Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

健康 病気 免疫 遺伝子 腸内細菌 がん 生活習慣病 感染症

012【誰でも1日に5000個ものがん細胞ができている】

「自分は今まで風邪ひとつひいたことがない。だからがんになんかならない」という人も、がんになる可能性はあります。

風邪もひいたことがないのですから、確かに免疫力は高いのでしょう。

でも、歳とともに免疫力が下がるのは止められません。

過信をして不摂生をしていると痛い目にあいます。

 

実際、誰でも毎日、体の中でがん細胞が発生しています。

これは生きている限り仕方のないことです。

だからがんになるリスクは誰にでもあるのです。

 

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諸説あり、300万個とも5000万個とも言われていますが、私たちの体では、わずか1秒間の間に、これだけの膨大な数の細胞が死に続けています。

今こうして、ブログを書いているこの瞬間にもです。

そうすると、じきに私たちの体は消えてなくなってしまいますので、当然、同じだけ細胞を分裂させなければなりません。

 

私たちの細胞一つひとつには核があり、その核の中にすべての遺伝子のセットが格納されています。

遺伝子の本体はDNAですが、DNAはグアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)という4種類の「塩基」という物質が並んだ鎖のように長い物質です。

この4つの塩基の配列は一見ランダムのようですが、配列そのものが厳密な意味を持つ遺伝情報であり、細胞分裂の際には正確に複製されなければなりません。

この配列の複製にミスがあり、配列が変わってしまった細胞はがん細胞になる可能性のある危険な存在です。

 

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このGATCの塩基の配列、どれくらい長いかというと、一つの細胞に60億個もの塩基の並びがあります。

この60億もの並びを、間違えることなく正確に写し取らなければなりません。

1秒間に死ぬ細胞を、少なめの300万個としましょう。

60億塩基×300万個=1800兆塩基の配列を、わずか1秒の間にコピーしなければならない計算です。1秒間に5000万個の細胞が死ぬなら、京(けい)の桁です。

 

とにかく、毎秒毎秒モーレツなスピードでDNAの複製が行われています。

ですから、とても完璧というわけにはいきません。

複製ミスは当然起きます。

 

でも安心してください。私たちの体には、細胞のがん化を防ぐ仕組みが何重にも備わっています。

 

まず、コピーミスを発見したら、ミスを修復しにかかります。DNA修復遺伝子というものがその働きをします。

しかし、その修復も完ぺきではありません。

 

修復しきれなかったら、次には異常のある細胞が自ら死ぬ、すなわち自殺をします。このまま自分が生き残るとヤバイということを知っているのですね。

 

しかし、死にきれない細胞というのもあります。

この死にきれなかった異常細胞を始末してくれる最後の砦が「免疫」です。

で、この死にきれなかった細胞が、誰でも毎日5000個くらいはできているというわけです。

 

暴飲暴食、運動不足、睡眠不足、不規則な生活、ストレス、悩み等々、何らかの原因で免疫力が低下していると、このような危険な異常細胞をスルーさせてしまい、がんの発病につながりかねません。

 

免疫力を高く保つために生活習慣を改善すること、前に号外でお話しした体温を下げないこと、などを心がけましょう。

 

今までお話ししなかった中で、ひとつ簡単に免疫力を高く保ついい方法があります。

それは「笑い」です。

「笑う門には福来る」と昔の人も言いましたが、科学的にもそれを裏付けるデータがあります。

次回ご紹介します。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、ご意見・ご感想、お叱りなどをコメントでお寄せ下さい。

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011【昔の常識、今非常識】「糖尿病患者は内科に行くな!?」

目次:

  1. 乳首は消毒するな!

  2. 傷から染み出た黄色い汁はふき取るな!

  3. 糖尿病は歯医者で治せ!?

 

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前回の010で、授乳の前に乳首を消毒してはいけないと言いました。

 

私の家内が最後に出産したのは2002年でしたから、15年前までは、医療関係者の間でも、新生児に授乳する前の乳首の消毒は当たり前の考え方だったわけです。

 

本当に10年もすると、長年信じられていた常識がくつがえることが、日進月歩の医学の世界では珍しくありません。

 

そんな例を3つご紹介しましょう。

 

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① 乳首は消毒するな!

これ、すごく重要です

ホンマに

 

小さなお子さんにとって重要なことですので、もう少し詳しくお話しします。

 

そもそも、免疫力のほとんどない新生児に、雑菌のついた乳首を吸わせるなど言語道断!という考えなのでしょう。

至極常識的で、ごもっともです。

私も当時は、何の疑念も抱きませんでしたから。。。

 

そう言えば、哺乳瓶も熱湯消毒してましたねぇ。

今思えば、マウスの無菌飼育のようです(笑)。

 

確かに消毒しなければ雑菌もいるでしょう。

しかし、それでいいのです。

(もちろん、高病原性の細菌やウイルスが付着している可能性があるとかいうのであれば、話は別ですけれど。。。)

 

乳首であれ、手であれ、顔であれ、頭皮であれ、健康な人の肌には、非常に良いバランスを保った細菌叢が存在しています。

それらを念入りに消毒して、わざわざ良い菌を殺してしまうなんて、その人の肌の健康に悪いだけでなく、体全体に影響が出かねません。

「清潔はビョーキだ」と言ったゆえんです。

 

お母さんの菌を赤ちゃんに触れせることは非常に大切です。

また同時に、様々な雑菌にも触れることによって、子供の免疫が育っていくのです。

そうすることでアトピーや花粉症などのアレルギー性疾患にも強くなります。

 

繰り返しますが、きれいな環境を与えて、子供の免疫を過保護にしてはいけません。

それも乳幼児期が一番大切です。

 

② 傷から染み出た黄色い汁はふき取るな!

 

昭和30年代生まれの私は「赤チン」世代です。

怪我すればなんでも赤チン。

 

若い人はご存じない? 赤チン

 

赤チン塗ると、傷口がカピカピに乾いてカサブタができます。

カサブタを取ると治りが悪くなるので、取るなとよく言われましたが、言われるとどうしても取りたくなるのが子供の心情です。

で、カサブタを取ると黄色くて臭い汁が出てきて、確かにいつまでも治りませんでした。

 

この黄色くて臭い汁! 絶対ふき取ってはいけません。

だいたい、傷口は乾かしてはいけません! カサブタを作らせてはいけません!

そもそも赤チン自体がいけません!!

 

はぁ? なに言ってんの?

 

昔の常識:

異物は(きれいな水で)洗って除け

消毒薬(オキ○ドールとか、マキ○ンとか)でしっかり消毒しろ

黄色い汁はふき取れ

傷口は乾燥させて、カサブタを作らせろ

カサブタは取るな

でした。

 

今の常識:

異物は洗って除け(水道水で良い)

消毒は絶対するな!!

黄色い汁はふき取るな

傷口は乾燥させるな(カサブタを作らせるな)

です。

 

ほとんど真逆! どういうこと?

 

かつての怪我の治療では、初期の消毒が非常に重要視されていました。

怪我で最も恐れたのは、細菌感染だったからです。

 

でも、今の怪我の治療の概念は全く違います。

消毒厳禁。

細菌感染の防止と傷の治癒は、その人が本来もつ免疫力に完全に任せるのです。

 

強力な消毒薬は、傷ついて瀕死の細胞はもちろん、正常な細胞まで殺したり、傷を負わせたりします。

傷の修復に働く免疫細胞(マクロファージとか好中球とか)も消毒液のためダメージを受けます。

これでは傷の修復はままなりません。

(救急箱のマキ○ンは即刻捨てよう!)

 

で、あの黄色くて臭い汁(浸出液)。

あの中には免疫細胞が作り出したタンパク質(サイトカインや成長因子)が豊富に含まれています。

これをふき取ってしまっては、傷の修復に必要な細胞に元気を与えることはできません。

今の治療法では、この浸出液が唯一にして最大の治療薬というわけですね。

 

傷は水で洗うだけ(異物が無ければ洗う必要なし)。

傷口は常に浸出液で濡れた状態を保つこと。

以上、終わり!

 

これは近年支持されている「湿潤療法」といい、乾燥させるよりも治りが早いだけでなく、痛みも少なく、治った後の傷跡の状態もよくなることが分かっています。

傷口を乾かさないために、特別な素材でできたドレッシング剤(絆創膏タイプやテープタイプ)がドラッグストアでも買えます(高いですけどね)。

 

③ 糖尿病は歯医者で治せ!?

 

1990年代後半から、歯周病と様々な病気との関連についての研究が盛んになされるようになりました。

これまでの多くの研究結果から、歯周病は糖尿病、心筋梗塞狭心症脳梗塞動脈硬化など、多くの全身性疾患と関連のあることが分かってきました。

 

特に、糖尿病患者は高い確率で歯周病をもっており、また歯周病患者には糖尿病が多いことが分かりました。

 

そして2009年、ついに歯周治療によって、糖尿病の重要な指標であるヘモグロビンA1cの値が改善するという論文が発表されました。

これはつまり、歯周治療で糖尿病が治せるかもしれないことを示しています。

 

このとき、糖尿病系の学会は色めき立ったと言います。

なぜなら、糖尿病に対して糖尿病専門医は何の役にも立たず、彼らの患者を歯医者に委ねなければならなくなるのかもしれないのですから。

これは一大事です。

 

一方、歯科の関連学会は大興奮です。

これまで、自分たちは口腔治療しかできない存在だと思い込んでいたのが、おっとどっこい、ひょうたんから駒!

内科医が手に負えない病気を、自分たちが治せるかもしれないというのですから!

 

数年にわたって論議と検証が続き、現在では日本歯周病学会と日本糖尿病学会の両方のガイドラインにおいて、糖尿病患者に対して歯周治療が有効であることが明記されています。

 

歯周病がなぜ、一見なんの関係もなさそうに見える糖尿病などの全身性疾患の原因となり得るのか?

この問題も細菌と免疫との関係で説明できます。

 

歯周病歯周病菌が原因で起こる人類最大の感染症です。

炎症を起こした歯肉は、バリア機能(菌や様々な異物の侵入をブロックする機能)が低下しています。

そのため、歯周病菌や菌がつくる毒素が容易に血管内に入れます。

 

これに免疫系が反応して、炎症性物質を出します。

この炎症性物質が長期に出続けると、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性の原因になります。

ですからこの炎症反応(慢性炎症)をしずめるため、大元の原因である歯周病菌の除去が有効なのです。

 

残念ながら、殺菌効果のある薬品でうがいをしても、歯周病菌には大した効果はありません。

菌が堅いバイオフィルムを形成しているからです。

むしろ、口の中の良い菌を殺すので、逆効果です。

 

毎日きちんと歯磨きをして、物理的に歯周病菌が付かない、増えないようにすることが一番です。

で、歯周病が疑われたら、放置せず、歯医者さんに行きましょう。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、ご意見・ご感想、お叱りなどをコメントでお寄せ下さい。

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010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒

目次:

  1. Let’s try! キレイ好き度チェックリスト(子供編)

  2. 昭和30年代以前はアレルギーという概念がなかった? ~アーミッシュからの考察~

  3. 我々には菌と毒が必要だ!

  4. 抗菌加工のものは全部、木曜の朝、ゴミ置き場に出しましょう

 

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① Let’s try! キレイ好き度チェックリスト(子供編)

これ重要

 

小さいお子さんをお持ちのお母さん方にお尋ねします。

お子さんに以下のことをいくつしていますか?

 

  • 授乳の時は乳首を消毒していた
  • 子供に砂場遊びや泥んこ遊びを禁じている
  • 子供には犬や猫を触らせない
  • 食物アレルギーになるのが怖いので、子供に与えていない食材がある
  • 床に落ちたものは(たとえ家の中でも)絶対に食べさせない

 

さあ、いくつ当てはまりますか?

 

これらすべてNGです。

5つ全部やっているという方は、お子さんの健全な成長を邪魔しています。

 

乳首の消毒なんて、私の家内もやっていました。

病院で看護師さんから指導されてのことでした。

15年くらい前までは、医療関係者の間でも消毒が常識だったのですね。

 

でも、この10年近くの間に考え方が様変わりしました。

まさに「昔の常識、今非常識」です。

 

② 1960年代以前はアレルギーという概念がなかった? ~アーミッシュからの考察~

 

1960年代以前は、アレルギーの患者は非常に少なく、医学界には「アレルギー」という疾患概念すらありませんでした。

それが、高度経済成長とともにアレルギーが増え始め、現在では、なんのアレルギー疾患も持っていない人の方が少ないくらいです。

 

なぜ昔は少なかったのか?

その謎を解くカギはアメリカにありました。

 

アーミッシュというのは、数百年前にドイツの辺りからアメリカに移住してきた人たちの集団で、信仰上の理由から現代文明を否定し(電気・ガス・水道ありません)、農耕・牧畜で自給自足している人たちです。

 

実は以前から、アーミッシュの人たちには非常にアレルギーが少ない、都市部に住むアメリカ人の10分の1から20分の1程度しかアレルギー性疾患がないことが知られていました。

 

なぜなのか?

多くの医学研究者がこの謎の解明に挑んできました。

 

長年にわたってアーミッシュは、アレルギーの原因とメカニズムを解明するための重要な研究対象であり続けました。

現代文明に背を向けながらも、彼らは現代医学の進歩のために協力し続けてくれているのです。

 

これまで多くのグループにより、アーミッシュの研究がなされてきました。

つい最近では昨年(2016年)、シカゴ大学のグループが「New England Journal of Medicine」という非常に権威のある医学雑誌で新たな知見を報告し、注目されました。

 

これまでに得られた知見は(おおざっぱには)こうです。

アーミッシュは農耕・牧畜をしています。

アーミッシュの子供は小さいころから家畜に触れています。

他にも原因はありますが、この家畜に触れることがアーミッシュにアレルギーの少ないひとつの理由だと言います。

 

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アーミッシュのコミュニティは動物であふれている

 

では、家畜の何がいいのか?

それは家畜の「糞」です。

もっというと、糞の中の細菌が作り出す「毒素」です。

 

③ 我々には菌と毒が必要だ!

 

アレルギーは、反応してはいけない物質に免疫系が異常反応する病気です。

 

我々の体には免疫を抑える仕組みがあり、それに重要な役割を果たしているのが、1995年に日本人免疫学者(現大阪大学教授・坂口志文先生)が発見した制御性T細胞(Treg; ティーレグ)というものです。

アーミッシュの人は、このTregの数が多いことが分かっています。

Tregがアレルギーの異常な免疫反応を抑えているわけですね。

 

Tregは免疫系にバランスをもたらす非常に重要な細胞ですので、また別の機会に詳しくお話します。

 

さて、子供のころに様々な菌や毒素に触れることによって、免疫系は正しいバランスを得るようになります。

現代の過度に清潔な環境下にいると、この免疫のバランスが築けず、必要な数のTregが育たないのだということが分かってきました。

アレルギーは、清潔になりすぎた近代的な生活が引き起こした新しい病気なのです。

 

④ 抗菌加工のものは全部、木曜の朝、ゴミ置き場に出しましょう

 

  • せっかくのお母さんの肌にいる菌に触れる機会を奪わないようにしましょう
  • 砂遊びをさせましょう
  • 動物に触れさせましょう
  • 抗菌加工のものは全部、木曜の朝、ゴミ置き場に出しましょう
  • 隙間だらけの木造住宅に住みましょう

 

「不衛生にしろ」とは言いませんが、過度に清潔な環境を与えて、子供の免疫系を過保護にしてはいけません。

それも乳幼児の時期が大切です。

 

手洗いなどは、よっぽど汚れているとき以外は、水だけで十分です。

汚れているときでも、普通のせっけんにしましょう。(筆者注)

 

「子供がお腹痛を起こしたらどうしてくれるんだ!」って?

たとえ、それで一時的にお腹が痛くなったとしても、そういうことを繰り返して健全な免疫系が出来上がっていくのですから。。。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

ご注意下さい:

インフルエンザウイルスやノロウイルス大腸菌O-157の流行、またMRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)の蔓延など、多くの人命が危険にさらされる状況では、感染拡大防止のために薬用せっけんや消毒薬の使用は非常に重要です。

また、食品関連の業務では、食中毒防止の目的で、薬用せっけんや消毒薬での手洗いが励行されています。

 

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是非、ご意見・ご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

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009【清潔はビョーキだ!!(その1)】We love 菌

目次

  • Let’s try! キレイ好き度チェックリスト

  • 菌と免疫の緊密な関係

 

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Let’s try! キレイ好き度チェックリスト

 

今回は気分を変えて、「健康に過ごすための“正しい食事7箇条”」の話題から一旦離れます。

いずれまた、“正しい食事7箇条”の6番目のお話に戻ります。

 

前回のブログ008で、人工甘味料が腸内細菌に悪い影響を与えて、その結果、糖尿病のリスクを引き上げるという「ネイチャー」の論文をご紹介しました。

つまり、腸内細菌が悪い方向に変化すると病気になり得るということです。

 

腸内細菌と健康の関係について注目が集まったのは、ここ7~8年くらいです。

 

10年位前までは、乳酸菌飲料をせっせと飲むのも、せいぜいお腹の調子を整えて、便秘を改善するくらいの目的でしたが、今は、「腸活」という言葉が流行るくらい、腸内細菌が健康に及ぼす重要性について広く知られるようになりました。

 

現在までに、腸内細菌の乱れが原因になっている、あるいは深く関わっていることが指摘されている病気には、次のようなものがあります。

 

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ほとんど全ての疾患領域ですね。

 

「腸の中の菌が、なんで心の病気と関係あるの?」と思われるかもしれませんが、腸と脳は神経ネットワークでつながっており、「対話している」と言われるほどです。

また、腸でセロトニンドーパミンなどの脳内神経伝達物質が作られていることは、現在ではよく知られています。

 

腸内細菌の重要性については、一般の人向けに書かれた易しい本がたくさん出回っていますし、テレビ・雑誌でも取り上げられていますので、これ以上クドクド書かなくてもいいでしょう。

 

で、まだあまり注目されていないのが腸以外の体の菌です。

腸以外というと、口の中(口腔)や皮膚です。

 

ではここで、セルフチェックをしてみましょう。

「衛生面には気を付けている」と自負するキレイ好きの方は是非ともご参加下さい。

 

さあ、貴方のキレイ好き度は?

 

  1. 必ず薬用せっけんを使ってしっかり手洗いする
  2. 頭と体は毎日しっかり洗う
  3. 1日2回以上入浴またはシャワーする
  4. 1日に何回も洗顔する
  5. 殺菌効果のあるうがい薬やマウスウォッシュを常用している
  6. 部屋や衣服に消臭・除菌スプレーを日常的に使っている
  7. ウェットティッシュを携帯している
  8. 日用品は出来る限り抗菌加工のものを買う
  9. 住むなら絶対に機密性の高い家に限る
  10. 少しのホコリも気になってしょうがない

 

さあ、どうでしたか?

 

8個以上の方:貴方は完全にビョーキです。「清潔」というビョーキです。

5~7個の方:気を付けないとビョーキになりますよ。ライフスタイルを見直しましょう。

2~4個の方:ごくごくフツー人です。

0~1個の方:素晴らしい! 理想的な清潔観念の持ち主です!

 

菌と免疫の緊密な関係

 

私たちの体、腸の中、口の中、皮膚の表面にはたくさんの菌が常在、というより私たちと共生しています。

これらの菌は、私たちの体の調子に大いに影響を与え続けています。

 

私たちは無菌の状態で生まれて来ます。

厳密に言うと、お母さんのおなかの中の胎児は無菌状態です。

そして、生まれてくるとき、お母さんの産道の中で初めて菌に触れます。それはお母さんの菌です。

 

おっぱいを飲むときにも体の中に菌を取り込みます。

看護師さんや来訪者の菌にも触れます。

空気中の菌も、離乳食の中の菌も取り込みます。

赤ちゃんはなんでも口の中に入れようとします。

そうしてやがて、その子特有の細菌叢(さいきんそう)を腸の中や、口の中や、皮膚の表面に構築するようになるのです。

 

ですから、その子の育った環境によって、どんな菌に触れたかによって、一人ひとりの細菌叢は異なった固有のものに確立されていきます。

 

抗生物質の飲み過ぎで正常な腸内細菌叢が破壊される「菌交代現象」というのは、昔から知られていました。

抗生物質で良い腸内細菌が殺され、悪い菌が優勢になる現象です。

 

同様に、過度にきれいにすることで、良い菌まで取り除いてしまうと、健康上のトラブルにつながるのです。

 

なぜかというと、我々の体の細菌叢と免疫は緊密に関連しており、細菌叢の状態が免疫系の調子を左右し、免疫系の不調から様々な病気にかかるからです。

 

過度の清潔が引き起こす病気の一つに、現代病と言われるアレルギーがあります。

これも菌と免疫が大きく関わっている病気です。

 

次回は「清潔」とアレルギーの関係についてお話します。

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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008【健康に過ごすための“正しい食事7ヶ条”第5条】「食品添加物を避ける!」

目次:

  1. 日本は食品添加物天国!

  2. 「安全」と言われていたあの添加物がアブナイ!? トクホのコーラにも入ってるぞ(笑)

  3. 科学的根拠なく唱えられる「安全」

  4. 結論

 

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① 日本は食品添加物天国!?

 

食品添加物には天然のものと人工的に合成したものとがあります。

我国では、天然と人工とを合わせて約1500種(!!)もの食品添加物が認可されています。

この1500という数字が多いのか?少ないのか?

 

天然の方が人工より安全とか、人工の方が危険とか言いきれないのですが、石油から合成された添加物に限ると、我国では351品目が認可されています。

これに対して、アメリカは133品目、ドイツ64品目、フランス32品目、イギリスに至ってはわずか21品目です。

 

なんだこの数字の違いは!?

 

厚生労働省のホームページによると、「厚生労働省は、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、使用を認めています」だって?

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/

 

ムムムッ! 医薬品では、安全性情報が不足とかなんとか言って認可のハードル高いのに、なんで食品添加物(以下「添加物」)については、こんなにハードル下げてんの??

本当に安全性について、妥当な評価ができてんの?と普通に疑問を持ちます。

 

認可済みの添加物でも、動物実験等によって危険性が強く示されているものが多くあります。

よく知られたところでは、ハムやソーセージ、イクラなどに使われる亜硝酸ナトリウムが強い遺伝子変異原性(遺伝子変異を起こさせる性質)を、赤色○号とか青色○号なんかの合成着色料の多くが強い発がん性を有することが、随分以前から指摘されています。

他にも枚挙にいとまがありません。

 

② 「安全」と言われていたあの添加物がアブナイ!! トクホのコーラにも入ってるぞ(笑)

 

これだけ添加物の種類が多いと、一つひとつについての危険性の情報を調べているとキリがないので、やってられませんが、ある日思うところがあって、ある添加物について調べてみました。

それは人工甘味料です。

 

喫茶店やファミレスに、砂糖といっしょに置いてあったり、「ゼロカロリー」とか「糖質ゼロ」って清涼飲料水に入ってますね。

これらは血糖値が気になる人たちに訴求する商品ですね。

 

人工甘味料って、甘みが砂糖の数百倍もあるので、使う量は数百分の一で済みます。

ほんでもって、ほとんど消化吸収されずに排泄されて、体内に入らないので、「血糖値が気になる方も安心」みたいなことを言われてきたわけです。

 

私は清涼飲料水はほとんど飲まないのですが、私の場合、缶チューハイが問題です。

メタボを恐れる私は、例にもれず、缶チューハイも「ゼロカロリー」とか「糖質ゼロ」ってやつを好んで買います。

 

そのたぐいの缶チューハイに入っているのは、私の観察によると、スクラロースアセスルファムKカリウム)が多いです。

原材料表示を見ながら、いつも「これってホンマに大丈夫なんか?」と疑問に思っていました。

疑問に思うんなら調べてみろと、調べてみたら、驚くべき論文を発見しました!

 

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ネイチャー 2014年

人工甘味料は、腸内細菌叢を変化させることによってインスリン抵抗性(インスリンが聞きにくい状態)を引き起こす」

 

結論は上の論文タイトルの通りですが、もう少し言うと、「確かに人工甘味料は体内に吸収はされないので、直接体には影響はしないようだが、大腸内で腸内細菌叢(腸内フローラとも言います)のバランスを悪い方向に変化させて、その結果インスリンが効きにくくなり(血糖値が下がりにくくなり)、砂糖よりもむしろ2型糖尿病になるリスクが増える」ということなのです。

 

この実験では、人工甘味料のうちでも清涼飲料水や缶チューハイでよく使われるスクラロースについて、マウスで実験を行っています。

 

この論文発表の後、ヨーロッパの業界、特に清涼飲料水の業界で論議が巻き起こりました。

また、人工甘味料そのものを製造しているドイツの企業は、「科学的根拠がない」と主張して反論しました。

(いや、ネイチャーのような超一流誌の科学論文に対して、「科学的根拠がない」って反論、意味分からんが。。。そう言うんなら、害がないことを「科学的根拠」を示して証明して見せろ!っつうの)

 

腸内細菌への影響は、言われれば「なるほど」です。

これで「体内に吸収されないから安全」という論拠は崩れました。

 

人工甘味料! 皮肉にも最近、トクホのコーラにも入ってますね。

これって、どうよ!?

 

③ 科学的根拠なく唱えられる「安全」

 

例えば、ラムネ菓子やタブレット清涼菓子(ミン○ィアなんか)に使われている「微粒酸化ケイ素」。これなんだと思います?

乾燥剤として皆さんもよくご存知の「シリカゲル」です。

あの無色透明の粒々に青い粒々の混じったヤツですね。海苔とかに入ってる。。。

 

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「こんなの入ってるの?」と思うと気持ち悪くなるかもしれませんが、実はこんなの食べさせられていたのですねぇ。私も最近まで知りませんでしたが。

よく乾燥材の袋に「食べられません」って書いてありますが、実は食べられるんですねェ~(決して食べないで下さい

 

で、この食べるシリカゲル。安全性の根拠について調べてみると、右を見ても、左を見ても「消化吸収されず、体内に入らないので安全」というものばかりです。

これはもう、にわかには信じられません。

 

ちなみに、このたぐいの清涼菓子。上の写真の表示の通り、食品添加物の塊です(怖)。

 

④ 結論

 

まぁ、何百種類もある添加物のことを全て気にしてると、とてもじゃないけど、モノ食べるのが楽しくなくなっちいますので、あまり過度に気にするのもどうかと思います。

でも、これだけはハッキリしていて、「諸外国で禁じられていて、我国のみで認可されているものがたくさんあり、それらの安全性について、科学的根拠が明確でないものも多い」ということです。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想、ご意見、お叱りなどをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

また、関連した最新情報をお持ちの方、是非お教え下さい。

勉強させて頂きます。

 

今後ともよろしくお願い致します。

 

 

007【良い油と悪い油(その2)】「食べるプラスチック」トランス脂肪酸とは?

今回の結論:

「食べるプラスチック」トランス脂肪酸を最もたくさん含むあの食品に注意!

 

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皆さん、こんにちは

 

前回は「良い油」のお話でした。

オメガ3系の脂肪酸は、魚をよく食べる人でも不足しがち。

魚が嫌いな人は、是非サプリメントを活用しましょう、でした。

 

さて、今回は「悪い油」です。

 

この悪い油が、スーパーやコンビニで買える加工食品、ファミレス、ファストフードなどに溢れています。

特に揚げモノの衣は、酸化脂質の塊と言っていいでしょう。

 

今回のメインテーマは、「食べるプラスチック」とも「狂った油」とも揶揄されるトランス脂肪酸です。

 

諸外国では、何年も前からその危険性が指摘され、規制が始まっていますが、日本ではほとんど手が打たれておらず、野放し状態です。

 

化(ばけ)学的なことはよくわからないのですが、トランス脂肪酸というのは植物油を作る工程でできる人工的な副産物だそうです。

 

天然の脂肪酸(シス型といいます)とわずかに構造が違うトランス型で、これが細胞に取り込まれると細胞に機能異常を起こし、様々な病気の原因になることが示されています。

 

トランス脂肪酸が関わる病気は、動脈硬化、がん、認知症、アレルギー、不妊症など、ほとんどすべての疾患領域じゃないかと思われるくらい、その影響は広範です。

中でも心臓疾患、特に冠動脈性心疾患のリスクを高めることは、複数の研究結果が一致した結論を導き出しており、確定的だといいます。

 

欧米各国は、食品へのトランス脂肪酸含有量の上限を定め、米国などは食品医薬品局(FDA)が2018年までの「トランス脂肪酸全廃」を目指すと宣言しました。

 

韓国、中国、台湾などの東アジア諸国も、食品への含有量の表示を義務付けるなどの対策を行っています。

 

ところが、我国では表示義務すらなく、関係省庁が積極的な注意喚起をすることもないので、日本人は世界で最もトランス脂肪酸の危険性を認知していない国民であると断言しても過言ではありますまい!

 

実際、当該行政機関である農林水産省のホームページ(下のURLです)を見ても、「諸外国も実質的な規制はしてないんだから、ウチも規制なんかしなくてもいいんだよ」みたいなこと(やらない言い訳)書いてます。

何か腹立つ!

http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kokusai/overseas.html

 

んな訳で、表示義務もないから、実際どのような食品にどれくらいのトランス脂肪酸が含まれているのか、私たちは良く知らない訳です。

そこで、トランス脂肪酸の多い食品ランキングを見てみましょう。

 

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「健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト」(日本医協学院)から転載

 

最もトランス脂肪酸を多く含むのは「ショートニング」です。

ショートニングというのは、私は良く知らないのですが、ケーキや焼き菓子、スナック菓子なんかに食感を良くするために使われるそうですね。

実際に店で売ってるパンの原材料表示を見てみると、「ショートニング」って書いてますね。

 

でもショートニングは、原材料として使われるのであって、それをそのまま食べる訳ではありません。

ですから、原材料としてショートニングが使われている食品(パンやケーキやお菓子など)のトランス脂肪酸含有量は、上の表のとおり、それほど多いわけではありません。

 

では直接食べる食品で、最もトランス脂肪酸を多く含むものは何でしょう?

上の表の2番目の「?」です。

 

正解は「マーガリン」

そのままパンとかに塗って食べるものなのに、なんと、ショートニングの半分もの含有量があります。

 

昔は、「動物性のバターより、植物性のマーガリンの方が体にいい」なんて言いましたね。

給食にも毎日のように出てました。

私も子供のころは結構食べてましたよ。本当はバターの方が好きなのに。。。

 

マーガリンを製造販売しているメーカーさんも食品のプロですから、トランス脂肪酸の危険性については承知しているはずでしょう。

でも、自ら「トランス脂肪酸はカラダに悪いから、マーガリンよりもバターを買いましょう」なんてことは言いません。

それどころか、「もっとマーガリンを売ってやろう」とすらしているように見受けられます。

 

その証拠が、こういう商品です。

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(こんなの載せると、また怒られる?)(笑)

 

「私、こんなの待ってたの。本当はバターの方が好きなんだけどォ、ほら、バターって動物性でしょう? だ・か・らァ、、、」

 

いや、「だから」じゃなくって、「バターを買えッ」てことです。

 

今回は「悪い油」として、油を加熱に加熱してできる酸化脂質と人工油のトランス脂肪酸のお話でした。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになった感想やご意見、お叱りなどをコメントでお寄せ下さい。

大変な励みになります。

 

また、私の不勉強により間違いがありましたら、御指摘をお願い致します。

 

 

006【良い油と悪い油(その1)】オメガ3脂肪酸を積極的に摂りましょう

”健康に過ごすための正しい食事7ヶ条”その4

油についてです

 

今回の結論

オメガ3系不飽和脂肪酸を積極的に摂りましょう

ということね(^^)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

油の摂りすぎはカラダに悪そうですが、体内でホルモンを作ったり、細胞の膜に使われるなど、私たちの体にとって油も大切な栄養素です。

また、効率のいいエネルギー源でもあります。

 

ただ、体に必要な「良い油」と、体に良くない「悪い油」があるので、それらを見分けて食事を作ったり、食べたりする必要があります。

 

よく、「不飽和脂肪酸を摂りましょう」と聞きますね。

血液サラサラ効果」とか言いますが、では不飽和脂肪酸をたくさん摂ればいいかというと、そういう訳でもありません。

 

不飽和脂肪酸にも種類があり、主には「オメガ3」と「オメガ6」という2種類に分けられます。

オメガ3と6とで何がどう違うのか?というと、分子構造がチョコっと違うんですが、そんなことはあまり気にしなくてもいいでしょう。

大事なのは、オメガ3と6のバランスを意識して、というより、オメガ3を豊富に含む食材を知り、それらを意識して食事を摂ることが大事なのですね。

 

健康に好ましいオメガ3とオメガ6の摂取比率は、1:1から1:4くらいだそうです。

でも、典型的な欧米の食事では、オメガ3とオメガ6の比率は1:10から1:30くらいで、圧倒的にオメガ3が不足です。

ですから、日本食より洋食系やファストフードが好みの方は要注意です。

 

まず、代表的なオメガ3は、EPADHA、α-リノレン酸です。

EPADHAは、肝油、味、サバ、イワシ、サケ、タラ、ニシンなどの海産物に豊富に含まれます。

α-リノレン酸は、エゴマ油、アマニ油、キャノーラ(アブラナ)油、大豆など、特にエゴマ油に豊富です。

 

比較的、魚食が多い日本人では、大きな問題はないのですが、それでもやや不足がちです。

あまり魚を食べない人は、サプリメントの活用を考えてみてはいかがでしょうか?

 

私も最近は、肉を減らして魚を増やしていますが、それでも、「今日は(昨日は)魚を食べなかったな」と思ったら、EPADHAのサプリを飲むようにしています。

毎日ではありませんが、食事の内容と照らし合わせて、それこそ「補う」意味で、サプリメントを活用しています。

 

バランスの良い不飽和脂肪酸の摂取は、中性脂肪の低下、心疾患のリスク低減に寄与すると言われています。

アルツハイマー型痴呆症やうつに対する効果も言われていますが、こちらの方はまだ議論の余地があるようです。

 

いずれにしても、ファストフードなどに多く含まれる動物性の油を避け、酸化脂肪酸タップリのスナック菓子や揚げ物を控え、オメガ3脂肪酸を多く含む食材のの積極的な摂取を心がけましょう。

 

たとえば、2日目、3日目のカレーって本当においしいですよね。

でも以前、ある講演会で、「2日目、3日目のカレーは、酸化脂肪酸の塊です」という話を聞いてシックを受けました。

言われて考えてみれば、その通りですね。

あれだけ煮込み、加熱されれば、ほとんどの油が酸化されるのももっともです。

酸化(さんか)していいのはオリンピックだけ(^^)です。

 

不飽和脂肪酸は高い抗酸化作用を持ちますが、一方で、それ自身は酸化されやすいのです。

ですから、せっかくオメガ3の豊富なエゴマ油やアマニ油を料理に使っても、高温で長時間加熱するような調理方法は好ましくありません。

サラダにそのままかけて食べるとか、出来るだけ酸化させないで食べる工夫が重要です。

 

今回は「良い油」についてお話しました。

次回は、「悪い油」についてです。

皆さんは、「食べるプラスチック」と揶揄される、「トランス脂肪酸」という人工油をご存知ですか?

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

 

是非、ご意見・ご感想、お叱りなどをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

005【健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”その3】

③ 肉食を控える(前回のつづき)

 今回の結論

アメリカン・ジャンクなフードは、あらゆる病気の元凶だぜっ‼️

 

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肉食、特に四つ足の動物の肉食について、調べれば調べるほど、いいことは何もないことを確信するばかりです。

 

2015年、「ネイチャー・コミュニケーションズ」から次のような論文が発表されました。

アフリカ系アメリカ人(つまり、アメリカに住む黒人の人たちですね)と、今もアフリカの原野で質素な生活をするアフリカの原住民とで、お互いの食事を2週間だけ入れ替えてみようという試みです。

 

なんでこんな実験をしたかというと、アメリカに住む黒人の人たちが大腸がんになる確率というのが、今もアフリカの原野に住む原住民が大腸がんになる確率に対して、なんと13倍も高いそうです。

「13倍」というのは尋常な数字ではありません。

たばこの箱には「喫煙はあなたが肺がんになる確立を3~4倍高めます」と書いています。

この3~4倍というのも小さくない数字ですが、それからすると、「13倍」というのがいかに大きいかが分るでしょう。

 

では、どうしてこんなにも両者でがんになるリスクが違うのか?

アメリカに住む黒人も、元々のルーツはアフリカ原住民であり、したがって、両者の間で、遺伝的要因はそんなに変わらないはずです。

では、何が一番大きく違うのか? 「食事じゃないか?」

ということで、たった2週間、2週間で何かが変わると思ったのか、とにかく2週間だけ互いの食事を入れ替えたというわけです。

 

いわゆるアメリカン・ジャンク・フード(高動物性タンパク、高動物性脂肪、低食物繊維な食事)を食べているアメリカ人には、アフリカ原住民のような質素な自然食(低動物性タンパク、低動物性脂肪、高食物繊維な食事)を2週間、そして、アフリカ原住民の人たちには、アメリカン・ジャンクを2週間摂らせたわけです。

 

対象者は、アメリカ人およびアフリカ原住民とも20人ずつ、年齢は50歳から64歳という、大腸がんにかかり易い年代です。

 

結果を以下の表にまとめました。

 

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簡単に説明しますと、まず、「大腸がんリスク要因」として、大腸内の「酪酸」と「二次胆汁酸」の増減を見ています。

酪酸というのは、良い腸内細菌が作る良い物質です。

一方、二次胆汁酸というのは、悪い腸内細菌が作る悪い物質です。

この、良い物質が、良い食事に変えた黒人のアメリカ人で増え、悪い物質が減りました。たった2週間でです。

一方、アメリカン・ジャンクを2週間食べたアフリカ原住民では、良い物質が減り、悪い物質が増えました。

 

アメリカン・ジャンクを食べていると、たった2週間で良い物質が減り、悪い物質が増えるという最悪の変化を見せました。

この悪い方向への変化によって、大腸がんになるリスクが高まると考えられます。

 

次に、良い物質である酪酸を造る遺伝子の数を大腸で調べたところ、アメリカ人で増え、アフリカ原住民で減っていました。

酪酸を造る遺伝子が増えているということは、酪酸を造る良い細菌の数が増えているということ、反対に遺伝子が減っているということは、酪酸を造る良い細菌が減っているということです。

つまり、たった2週間食事を変えるだけで、腸内細菌の状態が良い方向にも、悪い方向にも変化するということを示しています。

 

最後に、「大腸内炎症マーカ細胞」とありますが、大腸にこれらの細胞が多いと、大腸に炎症が起きていることを示します。

つまり、大腸に炎症を起こしていたであろうアメリカ人では、たった2週間、質素な食事に変えることで、これらの細胞が減り(つまり大腸の炎症が改善し)、炎症などなかってであろう原住民の人たちは、たった2週間、アメリカン・ジャンクを食べたことによって、大腸に炎症を起こしたのでした。

 

何度も繰り返しますが、たった2週間、食事を変えるだけで、腸と腸内細菌の状態は、良い方向にも、悪い方向にも変わるのです。

たった2週間でこれですから、食事の内容について、5年も10年も気を付けている人と、そうでない人との間には、大腸がんになるリスクにおいて、相当の差ができてしまっているのではないでしょうか?

 

また、食事を改善すれば、たった2週間で良くもなるのですから、今まで食事に気をつかってこなかった人も、今からでも始めて、決して遅くはないということではないでしょうか?

 

アメリカン・ジャンク・フードが悪いというのは、なにも肉が多いからだけではありません。

食物繊維の摂取量が少ないことも重要な原因と思われます。

食物繊維の重要性についても、いずれお話致します。

 

前回と今回の2回で、いかに食事の内容が我々の健康に大きな影響を与えているのかが、お分かりいただけたと思います。

 

次回以降、「良い油、悪い油」のお話を致します。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

 

是非、ご意見・ご感想、お叱りなど、コメントをお寄せください。

大変な励みになります。

 

 

004【健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”その2】

いやぁ~、インフルエンザからの回復に時間がかかっています。

一見、症状は良くなっても、体力が相当消耗しているようで、外に出て歩いてみると、すぐに息が上がります。

会社に行こうと、とりあえず朝起きたのですが、外に出てから、今日は無理しないことに決めました。

仕事は明日からにします。笑

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今回の結論‼️

四つ脚の動物の肉を食えば食うほど、大腸がんになるゾッ‼️

 

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③ 肉食を控える

 

肉、特に四つ足の動物の肉に関しては、調べれば調べるほど、いいことはなんにもないと確信が深まるばかりです。

 

下の図は、ウィキペディアの「大腸がん」からの引用です。

横軸は各国国民の1日の食肉量の平均値(g/日)を、縦軸は大腸がんになるリスク(確率、10万人中何人が大腸がんになるか)を表しています。

 

見事に、グラフの左下から右上までの対角線上にスポットが集まっています。

 

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上の図では、日本人の1日の肉食量は約30g程(厚労省の調べでは、日本人の肉食量は約80gとなっています)ですが、アメリカ人はなんと280gほど。

実際、あの人たちは、1食で1キロのステーキをペロリと食べてしまいますからねぇ。

で、大腸がんのなりやすさはというと、日本人が10万人当たり6人程度。

一方、アメリカ人は日本人の5倍以上の33人程度です。

 

上のデータは、日本人の肉摂取量が厚労省のデータとかけ離れているなど、不正確だと思われる点もあります。

でも実は、同じようなデータは他にもいくつかあり、調査方法が違うためでしょうか、データ数値に差はありますが、いずれのデータでも共通して示されているのは、「肉を食べる量が多いほど、大腸がんになりやすい」ということです。

このことだけは、どのデータも変わりありません。

 

焼肉、ステーキ、牛丼、豚かつ、ハンバーガー、、、なんてのは、「時々楽しむ」程度が好ましいと思います。

 

焼肉、しゃぶしゃぶ、、、私も大好きです。

でも、焼肉は年に2回、少年野球チームの祝勝会だけにしています(笑)。

しゃぶしゃぶは、もう何年も食べてませんねぇ~(涙)。

 

控えようと思ったら、自分でルールを作って守ることが有効です。

 

私の場合、家内に協力してもらって、家では肉料理を少なめにしてもらい、魚を増やしてもらっています。納豆も、以前よりよく食べます。

やはり、外食すると、肉を食べる機会も多いですから、せめて家では少なめにを心がけています。

 

次回は、2015年のネイチャー・コミュニケーションズの論文を引用しながら、肉を中心にした欧米の食事(特にアメリカン・ジャンク・フード)が、いかに体に悪いのかについてお話します。

また同時にこの論文は、「今からでも食事内容を改善すれば、決して遅すぎるということはない」ことも伝えてくれます。

 

今回も最後までお読みくださり、ありがとう御座います。

 

追伸:

是非、皆様のご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大いに励みになります。

よろしくお願い致します。

 

 

003【健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”その1 】

① 健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”

 

前回、2つの研究機関による、アカゲザルでの20余年にわたる実験結果から、病気にならずに長く生きる、すなわち”健康寿命”を延ばすには、食事の「質と量」が重要であることが明らかになったことをお伝えしました。

 

で、一般的には、健康に生きる食事方法として、「30種類の食材をまんべんなく食べましょう」とか、「3食きちんと規則正しく食べましょう」とか、聞きますよね?

でも、30種類の食材なんて食べられます? いや、普通の人にそんなに食材買えますか? 食べ切れますか? 無理でしょ! 非現実的でしょ!!

 

また、厚生労働省も「3食きちんと食べましょう」と言っていますが、では、なぜ3食なのか? 誰もその根拠を明確に教えてくれた人はいません。

「規則正しく」というのには同意しますが、「3食食べないといけない」というのは、ずっと疑問に思っていました。

 

「1日3食食べることで食べ過ぎにつながるなら、2食でいい」というのが私の考えです。

 

これまで、様々な情報を検証してきて、私が「健康に過ごすための正しい食事」としてまとめたのが以下の7ヶ条です。

 

「Dr.やまけんの健康に過ごすための”正しい食事7ヶ条”」

  1. 過食は厳禁
  2. 炭水化物を控える
  3. 肉食を控える
  4. 良質の油を摂る
  5. 食品添加物を避ける
  6. ビタミン、ミネラルをバランスよく摂る
  7. 食物繊維を多く摂る

プラス、「サプリメントの活用」です。

 

別に何も特別な事じゃぁないでしょう。

でも、この7項目の一つひとつがどうして大事なのか、根拠に基づいた理由を理解してこそ、この7ヶ条が実践できます。

なぜなら、理由を理解してこそ、継続させるモチベーションが保てるからです。

 

 

② 「過食は厳禁」の理由~特に糖質と脂質~

 

過食が寿命を縮めることは、昔からマウスなどの小動物の実験結果によって、よく知られていました。

過食が病気のリスクを高めるというアカゲザルの実験結果については、前回お話しした通りです。

 

過食においてしばしば問題にされるのは、特に炭水化物(糖質)と脂質です。

炭水化物の摂り過ぎは、血中中性脂肪の上昇につながります。

中性脂肪の高い状態が長く続くと、脂肪細胞が中性脂肪をたくさん取り込み、やがて脂肪細胞は肥大化します。

 

「脂肪細胞」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?

「脂肪」ていうくらいだから、肥満に関係した「悪い細胞」、みたいな感じですか?

確かに、肥満にも関係はあります。

でも、脂肪細胞も本来は、体の機能を維持するのに「良い」働きをしている、「なくてはならない」細胞なのです。

 

正常な状態では、脂肪細胞は、アディポネクチンとレプチンというタンパク質を出しています。

アディポネクチンは、体に非常にいい様々な働きをしており、血糖値や血圧を正常に保つ働きがあります。

レプチンは、満腹中枢に働いて、満腹感を覚えさせる働きがあり、そのため、ほどほどに食べたら満足し、食べ過ぎないで済みます。

 

ところが、過食で脂肪細胞が肥大化すると、アディポネクチンとレプチンが出にくくなります。

アディポネクチンの低下により、インスリンが効きにくくなるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性とも言い、インスリンが効きにくくなるので、血糖値が下がりにくくなり、やがて2型糖尿病の発症につながる危険性があります)、レプチンの低下により、満腹を感じにくくなり、さらに過食に拍車がかかるという悪循環に。。。

 

さらに、肥大化した脂肪細胞は、TNF-αやFFA(遊離脂肪酸)、アンジオテンシノーゲン、PAI-1という悪い物質を出すようになります。

TNF-αとFFAはインスリン抵抗性を引き起こし、アンジオテンシノーゲンは血圧を上昇させ、PAI-1は血栓を造りやすく(血を固まりやすく)します(下図)。

 

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ポッコリお腹には、この肥大化脂肪細胞がたくさん詰まっています。

そして、これだけの悪玉物質がそろい踏みなのですから、あなたの体は生活習慣病へまっしぐらです。

ポッコリお腹の人、血糖値が高めの人は、明らかに食べ過ぎか、運動不足か、あるいはその両方です。

 

糖尿病は非常に怖い病気です。

私は、がんよりも悲惨な病気だと思っています。

なぜなら、糖尿病は楽には死なせてくれないからです。

 

だんだん歩けなくなり、車いす生活に。

網膜症で失明。神経障害で脚の壊疽(えそ)から切断。

糖尿病性の腎症で人工透析となると、腎臓が回復する望みはなく、死ぬまで透析に通います。

1回4時間、週3回の透析に通うのもかなり負担です。周囲の家族の負担も半端ではありません。

そして、体が目に見えて弱っていき、そのうちに透析に通うのもままならなくなります。

 

すでに糖尿病の疑いのある方は、是非、医療機関にご相談ください(私は医師ではありませんので)。

医療機関で食事療法と運動療法の指導もしてくれます。

 

現在の健康を維持したい方や、将来のためを思う方は、この”7ヶ条”を参考にしていただければ幸いです。

 

今回は1「過食は厳禁」と2「炭水化物を控える」についてお話ししました。

次回は3の「肉食を控える」から続けます。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとう御座います。

 

 

皆様にお願い:

是非、お読みになった感想をコメントでお寄せ下さい。

特に、ご批判を歓迎いたします。

学説には異なる意見もあるものです。

また、私の不勉強のために、不適切な書き込みがあるかもしれません。

ご批判から勉強させていただき、是非とも今後の活動の参考にさせていただきたいと思います。

よろしくお願い致します。

 

 

002【食べ過ぎは寿命を縮めるのか?(アカゲザルでの長期観察)】

インフルエンザ感染のおかげで、家でゆっくりWBC感染(違うって「WBC観戦」!)しました。

印象に残ったこと? 千賀、圧巻の4者連続三振と、始球式での野茂さんの見る影もない投球(笑)

 

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① 20年にわたるサルでの壮大な実験

 

2009年、あの世界的に権威のある学術誌「サイエンス」から1本の論文が発表され、物議をかもしました。

米国の名門、ウィスコンシン大学(UW)が、1989年から20年の長期にわたり、ヒトに近い霊長類であるアカゲザルを用いて、カロリー制限による寿命への影響を観察した結果です。

 

用いられたのは8歳から14歳までの成獣70匹以上。

アカゲザルの平均寿命は27歳であり、8歳では十分生殖能力もあり、大人と言えます。

この70余匹を2郡に分け、1群には好きなだけ食べさせ、もう1群にはカロリー換算で30%制限して餌を与えるのです。

つまり、大人になってから30%OFFのカロリー制限を始めた場合の効果の検証です。

また、70匹以上という検体の数の多さは、統計学的に十分意味のある解析ができると考えられ、20年に渡る長期観察と検体数の多さの点で非常に注目されました。

 

結果は下の写真の通りです。どっちがこっちか、一目瞭然ですか?

 

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左:27歳オス、30%カロリー制限

右:29歳オス、自由摂取

 

左は目力もあり、毛並みも良く、凛としています。

一方、右は、顔の表情こそ柔和に見えますが、覇気がなく、目立ったしわがあり、毛並みは悪く、胸から腹にかけて脱毛し、皮膚は垂れています。

ちなみに、アカゲザルの寿命が約27歳であることから、この2匹とも、十分に老人であるわけです。

それでもって、この見かけの差です。

 

この論文の結論を述べます。

「食べ過ぎは寿命を縮めるのか?」というと、答えはなんと、、、掟破りの「No」です。

20年もかけた実験の結果、節制しても寿命が延びなかったなんて、この実験に20年もかけてきた人たちの立場はどうなるのでしょう?

 

あっ、ちょっと待ってくださいよ。よく見ると、論文には続きがありました。

 

20年の間に、好きなだけ食べた群とカロリー制限群とも、様々な原因でサルが死んでいきましたが、死因に関係なく、すべてのサルの平均寿命を両群で比較すると、自由摂取群とカロリー制限群との間で有意な差はなかったということでした。

 

しかしながら、全体の平均寿命には明確な差はないものの、好きなだけ食べていると、様々な病気に罹るリスクが明らかに高まるということが分かりました。

 

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上のグラフは、自由摂取群とカロリー制限群それぞれの、病気になっていないサルの割合を示したものです。

自由摂取群では、実験開始直後からグラフが右肩下がりなのが分かるでしょう。

つまり、自由摂取群では、実験を始めた直後から(まだ若いうちからということです)病気の発生が多く起こり、歳を重ねるごとにカロリー制限群との差は広がっていったのでした。

 

ですから、「病気になることなく、健康寿命を全うしたいなら、大人になってからでもカロリー制限した方がいいですよ」というのが、この論文の言わんとするところですね。

この結論に達したところで、20年にわたる壮大な実験結果のオチが付きました。

めでたし、めでたし(ふぅ)。

 

② UW実験の結果を否定する新たな論文

 

ところが3年後の2012年。

この目出たい雰囲気にケチをつけるかのように、「サイエンス」と並び称される、かの「ネイチャー」から、米国の国立老化研究所(NIA)が、同じアカゲザルを用いた20年以上に渡る観察結果を報告しました。

しかも、「カロリー制限は寿命にも病気の発症リスクにも影響しない(こなクソッ!)」との、UWの報告を完全否定するかのような、ケンカを売るかのような論文であり、多くの研究者やマスコミまでも巻き込んで、大きな論争になりました。

 

最初は、お互いに「お前んとこの実験はズサンだ。俺っちの方が正しい」のような非難の応酬をしていましたが、そこは真理を追求する学術の徒同志。お互いのデータと実験内容を突き合わせ、実験条件の違いなどによる影響を詳しく検証していったのです。

 

③ 両研究機関が協力してデータを再検討 最終結論へ

 

その結果、両者で実験のデザインに様々な違いがあったことが明らかになりました。

その中でも大きいのは、餌の質と内容です。

 

UWの餌は、かなり栄養価的にもバランス的にも良くないものでした。

一方、NIAの餌は、栄養成分も自然材料由来の豊富なもので、バランスも良いものでした。

 

また、両者の餌で最も大きく違ったのが、糖質の含有量です。

UWの餌には29%もの糖質が含まれていたのに対して、NIAのそれは、たったの4%です。

 

つまり、UWの実験では、通常では考えられないような過剰量の糖質を与えておいた上で、一方の群に制限を加えたので、その差が結果に反映されやすかったと言えます。

 

まるで、「栄養学的に劣悪なアメリカン・ジャンク・フード(アメリカン・ジャンクがお好きな方には、何卒ご容赦を)を長年食べ続けたら、あなたはこうなりますよ」をサルで再現実験したようなものでしょうか?

 

そして、「アメリカン・ジャンク・フードでも、量を節制して食べれば、病気のリスクは(少しは)減りますよ」とのメッセージを、この実験結果は発信してくれているのです。

 

一方、NIAの餌は、もとよりバランスがよく、糖質も少ない良質の餌なので、たとえ好きなだけ食べさせたとしても、決して過食状態ではなかったようです。

 

元からいい食事なんですから、NIAの実験では、制限による差が出なかったのですね。

 

ともあれその後、両研究機関で、様々な実験条件の差異が検証され、両者のデータを付き合わせて解析をやり直し、ついに昨年、4年もの紆余曲折を経て、この問題に決着がつきました。

 

④ 最終結論は?

 

結論は、「食事制限の効果あり」です。(「カロリー制限」ではないことにご注意)

つまり、カロリーの制限だけで効果を論じられるものではなく、食事の制限を始めた年齢や、各栄養素の種類やバランスなど食事の「質」と、カロリーなどの「量」の両方が重要ということです。

 

怪我の功名かもしれませんが、結果的には、UWとNIAが質的にかなり異なる餌で実験を行ったことが、より多くの知見を私たちに与えてくれることに寄与したのだと思います。

 

とにかく、紆余曲折ありましたが、悪い食事の食べ過ぎが病気のリスクを高めたり、結果的に寿命を縮めるということは分かりました。

 

また、過去にマウスなどの小動物の実験で示されていたように、大人になってからでも節制する方がいいということが、霊長類のアカゲザルでも裏付けが取れました。

 

⑤ では、私たち人間の食事は具体的にどうすればいいの?

 

私たち人間が老後も健康に生きるためには、食事の質、つまり栄養素の内容やバランスはどうあるべきなのでしょうか?

 

アメリカン・ジャンク・フード(まだ言ってやがる)がよくないことをヒトでの実験で示した結果など、数々のユニークな論文の紹介を交えて、次回以降、お話を続けてまいります。

 

次回のお題は、「健康に生きるための正しい食事7ヶ条(その1)」です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

 

号外「人生初のインフルエンザ」

不覚にも、生まれて初めてインフルエンザウイルス感染と診断されました(A型です)。

日曜日の午後に発熱しましたが、思い返せば、前日の土曜日に体を冷やしたことが思い当たります。

 

免疫力を高く保つには、体を冷やしてはいけません。

体温が1度下がると、免疫力は数分の一に下がると言われています。

 

多くのウイルスは高温に弱いので、感染を察知すると、体の生体防御機構(つまり免疫系ですね)が急性炎症を引き起こし、そのために熱が出ます。

高熱でウイルスの勢いを削いでおき、さらに高まった免疫力でケリをつけるわけです。

ですから、発熱したからと言って、むやみに解熱剤を飲むのは(楽にはなるけど)得策とは言えません。

お医者さんから頓服薬として出された解熱剤には、「熱が○○度以上のとき服用」などと指示があるはずですので、その通りに服用しましょう。

 

さて、私のインフルの話に戻ります。

横になって安静にしていても、熱は全然下がりません。

熱が高いと辛くて夜も眠れないので、やせ我慢せずに市販の風邪薬(「効いたよね、早めのパ○ロ○」笑)を飲んでみましたら、いやぁ、「早め」でなくても効きますね~、これ!

飲んだらすぐに楽になっていって、熱も1度も下がりました。

さっきまでヘロヘロだったのが、すごく元気になったので、このまま治るんじゃないか?と思ったくらいです。

でも、キッカリ8時間後に元に戻ります。

試しにもう一度飲んでみましたが、やっぱり同じです。

8時間したら、また熱が上がってきて、また辛い思いをしなければなりません。

 

頭では分かっていたことですが、病気の原因にフォーカスしていないこの手の薬は、「病気の辛い症状は改善するが、病気の治療にはなっていない」ということを、身をもって体感できました。

インフルにかかったことでの、今回の数少ない収穫です(笑)。

 

さて、体温と免疫力の話に戻ると、末期のがんの方が、しばしば温泉を利用した温熱療法でよい効果を見せます。

がん細胞は36度以下の体温で増殖が盛んですが、39度以上になると勢いが衰えます。

さらに、温浴で体を温めることで免疫力も高まり、高い抗がん作用を示すことができるようになります。

 

ですから、免疫力を高く保つためには、日ごろから体温を下げないことが肝要です。

入浴はシャワーだけで済まさず、特に冬季はしっかり湯船につかりましょう。

湯温は熱すぎず、ぬるすぎず(40~41度くらい)、時間はのぼせない程度にリラックスしてゆっくりと(5分程度かな?)、体の芯を温めるようにするのがいいでしょう。

子どものころ、おじいちゃんとやった「熱いお湯につかって、十数えて出る」というのはオススメではありません(天国のおじいちゃん、ごめんなさい)。

 

また、入浴後は、せっかく温まった体が冷える前に就寝することで、免疫力を高めるだけでなく、睡眠の質もよくなります。

 

体重計に載って体重を気にしている方もいらっしゃると思いますが、これからは体温計を携帯して、ご自分の体温を気にしてみてはいかがでしょうか?(笑)

 

今回、私のインフルエンザ初体験にかけたお話を「号外」でお届けしましたので、前回の続きの「食べ過ぎが寿命を縮めるのか?」のサルでの実験の結果につきましては、近日中にお届けします。

 

今後も、イレギュラーな話題は「号外」としてお届けする予定です。

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとう御座います。