目次:
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乳首は消毒するな!
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傷から染み出た黄色い汁はふき取るな!
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糖尿病は歯医者で治せ!?
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前回の010で、授乳の前に乳首を消毒してはいけないと言いました。
私の家内が最後に出産したのは2002年でしたから、15年前までは、医療関係者の間でも、新生児に授乳する前の乳首の消毒は当たり前の考え方だったわけです。
本当に10年もすると、長年信じられていた常識がくつがえることが、日進月歩の医学の世界では珍しくありません。
そんな例を3つご紹介しましょう。
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① 乳首は消毒するな!
これ、すごく重要です
ホンマに
小さなお子さんにとって重要なことですので、もう少し詳しくお話しします。
そもそも、免疫力のほとんどない新生児に、雑菌のついた乳首を吸わせるなど言語道断!という考えなのでしょう。
至極常識的で、ごもっともです。
私も当時は、何の疑念も抱きませんでしたから。。。
そう言えば、哺乳瓶も熱湯消毒してましたねぇ。
今思えば、マウスの無菌飼育のようです(笑)。
確かに消毒しなければ雑菌もいるでしょう。
しかし、それでいいのです。
(もちろん、高病原性の細菌やウイルスが付着している可能性があるとかいうのであれば、話は別ですけれど。。。)
乳首であれ、手であれ、顔であれ、頭皮であれ、健康な人の肌には、非常に良いバランスを保った細菌叢が存在しています。
それらを念入りに消毒して、わざわざ良い菌を殺してしまうなんて、その人の肌の健康に悪いだけでなく、体全体に影響が出かねません。
「清潔はビョーキだ」と言ったゆえんです。
お母さんの菌を赤ちゃんに触れせることは非常に大切です。
また同時に、様々な雑菌にも触れることによって、子供の免疫が育っていくのです。
そうすることでアトピーや花粉症などのアレルギー性疾患にも強くなります。
繰り返しますが、きれいな環境を与えて、子供の免疫を過保護にしてはいけません。
それも乳幼児期が一番大切です。
② 傷から染み出た黄色い汁はふき取るな!
昭和30年代生まれの私は「赤チン」世代です。
怪我すればなんでも赤チン。
若い人はご存じない? 赤チン
赤チン塗ると、傷口がカピカピに乾いてカサブタができます。
カサブタを取ると治りが悪くなるので、取るなとよく言われましたが、言われるとどうしても取りたくなるのが子供の心情です。
で、カサブタを取ると黄色くて臭い汁が出てきて、確かにいつまでも治りませんでした。
この黄色くて臭い汁! 絶対ふき取ってはいけません。
だいたい、傷口は乾かしてはいけません! カサブタを作らせてはいけません!
そもそも赤チン自体がいけません!!
はぁ? なに言ってんの?
昔の常識:
異物は(きれいな水で)洗って除け
消毒薬(オキ○ドールとか、マキ○ンとか)でしっかり消毒しろ
黄色い汁はふき取れ
傷口は乾燥させて、カサブタを作らせろ
カサブタは取るな
でした。
今の常識:
異物は洗って除け(水道水で良い)
消毒は絶対するな!!
黄色い汁はふき取るな
傷口は乾燥させるな(カサブタを作らせるな)
です。
ほとんど真逆! どういうこと?
かつての怪我の治療では、初期の消毒が非常に重要視されていました。
怪我で最も恐れたのは、細菌感染だったからです。
でも、今の怪我の治療の概念は全く違います。
消毒厳禁。
細菌感染の防止と傷の治癒は、その人が本来もつ免疫力に完全に任せるのです。
強力な消毒薬は、傷ついて瀕死の細胞はもちろん、正常な細胞まで殺したり、傷を負わせたりします。
傷の修復に働く免疫細胞(マクロファージとか好中球とか)も消毒液のためダメージを受けます。
これでは傷の修復はままなりません。
(救急箱のマキ○ンは即刻捨てよう!)
で、あの黄色くて臭い汁(浸出液)。
あの中には免疫細胞が作り出したタンパク質(サイトカインや成長因子)が豊富に含まれています。
これをふき取ってしまっては、傷の修復に必要な細胞に元気を与えることはできません。
今の治療法では、この浸出液が唯一にして最大の治療薬というわけですね。
傷は水で洗うだけ(異物が無ければ洗う必要なし)。
傷口は常に浸出液で濡れた状態を保つこと。
以上、終わり!
これは近年支持されている「湿潤療法」といい、乾燥させるよりも治りが早いだけでなく、痛みも少なく、治った後の傷跡の状態もよくなることが分かっています。
傷口を乾かさないために、特別な素材でできたドレッシング剤(絆創膏タイプやテープタイプ)がドラッグストアでも買えます(高いですけどね)。
③ 糖尿病は歯医者で治せ!?
1990年代後半から、歯周病と様々な病気との関連についての研究が盛んになされるようになりました。
これまでの多くの研究結果から、歯周病は糖尿病、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、動脈硬化など、多くの全身性疾患と関連のあることが分かってきました。
特に、糖尿病患者は高い確率で歯周病をもっており、また歯周病患者には糖尿病が多いことが分かりました。
そして2009年、ついに歯周治療によって、糖尿病の重要な指標であるヘモグロビンA1cの値が改善するという論文が発表されました。
これはつまり、歯周治療で糖尿病が治せるかもしれないことを示しています。
このとき、糖尿病系の学会は色めき立ったと言います。
なぜなら、糖尿病に対して糖尿病専門医は何の役にも立たず、彼らの患者を歯医者に委ねなければならなくなるのかもしれないのですから。
これは一大事です。
一方、歯科の関連学会は大興奮です。
これまで、自分たちは口腔治療しかできない存在だと思い込んでいたのが、おっとどっこい、ひょうたんから駒!
内科医が手に負えない病気を、自分たちが治せるかもしれないというのですから!
数年にわたって論議と検証が続き、現在では日本歯周病学会と日本糖尿病学会の両方のガイドラインにおいて、糖尿病患者に対して歯周治療が有効であることが明記されています。
歯周病がなぜ、一見なんの関係もなさそうに見える糖尿病などの全身性疾患の原因となり得るのか?
この問題も細菌と免疫との関係で説明できます。
炎症を起こした歯肉は、バリア機能(菌や様々な異物の侵入をブロックする機能)が低下しています。
そのため、歯周病菌や菌がつくる毒素が容易に血管内に入れます。
これに免疫系が反応して、炎症性物質を出します。
この炎症性物質が長期に出続けると、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性の原因になります。
ですからこの炎症反応(慢性炎症)をしずめるため、大元の原因である歯周病菌の除去が有効なのです。
残念ながら、殺菌効果のある薬品でうがいをしても、歯周病菌には大した効果はありません。
菌が堅いバイオフィルムを形成しているからです。
むしろ、口の中の良い菌を殺すので、逆効果です。
毎日きちんと歯磨きをして、物理的に歯周病菌が付かない、増えないようにすることが一番です。
で、歯周病が疑われたら、放置せず、歯医者さんに行きましょう。
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
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