Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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029【ウイルスについての最大の誤解】「ボクは細菌じゃない!」

 

目次:

① ウイルスは「生物」じゃないって?

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

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ウイルスと細菌。

 

まったく違うものなのに、しばしば混同されていますね。

映画などで、明らかにウイルス兵器なのに、「細菌兵器」と平気で言っちゃってます。

劇中で、専門家(微生物学者とかなんとか)のクセに、時に「ウイルス」と言ったり、「細菌」と言ったり、メッチャ混同してます。

これでは映画のリアリティがなくなっちゃうんですよねぇ。

脚本家さんには、ちゃんと書いてほしいです。

 

ウイルス感染症を正しく理解する上で、ウイルスがどういう構造をしていて、どういう風に活動するのかを知っておくことは重要です。

今回はウイルスとは何なのかを、できるだけ解りやすくお話するつもりです。

 

① ウイルスは「生物」じゃないって?

 

細菌とウイルスは全く違う生き物です。

いや、ウイルスは「生き物」とは言えないかもしれません。

「えっ!どういうこと?」

 

実は、「生物」の定義は明確ではありません。

それでも、細菌が生物であることに異論のある人はいませんね。

ウイルスについては生物か否か、長年議論されてきました。

生物をどう定義するのかによって、ウイルスが生物であるか否かが変わってきます。

私はというと、ウイルスは「生物ではない」派です。

 

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

 

「生物じゃないんなら、いったい何なの?」
その答えは、核酸とタンパク質からできた「物質」です!

しかし、単なる物質ではなく、重要な情報を内包した高度に複雑な物質です!

 

私たち全ての生物の目的は、出来るだけ多く子孫を残し、種の繁栄を継続させることです。

 

全ての生物には遺伝子があり、その遺伝子のプログラムによって栄養を吸収し、代謝し、エネルギーを生み出し、活動し、子孫を残すという、いわゆる生命活動をしています。

一方、ウイルスも遺伝子を持ち、そのプログラムに従って増殖し、たくさんの子孫を残そうとします。

その点で、ウイルスも生物と言えそうです。

 

しばしばウイルスと混同される細菌については、栄養素や酸素など、生命活動に必要なものを与えてやれば、自立的に増殖できます。

ですから、試験管の中で培養できるのです。

 

しかし、ウイルスには栄養素や酸素を与えても、決して何らの生命活動を行うこともできません。

なぜか?

まず、ウイルスの構造を見てみましょう。

 

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左:アデノウイルス、中:タバコモザイクウイルス、右:バクテリオファージ

 

ご覧の通り、アデノウイルス正20面体、タバコモザイクウイルスはらせん構造、なんとバクテリオファージに至ってはアポロの月着陸船みたいな複雑な形です。

まず、こんな幾何学的な構造や、メカっぽい形をしているのが不思議です。

 

なぜ、このような形をしているのでしょうか?

それは、ウイルスを形作るタンパク質が、このような構造を作る様にあらかじめデザインされており、それらが部品のように規則正しく配列して、自動的に組み立てられるからです。

まるで、あらかじめデザインして作られたプラモデルかレゴのように。

そして、このタンパク質から成る構造物の中に遺伝子である核酸(DNAまたはRNA)が収納されています。

DNA、RNAは言うまでもなくウイルスの遺伝子であり、この遺伝子にウイルスが増殖し、繁栄するために必要なプログラムが書き込まれています。

 

ウイルスとは、言ってみれば、ただこれだけです。

核酸とタンパク質からできた「物質」というゆえんです。

 

原始的な細菌から私たち哺乳類に至るまで、細胞の中には遺伝子があり、遺伝子のプログラムを「自分で」実行して栄養分を利用してエネルギーを作り出したり、運動したり、遺伝子のコピーを作ったり、増殖したりしています。

つまり、生物として自立して生きています。

しかし、物質であるウイルスは、このままでは何もできません。

ただ、存在しているだけです。

このようなものを生物と呼べるでしょうか?

 

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

ウイルスが活動するためには、当然、遺伝子を起動しなければなりません。

しかし、ウイルスの遺伝子を動かすには、必ず宿主の細胞が必要なのです。

タバコモザイクウイルスならタバコの葉っぱ、HIVならヒトのヘルパーT細胞という訳です。

 

ウイルスは「自立」していません

宿主に感染して初めて、ウイルスは自分のプログラムである遺伝子を「実行」することができるようになります。

 

言ってみれば、ウイルスの本体は「プログラム」です。

そして、プログラムである核酸を収めるタンパク質から成る容れ物は、例えるならフロッピーディスク(古っ!)と言ったところです。

 

プログラムはフロッピーに収められているだけでは何もできません。

ただそこにあるだけです。

パソコンのドライブに挿入され、プログラムが読み取られて初めて実行されます。

プログラムが実行されるにはCPUが必要です。

ウイルスにとっては、宿主の細胞がCPUに当たります。

 

まず、ウイルスは宿主の細胞にくっつき、核酸を細胞内部に注入し、核酸に書き込まれたプログラムを細胞質のリボゾームという器官で読み取らせてタンパク質を合成させます。このタンパク質の働きで、ウイルスが活動することができるようになります。

 

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パソコンのディスクドライブにフロッピーを挿入し、プログラムを読み取らせ、CPUにプログラム通り実行させる。

ハードウェアとしてのパソコンと宿主の細胞、ソフトウェアであるフロッピーのプログラムとウイルスの遺伝子の関係の類似性がお分かり頂けるでしょうか?

 

本ブログ【025】でお話したミクソーマウイルスであれば、ウサギの細胞に感染する必要があります。

025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

ミクソーマウイルスはウサギにしか感染しません。

なぜなら、ウサギ以外の細胞に感染するようにプログラムされていないからです。

例えるなら、かつてMacのフロッピーがWindowsで読み取れなかったのと同じです。

つまり、ミクソーマウイルスとウサギ以外の細胞との間には「互換性」がないのですね。

本当にコンピューターに例えると分かりやすいです。

 

つまり、ウイルスとは「プログラムを収めた媒体」です。

これが私のウイルスの定義です。

ウイルスを生物ではなく、核酸とタンパク質とからなる物質と考える理由です。

それだけで存在していても、何も出来ません。

しかし、ひとたび宿主細胞に感染すれば、プログラムが読み取られ、代謝し、増殖します。

これは明らかに生命現象です。

 

ですから、ウイルスを生物と定義づける人もいますし、私もそれが間違いだとは言いません。

ただ、ウイルスと宿主の関係を、コンピューターのプログラムとCPUに照らし合わせると、その類似性がよく分かります。

こうやって見てみると、ウイルスが細菌とは決定的に違うことが、よく理解できると思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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