうです。

アレルギー性疾患は、花粉とか、食材なら蕎麦とかピーナッツとか、本来は無害なため、免疫系が反応してはいけないものにまで過剰反応することによります。

Tregがしっかり働いてくれると、この過剰な反応を抑えてくれるので、アレルギーにならずに済みます。

実際、アレルギー疾患の人は、Tregの数が少ないことが知られています。

 

Tregは、驚いたところでは、流産の抑制に働いています。

 

受精卵や胎児は母体にとって異物です(DNAの半分は父親のものなのですから)。

ですので、免疫系がこれを排除しようとします。

これでは流産してしまいます。

そこで、Tregが免疫系による受精卵や胎児への攻撃をブロックしているのです。

実際、妊娠動物ではTregの数が増え、多くが子宮に集まっていることが分かっています。

 

不妊治療をしても、なかなか妊娠しないとか、何度も流産しているとかいう女性がおられますが、このような女性の中にはTregの働きの悪い人がいるのかも知れません。

 

長い間、不妊治療を受けているのに全然妊娠しない。

精子の機能や排卵に問題はなく、お医者さんにも原因が解らない。

そのような人の中には、実はちゃんと受精はしているのに、免疫系の攻撃によって、本人も気が付かない間に流産していたという例があるのかもせれません。

 

簡単かつ効率よくTregを増やす方法が確立すれば、不妊で悩む多くの女性への福音になるかもしれません。

いや、不妊だけでなく、自己免疫疾患やアレルギー性疾患も同じです。

 

実は、比較的簡単にTregの働きを良くし、実際に難病の自己免疫疾患で高い効果を上げている方法があります。

それは「便移植」です。

ウンコを移植だって??(いま話題ですよー)

いずれお話します。

 

あっ、それから、もっと簡単な方法は「βグルカン」です。

 

4.病気と免疫とβグルカン

 

現在では、「免疫」なしでは病気について考えることはできません。

糖尿病や動脈硬化など、「免疫と関係ないんじゃないの?」なんていう病気も、実は免疫と切り離して考えることはできないのです。

 

がんや感染症、自己免疫疾患やアレルギー、生活習慣病、それから心の病気に至るまで、これらは互いに全然違う病気のように思えて、実は根幹には「免疫系の制御の破たん」という問題が潜んでいます。

 

少しでも健康問題に関心のある方は、是非、日頃から免疫の情報をチェックしてみて下さい。

 

かつてβグルカンは、免疫力をパワーアップする「免疫賦活剤」だと考えられていましたが、免疫を強めるだけではない作用のあることが分かってきて、むしろ「免疫調整剤」と言った方が正確でしょう。

「調整剤」と捉えることによって、なぜβグルカンが様々な疾患に対して効果を示すのかが理解できるようになります。

 

今回も最後まで読み下さり、ありがとう御座います。

 

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