Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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023【腸内細菌と心】「乱れた細菌叢から慢性炎症へ」

目次:

  • 心と腸はつながっている

  • 細菌叢が悪いとどうなる?

  • 結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事

 

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① 心と腸はつながっている

 

心と腸

全然関係ないと思われていたもの同士が、今では切っても切れない、というか、むしろ密接に関わり合っていることが確実になりました。

いや、つながっているというより、対話していると言えるかもしれません。

 

腸内で発生する様々な物質、それらが幼少期の脳の発達に影響し、性格の形成や精神疾患の発症に大きく関わってきます。

好ましくない腸内環境が、うつ、統合失調症自閉症なんかの引き金になります。

 

腸内で発生する多くの物質が、腸内に共生する細菌によって作り出されます。

これらの物質が脳の働きに影響することが、多くの動物実験で明らかにされています。

 

マウスの腸内細菌を入れ替えるとか、無菌のマウスに別のマウスの腸内細菌を移植するとかの実験です。

実際、このような実験をすると、マウスの性格に変化が出るのですが、マウスの性格の変化は行動に現れますので、行動を観察します。

 

例えば、下の写真はNHKスペシャル「腸内フローラ~解明!驚異の細菌パワー~」からですが、いつもおどおどした臆病なマウスと、好奇心いっぱい、全然ひとっところに留まっていられない活発マウスというのがいて、これらの腸内細菌をお互いに入れ替えてみた実験です。

 

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マウスを高さ数センチの台に載せます。

活発マウスは、もう下に降りたくて仕方がありません。ものの10数秒で難なく降りて、どっかに行ってしまいます。

一方、臆病マウス。降りたいのはやまやまですが、何度も下を覗いては見るものの、怖くて降りられません。結局7分経っても降りられませんでした。

このマウスの腸内細菌を入れ替えたらどうなるか?

臆病マウスの菌を移植された活発マウス。ビビってしまって、降りるのに数分もかかるようになりました。

一方、活発マウスの菌を移植された臆病マウス。最後まで降りられなかったのが、数分はかかりますが、それでも降りられるようにはなりました。

結果は何度やっても同じです!

 

さらに同番組から。

異性に積極的なマウスと消極的なマウス。

積極的なマウスは、盛んにメスに呼びかけます。

一方で、シャイなマウスは、極端に呼びかける回数が少ないです。

 

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人間の耳には聞こえないマウスの鳴き声を、特殊な装置で検出

一定時間あたりの呼びかけの回数を測定

 

このシャイなマウスの腸内には、ある種の腸内細菌が作り出す4EPSという物質が多いことが分かりました。

この4EPSという物質を阻害する薬品を投与したところ、どうなったか?

なんとメスに呼びかける回数が格段に増えました。

何度やっても同じ結果です!

 

異性に対して積極的になれない方。

お友達にイケイケドンドンのナンパ野郎がおられたら、その方からウンコをもらって下さい。

昨日までのシャイな自分とはおさらばです(笑)

 

ただし、これらの結果はマウスの話であって、人間が簡単に「シャイな自分とはおさらば」と行くとは限りません。

 

そこで次のステップとして、神経疾患のヒトの腸内細菌を無菌のマウスに移植する実験が行われています。

不安障害の人の腸内細菌を無菌マウスに移植すると、マウスに不安行動が現れることが分かりました。

不安障害の人の腸内細菌が、不安障害の症状を引き起こす何らかの物質を作り出していると考えられます。

 

現在では、ヒトの腸内細菌が作り出す、心に影響を及ぼす物質がいくつか突き止められています。

例えば、アメリカの研究グループが、自閉症の子供の尿には、クロストリジアという腸内細菌が作り出すHPHPAという物質が多く含まれることを報告しました。

 

そこで、深刻な強迫性障害や多動性障害をもち、尿中HPHPAが高い10代の女性患者に、HPHPAを作り出す細菌の増殖を抑える抗生物質を投与し、同時にプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など、腸内フローラに良い影響を与える微生物)を摂り続けたところ、徐々にHPHPAが下がり始め、1年後には病気の症状が完全になくなったと言います。

 

② 細菌叢が悪いとどうなる?

 

ヒトでも、腸内細菌が心に影響を及ぼすことは確実になりましたが、腸の細菌だけでなく、口の中にも細菌叢があり、歯周病なんかがあると、糖尿病はじめ、様々な病気の原因となりますので、口腔ケアも非常に重要です。

 

ここでは、ご腸内の話をしますが、基本的には口腔も同じです。

 

腸内フローラの状態が悪いというのは、悪い菌が優勢になって、いい菌が虐げられている状態です。

この状態では、腸の内容物が腐敗して、有害物質がどんどん作り出されています。

腸管のバリア機能は低下し、悪い菌が作る毒素、特にLPSという毒素が腸管から血管内に侵入しやすくなります。

なんと、毒素だけでなく、悪い菌そのものも血管に侵入します。

無菌であると言われている血管内に菌が入り込むのです!!

 

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当然、これに免疫系が反応し、炎症性物質を出します。

いつまでも腸内環境の改善がないと、この状態が続くか、ますます悪化します。

そして、体のあちこちで異常な炎症状態が続くことに。。。

これが「慢性炎症」の状態であり、体に様々な悪いレスポンスを引き起こさせます。

 

口の中も同じです。

歯周病菌などの悪い菌と毒素が、バリア機能の低下した歯ぐきから血管内に侵入し、慢性炎症を引き起こします。

歯周病が糖尿病の原因になっていることは、前にお話ししました。

011【昔の常識、今非常識】「糖尿病患者は内科に行くな!?」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

③ 結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事

 

体の病気だけでなく、心にも影響を及ぼす私たちの共生細菌。非常に大切です。

 

まず、小さなお子さんをお持ちの親御さん。

腸内フローラを構築する乳幼児期の食事と衛生環境は非常に大切です。

衛生環境というのは、前に「清潔はビョーキだ」と言ったように、過度に清潔にするのは好ましくなく、自然に菌や毒素を取り込むくらいの環境の方がよいということです。

009【清潔はビョーキだ!!(その1)】We love 菌 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

成人してからは、出来上がってしまった腸内フローラを劇的に変更することはできませんが、良い食事、良い生活習慣で、その人なりのベストな腸内環境を維持することが重要です。

018【便移植から腸内細菌を考える】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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022【慢性炎症】「ほとんどすべての病気に共通した本当の原因とは?」

  1. 「慢性炎症」とは?

  2. 慢性炎症の原因

  3. 次回:腸内細菌と心 乱れた細菌叢から慢性炎症へ

 

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1.「慢性炎症」とは?

 

糖尿病や心臓疾患、関節リウマチなんて、かつては腸内フローラや歯周病なんかと全然関係のない事象だと思われていました。

ましてや心の病気が、腸や口の中が密接に関係しているなんて、誰が想像したでしょう?

 

最近では、症状も病態も全然違う病気が、実は共通の原因をもっており、その共通の原因にフォーカスした治療が重要だという考えが出てきました。

 

その共通の原因とは「慢性炎症」です。

体の病気だけでなく、心の病気でさえ、体の慢性炎症から精神に不調をもたらしていることが分かってきました。

 

「炎症」というと、皆さんはどんな印象を持つでしょうか?

 

風邪をひいて熱がでます。熱が出るのは炎症反応のためです。

で、お医者さんに行くと、解熱剤(抗炎症剤)を出してくれます。

ということは、熱は下げるべきもの(炎症は良くないもの)なのでしょうかね?

 

感染症なんかで引き起こされる炎症は「急性炎症」です。

体温を上げることによってウイルスの活動を弱め、同時に免疫力を高めます。

なので、やたらと解熱剤を飲んで熱を下げるのは、好ましいことではありません。

 

ケガをすると、患部が熱をもって赤く腫れたりします。

これも急性炎症です。

ケガの修復では、血液凝固による止血の後、免疫細胞が患部に集まり、たくさんの炎症性物質(サイトカインや成長因子というタンパク質)を出して、細胞の増殖と組織の再生が始まります。

 

今では、ケガをしても(感染症のリスクが高い場合を除いて)基本的に消毒はしません。

消毒液によって様々な細胞にダメージを負わせ、その結果、初期の正しい炎症反応の成立に失敗してしまうと、傷の治りが悪くなることが知られているからです。

つまり、急性炎症というのは病気やケガからの回復になくてはならないものなのですね。

 

そして、ケガや病気が快方に向かい始めたら、速やかに炎症は静まらなければなりません。

治りかけているのに、いつまでも炎症反応が続くのは病的な状態です。

 

例えば、炎症など必要ないのに、くすぶるような小さな炎症反応が続いている状態

これが「慢性炎症」であり、多くの病気の引き金になります。

 

で、慢性炎症の大きな原因はというと、「腸内フローラの乱れ」と「免疫系の不調」です。

(最近では、「口腔内フローラ」も重要であることが分かってきました)

さらに、腸内フローラの乱れと免疫系の不調をもたらすのは、過食や偏食などの不適切な食事や、運動不足、不十分な休息などの好ましくない生活習慣です。

 

肥満の人は、多くの場合で過食か運動不足のどちらか、あるいはその両方です。

肥満では、ほぼ確実に慢性炎症が起きており、多くの病気の原因となるため、最近では「肥満自体が病気である」という考え方が出てきており、「肥満症」という言葉もあります。

「太ってはいるけど、別にどこも悪くないから病気じゃない」と言うかもしれませんが、それは違います。

「血糖値は高いけど、別にどこも悪くない」というのと同じです。

糖尿病は糖尿病、肥満は肥満であり、将来、深刻な事態になるリスクが高い状態ですので、あなどってはいけません。

 

2. 慢性炎症の原因

 

慢性炎症の原因は、腸内フローラの乱れと免疫系の不調だと言いました。

繰り返しになりますが、この2つの原因は何かというと、様々ありますが、過食など不適切な食事、運動不足、休息不足などの不適切な生活習慣です。

 

本ブログ003と話が重なりますが、重要なことですので、もう一度確認しておきましょう。

 

過食などで中性脂肪コレステロールが高い状態が続くと、脂肪細胞がこれを取り込み、肥大化します。

肥満の人の内臓脂肪には、この肥大化脂肪細胞がいっぱい詰まっています。

 

この状態になると、脂肪細胞をはじめ、様々な免疫細胞が分泌する物質の内容が変わってきます。

脂肪細胞では、良い物質のアディポネクチンとレプチンが出にくくなり、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなり、血糖値が下がりにくくなること)や血圧上昇、血栓形成を引き起こす、TNF-α、遊離脂肪酸、アンジオテンシノーゲン、PAI-1などの悪い物質が出るようになります。

 

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免疫細胞でも、IL-1β、TNF-αなどの炎症性物質の産生が優位になり、体のあちこちで慢性炎症の状態です。

 

様々な組織は、長い間炎症性物質にさらされ続けると、その機能や構造に好ましくない変化が起こります。

その変化は、長期的には様々な生活習慣病につながるので、放置は非常に危険です。

 

以前は、「肥満」は単なる栄養過多の状態と思われていましたが、現在では、慢性炎症を伴った「病気の状態」と言えます。

 

しかし幸い、内臓脂肪は付きやすいが、取れやすい。

努力の成果が体重や腹囲の減少という形で目に見えて分かるので、それを励みに頑張ってみましょう。

 

食事・運動・生活習慣の改善です。

 

3. 次回:腸内細菌と心 乱れた細菌叢から慢性炎症へ

 

次回は、腸内フローラがどのような心の状態に影響を及ぼすのか?

それから、細菌叢の乱れた腸や口の中の状態がどういう風になっていて、どんなことが起こって慢性炎症が引き起こされるのかを見ていきましょう。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

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号外【私の師匠が本出版&テレビ出演】

皆さん、こんにちは

 

お知らせです。

私の師匠である飯沼一茂博士が2月に本を出版されました。

遅ればせながらご紹介いたします。

www.wani.co.jp

 

小難しい内容ではなく、日頃の生活で皆さんができることや、「へぇ~、そうなの?」みたいなお役立ち情報をご紹介、みたいな内容です。

 

続いて、5月4日(木)23:17~関西のみですが、朝日放送ビーバップ!ハイヒールに飯沼先生が出演されます。

朝日放送 | ビーバップ!ハイヒール

メインMCのハイヒールや、ブラマヨなどの出演者が、飯沼先生に健康と免疫の問題について質問し、飯沼先生が答えるというもの。

 

すでに収録済み。

飯沼先生ご本人の談によると、台本はあってないようなもの。

関西芸人さんたちのアドリブで、話は二転三転。

編集されたものを見てないので、どんな風に仕上がるのか怖いそうです(笑)

是非ご覧下さい。

 

飯沼先生は、その他にも別所哲也さんのラジオ番組に出演されたりもしています。

J-WAVE TOKYO MORNING RADIO | J-WAVE | radioinfo.radiko.jp ラジオウェブ

 

「健康、病気、免疫」に関心のある方は、「飯沼一茂」でチェックしてみて下さい。

 

お知らせでした。

 

 

021【免疫力の本来のパワー(その3)】「免疫力だけで末期ガンから生還できる!!」

目次:

  • ガン免疫療法は「オオカミ少年」?

  • 全く新しい考え方のガン免疫療法

  • 免疫細胞にはブレーキボタンが付いている!?

  • ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!

  • 免疫力本来のパワー!!

結論:日頃から免疫本来の力を発揮できるように努めましょう!

 

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前回の最後で、「次回は免疫のブレーキとアクセルの話をする」と言いましたっけ?

確かに言いましたが、内容変更させて下さい。

ブレーキの話をします。アクセルは出てきません。

 

今回は、ガンと免疫のブレーキの話を中心に、私たちが本来もつ免疫の力がどれほど強力かというお話を致します。

 

① ガン免疫療法は「オオカミ少年」?

 

免疫力を増強することでガンをやっつける「免疫療法」という考え方は、何十年も前からありました。

しかし、どの方法もあまりうまくいかず、「効く、効く」と言っているうちに、ついには「オオカミ少年化」してしまい、「新しい免疫療法」が出てきても、「眉唾モノ」みたくみられるようになりました。

そう、「免疫療法」というだけで、なんか「代替療法」か「民間療法」みたいに、胡散臭さを感じる人も多かったのです。

 

例えば、ガン患者の血液から免疫細胞を取り出して、免疫力を増強する試薬を加えて試験管の中で培養し、充分パワーアップしたところで患者の体内に戻す免疫療法があります。

パワーアップした免疫細胞は、活発に炎症性物質やなんかを出しているので、体に戻すと強い炎症が起こり、高熱が出たりします。

 

こんな感じで使えなかったり、何かしらの問題があって、費用が高い割に決め手に欠けるのが従来のガン免疫療法でした。

 

② 全く新しい考え方のガン免疫療法

 

従来のガン免疫療法は、どうにかして免疫力をアップさせてやろうという考え方でした。

皆、やたらアクセルを踏むことばかり考えていた訳です。

 

今話題の新しいガン免疫療法の考え方は、アクセルを踏み込むのではなく、免疫系にかかっているブレーキを外してやろうというものです。

逆の発想です。

 

私たちの免疫系は当然、ガン細胞をやっつけようと頑張ります。

一方で、ガン細胞もなかなか賢くて、何とか免疫系をだまくらかして、生き延びてやろうとします。

 

実は、免疫系から逃れるために、ガン細胞が免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞にブレーキをかけていることが分かりました。

ヘルパーT細胞が機能しないと、免疫系全体がダウンすることは、前回のAIDSのお話の通りです。

だったら、このブレーキを解除する方法を見つければ、私たちが本来持つ免疫力が回復するのではないかという訳です。

 

この考えに基づいた新しいガン免疫療法の薬は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、非常に関心が高まっています。

 

③ 免疫細胞にはブレーキボタンが付いている?

 

制御性T細胞(Treg)は免疫系のブレーキだと言いました。

もっと正確に言うと、Tregは免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」を持っているということです。

本当のブレーキボタンは免疫細胞の表面に付いていて、Tregがそれを押すことによって免疫反応を抑える仕組みです。

 

免疫細胞の表面にあるブレーキボタンとは、PD-1というタンパク質です。

Tregは、このPD-1と結合するタンパク質(PD-L1)を持っていますが、言ってみれば、このPD-L1が免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」だということですね。

 

アレルギーとか自己免疫疾患とか、好ましくない免疫反応を抑えたいとき、Tregの「手」(PD-L1)がヘルパーT細胞の「ブレーキボタン」(PD-1)を押すことで、ヘルパーT細胞に活動停止命令が出されます。

これが、Tregがアレルギーとか自己免疫疾患の余剰な免疫反応を抑える仕組みのひとつです。

 

で、我々の免疫系が自らの免疫反応を抑えるこの仕組みを、ガン細胞は巧みに利用しているのです。

 

④ ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!

 

ある種のガン細胞は、Tregの「手」と同様のものを持っていて、ヘルパーT細胞のブレーキボタンを押すことができるのです。

これを押されては、免疫系の攻撃力は著しくパワーダウンです。

なんと狡猾なことでしょう!

 

ガン細胞も賢いが、しかし人間も賢い!

そこで人間が考えたのは、「ヘルパーT細胞のブレーキボタンにカバーをかけて、ガン細胞がボタンを押せないようにすればいいんだ」ということです。

そのカバーというのが、タンパク質でできた抗体です。

 

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人工的に作られた抗体が、ヘルパーT細胞のブレーキボタンであるPD-1と結合して、カバーします

カバーで守られていては、ガン細胞はブレーキボタンに手出しができません。

これで免疫系は本来の力を発揮できます。

 

この抗体が「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しいタイプの薬なわけです。

 

⑤ 免疫力本来のパワー!!

 

免疫チェックポイント阻害剤が初めて認可されたのは、末期のメラノーマ(悪性黒色腫;ホクロからガン化して、転移しやすい)患者に対してでした。

抗がん剤療法、放射線療法とも期待できず、打つ手がない患者のみを対象にして約40%の人に延命効果がありました。

この40%という数字が高いとみるのか、低いとみるのか?

従来なら助からなかったはずの人のうちの40%です。

 

さて、私が言いたいのは40%という数字の評価ではなく、従来の医療で助からないはずだった人でも、「免疫だけの力」で回復するのだということです。

末期がんから回復するのですから、免疫力のパワーというのは、改めて凄いのだということが分かりますね。

 

病気になったときはもちろんですが、日頃から免疫力をバランスのいい状態に保つことがいかに重要かということ。

これが今回の結論です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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020【免疫力の本来のパワー(その2)】「AIDSが明らかにした免疫系の“アキレス腱”ヘルパーT細胞!」

結論:

1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!

2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!

 

次回予告:

免疫系のアクセルとブレーキ

 

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1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!

 

前回、本ブログ019で、免疫系の全体像をお話しました。

 

免疫系には、「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えの備えがあること。

そして、獲得免疫は、敵の種類や性質に応じて、「細胞性免疫」と「液性免疫」の2つのパターンを駆使して戦うことです。

 

そして、敵に応じて、獲得免疫を駆使して、どう戦うかを決めるのは「ヘルパーT細胞」と呼ばれる「免疫系の司令塔」だということでした。

 

いわば、「自然免疫」はゲリラ戦です。

出現した敵に対して、なりふり構わず攻撃しますが、必ずしも効率的に戦果を挙げられるわけではありません。

 

そこで、敵の種類や性質に応じて適宜に対応した戦略を駆使して「獲得免疫」が戦線防衛に重要な役割を担うわけです。

ゲリラ戦の自然免疫に対して、獲得免疫は戦術的な組織戦ですね。

そして、その戦術を決定し、獲得免疫に作戦司令を出すのが「ヘルパーT細胞」なのですね。

凄くないですか? ヘルパーT細胞!!

 

それだけに、ヘルパーT細胞は免疫系の「アキレス腱」とも言えます。

アキレス腱とは? つまり、免疫系の弱点にもなるということです。

 

ここを責められると、獲得免疫は機能しない!!

中田ヒデを失ったトルシエ・ジャパンか!?(古い!!)

 

そのことを、我々人類が改めて思い知ったのは、1980年代前半に突如、人類の前に出現した「AIDS」ではないでしょうか?

 

2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!

 

AIDSは、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」が、実はヘルパーT細胞に感染することで引き起こされる病気です。

 

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HIV感染を抑える種々の薬

 

HIVはヘルパーT細胞に感染し、ヘルパーT細胞をゆっくりと死滅させながら増殖したウイルスは、また別のヘルパーT細胞に感染して、それを繰り返します。

 

その結果どうなるか? 知れたことですね。

どんどんヘルパーT細胞が死んでいき、減っていきます。

そして、何年も経ったころには、獲得免疫はそれこそ「機能不全」に陥ります。

免疫が十分に働かない「免疫不全」の状態であり、そのために何らかの病気を発症した状態がAIDS(後天性免疫不全症候群)です。

 

そのために、普通では見られないような珍しい悪性腫瘍(カポジ肉腫とか)になったり、健康な人なら死なないような感染症(カリニ肺炎とか)で死んだりします。

ヘルパーT細胞が機能しなくなると、こんな状態になるんだということが、AIDSによって明らかになったわけです。

 

AIDSの原因がまだ分からなかったとき、いや、分かった後ですら、AIDSは「20世紀の黒死病」と言われて、専門家すら恐怖しました。

「司令塔を狙い撃ちするウイルスだって!?」 「どうすりゃいいんだ!?」

 

そして、そこから得たものは、「免疫系の司令塔」の重要性です。

それは、ヘルパーT細胞!!

 

時を経て1990年代後半、制御性T細胞(Treg)の発見によって、ヘルパーT細胞の重要性が、さらに強化されたのでした。

 

次回予告:

免疫系のアクセルとブレーキ

 

さて、話が複雑になるので、これまでお話しませんでしたが、実はヘルパーT細胞には何種類かあります。

それらは1型、2型、17型と呼ばれます。(3型とか4型とかはなくって、2型の次はいきなり17型です(笑))

 

Tregが免疫系のブレーキならば、17型ヘルパーT細胞はアクセルと言えます。

このアクセルとブレーキの踏み具合で、免疫の攻撃力をパワーアップしたり、余計な免疫反応を抑えたりしています。

実際、自己免疫疾患の人は、アクセルである17型ヘルパーT細胞が優勢になっています。

こういう時にはTregに頑張ってもらって、過剰な免疫反応にブレーキをかけてもらわなければならないのですね。

 

健康で免疫系のバランスがいい人では、このアクセルとブレーキの踏み具合が絶妙に制御されています。

このバランスを崩すような原因があると、様々な健康トラブルが発生します。

 

次回は免疫系のアクセルとブレーキのお話です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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019【免疫力の本来のパワー(その1)】「免疫系の仕組み」

目次

  1. 免疫系の仕組みを知る大切さ

  2. ふたつの免疫 ―自然免疫と獲得免疫―

  3. 免疫系の全体の仕組み

  4. 2種類の獲得免疫

  5. 免疫系の司令塔

 

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最近、珍しく忙しくて、前回の記事から日が空いてしまいました。

 

今回から、具体的に免疫の仕組みについてみていき、なぜ免疫が私たちの体にとって大切かということの理解を深めていきたいと思います。

 

1.免疫系の仕組みを知る大切さ

 

前回、腸内フローラの大切さについてお話しました。

また、腸内フローラをいい状態にキープすることで、免疫系もいい状態になる、つまり、両者は互いに影響し合っているのだということでした。

ですから、免疫系を整えるには、腸内フローラを整える「腸活」が重要という結論です。

 

私たちの免疫系は、がんや病原体から身を守ってくれる一方で、アレルギーや自己免疫疾患を引き起こす、いわば諸刃の剣であり、非常に絶妙な制御の上に成り立つシステムです。

本当に繊細なシステムですから、そのことを理解すれば、なぜ免疫系を崩すようなことをしてはいけないかが分ります。

 

今回から少し難しくなりますが、免疫系の基本的な仕組みを見ていきましょう。

免疫系は「異物を認識して排除する」のが基本だと言いました。

ですので、免疫系を理解する第一歩として、異物を認識して排除する免疫系の仕組みを見てみましょう。

 

2.ふたつの免疫 ―自然免疫と獲得免疫―

 

麻疹(はしか)にかかったら二度とかからない「二度なし現象」については、皆さんよくご存じでしょう?

この時に、よく「抗体ができた」などといいます。

 

予防接種のお陰で、その病気にならずに済んだら、「抗体ができたからだ」という風に言われます。

 

この抗体という物質(タンパク質ですが)は、免疫系の非常に強力な武器で、特定の異物をロックオンして狙い撃ちするミサイルのようなもので、私たちの体を守る上で非常に重要な存在です。

 

でも、初めての感染の時は、この抗体を作るのに時間がかかります。何日もかかります。

ですから、病原体を撃退するのに時間がかかって、それが麻疹ウイルスだったなら「はしか」という病気になるのです。

 

ところが、一度はしかになって抗体ができたら、その敵の正体を憶えていて、二度目の感染の時は迅速に抗体を作り、病気になる前にウイルスを撃退します。

これが「二度なし現象」です。

 

この、一度異物と遭遇して敵の正体を憶えることによって獲得する免疫を、「獲得免疫」と言います。

 

逆に言うと、初めての感染の時には、獲得免疫を頼ることはできないわけです。

その場合には元から備わっている免疫というのがあって、これで対抗します。

この元から自然に備わった免疫「自然免疫」といいます。

 

我々の免疫系は、「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えになっています。

 

3.免疫系の全体の仕組み

 

下のイラストに免疫系の大体の仕組みを図式化しました。全体像を見ていきましょう。

 

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異物(免疫系によって認識される異物を「抗原」と呼びます)が体内に侵入したとします。①

まずは、自然免疫の出番です。

 

自然免疫の細胞には、マクロファージや樹状細胞、好中球などの「貪食(どんしょく)細胞」と呼ばれる、文字通り、異物を食べる細胞があります。②

 

特にマクロファージは大喰らいで、異物なら何でも手当たり次第に食べてしまう食いしん坊(バンザイ)です。

 

下の写真は、培養しているマクロファージにポリスチレンの小さな玉(ビーズ)を入れてみたところです。

 

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なんと、長~い触手を伸ばしてビーズを捕まえ、食べてしまいます。

こんな、細胞内で消化できないようなものまで見境なく食べてしまうほど、マクロファージは食いしん坊です(笑)。

異物侵入の初期では、このマクロファージが大活躍です。

 

また、樹状細胞という細胞も異物を食べます。

この細胞は、食べた異物を細胞の中で分解して、分解してできた異物の破片を細胞の表面に出します。

そして、ヘルパーT細胞という獲得免疫の細胞にくっつきます。

 

くっついて何をするかというと、異物(抗原)の破片を、ヘルパーT細胞という獲得免疫の細胞に示して、敵の特徴を伝えます(これを「抗原提示」といいます)。

抗原提示を受けたヘルパーT細胞は、敵の情報を知り、免疫系でどのように敵と戦えばいいのかを判断します。

 

たとえてみれば、ヘルパーT細胞というのは、免疫系の「コールセンター」みたいなものですね。

 

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異物を食べて活性化した樹状細胞はたくさんの突起を出す

ヘルパーT細胞にくっついて抗原提示をしているの図

 

例えば皆さん、何か事故があったとき119番に電話しますね。

そしたら、救急のコールセンターのオペレーターが言います。「火事ですか? 救急車ですか?」

オペレーターは、通報の内容から何が起こったのかを知り、どのように対処すればいいかを判断して、怪我人がいるなら、現場に近い消防署から救急車を出動させるよう要請します。

 

このたとえの様に、ヘルパーT細胞は、樹状細胞から侵入者の情報を得て状況を知り、獲得免疫でどのように戦えばいいのかを判断し、異物と戦う獲得免疫の細胞に出撃要請を出すわけです。③から④または⑥

 

4.2種類の獲得免疫

 

ヘルパーT細胞の指令によって出動する獲得免疫には2種類あります。

それは細胞性免疫と液性免疫です。

 

細胞性免疫は、リンパ球の一種であり、攻撃力を持つキラーT細胞という細胞が主に働くため、「細胞性免疫」と呼ばれます。

 

液性免疫では、B細胞というリンパ球が、ミサイルタンパクである「抗体」をたくさん作り出して、この抗体ミサイルが異物にロックオンして攻撃を行います。

この抗体というのはタンパク質であり、血液中や体液中に溶けて存在しており、液体の状態で働く免疫ですので、「液性免疫」と呼ばれます。

 

この2つの獲得免疫、分担はどうなっているかというと、大雑把に言えば、がん細胞やウイルス感染細胞のように問題を抱えた細胞を攻撃するのが細胞性免疫で、細菌や(細胞に感染していない)ウイルスなどの病原体や毒素など、外からやってきた異物に対応するのが抗体です。

(あくまで、大雑把な役割分担です)

 

コールセンターのオペレーターであるヘルパーT細胞は、単なるオペレーターではありません。

敵の種類から、細胞性免疫と液性免疫をどのような割合で出動させるのかを判断しているのです。

賢いですよね~!

ですから、ヘルパーT細胞はよく、「免疫系の司令塔」と呼ばれます。

 

5.免疫系の司令塔

 

ここまで免疫系の仕組みを見てみると、免疫の司令塔であるヘルパーT細胞が非常に重要な働きを担っていることが分かるでしょう。

 

この司令塔に何かトラブルがあると、細胞性免疫と液性免疫の両方の獲得免疫が正常に働かなくなることがお分かり頂けますよね。

 

ヘルパーT細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞に対する攻撃にも、細菌やその他の異物の排除にも、自己免疫疾患やアレルギーの抑制にも、AIDS発症にも深く関わっている非常に重要な細胞なのです。

前にお話した制御性T細胞(Treg)の働きも、このヘルパーT細胞と大いに関連があります。

 

今回の話では是非、免疫系におけるヘルパーT細胞の重要性について憶えておいて頂ければと思います。

その上で次回は、ヘルパーT細胞を中心に、免疫と病気の関係についてお話していきます。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

018【便移植から腸内細菌を考える】

① 期待が大きすぎ? 便移植は究極の治療法ではない!

② 便移植の課題・問題点

③ つまり、いい腸内フローラをキープしましょうということ

 

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私の好きな食べ物で一番体に悪いものといえば、圧倒的に「ラーメン」でしょうね(笑)

それも油こってり、「横浜家系ラーメン」最高です(イェイ!)

今日もラーメン食べてしまいました(涙)

ラーメン家に入る前にはいつも、店の前で「お前は自分の寿命を縮めてまでも、本当に今、このラーメンが食べたいのか?」「もう一度聞くでェ。ホンマにか?」と自問しています。

そして、答えはいつも「Yes」です(当然やろ!)

 

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前回、制御性T細胞のお話をして、これから免疫の本道に突入しようかと意気込んでいたのですが、前回017の最後の方で少しだけ触れた「今話題の便移植」のことが気になって仕方がありません。

「今話題」というのは、「すごく期待されている」とかっていう誤解を与えたのではないかと心配になりました。

 

私が便移植に触れた真意は、実は「腸内細菌の重要性」を訴えたかったからです。

今回は、大事な腸内細菌のお話をします。

 

① 期待が大きすぎ? 便移植は究極の治療法ではない!

 

通称「便移植」といいますが、別にウンコそのものを移植しようということじゃぁありませんので、御安心下さい。

ネットをあれこれ見ていると、千葉大学は「糞便移植療法」(やっぱウンコを移植するように聞こえるなぁ)とか、ウィキでは「便微生物移植」(ウン、これなら誤解を与えなさそう)と表現されています。

わたし的には「他家腸内微生物移植」と呼びたいです。どうです? すこしはキレイに聞こえませんか?

 

実際には、健康な人の便を採取し、これを生理食塩水に懸濁して、ろ過して固形物を除いたものを大腸内視鏡を使って患者の大腸内に注入します。

 

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移植により、病気の人の悪い腸内フローラを健康な人のいい腸内フローラに置き換えることで病気が治る、あるいは症状を改善するというものです。(厳密にいうと置き換えられないのですが、その話はあとで)

 

実際、効果があって、潰瘍性大腸炎とかクローン病とか、厚生労働省から「特定疾患」に指定されている自己免疫疾患の難病が劇的に良くなるという症例がたくさん報告されています。

そう言う報告だけを見ると、誰にでも効くような印象を持つのも無理からぬこと。。。

 

便移植が一般の人に広く知られるようになったのは、2015年2月に放送されたNHKスペシャル「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」がひとつのキッカケでしょうね。

https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20150222

決して番組批判ではありませんが(実際、いい番組だったと思います)、あの番組では、患者さんやその関係者に過度の期待を与えてしまったような気がします。

あたかも便移植が究極の治療法だと。。。

 

制作側の意図は、恐らくは「腸内細菌の驚異のパワー」を伝えたかったのだと思いますが、便移植で潰瘍性大腸炎が治るという部分が余りにもインパクトが強かったです。

 

便移植は欧米では盛んですが、日本では実施医療機関順天堂大学、慶応大学、千葉大学、滋賀医科大学など)はまだ少なく、費用も1回100万円程度かかります(もちろん保険効きません)。

私たち庶民には、そんなにホイホイとはできませんね。

でも、難病が完治するなら安いものかもしれません。

 

しかし、ひとつ冷静に考えてみましょう。

 

② 便移植の課題・問題点

 

どうも、便移植で難病が(皆、誰でも)「完治」するような誤解を与える報道が多いですねぇ。

実際、「便移植 問題点」でググってみても、便移植の問題点を明確に指摘しているサイトには、お目にかかれませんでした。

 

ですので、これから私が言う便移植の問題点というのは、あくまで本ブログ限定の私の私見だということをご了承下さい。

 

2015年のこのような論文があります。

Gastroenterologyという、消化器系では権威のある学術雑誌です。

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潰瘍性大腸炎(我が国では厚労省により特定疾患に指定された難病です)の患者38人に、複数の健康な人の便(正確には糞便微生物)を移植しました。

なんと、著効率はたったの24%(9人)です。

費用の安くない便移植ですが、効くか効かないか、やってみないと分からない訳です。

(「効かなかったら100%返金保障」ならやってもいいかもですね)

 

ただし、発病後1年以内であれば75%に効果ありです。

 

また、便の提供者は健康であれば誰でもいいという訳ではなく、効果のある便の主は特定の人だと言います。

つまり、効果のある便の安定供給のためには、効果のある便の提供者を見つけ出し、確保しなければならないという問題があります。

逆に言うと、それが確保できると、著効率は上がるということではあります。

 

私が思う便移植の最大の問題点は、近年始まった療法だけに、長期的な持続効果について、データが不足していることです。

便移植でいい腸内フローラを恒久的に構築できるのか? という問題です。

 結論に至るには、もうしばらく臨床での長期観察データの蓄積が不可欠です。

 

③ つまり、自分なりのベストな腸内フローラをキープしましょうということ

 

要するに、腸内細菌が病気と健康に深く関わっているということは間違いありません。

 

腸内フローラは、食事や休息、運動などの生活習慣の影響を受け、短時間で良くも悪くも変化します。

暴飲暴食だけで簡単に変わります。

 

また、腸内フローラは人それぞれ異なり、10人いれば10通りの個性があります。

 

腸内フローラは子供の時に決まってしまい、大人になってから乳酸菌とかビフィズス菌とか飲んでも、変わるというものではありません。

ただ、一時的な効果はありますので、効果の継続を期待するなら飲み続けることです。

 

腸には「腸管免疫」という特有の免疫系があり、取り込むべき菌と取り込まない菌を選択しています。

一度要らない菌と決まると、いくらいい菌でも取り込んでくれません。

それが免疫というものです。

そして、その取捨選択が決まるのは子供の間で、乳幼児期の食事や生活環境などの影響を大いに受けるのです。

 

前にお話した通り、子供のころに過度に清潔な環境を与えることで、好ましくない腸内フローラが出来上がり、その腸内フローラが免疫系を不健全にします。

takyamamoto.hatenablog.com

たとえば、制御性T細胞が育たず、アレルギー性疾患になる一因となります。

潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患も然りですね。

 

いい腸内フローラと健全な免疫。お互いに影響し合っています。

 

「腸内フローラは一生変わらない」と言っておきながらなんですが、腸内フローラは結構短期間で劇的に変わります。

はぁ、何言ってんの?

いや、本ブログ005では、たった2週間の食事の変更で、劇的に腸内環境が変わることをお伝えしましたね。

takyamamoto.hatenablog.com

 

「変わらない」というのは「決して他人のような腸内フローラに変更することはできない」という意味であり、不摂生で悪い方向には簡単に変わってしまいます。

 

つまり、人それぞれにベストな腸内フローラというのがあり、そのベストな状態をキープするために生活習慣を考える必要があります。

食事、運動、休息、飲酒、喫煙、これらの見直しですね。

 

そして、またまた出ました「βグルカン」。

 

βグルカンは小腸で免疫細胞と出会い、免疫系を調整してくれます。

βグルカンを飲んでると、大腸炎のマウスでTregが増えて、症状を改善するという論文もあります。

 

そして、小腸から大腸に達したβグルカンは、良い菌の餌になって、良い菌を育て、腸内フローラを良好な状態に保ってくれます。

 

腸内フローラと免疫は緊密に連携していますが、βグルカンはその両方に直接的に働きかけてくれます。

まさに「最強」です。

 

しかし、βグルカンの効果も一時的なものです。

ですから、継続して摂取しなければなりません。

 

私の場合、以前は(子供のころから)慢性的な軟便(ほとんど水様性)でしたが、βグルカン摂取3ヶ月後くらいで改善しました。

なによりも今は便が全く臭くないのです。

これは腸内フローラが改善した明確な証拠です。

(あくまで個人の感想です)

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

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017【自己免疫疾患と制御性T細胞】

1.「自己免疫疾患」って?

2.制御性T細胞(Treg; ティーレグ)って?

3.Tregの働き

4.病気と免疫とβグルカン

 

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1.「自己免疫疾患」って?

 

免疫は本来、異物を認識し、排除するシステムとして定義されました。

だから、免疫をパワーアップするβグルカンが、がんや感染症に効果があるというのは理解できると思います。

 

でも、βグルカンは、リウマチなどの自己免疫疾患にも有効であることが示されています。

異常な免疫反応による自己免疫疾患に、免疫力を増強するβグルカンが効くなんて、すっごく矛盾しているように思えますね。

 

自己と非自己(異物)の認識。これが免疫系の基本です。

本来、免疫系は自己を攻撃しないものです。

 

でも、何らかの原因で免疫系の制御が狂うと、自己を攻撃する免疫細胞が活動しはじめます。

それが「自己免疫疾患」です。

 

主な自己免疫疾患

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代表的な自己免疫疾患は、なんと言っても関節リウマチでしょう。

リウマチでは、攻撃型のT細胞という免疫細胞が自分の関節の滑膜(かつまく)という組織を攻撃し、炎症、変形する病気です。

 

リウマチに次いで患者が多いのがSLE(全身性エリテマトーデス)で、これはいろんな臓器が攻撃を受けます。

 

若い男性に多いクローン病では、口から肛門までの消化器がやられるため、激しい下痢で、常にトイレの場所をチェックしていないと、外出もままならないと言います。

 

ゴルゴ13の持病として有名なギラン・バレー症候群は運動神経が侵されるため、運動機能に障害が出ます。

 

以前は、なぜ自分の組織や細胞を攻撃する免疫細胞が存在するのか謎でした。

しかし、1995年に坂口志文(しもん)先生が、免疫を抑える機能を持つ制御性T細胞(Treg; ティーレグ)を発見されてから、なぞが解明されました。

 

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 坂口志文 大阪大学教授

 

2.制御性T細胞(Treg)って?

 

下の図を見て下さい。

(少し難しい話になりますので、2は飛ばして読んで下さっても結構です。免疫反応を抑える細胞である「Treg」という言葉だけは覚えて下さいね)

 

 

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以下が坂口先生らが行った画期的な実験です。

 

普通のマウスからT細胞という種類のリンパ球を採ってきます。

このリンパ球をヌードマウスという毛のないマウスに移植します。

その結果どうなるか?

何も起こりません。(なんじゃ、そりゃ?)

 

次に、普通のマウスのT細胞全体から、ある種類のT細胞を取り除きます。

そして、除いた後のT細胞をヌードマウスに移植します。

そうすると、様々な自己免疫疾患を発症するのです。

T細胞の提供元のマウスは健康なマウスです。なのになぜ自己免疫疾患に??

 

ヌードマウス(文字通り、毛のない裸のマウス)というのは、免疫系に異常のあるマウスで、T細胞を持っていません。

T細胞がないので、自己反応性T細胞による自己免疫疾患には絶対ならないのです。

なのになぜ、健康なマウスのT細胞を移植することで自己免疫疾患になるのか?

 

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ヌードマウスは胸腺がないので、成熟T細胞が育たない。成熟T細胞がないので、抗体も作れない。

 

初めの実験では、全部のT細胞を移植して、何も起きませんでした。

次の実験で、ある種のT細胞を除いたところ、自己免疫疾患になりました。

このことから導き出される推論は、

「健康なマウスも、元々自己反応性T細胞を持っている。そして、自己反応性T細胞の働きを止めるある種のT細胞もある。だから、後者を取り除くと、自己反応性T細胞を抑えられなくなり、移植されたヌードマウスは自己免疫疾患になる」です。

 

今では、誰でも(健康な人でも)自己反応性の免疫細胞を持っていることが分かっています。

それでも自己免疫疾患にならないのは、Tregが自己反応性免疫細胞の働きを抑えてくれているからです。

自己免疫疾患の人は、何らかの理由でTregが上手く機能していないのですね。

 

坂口先生はTreg発見の功績で、毎年ノーベル賞候補になっていますね。

それだけ重大な発見でした。

早く受賞して頂きたいです。

 

3.Tregの働き

 

Tregは必要な時に働いて、好ましくない免疫反応を抑えます。

 

好ましくない免疫反応といえば、アレルギー性疾患なんかもそうです。

アレルギー性疾患は、花粉とか、食材なら蕎麦とかピーナッツとか、本来は無害なため、免疫系が反応してはいけないものにまで過剰反応することによります。

Tregがしっかり働いてくれると、この過剰な反応を抑えてくれるので、アレルギーにならずに済みます。

実際、アレルギー疾患の人は、Tregの数が少ないことが知られています。

 

Tregは、驚いたところでは、流産の抑制に働いています。

 

受精卵や胎児は母体にとって異物です(DNAの半分は父親のものなのですから)。

ですので、免疫系がこれを排除しようとします。

これでは流産してしまいます。

そこで、Tregが免疫系による受精卵や胎児への攻撃をブロックしているのです。

実際、妊娠動物ではTregの数が増え、多くが子宮に集まっていることが分かっています。

 

不妊治療をしても、なかなか妊娠しないとか、何度も流産しているとかいう女性がおられますが、このような女性の中にはTregの働きの悪い人がいるのかも知れません。

 

長い間、不妊治療を受けているのに全然妊娠しない。

精子の機能や排卵に問題はなく、お医者さんにも原因が解らない。

そのような人の中には、実はちゃんと受精はしているのに、免疫系の攻撃によって、本人も気が付かない間に流産していたという例があるのかもせれません。

 

簡単かつ効率よくTregを増やす方法が確立すれば、不妊で悩む多くの女性への福音になるかもしれません。

いや、不妊だけでなく、自己免疫疾患やアレルギー性疾患も同じです。

 

実は、比較的簡単にTregの働きを良くし、実際に難病の自己免疫疾患で高い効果を上げている方法があります。

それは「便移植」です。

ウンコを移植だって??(いま話題ですよー)

いずれお話します。

 

あっ、それから、もっと簡単な方法は「βグルカン」です。

 

4.病気と免疫とβグルカン

 

現在では、「免疫」なしでは病気について考えることはできません。

糖尿病や動脈硬化など、「免疫と関係ないんじゃないの?」なんていう病気も、実は免疫と切り離して考えることはできないのです。

 

がんや感染症、自己免疫疾患やアレルギー、生活習慣病、それから心の病気に至るまで、これらは互いに全然違う病気のように思えて、実は根幹には「免疫系の制御の破たん」という問題が潜んでいます。

 

少しでも健康問題に関心のある方は、是非、日頃から免疫の情報をチェックしてみて下さい。

 

かつてβグルカンは、免疫力をパワーアップする「免疫賦活剤」だと考えられていましたが、免疫を強めるだけではない作用のあることが分かってきて、むしろ「免疫調整剤」と言った方が正確でしょう。

「調整剤」と捉えることによって、なぜβグルカンが様々な疾患に対して効果を示すのかが理解できるようになります。

 

今回も最後まで読み下さり、ありがとう御座います。

 

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016【βグルカンって?】

  1. βグルカンってなに?

  2. βグルカンはどうやって免疫系を賦活化(ふかつか)する?

  3. 具体的な効果は?

 

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1.βグルカンってなに?

 

βグルカンについて語れば、たくさん記事が書けてしまいますので、今回は概要だけお話します。

 

βグルカンとは、真菌類(カビとかキノコとか)の細胞壁に含まれる多糖類です。

 

多糖類というのは、その名の通り糖がたくさん鎖状につながったものですね。

 

糖にはブドウ糖とか果糖とか、ひとつの糖からなるのが単糖、ブドウ糖と果糖とが結合したショ糖(砂糖です)なんかは、二つの糖でできているので二糖です。

糖が何百、何千とつながったのが多糖ですね。

因みに、糖が数個から十数個くらいつながったのがオリゴ糖で、これも体にいいですね。

 

で、βグルカンと言うのは、ブドウ糖がたくさんつながった多糖です。

 

理科の教科書を思い出せる方は、「ブドウ糖がつながったのはデンプンじゃねぇの?」て言われる方がいるかもしれませんが、その通りですね。

 

ブドウ糖ブドウ糖の結合の仕方には2通りあって、α型とβ型と言われます。

デンプンはα型、βグルカンはβ型です。

 

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βグルカンの構造(これは枝分かれしていますが、枝のないものもあります) 

 

ほんの少しの構造の違いですが、デンプンとβグルカンの栄養素としての働きは全然違いますね。

 

デンプンは分解されてエネルギー源になります。

 

βグルカンは消化吸収されず、そのまま排泄されますが、食物繊維として腸内環境を整えるいい働きがあるのに加えて、強力な免疫賦活(めんえきふかつ)作用があることです。

一時期、アガリクスが流行りましたが、要するに、βグルカンを豊富に含む素材として注目されたのでした。

 

2.βグルカンはどうやって免疫系を賦活化(ふかつか)する?

 

βグルカンを食べると、消化吸収されずに腸に達します。

小腸にはたくさんの免疫細胞が集まっています。

特にマクロファージとか樹状細胞とかの免疫細胞の表面には、βグルカンと結合するタンパク質(「受容体」と言います)があって、小腸内でβグルカンがこのタンパク質と結合します。

この受容体と言うのは、腸から侵入してくる異物に対して警戒するレーダーのような役割を持っています。

 

βグルカンと言うのは菌の細胞壁の成分です。

受容体にβグルカンが結合したということで、免疫細胞は「菌が侵入したんじゃないか?」と勘違いするわけです。

で、免疫細胞はさまざまなタンパク質を放出して、他の免疫細胞を活性化し、免疫系が警戒体制に入るわけです。

これで、いつ敵が本格的に攻めてきても対応できる状態です。

 

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小腸でβグルカンがマクロファージの受容体に結合し、マクロファージが別の免疫細胞を活性化するの図 

 

βグルカンを毎日飲んでいると、この警戒態勢がずっと維持されます。

でも、特に害はありません。

便通がよくなるくらいですね(笑)

 

3.具体的な効果は?

 

抗がん作用や糖尿病の改善効果に関する論文は枚挙にいとまがありません。

 

がんに関しては、βグルカン単独ではなく、抗癌剤との併用が有効です。

βグルカンの免疫賦活能による抗がん作用に加えて、抗癌剤の副作用を低減する作用が多く報告されています。

 

抗がん剤は免疫力を著しく下げます。

高い免疫力を保つことが好ましいがん患者に対して、免疫を下げるような薬を投与しなければならないのは大きなジレンマですが、βグルカンによって薬による免疫力の低下を抑えられます。

 

また、抗がん剤の問題点は、正常な細胞までも殺すことです。

胃腸や毛根など、分裂が活発な細胞が大きなダメージを受けますので、下痢や嘔吐、脱毛などの副作用が出て、副作用の辛さに耐えかねて抗がん剤治療を断念するケースも多くあります。

この副作用を軽減する効果がマウスなどの動物実験で多く実証されていますし、多くの患者さんの実体験も寄せられています。

 

私たちも、本ブログ014でご紹介した肝臓転移がんと糖尿病の症例、それと、足の骨が露出するほど重度で、筋移植が必要と診断された低温火傷が、手術をせずに、βグルカンを塗っただけで治癒した症例(塗っても効きます!)を、現在、論文投稿中です。

takyamamoto.hatenablog.com

 

「えぇ~?ホンマかいな?」と思われるでしょうね。

当然だと思います。

 

順調にいけば、どちらの論文も来月出版になります。

発表前なので詳しく書けませんが、発表後に患者さん本人の承諾が得られれば、百聞は一見に如かず、是非、写真付きでご紹介したいです。

低温火傷の写真は、かなりショッキングですけど、見れば一目瞭然です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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015【健康食品の本モノとまがい物の見分け方!】

目次:

  1. 「本モノ」を伝えたい

  2. まがい物を許せない

  3. 本モノとまがい物はどうやって見分ける?

 

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1.「本モノ」を伝えたい

 

私がこのブログを始めた理由は、病気と健康についての正しい情報をできるだけ多くの人にお伝えし、我国の医療経済の立て直しに貢献したい、というのがひとつです。

 

そして、もうひとつは、健康食品の中にはまがい物が多いのですが、なかには確かにお金を払う価値のある「本モノ」もあることをお知らせしたい、ということです。

 

しかし、医薬品でない健康食品は、その効果効能を謳うことは法律違反です。

ですので、たとえ「本モノ」の製品を持っているメーカーや販売会社でも、広告宣伝に苦慮しています。

 

「末期がんから助かった人がたくさんいます」なんて絶対言えません。

(そもそも、そんな話は胡散臭すぎて、逆効果でしょう。たとえ本当だとしても)

「免疫力をアップします」程度でもアウトです。

 

では、メーカーや販売会社はどうやって製品の良さをアピールすればいいのか?

各社、頭を悩ませる難しい問題です。

 

でも、私が個人の立場で「あれがいい」とか「この商品の特徴はこうだ」とかブログで書いて、お薦めするのは自由です。

 

是非、私が発信する情報を皆さまの健康維持に役立てて頂きたい、というのが本ブログの最大の目的です。

 

2.まがい物を許せない

 

本モノもある一方、怪しい商品もあります。

いや、こちらの方が多いと言っていいでしょう。

絶大な効果があるようにふれ込んで、あきらかに科学的根拠のない製品を売ろうとしている広告を見かけます。

 

たとえばこんなの。

(商品名は伏せますが)クリーム50gが、なんと10数万円!!

キャッチコピーは「老化は病気だ。病気なんだから老化は治療できる!!」

このクリーム、塗れば細胞が若返る秘薬だというのです。

 

老化は病気ではありません。

生物のライフサイクルの一部としてプログラムされた、成長過程に続くプロセスです。

ヒトも動物も、生殖期間が過ぎれば世代交代のために老いて死んでいかなければなりません。

「成長」が必然なら「老化」も「死」も必然であり、したがって病気ではありません。

 

「老化は病気」でググってみると分かりますが、「老化は病気だ」とか「老化は治せる」とか主張する記事もあります。

まぁ、色々な学説や仮説があっても構いません。

だって、「老化は必然のプロセス」と言うのも私の考えにすぎませんから。。。

 

詳しいことは割愛しますが、普通の細胞は寿命が決まっていて、分裂できる回数に制限があります。

細胞によって違いますが、40回とか50回とか、分裂の限界点(「ヘイフリック限界」と言います)に達したら、それ以上は分裂できなくなります。

これは、細胞分裂の際のDNAをコピーする方法の原理からして、仕方のないことです。

つまり、細胞の寿命は、初めからプログラムされて決まっている訳で、私が「老化は必然」と言うゆえんです。

 

ですが、骨髄で血液細胞を作り出す造血幹細胞なんかは、一生分裂し続けなければならないので、それでは困ります。

そこで、幹細胞ではテロメラーゼという酵素の遺伝子をONにすることで、このプログラムされた寿命を何度でもリセットし、これにより際限なく分裂できるのです。

実は、がん細胞でもこのテロメラーゼがONになっているので、無限に増殖できるのですね。

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で、このクリームにはテロメラーゼ酵素が配合されており、これを塗ると皮膚の細胞に浸透して、分裂回数の制限がリセットされるので、肌が若返るという説明のようです。

 

んなアホな!!

 

細胞が「死なないこと」は「若いこと」と同じじゃァない!!

だったら、がん細胞は若いのか!?(確かに元気ではあるな。。。)

 

いや、このクリームが毒にも薬にもならなければまだいいのですが、本当に細胞にテロメラーゼが働いた日には一大事です。

 

皮膚の細胞と言うのは、1ヶ月~1ヶ月半くらいで入れ替わります(「ターンオーバー」と言います)。

皮膚の下の方の層で細胞が分裂して増え、表皮の方にせり上がっていきます。

表皮近くまで上がってくると細胞核が脱落して(「脱核」と言います)、核のない死んだ細胞になります。

この死んだ細胞が積み重なった一番外側の層を「角質細胞層」と言い、外敵が体内に侵入するのを防ぐ大事な役目(「バリア機能」と言います)をしています。

で、角質細胞層の外側の死んだ細胞は、やがて表皮上から垢としてはがれていき、下から別の細胞が上がって来て交代します。

 

正常な皮膚のターンオーバーのためには、表皮近くで細胞が「死ぬ」ことが不可欠です。

 

ところが仮に、このクリームを塗ったために表皮の細胞が死ななくなったらどうなるでしょう?

皮膚組織には、死なないで増え続ける細胞であふれ返り、正常なターンオーバーは破綻するでしょう。

 

また、テロメラーゼは核のない細胞では働きません。

ですから、このクリームが皮膚細胞に対して効果を発揮するためには、皮膚の細胞が脱核しないことが前提です。

皮膚の細胞が脱核しない!? これは超異常な現象で、これを病気と言わずしてなんと言う!?

 

以前のブログ012で、毎秒膨大な数の細胞が死んでいると言いました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

これは正常な状態です。

ですから、体の制御を正常に保つためには必ず死ぬべき細胞というものがあり、死ぬべき細胞は死ぬべき時に死なねばなりません。

そのような細胞を死ななくすることによって若返るなんて、まったくナンセンスにもほどがある(怒!!)

 

残念ながら、このような話に飛びつき、価値のないもののために大金を失う人がいるのも事実でしょう。

カネを失うだけならまだしも、返って病気になるようなことがあれば悲劇です。

 

法律で本当に規制して頂きたいのは、このたぐいの商品なんですが。。。

 

3.本物とまがい物はどうやって見分ける?

 

これはもう、科学的根拠がどれほどあるか!に尽きます。

科学的根拠とは客観的な科学データであり、中立な立場の第三者が誰でも検証できるものです。

すなわち科学論文がそれです。

 

論文の数は多ければ多いほどあった方がいいですね。

多くの研究者が、研究費を投入するだけの価値を認めている証拠です。

また、データが多ければ多角的な側面から現象を検証できますので、導き出された結論の信頼性が増します。

 

でも一般の方が論文情報を調べるなんて、なかなかできませんよね。

 

ですので、本モノの証しとも言える第三者の科学論文について、できるだけ難しくならないようにご紹介していきたいと思います。

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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014【健康に過ごすための“正しい食事7ヶ条”】「ビタミン、ミネラル、食物繊維、そしてβグルカン」

しばらくお休みしていた“正しい食事7ヶ条”に戻ります。

 

結論:

  1. ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂るために野菜や海藻、キノコを摂りましょう

  2. 食物繊維はあらゆる病気予防に非常に重要

  3. 数少ない「本モノ」の食材! それは「βグルカン」

 

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  1. ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂るために野菜や海藻、キノコを摂りましょう

 

ビタミン、ミネラルはカラダの機能を維持するためにとても重要なことは、よく知られているので、詳しくお話する必要はないでしょう。

(と言うより、あんまりお話しできるネタを持っていません)

 

ビタミン、ミネラルは微量でいいので、過剰に摂取する必要はありませんが、バランスよく摂るために、できれば多種類の野菜や海藻、キノコを積極的に摂りましょう。

難しければ、サプリメントを活用しましょう。

私は、野菜などの摂取量が「最近少ない」と感じたときだけ、マルチビタミンマルチミネラルを補給しています。

 

果物の摂取はほどほどに。糖分の多いものもありますから。

 

  1. 食物繊維はあらゆる病気予防に非常に重要

 

ビタミン、ミネラルと違い、少し前までその重要性が十分に広まっていなかったのが「食物繊維」です。

 

食物繊維はほとんど消化吸収されず、そのまま排出されるため、かつては栄養素としての価値が十分に認識されていませんでした。

ただ、腸内環境を整え、便通を改善することは知られていましたので、若い女性を中心に「ファ○バー○ニ」などの商品がヒットはしていました。

 

10年近く前から、腸内細菌と多くの病気との関係の研究が盛んになると、腸内環境を整える食物繊維の重要性が見直されるようになりました。

腸内環境がよくなることによって、結果的に多くの生活習慣病の改善効果のあることが明らかとなり、今では、その効果が教科書にまで載るようになりました(下表)。

 

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 「健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト」(日本医協学院)を改変

 

ところが、ある種の食物繊維は、単に腸内環境を整えるだけでなく、プラス、強力な免疫賦活(めんえきふかつ)作用を持つものがあります。

それが私がお奨めする数少ない「本モノ」、「βグルカン」です。

 

  1. 数少ない「本モノ」の素材! それは「βグルカン」

 

βグルカンとは水溶性食物繊維の一種で、大麦やオーツ麦、シイタケ、マイタケ、霊芝、パン酵母、黒酵母などに多く含まれます。

一時、アガリクスが流行りましたが、要するにあれはβグルカンです。

ですので、とりわけ新しいものでもなく、一時的な流行り物でもありません。

ただ、正しく理解されていない部分はあます。

 

βグルカンが他の多くの水様性食物繊維と異なるのは、単に腸内環境を整える作用だけでなく、プラスして、強力に免疫力を活性化すると同時に、免疫を抑える制御性T細胞(Treg)も誘導する作用のあることです。

その結果として、強力な抗がん作用と抗ウイルス作用を誘導すると同時に、免疫バランスを良くして、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病から、リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患やアレルギー性疾患など、様々な疾患に広範な改善効果のあることが、ヒト及び動物実験に関する数千にも及ぶ論文によって示されています。

とりわけ、抗がん作用と抗糖尿病作用に関する論文は非常に多く、その効果は疑いようもありません。

 

私たちも、昨年の日本消化吸収学会で、手術での切除を計画していた大腸から肝臓への転移がんが、βグルカンの摂取によって手術なしで早期に消滅した症例と、2型糖尿病患者において、βグルカン摂取量の増量後にヘモグロビンA1cが順調に改善した症例を報告し、大きな反響を頂きました。

腸内環境を重大テーマに据えている同学会では、βグルカンに対する理解と関心は高いです。

 

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もちろん人によって合う/合わないもあるかと思いますし、全ての人に顕著な効果が現れるとも限りません。

しかし、健康食品なんぞに一切関心のなかった私自身が実体験し、そして、病気やケガから驚くべき回復を果たした何人もの人に会い、話を聞き、その話を学会や論文に報告するまでに至って本モノと確信したものです。

 

こう書くと、「ホンマかいな?」と胡散臭く聞こえるかもしれません(最初は私もそう思いました)が、βグルカンについては数千もの論文という科学的根拠があります

 

中高年になると、年齢とともに免疫力が低下するのは自然の節理です。

そこに来て、体温を下げるとか、食べすぎるとか、肉食が多いとかがあると、様々な病気を引き起こします。

それなりに歳を取れば(50代くらいから)、後々(老後)のため、今からできるだけ免疫力を高く保つ必要があります。

それが簡単にできるひとつの手段。それがβグルカンの摂取です!

 

では、どういう理屈でβグルカンがいいと言えるのか?

論文で示された科学的根拠などを、できるだけ難しくならないように、追々お話していきます。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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013【笑う門には福来る】「免疫力を上げる“笑い”の効果」

今回は、私の講演会でよく使った鉄板ネタ2つです。

  1. 電車の2人の男性の話

  2. 「笑い」が免疫力を高める

 

 

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1.電車の2人の男性の話

 

ある日、電車のつり革につかまって立っていると、前に座っている2人の男性の話が耳に入りました。

どうやら、一人の男性がお母様をがんで亡くした様でした。

 

男性は、ある日お医者様に呼ばれてこう言われました。

「落ち着いて聞いて下さい。お気の毒ですがお母様、余命7年です」

「えぇ~~~っ!? 7年?? いや、余命半年とか1年なら分かるけど、7年ってどういうこと??」と、声には出さなかったけれども、心の中で叫んだそうです。

「7年後が予言できるんだったら、このがん、治せんじゃねぇの?」と、またもや叫んでいたそうです。心の中で。。。

 

で、「それまでの間、出来るだけのことをしてあげて下さい」と言うので、その男性、色々として差し上げたそうです。

 

その男性がもう一人の男性に、「色々したけど、何が一番効果があったと思う?」との質問。

皆さんナンだと思いますか? 

答えを聞くと納得されると思いますが、「海外旅行」ですって。

 

やはり、「こんなところに来られた」「こんなきれいな景色」、「珍しい食べ物」、「あ~生きててよかった」という、生きることへの前向きな気持ちが、何より免疫力を高めるという典型的なエピソードだなと思いました。

 

で、さらに続きが。

そのお母さま、結局6年7か月後に亡くなったそうで、その男性もビックリ!

その男性はおっしゃいました。「『医者って凄いなぁ~』って思った」と。

 

2.「笑い」が免疫力を高める

 

昔の人も「笑う門には福来る」と言いましたが、では、生命科学の進歩した現代、それを科学的に検証した人はいるのかと思い、調べてみたところ、ありますねえぇ。

 

もっとも多かったデータは、笑いは「ナチュラル・キラー(NK)活性を上げる」というものです。

NK細胞と言うのは、ナチュラル・キラー(生まれながらの殺し屋)の名前の通り、がん細胞に対して非常に強力な攻撃力を備えていて、がん予防には、このNK活性を高く保つことが有効だと思われます。

 

データは色々ありましたが、典型的なものを一つご紹介します。

 

20~62歳のがんや心臓病を含む男女19名の患者に、大阪ミナミの演芸場(大阪が世界に誇る笑いの殿堂「なんば花月」でしょうね)にて約3時間、漫才や喜劇などで大いに笑う体験をして頂き、直前と直後に採血し、ナチュラル・キラー細胞の働きの度合い(NK活性)を測定しました。 

 

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データ出典:「すばるクリニック」(岡山県)、「元気で長生き研究所」(大阪府)、1992年

 

NK活性には「基準値」があり、この範囲に入るのが標準的なNK活性の持ち主です。

 

まず、基準範囲の下限よりNK活性の低い人については、全員上昇しています。

特に⑮の人は、下限以下の低いレベルから、ほとんどMAXレベルまで上昇しています。

相当笑われたのでしょうね(笑)

 

基準範囲内の人は、一人を除いて上昇していますが、全員、基準範囲内での上昇にとどまりました。

 

元からNK活性の高い上限以上の人は、上がる人と下がる人がいましたが、下がっても依然、基準値の上限以上という高いレベルを保ちました。

 

結論は、

「笑いは、特に元からNK活性の低い人に対して、これを上昇させる効果がある」です。

 

その他の調査・研究結果から、別におかしくなくっても笑う、作り笑いでも免疫力をアップさせる効果があるそうです。

ですから、つらい時ほど笑顔を作る

うつむくのではなく、口角を上げるだけでもいい、と言うことです。

 

どんな時も前向きな気持ちをもって、いつも笑顔で(笑)

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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