結論:
1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!
2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!
次回予告:
免疫系のアクセルとブレーキ
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!
前回、本ブログ019で、免疫系の全体像をお話しました。
免疫系には、「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えの備えがあること。
そして、獲得免疫は、敵の種類や性質に応じて、「細胞性免疫」と「液性免疫」の2つのパターンを駆使して戦うことです。
そして、敵に応じて、獲得免疫を駆使して、どう戦うかを決めるのは「ヘルパーT細胞」と呼ばれる「免疫系の司令塔」だということでした。
いわば、「自然免疫」はゲリラ戦です。
出現した敵に対して、なりふり構わず攻撃しますが、必ずしも効率的に戦果を挙げられるわけではありません。
そこで、敵の種類や性質に応じて適宜に対応した戦略を駆使して「獲得免疫」が戦線防衛に重要な役割を担うわけです。
ゲリラ戦の自然免疫に対して、獲得免疫は戦術的な組織戦ですね。
そして、その戦術を決定し、獲得免疫に作戦司令を出すのが「ヘルパーT細胞」なのですね。
凄くないですか? ヘルパーT細胞!!
それだけに、ヘルパーT細胞は免疫系の「アキレス腱」とも言えます。
アキレス腱とは? つまり、免疫系の弱点にもなるということです。
ここを責められると、獲得免疫は機能しない!!
中田ヒデを失ったトルシエ・ジャパンか!?(古い!!)
そのことを、我々人類が改めて思い知ったのは、1980年代前半に突如、人類の前に出現した「AIDS」ではないでしょうか?
2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!
AIDSは、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」が、実はヘルパーT細胞に感染することで引き起こされる病気です。
HIV感染を抑える種々の薬
HIVはヘルパーT細胞に感染し、ヘルパーT細胞をゆっくりと死滅させながら増殖したウイルスは、また別のヘルパーT細胞に感染して、それを繰り返します。
その結果どうなるか? 知れたことですね。
どんどんヘルパーT細胞が死んでいき、減っていきます。
そして、何年も経ったころには、獲得免疫はそれこそ「機能不全」に陥ります。
免疫が十分に働かない「免疫不全」の状態であり、そのために何らかの病気を発症した状態がAIDS(後天性免疫不全症候群)です。
そのために、普通では見られないような珍しい悪性腫瘍(カポジ肉腫とか)になったり、健康な人なら死なないような感染症(カリニ肺炎とか)で死んだりします。
ヘルパーT細胞が機能しなくなると、こんな状態になるんだということが、AIDSによって明らかになったわけです。
AIDSの原因がまだ分からなかったとき、いや、分かった後ですら、AIDSは「20世紀の黒死病」と言われて、専門家すら恐怖しました。
「司令塔を狙い撃ちするウイルスだって!?」 「どうすりゃいいんだ!?」
そして、そこから得たものは、「免疫系の司令塔」の重要性です。
それは、ヘルパーT細胞!!
時を経て1990年代後半、制御性T細胞(Treg)の発見によって、ヘルパーT細胞の重要性が、さらに強化されたのでした。
次回予告:
免疫系のアクセルとブレーキ
さて、話が複雑になるので、これまでお話しませんでしたが、実はヘルパーT細胞には何種類かあります。
それらは1型、2型、17型と呼ばれます。(3型とか4型とかはなくって、2型の次はいきなり17型です(笑))
Tregが免疫系のブレーキならば、17型ヘルパーT細胞はアクセルと言えます。
このアクセルとブレーキの踏み具合で、免疫の攻撃力をパワーアップしたり、余計な免疫反応を抑えたりしています。
実際、自己免疫疾患の人は、アクセルである17型ヘルパーT細胞が優勢になっています。
こういう時にはTregに頑張ってもらって、過剰な免疫反応にブレーキをかけてもらわなければならないのですね。
健康で免疫系のバランスがいい人では、このアクセルとブレーキの踏み具合が絶妙に制御されています。
このバランスを崩すような原因があると、様々な健康トラブルが発生します。
次回は免疫系のアクセルとブレーキのお話です。
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。
大変励みになります。