Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

健康 病気 免疫 遺伝子 腸内細菌 がん 生活習慣病 感染症

034【どのようにして細胞に遺伝子の変異が蓄積するのか?】がん(その2)

歩くと、昨日肉離れした左太ももの前が多少痛いです!

頑張れ!俺の免疫細胞! 早く修復してくれよ!!

 

目次:

① 遺伝子異常を引き起こす原因!「赤い稲妻」の正体

② どのような遺伝子に異常が起きればガンになるのか?

③ 遺伝子の変異を修復する遺伝子の変異だって???

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

前回の本ブログ【033】では、細胞のガン化につながるような自然のレベルを超えた遺伝子異常が、どのような原因で、どういう遺伝子に起きるのか?について疑問を投げかけたところで話を終えました。

033【そもそもガンってどういう病気?】がん(その1) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

今回は、そこから始めます。

 

① 遺伝子異常を引き起こす原因!「赤い稲妻」の正体

 

前回の話で、「がん化の多段階仮説」の図の中で示された「赤い稲妻」が細胞に遺伝子異常を引き起こす原因のようだと示唆しました。

この赤い稲妻の正体とは何でしょうか?

 

細胞に遺伝子異常を引き起こす原因は、我々の日常生活の中に溢れています。

しかし、それが何かを知れば、それらを可能な限り遠ざけることができます。

 

赤い稲妻は、大きく3つに分けられます。

ひとつずつお話します。

 

・物理的要因

細胞に遺伝子異常を引き起こす原因、皆さんもある程度ご存じだと思います。

物理的な原因としては、放射線や紫外線が挙げられます。

ヒロシマナガサキチェルノブイリ、フクシマなどは不幸な出来事ではありましたが、放射線が人間に及ぼす影響についての知見を与えました。

強い紫外線は皮膚がんの原因となることが知られています。

これら放射線や紫外線は高いエネルギーを持った電磁波です。

細胞のDNAがこれらの高エネルギーを受けることで塩基の構造が変化し、その結果、塩基配列が変異することが分かっています。

特に、4つの塩基のうちのシトシン(C)は化学的に不安定で、高エネルギーを受けることで、チミン(T)に変化しやすいことが知られています。

ですから、がん細胞においてCからTへの突然変異というのは、比較的多く見られます。

 

・化学的要因

化学物質の影響によって誘導される遺伝子の異常です。

発がん性物質」と言えば、どなたでも分かりますね。

アスベストやタバコのタールに含まれる何十種類のも発がん性物質は、いずれも肺に吸入するものですね。

わが国で承認されている食品添加物にも、「変異原性」といって、強い遺伝子変異誘導性を持っていることが細胞の実験や動物実験によって示されている例が少なくありません。

 

・生物学的要因

細菌やウイルスなどの感染により、細菌やウイルスの遺伝子の働きを細胞が受けて、増殖制御が破綻し、がん化につながることがあります。

細菌では胃がんの原因となるピロリ菌、ウイルスであれば、肝臓がんを引き起こすB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルス、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスなど、他にもたくさんあります。

これらの感染症の多くは検査で分かります。検査で感染していることが分かれば、色々と対策が可能です。

99%以上の胃がんの原因となっているピロリ菌は除菌が可能です。

肝炎ウイルスの感染が分かった場合は、予防対策を行ったり、発症後には(高価ですが)治療薬があります。最新の治療法により、場合によりますが、肝炎ウイルスを排除して完治も可能となってきました。

 

以上の3つが「赤い稲妻」の正体ですが、これらは全て外部要因です。

内部要因、つまり自分の体の中に原因があり、「老化」(免疫力を維持して若さを保ちましょう)と親から受け継いだ「先天的遺伝子異常」(これは致し方ないですが、遺伝子検査で分かる場合もあります)とがそれです。

 

② どのような遺伝子に異常が起きればガンになるのか?

 

がんの原因となる遺伝子の異常というのは、非常にたくさんあります。

しかしながら、その多くは、細胞の増殖の制御に関わるもので、「がん原遺伝子」「がん抑制遺伝子」とがあります。

それから、遺伝子に異常が起きた際にこれを修復する、「DNA修復遺伝子」というのがあります。

 

がん原遺伝子とがん抑制遺伝子のお話から。

簡単に言えば、がん原遺伝子とは、細胞を増殖させる方向に働く遺伝子です。

そして、がん抑制遺伝子というのは、細胞増殖を抑制する働きがあります。

こう言えば感のいい読者の方はもうお気づきでしょう。

がん原遺伝子は、細胞増殖の「アクセル」役であり、がん抑制遺伝子は「ブレーキ」役であると例えられます。

免疫にもアクセルとブレークがありました。

細胞増殖もアクセルとブレーキとで制御している訳です。

 

f:id:takyamamoto:20170515144753p:plain

細胞増殖を制御するアクセルとブレーキ

 

更に感の鋭い方は、このアクセルとブレーキが異常を起こすことで、細胞がガン化するのだということに気付かれるでしょう。

 

通常は、細胞ではアクセルであるがん原遺伝子とブレーキであるがん抑制遺伝子とが絶妙に制御されています。

車の運転では、普通アクセルとブレーキを同時に踏むことはないと思いますが、細胞の増殖制御では、同時に両方のペダルの踏み込み具合を調節しています。

それで、増殖すべき時には増殖し、増殖を止めるべきときには止めることができます。

 

しかし、アクセルであるがん原遺伝子にある種の異常が起きると、アクセルを目いっぱい踏み込んだ状態になります。つまり、エンジンはレッドゾーン!フル回転です。

同時にブレーキであるがん抑制遺伝子に異常が起きると、ブレーキが働かなくなります。

皆さん、ご自分が車を運転しているところを想像してみて下さい。

アクセルが踏み込まれた状態で戻らなくなり、ブレーキも全く効かなくなったら、どれほど恐ろしいか?

 

f:id:takyamamoto:20170515144859p:plain

これが細胞のがん化状態で、全く制御できていない暴走状態です。

 

 

③ 遺伝子の変異を修復する遺伝子の変異だって???

 

実際にガン患者さんから切り取ってきたガン細胞の遺伝子を調べてみると、多くのがん原遺伝子やがん抑制遺伝子に変異が見つかります。

加えて変異の多いのが「DNA修復遺伝子」です。

その名の通り、DNA修復遺伝子は、細胞のガン化を防ぐために遺伝子の変異を修復する働きを持つ遺伝子です。

がん原遺伝子が自動車のアクセルで、がん抑制遺伝子がブレーキなら、DNA修復遺伝子は「修理工」というところです。

アクセルやブレークが壊れても、修理工が治してくれるので、暴走しなくて済んでいます。

ところが、進んだガン細胞では、この修理工が壊れてしまっていることが結構あるのです。

 

壊れた遺伝子を修復する遺伝子が壊れたら、だれがそれを修復するのか??

DNA修復遺伝子に変異が起きると、様々な遺伝子にさらに多くの変異が入りやすくなり、ガン化のスピードは早まります。

 

がん抑制遺伝子の話に戻りましょう。

もっとも有名ながん抑制遺伝子にp53遺伝子」というのがあります。

p53は常に細胞のDNAに異常が無いかパトロールして見張っており、異常を見つけた場合、すぐさま先述のDNA修復遺伝子に修復命令を出すのが、このp53の役目です。

また、DNAの異常を修復しきれなかった場合には、遺伝子異常を持った細胞は死なねばなりません。

つまり、「アポトーシス」という細胞の自殺を実行するのですが、そのアポトーシスの実行命令を出すのもp53です。

ですから、p53は細胞のガン化防衛において非常に重要な役割を担っており、そのため「ゲノム(全遺伝子)の守護者」と呼ばれます。

 

ところがなんと、多くのガン患者のガン細胞で、この守護者に異常をきたしていることが分かっています。

守護者が倒されては、誰が細胞をガン化から守るのか!?

p53は細胞のガン化防衛の「アキレス腱」と言えます。

 

このように、ガン細胞では様々な遺伝子に異常が起きている訳ですが、どのような遺伝子にどのような異常が起きているのかを調べることによって、ガンの性質を調べたり、効果的な薬の選定や、薬の副作用の出やすさの予測、再発率の予測、予後(どれだけ延命できるか)の予測などを可能にしようという研究が活発に行われています。

 

まだまだ実用化には至っていませんが、「ガンが遺伝子の異常によって起こる病気なら、その遺伝子の異常を調べてガンを治す!」という時代がいずれ来るかもしれません。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

 

次回予告:

前回と今回お話したのは、後天的な原因によるガンです。

ガンは遺伝子の異常によって起こる病気なのですから、遺伝性のガン、つまり先天的なガンというのがあります。

次回は遺伝するガン、「家族性腫瘍」について、先ごろブラピと離婚成立したアンジェリーナ・ジョリーの逸話などを交えてお話しようと思います。

例によって、気まぐれで内容が変わることがありますが、ご了承下さい。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

033【そもそもガンってどういう病気?】がん(その1)

目次:

① そもそもガンってどういう病気なの?

② 【ガン化の多段階仮説】ガンは遺伝子の異常の積み重ねによって起きる病気

③ 遺伝子に異常を引き起こす原因とは?

 

今日は日曜日。

少年野球の練習に参加して、子どもたちと一緒にノックを受けました。

老体にムチ打って、浅い打球に猛チャージしたところ、左の太ももで「ピチッ」って感覚が!!

アッ、これは間違いなく(軽度の)肉離れダッ!

まぁ幸い、歩くには大した支障はありませんが。。。

皆さん、運動に無理は禁物。年齢と体力を考えて。ムチャは禁物です(笑)

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

今や2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬ時代。

ガンは我々にとって、風邪と同じくらい身近な病気と言えるかもしれません。

(別に親近感は覚えませんがね。。。)

 

自分はガンにならなくても、いつ近しい人がガンにならないとも限りません。

とにかく、誰もがガンについて無関心でいられるはずがありません。

少しでもガンのことについて知っておくことは、決して損にはなりません。

 

というわけで、私はガンについて語らせたら何時間でも話せるので、何回シリーズになるのやら自分でも分からないくらいですが。。。

読書の皆様の反応がよろしければ10回くらいは続けます。

ですので、何卒応援、よろしくお願いします。

頑張りますよォ(笑)

 

① そもそもガンってどういう病気なの?

 

本来、絶妙に増殖・分裂が制御されているはずの私たちの体の細胞。

それが暴走し、無秩序・無制限に増殖して止まらないのがガンです。

なんでこんなことが起きるのでしょうか?

とにかく、細胞に何らかの異常が起こらない限り、このようなことは起こるはずもありませんよね。

では、具体的にはどのような異常なんでしょうか?

 

答えは、ガンは、遺伝子の異常が積み重なったことで引き起こされる、細胞の増殖が制御を失った状態の病気です。

そう、ガンとは遺伝子の異常によって引き起こされる病気です。

 

下の図を見て下さい。

「がん化の多段階仮設」というのがあって、ガンというのは、ある日突然発病するものではなくって、10年とか15年とか、長い年月をかけて、徐々に細胞の遺伝子に異常が積み重なっていき、徐々に成長し、診断で見つかったとき、あたかも突然にガン細胞が出現したかのように見えるだけです。

 

f:id:takyamamoto:20170514185613p:plain

図.ガン化の多段階仮説

 

② ガンは遺伝子の異常の積み重ねによって起きる病気

 

ガンとは、遺伝子の異常による病気です。

それもいくつもの遺伝子の異常が積み重なった結果です。

 

本ブログ【012】で、誰でも(健康な人でも)1日に5000個ものガン細胞ができていると言いました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

なのにガンにならないのは、免疫系がこれらの異常な細胞をすべて摘み取ってくれているからです。

ところが、免疫系が不調で、このような細胞を一つでも見逃してしまうと、この1個の異常な細胞が「ガン」の芽になるのです。

この細胞に、二つ目、三つ目という風に遺伝子の異常が積み重なっていくことで、だんだんと立派な、名実ともに「ガン」に成長していくのです。

もしかしたら今、あなたの体にも、このようなガンの芽がないと誰が言えるでしょうか?

あっ、もちろん私の体にも、です。

ですから、日頃から免疫力を高めておくことが重要なのです。

 

ガンの芽が発生してから、名実ともに立派なガンに成長していく過程を説明すると、

1.免疫回避(免疫系からの攻撃を逃れるようになる)

2.不死化(細胞が死ななくなる)

3.無秩序・無制限の増殖能の獲得(細胞が死なないだけでなく、増え続け、止められなくなる)

4.組織への浸潤能力の獲得(細胞が本来いるべき組織からはみ出し、入ってはいけない組織に侵入する)

5.さらに異常が加わることで、転移能を獲得する(その場を離れ、血流やリンパの流れに乗って、遠くの場所にたどり着き、そこに定着して増え続ける)

となります。

 

上の1から3の過程に、10年とか15年もの時間を要します。

そして、大体4の段階で自覚症状がないまま検診で見つかったり、自覚症状が出て、受診して診断されたりするのですね。

なかには5の段階、すなわち転移した状態で発見される人もいるのです。

 

③ 遺伝子に異常を引き起こす原因とは?

 

では、なぜ遺伝子に異常が起きるのでしょうか?

本ブログ【012】では、毎秒毎秒、何百万個もの細胞が分裂を繰り返しており、そのために猛烈なスピードでDNAがコピーされているため、どうしても遺伝子のコピーミスが起きるのだと言いました。

しかし、このような自然なコピーミスによる遺伝子の異常を修復する機能を私たちの体は備えています

この自然なレベルのコピーミスを超えた遺伝子の異常が起きたとき、私たちの体の防御機能の限界を超えるのです。

このような時が危険なのです。

 

では、「自然なレベルを超えた遺伝子の異常」とは、どのような原因でどのように起きるのでしょうか?

その原因は、結構、日常生活の中に溢れているのですね。

 

上の「がん化の多段階仮説」の図を再度見て下さい。

なんか、細胞が赤い稲妻に打たれてますね?

つまり、この稲妻に打たれることで、遺伝子に異常が起きるような。。。そんな感じがします。

では、この「赤い稲妻」の正体とは何なのか?

巨人の松本 匡史?

いや、それは「青い」稲妻っしょッ!

 

もとゑッ! 

「遺伝子の異常の積み重なりでガンになる」ということですが、では実際、どういう遺伝子に、どういう異常が起きると、どういう訳でガンになるというのでしょうか?

 

遺伝子に自然な状態を超えた異常を起こす原因、そしてどういう遺伝子にどういう異常が起きるとがんになるのか?

 

この続きは次回。

たぶん明日お届けかな?。

こうご期待!!

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外【「慢性炎症」がNHK「ガッテン!」で特集されました】

本ブログで「あらゆる病気の原因」として何度も強調している「慢性炎症」

私は見そびれましたが、一昨日(5月10日)、NHKの「ガッテン!」で取り上げられました。

ご覧になった方がいらっしゃったら、感想をコメントして頂けますと幸いです。

 

www9.nhk.or.jp

 

「慢性炎症」の重要性が一般に広く知られるようになるのは喜ばしいことです。

 

不適切な生活習慣⇒肥満⇒免疫系の破たん⇒慢性炎症⇒あらゆる生活習慣病⇒闘病生活⇒死

 

この構図への認識が定着するようになれば、医療費削減の端緒になるように思います。

もっともっと喧伝して頂きたいですね。

 

 

032【がんより悲惨!】糖尿病(その3)

目次:

① 実体験!がんかも知れないと医者から言われた

② どんなふうにして糖尿病になっていくのか

③ 本当に恐ろしい糖尿病の合併症

④ 人間の尊厳すら奪う糖尿病患者の生活

⑤ 糖尿病になったら

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

単に「糖尿病」といいますが、ここでいう「糖尿病」とは「2型糖尿病」のことです。

1型糖尿病は自己免疫反応が原因の一つとしてあり、生活習慣とは関係がありません。

いわゆる生活習慣病としての糖尿病とは、2型糖尿病のことです。

以下は全て2型糖尿病のお話です。

 

① 実体験!がんかも知れないと医者から言われた

 

かつて、がんは不治の病であり、がんの宣告は死の宣告、医者も本人には告知しないことが当たり前でした。

今では、患者本人が医師と相談しながら、どのようにがんを治療していくのかを決めます。

時代は変わったものです。

 

今では決して不治の病ではなくなりましたが、それでも「がんです」と言われると、誰でも不安にさいなまれるのではないでしょうか?

 

私も経験がありますので、よく分かります。

細胞検査で「未分化の異形細胞が観られる」と言われた時には、死を覚悟しました。白血病の疑いですね。

ゴールデンウィーク直前のことで、確認のための再検査の結果はGWが明けるまで出ません。検査会社もお休みですからねぇ。

それまでの2週間近くもの間、何をしても気が晴れず、いや何かしようという気力も出ず、世の不幸を全て一人でしょい込んだような、何と表現していいのか分からない気持ちを味わいました。

その時、一人目の子供が家内のお腹にいるときで、3、4か月後に出産予定でした。

この子は父親の顔も知らず、テテなし子になるのかと思うと不びんでしたね。

(あっ、ちなみに彼女は今二十歳で、ドイツに留学中です)

結局、がんではなかったのですが、死と生について考える非常に貴重な経験でした。

 

話を戻します。

私は「かも知れない」と言われただけでも、がんに恐怖しました。

ところがどうも、「糖尿病です」と言われても、かなり多くの人がそんなに危機感を持たないというか、死の恐怖を身近に感じていないようです。

どんな過酷な病苦が自分に訪れることになるのかも知らずに。。。

知らないというのは恐ろしいことです。

 

② どんなふうにして糖尿病になっていくのか

 

糖尿病のもっとも大きな原因は「過食」や「運動不足」が引き起こす「慢性炎症」です。

過食で肥満の人の脂肪細胞や免疫細胞からは、悪い物質がたくさん放出され、それが慢性炎症の原因になります。

慢性炎症の状態では、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性になり、血糖値が下がりにくくなります。

血糖値の高い状態が長期に続くと、色々なタンパク質に糖が結合する「糖化反応」が起こります。

この糖化タンパク質が、糖尿病の本当の恐ろしいところである様々な合併症を引き起こすのです。

糖尿病診断の重要な指標であるヘモグロビンA1c。これも糖化タンパク質です。

 

③ 本当に恐ろしい糖尿病の合併症

 

糖尿病はある意味、がんよりも悲惨な病気です。

なぜなら、楽には死なせてくれないからです。

 

糖尿病の3大合併症と呼ばれるのが、「糖尿病神経障害」、「糖尿病網膜症」、「糖尿病腎症」です。

 

■糖尿病神経障害

全身をめぐる糖化タンパクが、全身の血管と神経をボロボロにし、全身に様々な障害を生じさせます。

大体、一番早く出るのが脚の障害です。

神経がマヒし、血の巡りが悪いため、ちょっとの傷でも治りが悪く、慢性の潰瘍になります。

重度になると、足の先の方から腐り始めます。壊疽(えそ)ですね。

敗血症になると生命に危険が及びます。それを防ぐために、脚の切断ということになります。

 

■糖尿病網膜症

目の網膜の血管がボロボロになって生じる合併症です。

血管にこぶが出来たり、出血したり、血流が悪くなったりしますが、自覚症状がほとんどなく、本人は危機が迫っていることに気づきません。

で、突然、視力低下や視野狭窄、ひどい時には失明します。

ここまでくると、元に戻すことは困難です。

 

■糖尿病腎症

腎臓で血液中の老廃物を濾過している糸球体の毛細血管の障害によります。

重度になると人工透析が必要になりますが、一旦、人工透析を始めると、まず回復は望めません。

週3回、1回4時間の透析を、死ぬまで続けることになります。

 

その他にも、歯周病は糖尿病の原因となり、糖尿病は歯周病を悪化させ、歯が抜けることになり、流動食のようなものしか食べられなくなります。

 

④ 人間の尊厳すら奪う糖尿病患者の生活

 

脚を失い、視力を失い、歯を失い、自分一人では人工透析に通うことも、食事も、排せつもままなりません。

こうなると、未来に希望はないばかりか、人間としての尊厳まで奪われます。

生き地獄です。

自分もつらいでしょうが、家族も不幸です。

 

ネット上では、身内が糖尿病になった人の悲痛な叫びがたくさん見受けられます。

見も知らない誰かに、ネット上で救いを求める声です。

本当に壮絶です。

糖尿病という病気が、どんな不幸をもたらすのか、ほんの一例に過ぎませんが、是非お読みになることをお勧めします。

oshiete.goo.ne.jp

 

⑤ 糖尿病になったら

 

糖尿病と診断されたら、自覚症状の出る前が勝負です。

食事と運動の改善で、完治とはいかなくとも、ちょっとした美味しい食事やお酒、旅行を楽しんだり、従来通り仕事を続けたり、生活の質を落とすことなく人生を楽しむことはできます

 

私の近しい人に、「薬を飲んでいるから大丈夫」と思っているのか、意思が弱いのか(恐らくその両方)、甘いもの、炭水化物、清涼飲料水、喫煙を全然改善しない人がいました。

奥さんや娘さんが何を言っても、逆切れして全く話を聞いてくれない始末で、奥さんも「何度泣いたか分からない」と言います。

私が説得して、食事療法と運動療法に取り組ませ、βグルカンを飲ませたところ、わずか1ヶ月半でヘモグロビンA1cが7.7%から7.0%に下がったのです。

これは目覚ましい改善です。

私は、「これで油断することなく、検査数値が下がるのを励みにして続けるように。そのうち、次の検査が楽しみになるから」と励ましましたが、ダメでした。

その後すぐに、元の木阿弥です。

あれから約半年、その人がどうなったのか、気が引けて奥さんや娘さんにも聞けないでいます。

 

一方、失明を覚悟したほど進んだ糖尿病から回復した人が言っていましたが、努力した結果が検査数値として目に見えて現れるので、モチベーションが高まるそうです。

もちろん好きなものを我慢しないといけないというストレスはありますが、良くなっていくにつれ、家族の表情も明るくなり、達成感や充実感のようなものも感じるそうです。

そして、何よりも健康の大切さ、ありがたみが身に染みて分かったし、もうあの生活には戻りたくないと言います。

 

実際に回復した人の話には重みがあります。

 

次回予告?:

大人になってからの不適切な生活習慣が原因で、何年もかけて徐々に進行する2型糖尿病に対して、10代とかの若さで、ある日突然発症するのが1型糖尿病です。

次回は1型糖尿病の話をしようかなっ?て思ってますけど、気まぐれで変わるかもしれません。

予告になってませんね(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

私は医師ではありませんので、医学的な誤りがありましたら、是非ご指摘下さい。

勉強させて頂きます。

 

 

031【ついに国と糖尿病学会が認めた!「糖尿病治療薬は役に立たない!!」】糖尿病(その2)

本当の原因にフォーカスしていない薬では、症状は改善しているように見えても、根本的な治療にはなりません。

 

やっと、そのような視点での薬の有効性の見直しが、国の主導で(ここが大事)始まりました。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

ちょっと古いですが、2017年3月2日の日本経済新聞に、「生活習慣指導に規格 糖尿病学会・政府」という見出しの記事が載りました。

www.nikkei.com

 

軽度の糖尿病患者181人を2つのグループに分け、

糖尿病治療薬は服用するけど、生活習慣は改善しないグループ vs 糖尿病治療薬は服用しないけど、生活習慣を改善するグループ

で、半年後にどちらに軍配が上がるか、という試みが行われました。

結果は、薬を飲まなくても、生活習慣の改善を行った方が、ヘモグロビンA1cの改善が高かったのです。

 

今後、経済産業省日本糖尿病学会は、調査対象者を2000人規模に拡大し、データ収集と分析を強化。

さらに来年度からは、生活習慣病の予防指導の「規格」作りに着手し、「データに基づいた」生活習慣病の改善を普及させることで医療費の削減につなげるとのこと。

 

ついつい見逃してしまいそうな、どうってことの無い記事に見えますが、結構、明るいニュースではないかと思うのです。

 

この調査によると、軽度の糖尿病患者に限ってのことですが、糖尿病治療薬は有効ではないことを、なんと糖尿病学会と国が認めたのです。

 

「なんで厚労省じゃなくって、経産省なの?」と思いましたが、確かに厚労省ではこれはやりづらいですね。

 

治療薬について「効果あり」として承認するのは厚労省です。

自分で承認した薬について、後から「やっぱ効果なし」とは、これは言えないでしょうね。

 

経産省には是非、今後もこのような取り組みを進めて頂きたいです。

また、「糖尿病予防には、データに基づいた生活習慣の改善指導が効果がある」という結論も素晴らしいです。

エビデンスベースで医薬品の承認をしているはずの厚労省ではなく、経産省科学的根拠に基づいた客観性を重視する姿勢を打ち出しているところが素晴らしい。

 

しかし、厚労省も頑張ってます。

同じような動きは、抗がん剤についても始まっており、厚生労働省国立がん研究センターは、高齢のがん患者における抗がん剤治療の有効性について改めて調査しています。

体への負担の大きい抗がん剤が、果たして高齢者に有効かどうか?

実はまだ、こんなことすらハッキリ分かっていなくって、そんでもって長年、高齢者に抗がん剤を使ってきたなんて、オドロキません?

 

まだ、調査対象が少なく、結論には至っていませんが、高齢者には抗がん剤治療に延命効果がない」可能性もあるそうです。

今後の調査結果によって、高齢のがん患者治療の在り方を検討し、新たにガイドラインを作成するそうです。

mainichi.jp

 

多くの人から「正しい」と支持されてきたものに対して、最初に「オカシイんじゃない?」と発言するのは勇気がいります。

また、「オカシイ」と言われた方も、それを認めるには勇気がいります。

だから、国が既成事実を変えるのは難しい、と思っていました。

 

国の主導によるこのような取り組みによって、病気を治療する上で本当に大事なことは何なのかということを、広く国民に知らしめることは、国の医療経済の立て直しに対してのみならず、国民の健康寿命の延長に貢献することです。

 

そして、糖尿病をはじめ、多くの生活習慣病が、薬に頼るよりも、自身の意志で治すことができるのだという考え方が広まって欲しいものです。

 

何気ない記事のようでしたが、私には久しぶりにいいニュースでした。

 

今回のお話、糖尿病の話というより、薬と行政についての話になってしまいました。

次回、糖尿病(その3)では、糖尿病が如何に恐ろしく過酷な病気かについてお話します。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

030【「サイレントキラー」と国民医療費】糖尿病(その1)

目次:

① わが国の国民医療費の現状

② わが国の糖尿病患者数の現状

③ 糖尿病は不治の病ではない!!

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

① わが国の国民医療費の現状

 

私がこのブログを始めた最大の目的は、わが国の高騰する国民医療費になんとか歯止めをかけたいとの思いからです。

 

下の図を見て下さい。

2015年度のわが国の国民医療費は41.5兆円です。

そして、毎年1兆円以上のペースで増え続けており、ペースダウンする気配はありません。

 

f:id:takyamamoto:20170509175551p:plain

 

この41.5兆円がどの程度の金額なのか想像つくでしょうか?

フェラーリが何台買えるとかっていう程度の、私の貧困な金銭感覚ではさっぱりピンときませんでしたが、次のように考えると、とてつもない額だと、少しは実感することができました。

 

この41.5兆円を1万円札で積み上げるとどのくらいの高さになるのか?

百万円の厚さが1センチといいます。

それで計算してみました。

41.5兆円ですから、41.5メートルとか415メートルとか、41.5の10倍数になるはずです。

 

皆さんは、直感でどれくらいの高さになると思いますか?

4,150メートル? 41,500メートル? 富士山より高い? そんな訳はない?

 

答えは、、、

信じられなくて、私は何度も計算し直しました。

でも、何度計算しても結果は同じです。

 

正解は 415km です!

 

あの国際宇宙ステーションの高度が400kmですから、あれよりも高い!

まさに宇宙空間にまで及ぶほどの天文学的な金額なのです!!

これほどのお金を、わずか1年間で病気の治療(健診など予防も含みますが)に使い切っているのです!!

 

「国際宇宙ステーション 画像」の画像検索結果

 

そして、当然ですが、高齢になるほど、一人当たりの治療費は高額になります。

歳を取って、病気になって、自分で稼げなくなってから、たくさん医療費を使うことになるのです。

 

「医療費 年代別 画像」の画像検索結果

 

そして、その費用を負担するのは、私たちの子供や孫の世代の若い人たちです。

このことを思うと、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、自分勝手に生きたいように生きることなどできません。

 

現実を知り、一人ひとりが日本の未来のために何ができるのかを考え、行動しなければ、日本は早晩破たんします。

それを防ぐのは、日本をこういう国にした私たちの世代の、せめてもの責務ではないでしょうか。

 

② わが国の糖尿病患者数の現状

 

医療費の内訳で多いのは、やはり生活習慣病です。

中高年層が医療費の大部分を使っているわけですから、当然と言えば当然です。

 

下のグラフを見て下さい。

 

f:id:takyamamoto:20170509180453p:plain

 

生活習慣病でもっとも患者数が多いのは高血圧性疾患です。

2位の糖尿病を3倍近く引き離してダントツです。

しかしながら、皆さんよく耳にされる言葉だと思いますが、「糖尿病予備軍」と言われる人たちを含めると、軽く2000万人を超えると推計されています。なんと、国民(子供も赤ちゃんも含めて)の5人に1人です。

 

予備軍とは、糖尿病と診断されるほど血糖値は高くないが、健常と言えるほど低くもない(境界型)人たちで、生活習慣やその他の原因で、いつ糖尿病になってもおかしくない人たちです。

この人たちをやすやすと糖尿病にしてしまうのか、それとも生活習慣の改善で健康になるのかで、今後の医療費の増減に及ぼす影響は大きく変わってきます

何しろ、現在でも糖尿病治療に8兆円も費やしているのですから!

 

このまま、この予備軍を減らせられないと、毎年100万人の新規な糖尿病患者が出てくることになるという話もあります。

そんなことになったら、本当に日本の医療経済は崩壊です。

 

③ 糖尿病は不治の病ではない!!

 

糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないまま、しかし、確実に進行し、症状が出てからでは完治が難しいと言われるため、「サイレントキラー」と呼ばれます。

 

ですから、症状が出る前の予備軍の方たちには、正しい知識を持って頂き、自分の置かれている状況の危うさを知り、生活習慣の改善に努めて頂かなければなりません

予備軍のうちなら簡単に改善しますよ。

 

糖尿病の専門サイトなどを見ていると、糖尿病のことを、前述の「サイレントキラー」だとか、「完治は難しい」とか、「糖尿病になってからでは遅い」とか、進行した糖尿病患者を絶望させるような言葉であふれかえっています。

糖尿病は確かに過酷な病気ですが、絶望させる必要はありません。

 

私は仕事柄、糖尿病から回復された方を何人か知っています。

例えば、70歳代の男性で、ヘモグロビンA1cが13以上という高値から回復された方を2人知っています。

一人は、ほとんど歩けず車いす生活で、失明をも覚悟した人ですが、今では、かつての様にいくつもの事業を経営し、海外へも行ったりとアグレッシブにご活躍中です。

 

実際、そう言う人たちとお会いし、お話を聞いていますので、糖尿病は決して「不治の病」とは思えないのです。

 

もっと書きたいのですが、今日はここでペンを置きます。

次回も糖尿病についての話を続けます。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

また、私は医師ではありませんので、医学的な誤りがありましたら、是非、御指摘をお願い致します。

勉強させて頂きます。

 

029【ウイルスについての最大の誤解】「ボクは細菌じゃない!」

 

目次:

① ウイルスは「生物」じゃないって?

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

ウイルスと細菌。

 

まったく違うものなのに、しばしば混同されていますね。

映画などで、明らかにウイルス兵器なのに、「細菌兵器」と平気で言っちゃってます。

劇中で、専門家(微生物学者とかなんとか)のクセに、時に「ウイルス」と言ったり、「細菌」と言ったり、メッチャ混同してます。

これでは映画のリアリティがなくなっちゃうんですよねぇ。

脚本家さんには、ちゃんと書いてほしいです。

 

ウイルス感染症を正しく理解する上で、ウイルスがどういう構造をしていて、どういう風に活動するのかを知っておくことは重要です。

今回はウイルスとは何なのかを、できるだけ解りやすくお話するつもりです。

 

① ウイルスは「生物」じゃないって?

 

細菌とウイルスは全く違う生き物です。

いや、ウイルスは「生き物」とは言えないかもしれません。

「えっ!どういうこと?」

 

実は、「生物」の定義は明確ではありません。

それでも、細菌が生物であることに異論のある人はいませんね。

ウイルスについては生物か否か、長年議論されてきました。

生物をどう定義するのかによって、ウイルスが生物であるか否かが変わってきます。

私はというと、ウイルスは「生物ではない」派です。

 

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

 

「生物じゃないんなら、いったい何なの?」
その答えは、核酸とタンパク質からできた「物質」です!

しかし、単なる物質ではなく、重要な情報を内包した高度に複雑な物質です!

 

私たち全ての生物の目的は、出来るだけ多く子孫を残し、種の繁栄を継続させることです。

 

全ての生物には遺伝子があり、その遺伝子のプログラムによって栄養を吸収し、代謝し、エネルギーを生み出し、活動し、子孫を残すという、いわゆる生命活動をしています。

一方、ウイルスも遺伝子を持ち、そのプログラムに従って増殖し、たくさんの子孫を残そうとします。

その点で、ウイルスも生物と言えそうです。

 

しばしばウイルスと混同される細菌については、栄養素や酸素など、生命活動に必要なものを与えてやれば、自立的に増殖できます。

ですから、試験管の中で培養できるのです。

 

しかし、ウイルスには栄養素や酸素を与えても、決して何らの生命活動を行うこともできません。

なぜか?

まず、ウイルスの構造を見てみましょう。

 

f:id:takyamamoto:20170508110631p:plain

左:アデノウイルス、中:タバコモザイクウイルス、右:バクテリオファージ

 

ご覧の通り、アデノウイルス正20面体、タバコモザイクウイルスはらせん構造、なんとバクテリオファージに至ってはアポロの月着陸船みたいな複雑な形です。

まず、こんな幾何学的な構造や、メカっぽい形をしているのが不思議です。

 

なぜ、このような形をしているのでしょうか?

それは、ウイルスを形作るタンパク質が、このような構造を作る様にあらかじめデザインされており、それらが部品のように規則正しく配列して、自動的に組み立てられるからです。

まるで、あらかじめデザインして作られたプラモデルかレゴのように。

そして、このタンパク質から成る構造物の中に遺伝子である核酸(DNAまたはRNA)が収納されています。

DNA、RNAは言うまでもなくウイルスの遺伝子であり、この遺伝子にウイルスが増殖し、繁栄するために必要なプログラムが書き込まれています。

 

ウイルスとは、言ってみれば、ただこれだけです。

核酸とタンパク質からできた「物質」というゆえんです。

 

原始的な細菌から私たち哺乳類に至るまで、細胞の中には遺伝子があり、遺伝子のプログラムを「自分で」実行して栄養分を利用してエネルギーを作り出したり、運動したり、遺伝子のコピーを作ったり、増殖したりしています。

つまり、生物として自立して生きています。

しかし、物質であるウイルスは、このままでは何もできません。

ただ、存在しているだけです。

このようなものを生物と呼べるでしょうか?

 

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

ウイルスが活動するためには、当然、遺伝子を起動しなければなりません。

しかし、ウイルスの遺伝子を動かすには、必ず宿主の細胞が必要なのです。

タバコモザイクウイルスならタバコの葉っぱ、HIVならヒトのヘルパーT細胞という訳です。

 

ウイルスは「自立」していません

宿主に感染して初めて、ウイルスは自分のプログラムである遺伝子を「実行」することができるようになります。

 

言ってみれば、ウイルスの本体は「プログラム」です。

そして、プログラムである核酸を収めるタンパク質から成る容れ物は、例えるならフロッピーディスク(古っ!)と言ったところです。

 

プログラムはフロッピーに収められているだけでは何もできません。

ただそこにあるだけです。

パソコンのドライブに挿入され、プログラムが読み取られて初めて実行されます。

プログラムが実行されるにはCPUが必要です。

ウイルスにとっては、宿主の細胞がCPUに当たります。

 

まず、ウイルスは宿主の細胞にくっつき、核酸を細胞内部に注入し、核酸に書き込まれたプログラムを細胞質のリボゾームという器官で読み取らせてタンパク質を合成させます。このタンパク質の働きで、ウイルスが活動することができるようになります。

 

f:id:takyamamoto:20170508111155p:plain

 

パソコンのディスクドライブにフロッピーを挿入し、プログラムを読み取らせ、CPUにプログラム通り実行させる。

ハードウェアとしてのパソコンと宿主の細胞、ソフトウェアであるフロッピーのプログラムとウイルスの遺伝子の関係の類似性がお分かり頂けるでしょうか?

 

本ブログ【025】でお話したミクソーマウイルスであれば、ウサギの細胞に感染する必要があります。

025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

ミクソーマウイルスはウサギにしか感染しません。

なぜなら、ウサギ以外の細胞に感染するようにプログラムされていないからです。

例えるなら、かつてMacのフロッピーがWindowsで読み取れなかったのと同じです。

つまり、ミクソーマウイルスとウサギ以外の細胞との間には「互換性」がないのですね。

本当にコンピューターに例えると分かりやすいです。

 

つまり、ウイルスとは「プログラムを収めた媒体」です。

これが私のウイルスの定義です。

ウイルスを生物ではなく、核酸とタンパク質とからなる物質と考える理由です。

それだけで存在していても、何も出来ません。

しかし、ひとたび宿主細胞に感染すれば、プログラムが読み取られ、代謝し、増殖します。

これは明らかに生命現象です。

 

ですから、ウイルスを生物と定義づける人もいますし、私もそれが間違いだとは言いません。

ただ、ウイルスと宿主の関係を、コンピューターのプログラムとCPUに照らし合わせると、その類似性がよく分かります。

こうやって見てみると、ウイルスが細菌とは決定的に違うことが、よく理解できると思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

028【免疫系のアクセルとブレーキと舵】「アレルギー性疾患から考える」

目次:

① 寄生虫感染とアレルギー性疾患の関係

② 寄生虫感染がなくなり、失業したIgE抗体が暴走!?

③ 免疫系のアクセルとブレーキと舵

④ 結局「清潔はビョーキだ」ということ

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

① 寄生虫感染とアレルギー性疾患の関係

 

本ブログ010で、子供のころの清潔な環境がアレルギーの原因だと言いました。

私たちの免疫を健全に育てるためには、菌と毒素が必要だと。

010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

言い忘れていましたが、もう一つ必要なものがあります。

寄生虫です。

 

下のグラフを見て下さい。

戦後の衛生環境の劇的な改善により、寄生虫感染は激減。19070年代前半には、ほぼなくなりました。

私が小学生のころ(’70年台前半)は、まだシールを肛門にペタッと張り付ける虫卵検査をやっていましたねぇ。

 

そして、寄生虫感染の減少を喜ぶかのように、各種アレルギー性疾患が激増していったのです。

 

f:id:takyamamoto:20170504115250p:plain

 

アレルギー性疾患発症のメカニズムはというと、花粉やハウスダスト、ダニなど、本来は無害であり、反応していけないものにIgE(アイジーイー)というタイプの抗体ができることです。

 

「抗体」というと、病原体と戦うイメージをお持ちの人も多いと思いますが、病原体と戦うのは「IgG(アイジージー)」というタイプの抗体です。

無害なものに対して、間違ったタイプの抗体を作ってしまうこと、これがアレルギー性疾患の原因です。

 

② 寄生虫感染がなくなり、失業したIgE抗体が暴走!?

 

従来、IgEは寄生虫感染に対する生体防御にかかわる抗体です。

ところが、寄生虫がいなくなり、IgEは仕事がなくなってしまいました。

「何かやることはないのか?」「なんかやんなくっちゃ」と、IgE抗体を作るB細胞が、花粉やハウスダストなど、従来反応すべきではない抗原に対するIgEを作るような、余計なことをするようになったというわけです。

 

そこで、虫のいない環境でB細胞の暴走をストップさせるのがTregの役目です。

 

f:id:takyamamoto:20170504115436p:plain

 

Tregは、ヘルパーT細胞がB細胞にIgE抗体産生の指令を出すのにストップをかけます。

これがうまく働かないと、特定のアレルゲンに対するアレルギーになるのだと考えられますが、このあたりのことは、まだよく分かっていません。

 

Trgは免疫系のブレーキ役ですが、【020】の最後で、免疫系にはアクセル役もあると言いました。

020【免疫力の本来のパワー(その2)】「AIDSが明らかにした免疫系の“アキレス腱”ヘルパーT細胞!」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

③ アクセルとブレーキと舵

 

ヘルパーT細胞には1型、2型、そして17型というのがあり、17型ヘルパーT細胞がアクセルの役目を果たします。

攻撃か撤退か? 総攻撃で短期決戦か、それとも長期の持久戦か?

それをアクセル役の17型ヘルパーTブレーキ役のTregのペダルの踏み加減で調整しています。

 

1型と2型の役割はというと、ざっくりな区分けですが、1型は細胞性免疫(キラーT細胞)を活性化し、2型は液性免疫(抗体)を活性化するという具合です。

ヘルパーT細胞は、敵の情報を受け取って、どのように戦うかを判断しています。

細胞性免疫で戦うか、抗体で戦うか、あるいはその両方を適切な割合で動員して戦うか、です。

 

f:id:takyamamoto:20170504120645p:plain

 

つまりまとめて言うと、1型と2型のヘルパーT細胞で舵を取り、17型ヘルパーT細胞とTregで進むのか止まるのかを操作しているのです。

つまり、アレルギー性疾患の場合、2型T細胞(液性免疫)の方向に舵が切られ、アクセルである17型T細胞が優勢になっており、IgE抗体が活発に産生されている状態と説明されます。

 

実際の免疫系は、これほど単純ではありませんが、このように乗り物のようにイメージすると理解しやすいと思います。

 

この左右の舵取りとアクセルとブレーキによる前進後退の制御が、現代人では狂わされています。

その大きな原因が、「菌と毒と虫」の欠如です。

 

④ 結局「清潔はビョーキだ」ということ

 

著書多数でテレビにも多く出演されて高名な、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、この方、自身の健康維持と寄生虫が人間の体にもたらす健康増進効果について自ら実証するため、わざとサナダ虫に感染して、「サトミちゃん」と名付けて、数年間、お腹の中で飼っていたそうです。

 

そこまでやれとは言いませんが、猫が糞尿をした砂場で子供を遊ばせるくらい、家にゴキブリの1匹や2匹出るくらいで騒いではいけません。

 

昔は「美人のお腹には虫がいる」と言われましたが、これは本当かもしれません。

藤田先生によると、寄生虫感染が肌の若々しさを保っているそうです。

女性の皆さん、是非参考になさって下さい。

 

あっ、「清潔はビョーキだ」というセリフは、藤田先生からのパクリです(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

027【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その2)】「抗がん剤との併用で原発性大腸がんからの肝臓転移がん2つが見事消失!!~ヒトでの症例報告~」

今回の結論:

切らないと治らないはずだった肝臓の2つの転移がんが切らずに消失した患者!! ホントの話!!

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

前回【026】で、βグルカンが抗腫瘍効果を示す科学的根拠として、細胞実験と動物実験の論文をお示ししました。

これらは、βグルカンの何千とある論文のうちの、ほんの一部に過ぎません。

 

さて、今回はいよいよヒトで報告された症例を見ていきましょう。

 

我が師匠 飯沼一茂 博士が報告したがん患者さんの症例です。

New Food Industry 58 (11), 29-34, 2016.

 

患者は診断当時73歳の男性。

 

人間ドックで便鮮血陽性となり、大腸内視鏡による精密検査を受けることに。

そこで早速、精密検査の2日前から、某社の黒酵母βグルカン製品をやや多めに摂取開始しました。

で、精密検査の結果は、ステージ3の大腸がん

 

ところが、これに留まらず、大腸内視鏡検査の7日後、今度はCTスキャン肝臓に2か所の転移がん(どちらも約1cm大)が見つかりました。

 

ステージ3の原発性大腸がんに加えて、同時に肝臓転移がん2ヶ所です!

非常に難しい患者です!

どうするのか!?

 

大腸の切除は約25cm、肝臓の方は3/4の切除になります。

両方を一度に切り取ると、患者の命はありません。

そこで、まず大腸がんを腹腔内視鏡手術によって切除し、肝臓の方は、大腸の手術の後の経過が安定したところで抗がん剤治療を始めて、腫瘍を縮小させたところで切り取る、という作戦になりました。

 

大腸の手術までは1ヶ月あります。この1ヶ月の間、患者はβグルカンを毎日飲み続けました。

 

で、大腸がん摘出の手術は無事成功。

手術の3日後、再度CTスキャンを行い、肝臓の様子を探ってみると、、、なんと、肝臓の2つの転移がんが明らかに縮小していたのです。

 

f:id:takyamamoto:20170502220210p:plain

 

この1ヶ月の間、何らの抗がん治療も行っていません

やっていたことと言えば、毎日βグルカンを飲んでいただけです。

医者も「考えられない」と首をひねります。

 

そして、肝臓の転移がんを縮小させるための抗がん剤治療が始まりました。

予定では8クール行い、縮小させたところで手術で切除という算段です。

 

ところが、5クール目を終了し、6クール目の直前のCT検査で、なんと2つの肝臓の転移がんが完全に消失してしまっていたのです!!

これには医者も拍子抜け!

予定の手術はキャンセル!!

マジ完治です!!!

とっとと退院させられましたとさ(苦笑)

 

この患者さん、治療終了後4年が経過した今も、再発することなくお元気です。

 

この症例では、まず、何らの抗がん治療もしてない状況での、βグルカン単独での肝臓転移がんの縮小が観察されました。

そして、その後の抗がん剤治療との併用で、医師も予測しなかった完全消失!

抗がん剤との併用では、副作用の程度も軽く、辛い思いをすることもなく、さらに抗がん剤の作用を高めることに貢献したのでしょう。

このことは、前回お話したラットやマウスの実験結果でも示されていましたね。

026【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その1)】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

βグルカンについて、このような体験をした人はたくさんいます。

本当に、余命宣告された人がβグルカンで生還した例は枚挙にいとまがないのです。

その根拠は、「免疫力本来の力」です。

「免疫力本来の力」については、最先端医学が証明しています。

(是非もう一度本ブログ【021】をお読み下さい)

takyamamoto.hatenablog.com

 

ヒトの免疫力は本来、がんに打ち勝つだけのパワーを備えているのですが、その力を100%発揮できていないだけです。

 

しかし、健康食品でがんから生還したとかっていう体験談って、胡散臭いですよねぇ。

また、メーカーも販売企業も、たとえ、それが真実であっても、こんな「がん」からの生還体験談なんて、たとえ言いたくても言えないのです。

だって、手が後ろに回りますから。。。マジでッ。

ジレンマですよねぇ。

 

でも、この症例の様に、正確なカルテ情報とCT画像が得られたことで、正々堂々、論文として発表することができました。

 

私は今後も、本当の正しい情報を皆様にお伝えしていきます

 

 βグルカンの効果について、がんに次いで論文の多いのが糖尿病です。
いずれ、βグルカンの抗糖尿病効果の根拠となる論文についてもご紹介したいと思います。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

026【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その1)】

本ブログも26回目になりました。

当初、1週間にひとつずつ1年間記事を書き続けて、52回は書きたいと思っていましたが、1ヶ月半で折り返し点にきました。

お陰様でユーザーさんも増えてきており、読んで下さる方がいらっしゃる限り、続けていこうと思います。

 

目次:

  1. シイタケ由来βグルカンの抗腫瘍効果

  2. βグルカンによる抗がん剤の副作用低減効果(その1)

  3. βグルカンによる抗がん剤の副作用低減効果(その2)

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

以前は、健康食品なんぞに関心のなかった私。

 

免疫賦活活性だとか抗酸化作用だとかはあるとしても、現在の医療で治らないガンが治るなんて、「どこにも根拠を示していないじゃないか!」という訳です。

「本当に劇的に効くのなら、当然、医薬品として承認されるはず」という考えを持ったのも無理からぬこと。

 

しかし、健康食品の中には、本当に効くにもかかわらず、法律「薬機法(旧・薬事法)」による規制のために、企業は自社製品の宣伝広告の中で効果・効能を謳えず(つまり根拠を示したくっても示せない)、各企業とも拡販に苦慮しているという事情を、私は知りませんでした。

 

確かに、根拠のないまがい物もあります。

しかし、根拠を調べてみれば、確かに本物もあります。

 

では、本物とまがい物とを見分ける根拠とは何か?

研究者たちが客観的な視点から研究した結果を報告した学術論文です。

その学術論文が最も多い健康食品のひとつが「βグルカン」です。

 

今回は、βグルカンについての論文を、ごく一部ですが易しく説明して、そのポテンシャルをご紹介しましょう。

 

これまで、βグルカンの効果については、抗腫瘍効果、抗感染症効果、血糖値抑制効果、中性脂肪抑制効果、コレステロール抑制効果、高血圧抑制効果、動脈硬化抑制効果、抗糖尿病効果等々、広範囲な疾患に対して動物及びヒトでのデータが、世界中の医師・研究者たちから報告されており、論文の数は数千にのぼります。

この論文数は、健康食品の成分としては、類を見ないものです。

 

これらの研究成果が明らかにしたことは、上記のような多くの疾患に対する抑制作用は、βグルカンの強力な免疫調整作用によるものだとの理解です。

 

様々な疾患に対しての効果が示されているβグルカンですが、今回は、最も研究データが多い、抗腫瘍効果についての論文をいくつかご紹介します。

 

1.シイタケ由来のβグルカンの抗腫瘍効果

 

何らかの物質の病気改善効果というのは、結局のところヒトで示されなければ説得力がありません。

でも、ヒトでできる試験には様々な問題があり、限定されます。

ですので、まずは培養細胞での実験、次に動物実験がよく行われます。

 

細胞よりは動物、動物よりはヒト、の方が説得力が高いのですね。

で、まずは細胞の実験結果から。

 

がんから体を守る仕組みは、何重にも張り巡らされています。

最後の砦は「免疫」、その前に細胞の自殺「アポトーシス」という仕組みがあります。

 

前にお話ししましたが、遺伝子に異常のある細胞は、自分でそのことが分かっていて、このまま自分が生き残ってはまずいので、自分で「自殺スイッチ」をONにします。

その結果起こる細胞の死がアポトーシスです。

 

さて、βグルカンが免疫力をパワーアップして抗がん作用を示すことは良く知られています。

でも、下の2016年の論文では、シイタケ由来のβグルカンが、免疫を増強するだけでなく、がん細胞のアポトーシスも起こりやすくするというダブル効果を持っていることが報告されました。

さらに、がん細胞に栄養供給を行うのに必須な、血管の新生も抑えて、がん抑制に働くのです。

 

f:id:takyamamoto:20170501141553p:plain

 

最初にこのように培養細胞の実験で観察された現象が、動物やヒトの体内でも起きているのかが証明されることによって、βグルカンの本物である証しが強化されるのです。

 

では、動物のデータを見ていきましょう。

 

2.βグルカンによる抗癌剤の副作用低減効果(その1)

 

シスプラチンは様々な種類のがんに広く使用され、高い腫瘍縮小効果を持つ抗がん剤です。

一方で強い副作用、たとえば腎機能障害や骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振などが現れ、そのためにシスプラチンの投与を断念せざるを得ないケースも多々あります。

 

下の2016年の論文は、パン酵母由来βグルカンを摂取することによって、シスプラチンの重篤な副作用を効率的に軽減するというラットを使った実験の結果です。

 

f:id:takyamamoto:20170501141815p:plain

 

健康なラットを4つのグループに分けます。

各グループのラットは9匹ずつ。

  • グループ1:何も投与しない
  • グループ2:シスプラチンを投与
  • グループ3:βグルカンを摂取
  • グループ4:シスプラチン投与とβグルカン摂取

 

健康なラットにシスプラチンを投与した場合、脳神経へのダメージが副作用として観察されます。

ですので、グループ2のラットに神経の損傷が認められました。

ところが、グループ4のラットでは、βグルカンを摂取していたことにより、神経細胞の損傷が著しく軽減したのです。

 

抗がん剤治療の副作用に耐えられず、治療を断念せざるを得ない人は多くいます。

その副作用の辛さを、βグルカンが軽減することによって抗がん剤治療を続けられようになるという動物での結果です。

 

3.βグルカンによる抗癌剤の副作用低減効果(その2)

 

もうひとつ、動物実験の例。

少し古いですが、2008年の、がん細胞を移植したマウスを使った実験です。

 

f:id:takyamamoto:20170501141924p:plain

グラフの縦軸は、がん細胞移植後21日までの腫瘍の体積の推移

 

マウスにがん細胞を移植して、21日間、特に何もしないと腫瘍の体積はどんどん大きくなります(対照群)。

しかし、9匹中、1匹も死んではいません。

 

フルオロウラシル(5-FU)という、よく使われる抗がん剤の投与を続けると、腫瘍はほとんど大きくなりません(A群)。

ところが、この21日の間に、9匹中4匹が死んでしまったのです。

つまり、5-FUでがん細胞の増殖は抑えているのに、4匹のマウスが薬の副作用で死んでしまったということです。

これでは、何のための薬やら。。。本末転倒ですね。

 

ところが、5-FUを投与していても、同時に黒酵母βグルカンを飲んでいると、1匹も死なずに済みます(C群)。

副作用が軽減されたのです。

腫瘍も完全に抑えるという訳には行きませんが、それでも、何もしないマウスよりは腫瘍が小さくなっています。

 

酵母βグルカンだけを与えたマウス(B群)でも、何もしていないマウスよりは腫瘍を抑えていることが分かるでしょう。

これがβグルカン単独での抗腫瘍効果ということになります。

 

まとめます。

  • βグルカンは単独でもある程度の抗腫瘍効果がある。
  • 抗がん剤と併用することで、抗がん剤の副作用による死亡を防ぎ、腫瘍の増大もある程度抑えることができる。

ということです。

 

ここまでは、いずれも動物実験の結果でした。

 

次回は、いよいよヒトの例を見ていきましょう。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」

目次:

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

② ウイルスはバカじゃない

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

ゴルゴ13の持病「ギラン・バレー症候群

ゴルゴが病気になるエピソードって結構ありますね。

「病原体レベル4」というエピソードでは、なんとエボラウイルスに感染し、医療器具の限られた船内で発症。ゴルゴもこれまでか!?

 

感染したサルに唾を吐きかけられたのですが、銃弾すらかわしてしまう反射神経の持ち主が、サルのツバ吐きぐらいかわせなかったのですかねぇ?

 

f:id:takyamamoto:20170430122154p:plain

ツバかけられたときのゴルゴの無念な表情!

 

さて、古くはダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレーク」。

致死率はエボラ以上、感染力はインフルエンザ以上という最恐のウイルスがアメリカ全土に蔓延の危機! 果たして阻止できるのか⁈というお話でした。

 

さらに、小松左京大先生の「復活の日」に至っては、南極の数百人を残して、人類は絶滅したのでした。

 

でも断言できます。人類はウイルスで絶滅したりしません。

その一つの根拠となった事件が1950年代に起こりました。

 

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

 

イギリス生まれのピーターラビットアナウサギという種類のイギリスではなじみの深い動物です。

f:id:takyamamoto:20170430122053p:plain

19世紀、イギリス人がオーストラリアに入植する際、このアナウサギを何匹か(ウサギは「1羽」「2羽」って数えるんでしたっけ?)持ち込みました。

別に愛玩用としてではなく、世界で最も狩猟好きなイギリス人が、ハンティングを楽しむために持ち込んだのです。

動物を追い回して打ち殺す娯楽、ハンティングは「紳士淑女のたしなみ」というわけですねぇ。

 

さて、天敵のいないオーストラリアで、野に放たれたアナウサギは爆発的に繁殖しました。

それが牧草を食い尽くしてしまい、牧羊に甚大な被害が出たのです。

毎年、何百万匹単位で駆除しても到底追いつきません。

 

そこで、オーストラリア政府が取った策が、恐るべき生物兵器の使用です。

その名をミクソーマウイルス!

ウサギだけに感染し、他の生物には全くの無害。

致死率はほぼ100%! 治療法なし!

なんと理想的な!!

 

このウイルスに感染すると、兎粘液腫(うさぎねんえきしゅ)という病気を発症します。

その症状は、ウィキによると「発熱、結膜眼瞼炎、鼻、耳、肛門、生殖器周辺の粘膜と皮膚の境界部皮下にゼラチン様腫瘤を形成する。死亡率はほぼ100%であり、発症後2週間前後で死亡する」とあります。

かなりの苦痛を長期に与えて死に至らしめる、非常に残酷な病気のようですねぇ。

こんなもん使っておいて、「捕鯨は非人道的だ」とか言ってんじゃねぇ!!

いや別に豪州人の方に敵意は御座いません。

 

それは置いといて、この作戦、顛末はどうなったか? 思惑通りに事は進んだのでしょうか?

 

② ウイルスはバカじゃない

 

我々すべての生物種の最大の目的は、できるだけ多くの子孫を残して種の繁栄を築くことです。

ウイルスも例外ではありあません。

 

さてウサギの話に戻りましょう。

1950年にオーストラリアにおいて、このウイルスが野生化したアナウサギに対して使用されました。

ほぼ100%と思われていた致死率でしたが、数百匹に1匹ぐらい、病気を発症しないウサギが現れたのです。

そして、ついに撲滅することができずに終わりました。

 

理由は二つありますが、ひとつは、感染が広まるにつれ、ウイルスの毒性が弱まったのです。

ウイルスは宿主がいてこそ繫栄できます。

すべて殺していたのでは、自分たちの未来もありません。

ですので、毒性が強すぎて、「このままではいかん」と思ったら、自分たちの生存率を最大化するために、毒性の弱いウイルスが優勢になるのです。

そして、ほどほどに宿主を生かし続けます。

結局、数年後には、このミクソーマウイルスの致死率は、およそ50%程度で落ち着いたとさ。

 

このことは、おそらくエボラウイルスでもHIVでも同じです。

決して人類を根絶やしになんかしやしません。

実際、HIVに感染しても発症しない人や、HIVに感染すらしない人がいることが分かっています。

 

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

みなさんABO式の血液型はご存知ですね?

これは赤血球の型です。

型を誤って輸血すると、赤血球が壊れて死んでしまいますので、血液型検査は重要です。

ちなみに、この赤血球が破壊される現象、これもまた免疫の働きによるものです。

 

では、白血球にも血液型があるのをご存知でしょうか?

HLAと言えばお分かりの人もいるでしょうか?

骨髄移植や臓器移植では、このHLAの型をできるだけ合わせることが重要です。

拒絶反応を防ぐためです。

 

HLAはABO式のように単純ではなく、計算上は数百億通りの型があることになります。

ですから、一卵性の双子を除いては、この地球上に二人とまったく同じ型の人はいないことになります。

このように、たくさんの型があることを「多様性」といいます。

 

このHLAの型は「免疫の型」と言ってもいいでしょう。

免疫の型に多様性があるということは、ヒトの免疫は人それぞれに異なり、それこそ「千差万別」、「万差億別」です!

 

先ほど、HIVに感染してもエイズを発症しない人がいると言いました。

このような人は「エリートコントローラー」と呼ばれ、特にHIVに感染したヘルパーT細胞を早期に発見し、排除する免疫力を備えています。

ですから、ウイルスはいることはいるのですが、発症するところまでウイルスが増えるのを防ぐことができます。

これは、特定のHLAの型を持っている人であることが分かっています。

 

オーストラリアのウサギ駆除の話に戻りましょう。

撲滅に失敗した原因は二つ。

ひとつは、ウイルス自らが弱毒化したこと。

もうひとつは、アナウサギにも、ミクソーマウイルスに対するエリートコントローラーがいたということです。

 

免疫には多様性があり、人それぞれすべて異なります。

人類は「ある病気にはめっぽう強いが、その他のある病気には弱い」という人の集団です。

ですから、ある疫病が猛威を振るっても、必ず生き延びる人がおり、絶滅することはないのです。

 

う~ん! だから何だというのだ!?

オチなく話が終わってしまった!!

 

ただ、免疫には多様性があるということだけ覚えておいて下さいね。

 

次はお役立ち情報をお届けできるように書きます(ペコリ)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

また、学問には異なる見解があって然るべきです。そのようなご意見もお聞かせ下さい。

大変励みになります。

 

 

024【免疫力の高い人はアレルギーになりやすいの?】「免疫の『バランス』についての誤解に答えます!」

目次:

  1. やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

  2. 獲得免疫は「抗原特異的」!

  3. 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

  4. 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

① やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

 

世間では、「免疫力アップ」とか言って、免疫力は高ければ高いほどいいみたいに喧伝しているきらいが見られますね。

一方で、うがったところでは「免疫はバランスが大事」と言われます。

免疫のバランスとはどういうことでしょう?

 

以前は良く、こんな話を聞きました。

「免疫力の高い人は、がんや感染症には強いけれど、その代り、アレルギーや自己免疫疾患になりやすい」

「アレルギーや自己免疫疾患の人は、免疫力が高いので、がんになりにくい」

これらは、「免疫力というのは、強すぎても、弱すぎても具合が悪く、ほどほどにバランスを保っているのがよい」という考え方です。

つまり、免疫のバランスとは、下の図のように、高いか/低いかというシーソーのようなものだと言うのですね。

 

f:id:takyamamoto:20170428174752p:plain

免疫のバランス 右に傾いても、左に傾いても、どっちもよくない!?

 

この考え方では、免疫力が強すぎるとアレルギーや自己免疫疾患になりやすく、弱すぎるとがんや感染症にかかりやすくなるので、「強すぎず、弱すぎず」のバランスが重要、ということになります。

 

私はずっと、この考え方に疑問を持っていました。

なぜなら、アレルギーや自己免疫疾患知らずで、がんや感染症にも強い超健康な人っているはずだからです。

免疫のバランスがシーソーのように、強いか、弱いか、バランスのとれた真ん中か、のような塩梅(あんばい)だとすれば、このような超健康な人の免疫がどうなっているのか、説明できません。

また、免疫が強すぎてアレルギーになるのなら、いろんなものに対してアレルギーになるはず。

「ヒノキやブタクサやダニは全然平気なんだけど、スギ花粉だけはどうにもダメ」という人がいるのは変です。

説明できません。

 

② 獲得免疫は「抗原特異的」!

 

いきなり「抗原特異的」なんて難しい言葉で申し訳ありません。

 

はしかにかかったことのある人は、はしかに対する免疫を持っています。これは獲得免疫です。

019【免疫力の本来のパワー(その1)】「免疫系の仕組み」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

なので、次にはしかのウイルス(麻疹ウイルス)が侵入してきても、発病することなく撃退できます。

でも、この免疫は、他のウイルス、他の抗原(免疫系によって認識される異物のこと)には全くの無力です。

麻疹ウイルスに対する免疫は、麻疹ウイルスの抗原にしか反応しません。

 

特定の抗原にだけ反応すること、これが「抗原特異的」ということです。

 

マクロ―ファージとかの自然免疫の細胞は、基本的に非自己であれば何でも食べます。

つまり、自然免疫は「非特異的」です。

でも、獲得免疫は、一度覚えた特定の抗原にしか反応しません。

つまり、獲得免疫は「抗原特異的」です。

 

③ 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

 

ここから少し難しくなります。

 

自己免疫疾患やアレルギー性疾患は、抗体を作るB細胞や、がんやウイルス感染細胞など異常な細胞を攻撃するキラーT細胞の仕業です。

B細胞とT細胞による免疫は獲得免疫ですね。

 

制御性T細胞(Treg)もT細胞ですから、獲得免疫の細胞ということになります。

だったら、Tregも抗原特異的に機能するんじゃないのか?

つまり、Tregはある特定の好ましくない免疫反応だけを「特異的」に抑えることができるんじゃないのか?ということです。

 

たとえば、はしかにかかったとします。

当然、免疫系は活発になり、免疫力は高い状態になります。

「免疫力の高い人はアレルギーになりやすい」という理屈が正しいのなら、感染症にかかる度にアレルギーになる人が普通にいるはずです。

でも、そんな人、実際に見たことも聞いたこともありません

 

これはつまり、感染症にかかって免疫力が高まった状態でも、アレルギーや自己免疫疾患などの原因となる好ましくない免疫反応を「特異的に」Tregが抑えてくれているんじゃないかと考えられます。

 

本ブログ【010】で、アレルギー性疾患の少ないアーミッシュの人たちにはTregが多いとか、【017】では、妊婦では免疫系が胎児を攻撃しないようにTregがたくさん子宮に集まっているとかいいました。

010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

017【自己免疫疾患と制御性T細胞】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

これまでの多くの研究では、Tregの数が多いか少ないかが盛んに調べられてきました。

でも、本当にTregの働きを知るには、特定のTregが特定の好ましくない抗原に対する免疫反応を抑えているという、Tregの「特異性」を証明することが重要だと思います。

 

たとえば、「ヒノキもブタクサも問題ないんだけど、スギだけはダメ」なんて人もいる訳です。

このような人の場合、スギ花粉に対する免疫反応だけを抑える「特異的な」Tregが、何らかの原因でうまく働いていないのだと考えると説明がつきます。

 

f:id:takyamamoto:20170428175300p:plain

如何なゴルゴ13と言えども、何らかの原因で自己免疫反応を抑える抗原特異的Tregが上手く働いていないと、自己免疫疾患にもなり得る!

 

ヒトの抗原特異的制御性T細胞の働きは、技術的な問題から、まだ充分には解明されていません。

でも最近、技術的ブレークスルーがあったとかで、その論文を読んでいるところです。

Cell 167, 1067-1078, 2016

難しくて、なかなか読み進められません、、、(涙)

 

④ 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

Tregの抗原特異的な働きについては、これから解明されるものと期待します。

そしてその結果、超健康な人の免疫とは、「がんや感染症に対する免疫力は強く、同時に抗原特異的なTregが働いて、好ましくない免疫反応は抑えている状態である」ということが証明されるのではと予想しています。

 

病気やケガをすれば、免疫系が活性化して炎症反応を引き起こします。

でも、快方に向かえば、炎症反応は速やかに鎮めなければなりません。

このように、免疫というのは、攻撃するべきときには攻撃し、攻撃してはいけないもの、攻撃してはいけないときには、攻撃は抑えなければなりません。

このように免疫系が絶妙に制御されている状態、これが免疫系の「バランス」がいい状態なのだと思います。

「強い or 弱い」という2元的な単純なものでは決してありません。

そして、そこで重要な働きをしているのが、恐らく抗原特異的なTregです。

(これはまだ仮説であり、実証されている訳ではありませんので、ご注意下さい)

 

ですから、健康のために大切なことは、免疫力をアップさせるというより、免疫力を「調整」することなのです。

 

で、話はまたここに帰着します。

免疫調整のために重要なのは、食事・運動・休息・βグルカンなのですね(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

また、学問には異なる見解があって然るべきです。そのようなご意見もお聞かせ下さい。

大変励みになります。