目次:
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心と腸はつながっている
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細菌叢が悪いとどうなる?
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結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事
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① 心と腸はつながっている
心と腸
全然関係ないと思われていたもの同士が、今では切っても切れない、というか、むしろ密接に関わり合っていることが確実になりました。
いや、つながっているというより、対話していると言えるかもしれません。
腸内で発生する様々な物質、それらが幼少期の脳の発達に影響し、性格の形成や精神疾患の発症に大きく関わってきます。
好ましくない腸内環境が、うつ、統合失調症、自閉症なんかの引き金になります。
腸内で発生する多くの物質が、腸内に共生する細菌によって作り出されます。
これらの物質が脳の働きに影響することが、多くの動物実験で明らかにされています。
マウスの腸内細菌を入れ替えるとか、無菌のマウスに別のマウスの腸内細菌を移植するとかの実験です。
実際、このような実験をすると、マウスの性格に変化が出るのですが、マウスの性格の変化は行動に現れますので、行動を観察します。
例えば、下の写真はNHKスペシャル「腸内フローラ~解明!驚異の細菌パワー~」からですが、いつもおどおどした臆病なマウスと、好奇心いっぱい、全然ひとっところに留まっていられない活発マウスというのがいて、これらの腸内細菌をお互いに入れ替えてみた実験です。
マウスを高さ数センチの台に載せます。
活発マウスは、もう下に降りたくて仕方がありません。ものの10数秒で難なく降りて、どっかに行ってしまいます。
一方、臆病マウス。降りたいのはやまやまですが、何度も下を覗いては見るものの、怖くて降りられません。結局7分経っても降りられませんでした。
このマウスの腸内細菌を入れ替えたらどうなるか?
臆病マウスの菌を移植された活発マウス。ビビってしまって、降りるのに数分もかかるようになりました。
一方、活発マウスの菌を移植された臆病マウス。最後まで降りられなかったのが、数分はかかりますが、それでも降りられるようにはなりました。
結果は何度やっても同じです!
さらに同番組から。
異性に積極的なマウスと消極的なマウス。
積極的なマウスは、盛んにメスに呼びかけます。
一方で、シャイなマウスは、極端に呼びかける回数が少ないです。
人間の耳には聞こえないマウスの鳴き声を、特殊な装置で検出
一定時間あたりの呼びかけの回数を測定
このシャイなマウスの腸内には、ある種の腸内細菌が作り出す4EPSという物質が多いことが分かりました。
この4EPSという物質を阻害する薬品を投与したところ、どうなったか?
なんとメスに呼びかける回数が格段に増えました。
何度やっても同じ結果です!
異性に対して積極的になれない方。
お友達にイケイケドンドンのナンパ野郎がおられたら、その方からウンコをもらって下さい。
昨日までのシャイな自分とはおさらばです(笑)
ただし、これらの結果はマウスの話であって、人間が簡単に「シャイな自分とはおさらば」と行くとは限りません。
そこで次のステップとして、神経疾患のヒトの腸内細菌を無菌のマウスに移植する実験が行われています。
不安障害の人の腸内細菌を無菌マウスに移植すると、マウスに不安行動が現れることが分かりました。
不安障害の人の腸内細菌が、不安障害の症状を引き起こす何らかの物質を作り出していると考えられます。
現在では、ヒトの腸内細菌が作り出す、心に影響を及ぼす物質がいくつか突き止められています。
例えば、アメリカの研究グループが、自閉症の子供の尿には、クロストリジアという腸内細菌が作り出すHPHPAという物質が多く含まれることを報告しました。
そこで、深刻な強迫性障害や多動性障害をもち、尿中HPHPAが高い10代の女性患者に、HPHPAを作り出す細菌の増殖を抑える抗生物質を投与し、同時にプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など、腸内フローラに良い影響を与える微生物)を摂り続けたところ、徐々にHPHPAが下がり始め、1年後には病気の症状が完全になくなったと言います。
② 細菌叢が悪いとどうなる?
ヒトでも、腸内細菌が心に影響を及ぼすことは確実になりましたが、腸の細菌だけでなく、口の中にも細菌叢があり、歯周病なんかがあると、糖尿病はじめ、様々な病気の原因となりますので、口腔ケアも非常に重要です。
ここでは、ご腸内の話をしますが、基本的には口腔も同じです。
腸内フローラの状態が悪いというのは、悪い菌が優勢になって、いい菌が虐げられている状態です。
この状態では、腸の内容物が腐敗して、有害物質がどんどん作り出されています。
腸管のバリア機能は低下し、悪い菌が作る毒素、特にLPSという毒素が腸管から血管内に侵入しやすくなります。
なんと、毒素だけでなく、悪い菌そのものも血管に侵入します。
無菌であると言われている血管内に菌が入り込むのです!!
当然、これに免疫系が反応し、炎症性物質を出します。
いつまでも腸内環境の改善がないと、この状態が続くか、ますます悪化します。
そして、体のあちこちで異常な炎症状態が続くことに。。。
これが「慢性炎症」の状態であり、体に様々な悪いレスポンスを引き起こさせます。
口の中も同じです。
歯周病菌などの悪い菌と毒素が、バリア機能の低下した歯ぐきから血管内に侵入し、慢性炎症を引き起こします。
歯周病が糖尿病の原因になっていることは、前にお話ししました。
011【昔の常識、今非常識】「糖尿病患者は内科に行くな!?」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】
③ 結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事
体の病気だけでなく、心にも影響を及ぼす私たちの共生細菌。非常に大切です。
まず、小さなお子さんをお持ちの親御さん。
腸内フローラを構築する乳幼児期の食事と衛生環境は非常に大切です。
衛生環境というのは、前に「清潔はビョーキだ」と言ったように、過度に清潔にするのは好ましくなく、自然に菌や毒素を取り込むくらいの環境の方がよいということです。
009【清潔はビョーキだ!!(その1)】We love 菌 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】
成人してからは、出来上がってしまった腸内フローラを劇的に変更することはできませんが、良い食事、良い生活習慣で、その人なりのベストな腸内環境を維持することが重要です。
018【便移植から腸内細菌を考える】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
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