Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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104【テロメアと老化(その2)】テロメアが長いと長生きできない「長いテロメア症候群」

目次:

1.「長いテロメア症候群」見た目は若いが、細胞はズタボロ

2.テロメアの長さを抑える遺伝子があった

3.がん細胞――無限に増殖する老化細胞

4.長いテロメアがもたらす恐怖の結果

 

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1. 「長いテロメア症候群」見た目は若いが、細胞はズタボロ

 

テロメアを伸ばすことができれば細胞は若返り、寿命すら延ばすことができるのか?

前回の記事、103【テロメアと老化】で、もし、皮膚の細胞のテロメアを伸ばして寿命を延ばすことができればどうなるか?についてお話ししました。

テロメアを長くしたおかげで皮膚細胞が若返って、死ぬべき細胞が死ぬことなく生き続ける。皮膚では細胞であふれかえる奇病になるんじゃないかと。。。

この話はもちろん仮説で、というより、可能性として考えられるひとつのシナリオであって、私の作り話ともいえるものです。本当にこうなるのかどうかは、分かりません。

ところが最近(といっても昨年の話ですが)、通常より長いテロメアをもった細胞がどうなるのか?そのような人がどういう運命をたどるのか?を観察、研究した結果が報告されました。

米国の名門、ジョンズ・ホプキンス大学のチームが、世界的に権威の高い臨床医学誌「The New England Journal of Medicine」2023年6月29日号に掲載した論文がそれです。

 

www.newswise.com

 

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2300503

NEJM原著論文「長いテロメア症候群」

 

先天的な遺伝子異常によって、普通の人よりテロメアが格段に長い人がいるらしいです。

結論を言うと、このテロメアが長い人たちは、歳とってても見た目は若いのですが、実は細胞はズタボロだというのです。

そして、種々の悪性腫瘍の発症リスクが顕著に高いことが判りました。

論文の著者たちは、この症状を「long telomea syndrome(長いテロメア症候群)」と呼んでいます。

 

2.テロメアの長さを抑える遺伝子があった

 

普通の細胞には寿命があります。

細胞が分裂するたびにテロメアが短くなり、ついに一定の長さにまで短くなると、予めプログラムされていたとおりに細胞の増殖は停止し、細胞死に至ります。

しかし、造血系の細胞など、一生増殖し続けないといけない細胞は、それでは困るので、分裂の都度、短くなったテロメアの長さを回復させるテロメラーゼが働いています。

一方、普通の細胞では、テロメアが順当に短くならないといけないので、テロメアが長くなるのを抑える遺伝子があるのだそうな。

それがPOT1だそうです。

つまりPOT1は、テロメアを延ばすテロメラーゼとは逆の働きをしているわけで、細胞の種類によってテロメア長を適切に制御し、その結果として我々は健康に生きることができているのでしょう。

 

過去ブログで、早老症「ウェルナー症候群」のお話をしました。

その原因遺伝子はWRNでした。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

WRNの機能は、二本鎖DNAのらせん構造を巻き戻すヘリカーゼと呼ばれる酵素です。

WRNの欠損が、具体的にどのように老化を促進するのか、これもまた、具体的なことはわかっていません。

でも、WRNもPOT1も、染色体末端のテロメア配列に結合することはわかっており、どちらもテロメア長の制御に深く関わっていることは確かなようです。

 

このように、テロメア長の制御にはいくつもの遺伝子が関与しており、こういう微妙なバランスをとっているものを人間がいじくって、思いのままに細胞を若返らせたり、個体としての人間の健康寿命を延ばせるものでしょうか?

 

3.がん細胞――無限に増殖する老化細胞

 

テロメアが一定長以下に短くなると細胞は死滅する。

これを止めるには、死なないガン細胞に倣うのがいいでしょう。

がん細胞ではテロメラーゼが働いており、分裂のたびにテロメア長が修復されるので、無限に増殖できます。

さぞかし、がん細胞のテロメアって、チョー長いんでしょうね?

いえいえ、実はそれが、そうでもないんです。

 

がん細胞は多種多様で、それぞれに特徴は違うのですが、テロメアの長さは概して長くはないのです。

増殖停止に追い込まれるほど短くはないのですが、普通の細胞と比較しても、それほど長いわけではありません。

最低限の長さが維持できれば十分なのでしょう。

 

前回のブログでも述べたとおり、一般的にテロメアの短い細胞は老化状態にあると言われます。

そうすると、テロメアの短いがん細胞は、老化状態を維持したまま、チョー元気に無限に増殖を続けているということになるのでしょうか。

つまり、老化細胞のテロメア長を回復させて、分裂停止を回避しても、それだけでは若くて健康な細胞に戻れるとは限らないということではないでしょうか。

老化しているけれども、死ねないし、増殖を止められないという、なんとも不健全な細胞。これがガン細胞の姿なのかもしれません。

 

4.長いテロメアがもたらす恐怖の結果

 

では、がん細胞みたいに中途半端な長さではなく、もっと一気にテロメアを長くできればどうなのでしょうか?

 

ジョンズ・ホプキンスの論文に戻りましょう。

POT1遺伝子に変異のある5つの家系17人を対象に、いろいろと調べました。対象者の年齢は7歳から83歳。

変異保有者の血液細胞のテロメアは、普通に比べて2倍近い長さだったそうです。

そして、高齢でも白髪が少なく、見た目の若い人が多かったということです。(羨ましいですか?)

しか~~しッ、観察開始から2年の間に、甲状腺腫、黒色腫、リンパ腫、子宮筋腫など、様々な腫瘍が発生したと言います。中には、一人で複数の腫瘍を持つ人もいたとか。

 

どうしてこんなことになるのか?

クローン性造血というがん細胞の遺伝子を解析した結果、ひとつの細胞につき、数百から千個以上もの変異があったといいます。

これは異常な数です。これだけ細胞が、DNAがズタボロになりながら生き永らえているなんて。。。

私の知ってる常識では考えづらい。

なぜなら、私たちの体は、細胞がここまで異常になるのを見過ごし、許すことはないからです。ふつうは。。。(リンチ症候群とか、リ・フラウメニ症候群とか、一部の家族性腫瘍を除いては)

 

通常なら、DNAに変異が起こると、これを修復する遺伝子が働きます。

もし、修復しきれない場合は、「ゲノムの守護神」と呼ばれるp53遺伝子が発動し、異常細胞を自死アポトーシス)に追い込みます。

しかし、テロメアの長いPOT1変異保有者のガン細胞は、DNA修復遺伝子や守護神の介入を許すことなく、異常な数の変異を蓄積させながら生き永らえたということになります。

 

ジョンズ・ホプキンスのアルマニオス教授は、以下のように述べています。

「長いテロメアは、老化を防ぐというよりはむしろ、老化によって生じた変異細胞を守り、その耐久性を強化しているのではないか」

遺伝子変異は、早ければ4歳ころから始まると推測されるようです。

本来なら修復され、あるいは排除されるべき異常な細胞がテロメアの長さゆえに修復と排除に抗い、耐え抜き、生き残り、長年にわたって変異を蓄積して増殖し、幅を利かせ、様々な悪性腫瘍を発症するのだと。

 

テロメアが短いのは細胞が老化している証拠。だから、テロメアを伸ばせば老化は治せる。寿命が延ばせる。

無理にテロメアを伸ばせば、何が起きるかも知らずに、あまりにも安直な発想です。

私たちはまだ、生命についてなんにも知っちゃいないってことを、肝に銘じなければなりません。

 

皆さま、くれぐれも怪しい輩のいうことに引っかからないよう、くれぐれもご注意くださいね。

そして、何より大事なのは、食事・運動・睡眠です。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せください。

大変励みになります。

 

 

103【テロメアと老化】テロメアを伸ばせば長生きできるの?

目次:

1.老化は病気か?必然か?

2.寿命が遺伝子に規定されている証拠ってあるの?

3.よく聞くけど、「テロメア」ってなに?

4.テロメアを伸ばせば若返る?

 

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1.老化は病気か?必然か?

 

まずは、下のサイトに目を通してみてください。

 

www.technologyreview.jp

 

www.technologyreview.jp

 

近年、老化が病気かどうか?というのが議論の的になっています。

専門家たちが、それぞれ科学的根拠を示して、「病気だ」、「いや違う」と是々非々でやるのは結構なことです。それぞれに主張が異なるのもいいでしょう。

私も過去ブログで、老化は病気ではなく、プログラムされた「必然だ」と言いましたが、これもひとりの主張にすぎません。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

「老化は病気だから治せる」という主張は、「加齢」と「老化」は違うという考え方に基づいているようです。

つまり、「加齢」はプログラムに従った過程だが、「老化」は長年にわたり、様々な有害な環境要因にさらされた結果、DNAや細胞に損傷が蓄積して修正しきれない病的な状態だということのようです。

だから、損傷を予防したり、医学的な処置によって修復したりできれば、病気としての老化は治せるというのですね。なるほど、それはそうだと思います。

でも、「加齢」による様々な体の機能低下が、「老化」といわれる病気の原因になっているのは確かで、このふたつを完全に切り離して「別物」と言えるのでしょうか?

別物と断じて「病気だから治せる」というのは、どうも無茶なロジックのように思えてなりません。

 

確かに、年齢を重ねるごとに、細胞やDNAレベルでの損傷が蓄積し、多くの不都合、つまり病気の原因になっているのでしょう。

年齢とともに、修復能力も免疫力も低下します。これらは加齢による必然であり、現代医学では、まだ制御できるところではありません。

 

どうも上の二つ目の記事「『 老化』は抗えない現象か?治療可能な『病気』か?」を読むと、私のような考え方は「時代遅れ」と言われているみたいですね。

でも、急進的な考えがいつも正しいとは限りませんし。

まあ、どのように主張するのも個人の自由ですからね。

 

健康寿命を延ばすための研究は、もちろん重要です。

ですが、中には人を惑わし、間違った方向に誘導し、間違ったことにお金を使わせていることもあるのではないかと心配するのです。(具体的にどれが、とは言いませんが、、、)

健康寿命を延ばすためには、本ブログで繰り返している通り、食生活と運動習慣の改善。これに尽きると思うのです。

あっ、それから睡眠もね。

 

2.寿命が遺伝子に規定されている証拠ってあるの?

 

繰り返しますが、私は過去ブログでも、老化と寿命はプログラムされた必然の結果だと言いました。

大半の生物は、種の存続のために世代交代しないといけないので、個体レベルで適切なタイミングで寿命が尽きるように規定されているんだと。

でも、そんな証拠あるんですか?

あります。そのプログラムが目で見て分かるようなものが。

鉛筆を使うほど短くなっていく様子は、見ればわかりますね。やがて短くなりすぎて、もう使えなくなると、つまり鉛筆の寿命が来たと、見ればわかります。

そんなみたいに、あとどれだけ細胞の寿命が残されているのか、見て分かるものがあります。

テロメアがそれです。

 

ヒトでもマウスでも、だいたい哺乳類の細胞は分裂できる回数に制限があります。

細胞を容器の中で培養したとき、普通、数十回分裂すると終わりです。どんなに頑張っても100回とか分裂できません。

この分裂回数に限界がある現象は、発見者の名をとって「ヘイフリック限界」と呼ばれます。

なぜ分裂回数に限界があるのか?

それは染色体(二本鎖DNA)の末端にある特徴的な塩基配列構造「テロメア」の長さと関係のあることが判っています。

 

3.よく聞くけど、「テロメア」ってなに?

 

染色体は、私たちのゲノムの本体である長大な二本鎖DNAが折りたたまれ、束ねられたものです。

二本鎖DNAはひも状ですので、端っこが二つあります。

この端っこというのが、DNA分解酵素の攻撃を受けやすかったり、他のDNAと結合しやすかったりと、何かと不安定なのです。

大切な遺伝子本体を守るため、この端っこを守る必要があります。

その役目を担うのが「テロメア」と呼ばれる、6塩基(GGGATT)の短い配列が何百何千回と繰り返された特有の配列構造なのです。(下図参照)

 

DNAの末端「テロメア」の構造

 

細胞が分裂するとき、ゲノムである二本鎖DNAが複製されます。この時、塩基配列に寸分の間違いもあってはなりません。

しかしながら、完全に同じDNA鎖が複製されて、分裂後の細胞に受け継がれるのかというと、そうではありません。この両末端だけは、完全に複製できないのです。

細胞内でのDNA合成の原理上、細胞が1回分裂するたびに、両末端は少し短くならざるを得ないのです。

そうすると、細胞分裂を何度も繰り返すと、末端に近い大事な遺伝子が壊れてしまいます。

それを防ぐために、両末端に長いテロメアの配列構造でキャップをし、テロメア自らが短くなることで、大事な遺伝子を守っているわけです。

 

細胞分裂を数十回繰り返してテロメアが短くなると、プログラムされた通り分裂が止まります。

そして、その細胞は、はじめから規定されていたとおり、その役目を終えるのです。

ろうそくの灯が消えるように、、、

 

 

また、テロメアの短くなった状態は「細胞老化」の状態にあり、様々な病気と関係があることもわかってきました。(下の記事が解りやすいです)

 

www.nikkei.com

 

そうすると、多くの人が考えるのが、テロメア長を回復させることができれば老化を止められる? さらに、細胞を若返らせ、寿命を延ばすことすらできるのではないか?ということです。

かもしれません。

ですが、そんなに単純なものなのでしょうか?

 

4.テロメアを伸ばせば若返る?

 

骨髄の造血細胞や、皮膚、小腸の細胞は増殖し続けています。

ヘイフリック限界に達すれば、増殖が止まるんじゃなかったの?

いえいえ、いつも生命のご都合主義には驚かされるのですが、こういう幹細胞には、分裂後に短くなったテロメア末端を修復する酵素「テロメラーゼ」が働いているので、いつまでも増殖することができます。

無限に増殖し続けるガン細胞。こいつらもテロメラーゼ遺伝子がONになっています。

 

テロメアとテロメラーゼ

 

普通の細胞にもテロメラーゼ遺伝子はあります。でも、スイッチはOFFです。

これをONにしてやることができれば、細胞を若返らせられるのでは?と考える人がいても、まったく不思議ではありませんね。

 

ずいぶん前のことです。

米国人のドクターなんちゃらという人が当時、私が勤めていた会社に「ウチの商品を日本で売らないか」と売り込みに来ました。

それはハンドクリームで、皮膚細胞のテロメラーゼをONにすることができるので、いつまでもみずみずしく若々しいお肌を保つんだそうな。

「眉唾眉唾・・・」

だいたい、そのドクターとっちゃんも歳相応というか、決して実際の年齢より若々しくは見えんしなぁ。

分厚い資料を渡され、検討して報告するように社長に言われました。

科学的エビデンスはあるのか?

なんか、そのドクターとっちゃんが、どこそこの講演会に招待されてプレゼンしたとか、なんかのメディアで取り上げられたとか、他には、テロメアとテロメラーゼに関する一般的な解説とか、、、そんなんばっかり。

成分不明 メカニズム不明

論文一本ないんかいッ!

 

皮膚の細胞は、28日ほどで完全に入れ替わります(ターンオーバー)。

皮膚の下層の方で生まれた皮膚細胞は、上へ上へと昇っていきます。

表面の近くで死に、角質化したのが一番外側の薄いペラペラした表皮です。

表皮はやがて、垢として脱落し、後からあとから新しい細胞がせり上がってきて、入れ替わります。

つまり、皮膚の細胞は決められたタイミングで死なねばなりません。

 

ドクターとっちゃんのクリームで皮膚細胞を若返らせ、みずみずしいお肌にできればいいですよ。

でも、テロメアを長くしたせいで、皮膚の細胞が死ぬべきときに死ななくなったらどうでしょう?

 

皮膚細胞が表皮近くまで上がって来ても死なず、脱落することなく、その場にとどまり続けるかもしれません。

しかし、下からは若い皮膚細胞が次々とせり上がってくるわけです。

これでは、上がってくる皮膚細胞の行き場がなくなります。

もう一人も乗れない満員電車に、次々と多くの乗客が乗り込もうと押し寄せるような状態。

これはもう、健康な皮膚の状態ではないのではないか?

ってか病気、それも、今まで誰もみたことがないような奇病じゃないのか?

 

テロメアとテロメラーゼが細胞の寿命と老化に及ぼす影響、そのメカニズムは、まだ十分に理解されていません。

テロメアの短さと、細胞や体(見た目とか)の老化度、病気発症のリスクとの間に関係のあるらしいことが観察されています。

でもそれは、現象として観察されているだけで、なぜ?どういう仕組みで?何が起こって?ということになると、ほとんどわかっていないのです。

いつか、テロメアテロメアーゼの仕組みの理解が進み、細胞のテロメラーゼ遺伝子を適切に制御する技術を人類が手にすることができれば、ヒトを個体レベルで若返らせたり、寿命を延ばしたりできるようになるかもしれません。

でもそれは、まだまだ先の様な気がします。

 

結局、今のところ分かっていることは、テロメアの急速な短縮防止と病気予防には、ストレス溜めない、適度な運動と適切な食事、質のいい睡眠、だということのようです。

これなら、今日からでもできますよね。

 

どうか、「テロメラーゼで若返り」みたいなものにお金を取られないように、十分にお気を付けください。

読者の皆さまには、日ごろの生活習慣にご留意いただき、健康で長生きできるように努めて頂ければ、このブログの本望とするところです。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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102【人体が「驚異の小宇宙」と言われるゆえん】ヒトゲノムの長さは? 宇宙スケールの数字に驚愕!

目次:

1.体中のDNAを一本につなげたら、どれくらいの長さになるのか?計算してみよう

2.ヒトの体の細胞って、ぜんぶで何個なの?

3.ヒトゲノムの驚愕の天文学的数字

4.こんな小宇宙を、どうやってミクロな細胞核に格納している?

 

ウルトラセブン」第31話「悪魔の住む花」で、当時15歳の松坂慶子さん演じる少女が宇宙細菌ダリーに感染。吸血鬼と化し、夜な夜な人の生き血を求めてさまようのでした。

 

松坂慶子15歳 ウルトラセブン「悪魔の住む花」より

 

ダリーは慶子ちゃんの肺に巣くっているらしいのですが、現代医学は無力。彼女を救えるのはセブンしかいません。

伸縮自在なセブンがミクロ化し、(なんと)慶子ちゃんの鼻から肺に侵入し、直接ダリーを退治するしかない!

「これは非常に危険だ。人間の体とは言えども、広大な宇宙と変わりない。いわば未知の世界だ」ダンは躊躇します。

「よし、未知の世界に挑むぞ!」意を決したダンは、セブンに変身。

しかし、セブンも異物。ダンが懸念した通り、ナチュラル・キラー細胞やなんかがセブンに襲いかかります。

セブン、危うし!

 

 

 

宇宙細菌ダリー 細菌ってか、虫じゃね?

 

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1.体中のDNAを一本につなげたら、どれくらいの長さになるのか?計算してみよう

 

私たちの体の数十兆個もの細胞の一つひとつには全遺伝子のセットであるゲノムが格納されています。ゲノムの正体は、すなわちDNAです。

ゲノムを構成する二本鎖DNAの塩基対の数は30億個で、一つの細胞に2セットあるので60億個です。これを一本にして引き延ばすと、なんと約2メートにもなります。

じゃあ、ヒトの体の全細胞のDNAを一本につなげると、どのくらいの長さになるのか?

長年、遺伝子研究に携わってきたのに、今まで一度も、そんなアホくさい計算なんてしようとも思わなかったことに、はじめて気が付きました(笑)

 

2.ヒトの体の細胞って、ぜんぶで何個なの?

 

ヒトの体の全細胞数は、かつては約60兆個だと言われていました。

これって、誰が数えたの? いやいや、誰にも正確に数えることなんて不可能で、ざっくり計算して、予測した数字です。

人の体の容積は簡単に測れますね。お風呂に入れば、水位が上昇します。上昇した分が人の体の容積です。アルキメデスの原理ですね(懐かし~)

そして、細胞の容積は、顕微鏡で観察すれば、大体のところは大きな誤差なく割り出せそうです。

なので、人体の容積を平均的な細胞の容積で割り算すれば、細胞数が割り出せるわけです。

しかしですね、困ったことに細胞の容積はというと、臓器・組織ごとにバラバラなのですねぇ。

それで、昔のある人が、肝臓の細胞はこれくらいの大きさで、肝臓の容積はこのくらいだから、肝臓の細胞の数はこのくらいのはず。そんでもって、脳の細胞は、、、心臓は、、、筋肉は、、、という具合に、臓器とか組織別に1個の細胞の平均的な容積とから、ざっくりと細胞数を見積もったのです。

それから導き出された数字が60兆個。長きにわたって、この数字が盲信されてきました。

でも最近、この数字は過大評価だとされているようですね。

具体的な数字として「37兆個」というのをよく目にしますが、これもどうだかわかりません。

だって、体重40 kgの女性も、200 kg超えのアンドレ・ザ・ジャイアント(知らない?)も、同じ37兆個であるはがない、、、まあ、平均37兆個としておきましょうか。

ただし、そのなかには赤血球のようにDNAを収める細胞核を持たないものもあるので、注意が必要です。精子や卵細胞は、ゲノムの半分のセットしか持ちません。

 

3.ヒトゲノムの驚愕の天文学的数字

 

ゲノムを持つ細胞の数を少なめに見積もって20兆個としましょう。

ひとつの細胞の60億塩基対のヒトゲノムを引き延ばした長さは2メートルなので、これを20兆個つなげると40兆メートル、、、ってことは400億kmか!

これって、どのくらいの長さなの? ピンときます? 地球から月くらい? いや、そんなにはない?

 

地球の外周は約4万km

地球と月の距離が約38万km

地球と太陽が約1億5000万km

太陽から太陽系でもっとも遠い惑星、海王星まで約45億km!

ちなみに、惑星から格下げされた冥王星まで約48億km

 

ムムッ! これは計算間違ったな。こんなはずがあるわけない! 間違いなく間違ってる!

しかし、何度計算しなおしても結果は同じ!!

誰か、間違っていると教えてくれ~~ッ!!!

 

光の速度は毎秒約30万km。

ちゅうことは、ヒト一人のゲノムDNAをまっすぐに引き延ばして、端っこからスタートして、もう片方の端っこのゴールまで、光さんに「よ~~~い、ドン!」でタイムスプリントさせたら、そのタイムは400億km ÷ 30万km/秒 = 13万3333秒 = 2222分 = 約37時間!

な、な、なんと、ヒト一人の全ゲノムの端から端まで到達するのに、光速でも1日と13時間を要するのダ-ッ!!

これはもう、ワープ航法が可能なヤマトかエンタープライズに乗ってかへんとアカンやろーー!

(ホントに計算合ってんのかなぁ? 心配だなぁ)

 

私たちが毎日、こうして生きてられるのも、宇宙スケールのゲノムのおかげなんですねぇ。

いや、ビックリしましたわ。

 

www.youtube.com

こいつはスゴイ!「宇宙の大きさを体感できる動画」

 

4.こんな小宇宙を、どうやってミクロな細胞核に格納している?

 

全長2メートルの二本鎖DNAは、なんと直径わずか6ミクロン(0.006 mm)の細胞核内に収められています。

折りたたまれて、ねじって束ねられ、さらに折りたたまれて束ねられ、46本の染色体というDNAの束に分けられ、まとめられています。

 

 

私たちの体の中では、毎日ひとときも休まず、細胞が活動しています。

骨髄の中では血液細胞が作られ続け、腸粘膜や皮膚の細胞も盛んに分裂し、常に古い細胞と置き換わっています。

細胞が分裂するときには、この染色体がきれいに解きほどかれて複製され、終わればまた丁寧に束ねられて染色体になります。

よくもまぁ、毛糸玉みたく絡まったりしないものですねぇ。

 

また、細胞が分裂するとき、ゲノムは猛烈なスピードで複製されます。

この宇宙スケールの長大なゲノムをわずか数時間で複製し、しかもわずかの間違いも許さないのですから驚きです。

 

まさに未知の世界、「驚異の小宇宙」です。

 

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次回「テロメアと老化」のお話を予定しています。

お楽しみに。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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101【抗体医薬品治療体験記(その2)】デュピクセントの初回投与が終わりました

昨日(2021年1月13日)、デュピクセントの初回投与を受けました。

デュピクセントは2週間ごとに打つのですが、初回のみは2本を一度に打ちます。

 

デュピクセントは皮下注射です。

打つ部位は二の腕の肩の近く、腹部、内腿です。

まず一本目は看護師のおばさん(失礼)が、おへその横の腹部に打って下さいました。

 

注射というと、昆虫採集セットの注射器に針というのを想像すると思います。

でも、そんなんじゃなくて、下の写真のようなカートリッジ式になっているのですね。

 

f:id:takyamamoto:20210114075814p:plain

デュピクセントのカートリッジ

 

さて、しばらくは通院して打って頂きますが、そのうちには通院せず、自宅で自己注射すると言います。

そこで2本目は、看護師おばさんのご指導のもと、自己注射することになりました。

 

カートリッジのキャップを外し、先端を腹部のおへその10センチほど横に突き立てます。

心境としては、なんか時代劇で見る切腹のような感覚ですね。

そして、カートリッジをグッと腹に押し付けると、「パチンッ」と音がして、カートリッジから針が飛び出して腹に刺さったのが分かります。

チクッと痛みが走りますが、そんなに強い痛みではないです。

で、カートリッジを押し続けると、シリンジが下がって薬液が注入されます。

その時に、圧迫痛がありますが、「ああ今、薬が俺の体に入っていくんだな」と有難く思うことで、痛みを気にしないことにしました。

さあ、これで天下の抗体医薬の投与完了です。あっけないものです。

 

お腹に針を突き刺しましたが、出血はほとんどありません。

今晩はお風呂も普通にはいっていいとのことです。

 

デュピクセントの効果が出るには数日から数週間かかると言います。

なので、当面は従来のステロイド剤を併用します。

ということは、症状が良くなっても、それがデュピクセントの効果なのか、ステロイド剤の効果なのか分からないことになりますね~~。

 

でも、私の体内に注入された抗体が、IL-4/IL-13受容体に出会うとそれに結合し、Th2細胞の活性化を抑制してくれている様を想像することで、その効果を実感できるのではないかと期待しています。

 

次の投与は2週間後。

それまでに体調に変化があれば、ブログで報告しますね。。。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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100【抗体医薬品治療体験記(その1)】デュピクセントの投与を受けることになった!

以前のブログで、アトピー性皮膚炎に絶大な効果が期待できる抗体医薬品「デュピクセント」のことを紹介しました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

実は、私のアトピー性皮膚炎は重症で、既存の治療で最も強力なステロイド療法でも抑えきれなくなって、主治医からデュピクセントの治療を強く勧められたのです。

症状からすると、私はデュピクセントの治療を受けられる患者のように思えました。

既存の治療法でもはや症状をコントロールできないと主治医が判断したのですから。。。

もっと解りやすく言うと、私は主治医からさじを投げられたのだと思います。

主治医の先生にすれば、この15年もの間、やれるだけのことはやって下さったのだと思います。

既存の治療法の中でやれることはやり尽くして下さった。

でも、私は依然、アトピーの苦しみから解放されていないと訴えるので、ご自身のクリニックでは扱っていないデュピクセントの治療を勧められたのでしょう。

 

紹介状を書いて頂いて、昨年末(2019年12月)、デュピクセント治療を行っているというクリニックの門をたたきました。

 

先生は紹介状を読んで、私に何か言いたそうにしましたが、いやいや、私の方から言いたいことがある!

何はさておき、まずは治療費のことを聞かねばならぬ!!

で、注射1回分2万7千円とのこと、、、

おやおや、同じ抗体医薬品でも1000万円はかかるオプジーボとはずいぶん違って安いので、少し安堵しました。

 

いやいや、1ショット2万7千だけど、どんな頻度で打たないといけないのかが問題ですよね。

で結局デュピクセントの場合、2週間ごとに1ショット、これを恐らく一生打ち続けなければならない。。。。

年間ざっと70万円だよね、、、、

 

これはちょっと今の自分には高嶺の花なんだけど、とにもかくにも抗体医薬品がいかに効くのかどうなのか、自ら実験するために(いやいや、この苦しみから解放されたいがために)デュピクセントの治療を受けることに決めたのです。

 

さて、治療費の経済的な心配はさておき、私が「はい、お願いします」と言えばすぐにデュピクセントの治療を受けられるのかというとさにあらず。

血液検査をすると言います。この血液検査の結果をクリアしないとデュピクセントは打てないと言います!

検査の結果が出るのは2週間後。でも、年末年始安を挟むので、結局3週間後になってしまいました。

果たして私は、無事にデュピクセントの治療を受けられるのでしょうか???

つづく~~~~!

 

はい、年が明けまして2021年正月、おめでとうございます。

なんと、私は血液検査にもパスして見事デュピクセントの治療を受けられるというではあ~~~りませんか(お久しぶりぶり、チャーリー浜調)

 

この時の検査というのは、「非特異的IgE」と「TARC」です。

 

まず非特異的IgEについてですが、IgEというのは私の過去ブログでもお話しました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

元々IgEは、寄生虫感染などに対応する防御機構を備えていたのですが、戦後、衛生環境が良くなり、寄生虫感染がなくなるとともに仕事を失ったIgEは、本来の敵ではないもの(卵とか、エビとか、スギ花粉とか、まあそういうもの)を攻撃するようになった、、、これがアレルギー性疾患だと、まあ簡単に言えばそう言えます。

 

さてさて、果たして私がデュピクセントの治療を受けられる患者に相当するのか否か、まず第一の関門は非特異的IgE量です。

非特異的とか特異的とか、ああぁ、説明すんのめんどいなぁ

まあ、要するに、IgEが高いとアレルギーの症状も酷いいうことかな・・・

 

で、ここで大事なのが、デュピクセントの治療を受けるには、非特異的IgEの高いことが挙げられるそうな。

何故なら、デュピクセントはTh2を抑える薬。IgEが高いということはTh2が高いということなのです。

ところが、IgEが低いと、Th2が強くないデュピクセントの効きにくいタイプのアトピーということになるんだそうですね(^^)v

 

もう一つの検査は「TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)」で、アレルギー反応を誘発する白血球の遊走を促すケモカインと呼ばれるリンパ球の一種なのです、、、(なんのことか分からんなぁ、、、)

でも、ここで言いたいのは、血中のTARCが多ければ多いほど、デュピクセントの治療の適用になるということです。

 

そしてめでたく、私は非特異的IgEとTARCの両検査において、両方とも異常高値ということで、めでたく「デュピクセント適用」と相成ったのでありました~~~!

ありがとう御座いま~~~~~す

 

最初の注射は

2021年1月13日、すなわち明後日ですわ~~~~

 

注射を受けた後の効果の程については、追って報告いたしますけん(=_=)

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになった感想やご批判をコメントで下さい。大変励みになります。

 

 

099【格安PCR検査にご用心】ぶっちゃけ大丈夫なのぉ??

目次:

1.おさらい:今や市民権を得たPCR、、、今更聞けないPCRってなに?

2.「PCR検査」で結局、なんでそんなに格安なのぉ~?

3.「PCR検査」を謳っていながら、PCRじゃない業者もある!?

4.で結局、格安検査、大丈夫なのぉ~?

 

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1.おさらい:今や市民権を得たPCR、、、今更聞けないPCRってなに?

 

いやあ今や、あちこちで一般の人が「PCR検査」という言葉を口にしているのを耳にしますね。

PCRの伝道師」を自任する私としては嬉しい限り、、、というよりは、一般の方々のPCR検査に対する理解が大丈夫なのか、と心配でならないのであります。

というのも、マスコミやPCR検査業者とかが正しい情報を十分には発信していないと思えてならないからなんです。

 

PCRというのは、私に言わせれば、20世紀の生物科学史上最大の大、大、大発明なのです。

PCRが世に出る前の「プレPCR時代」と、その後の「ポストPCR時代」とでは、少なくとも生物学や基礎医学研究はそれこそ飛躍的な発展を見せました。

それは1980年代前半から半ばにかけてのことでした。

なにしろポストPCR時代では、生物学や基礎医学の研究現場で、数週間かかっていた作業が数時間!で終わってしまうのですから、研究分野におけるインパクトと言ったらありぁしません!

 

PCRは単にウイルスの検査法としてノーベル賞を受賞したのではありませんのよ。

遺伝子を扱うあらゆる研究分野、すなわち医学、分子生物学、考古学、法医学、農学等々、とにもかくにも遺伝子(DNA/RNA)を扱う研究分野すべてにおいてエポックメイキングな革新をもたらしたのでしたのよ、、、ふむふむ。。。

 

PCRは単に科学分野のみならず、「ジュラシック・パーク」など、フィクションの世界にも、そのプロットのきっかけを与えることになったのです。

そのインパクトたるや、いかばかりか計り知れないのですよ!

 

そんなに凄いPCR法も、もとをただせばたった一人の名もない企業研究者の思い付きから始まったのでした。

彼は、そのアイデアを、彼女とのドライブの最中に思い付いたと言います。

そのアイデアは素晴らしくシンプルで美しく、それが実現しないとは思われないようでした。

しかし彼は、その自身のアイデアを実験で実証することができず、ただいたずらに月日が過ぎていくのでした、、、

果たして、ノーベル化学賞を受賞することになる世紀の大発明「PCR法」は、どのようにして確立されていくのでしょうか?

 

この物語のつづきは過去ブログをお読みください。

PCR誕生にまつわる人間模様が面白くお読み頂けます。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

2.「PCR検査」なのに結局、なんでそんなに格安なのぉ~?

 

PCR検査」って言葉、すっかり一般の方々の間でも市民権を得ましたよね。

PCRって、ほんの1年前までは、一部の研究者や技術者や検査技師の間で通用する専門用語だったのです。

それが、テレビをつければ、PCRの言葉を耳にしない日はないくらい、、、

いや、いいんですよ。PCRへの認識が世に広まることはいいことですから。

 

「優れた技術は人類の幸福に資するためにある」

これは私の座右の銘の一つです。

新型コロナウイルス感染の検査に関してはPCRだけが頼みの綱。

だとすれば、PCRについて一般の人の理解を広めることは、非常に重要な課題ですよね。

 

そのような状況の中で、専門家の理解を超えるような商業サービスが出てまいりました!

prtimes.jp

 

はい!

私は特定の企業の営業妨害をするつもりは毛頭御座いませんが、上のサイトの文言を良くお読み下さい。

 

「東京駅八重洲南口から徒歩4分の場所に、新型コロナウイルスの検査を行う『SmartAmp Station“駅前検査”』をオープンします。
『SmartAmp Station“駅前検査”』では、神奈川県衛生研究所などの共同研究グループが共同で開発した新型コロナウイルス次世代PCR検査法、PCR/SmartAmp法(スマートアンプ法)を使用し、安く、早く、安全に検査できる環境を提供します。」

 

普通、数万円かかる新型コロナウイルスPCR検査を、な、ななんと1,980円でやると述べてますよねぇ。

皆さんは、これ読んでどう思われますか?

受けてみたいと思われます???

実際、予約で長蛇の列らしいですがね、、、

 

「こんなに安いのなら、是非検査受けたい」と思うのか(予約いっぱいだそうですよー)、「安いのには何か訳があるのでは?」と慎重に考えるのか?

「なんか怪しい」と思ったりとか、、、

 

はい、安いのにはやっぱ訳があります。

それを、本サービスのウェブサイトから読み取りましょう!

 

3.「PCR検査」を謳っていながら、PCRじゃない業者もある!?

 

世界初のカップ麺は日清さんの「カップヌードル」でした。

世界初の携帯コンパクトカセットテーププレーヤーはソニーさんの「ウォークマン」でした。

そして、世界初の遺伝子増幅技術は「PCR法」でした。

 

何が言いたいかというと、私が幼少から若いころには、カップラーメンであれば、それが日清のものであろうあとなかろうと「カップヌードル」と呼んでいました。

携帯カセットテーププレーヤーは、ソニーウォークマンでなくても、AIWA製でもPANASONIC製でも、「ウォークマン」と呼んでいました。

カップヌードル」も「ウォークマン」も、それぞれ日清とソニー登録商標です。

つまり、日清以外のカップ麺を「カップヌードル」と呼ぶことは出来ないし、ソニー製以外のカセットプレーヤーを「ウォークマン」と呼ぶことは出来ないのです。

それにもかかわらず、これらをそう呼んでしまうのは、やはり、その分野で最初にカップ麺なり、携帯カセットプレーヤーなりを世に送り出したブランドの力と言うものでしょう。

 

ほんで、話をPCRに戻します。

PCR法」というのは(期限切れしていますが)特許もあり、論文もある、世界初の遺伝子増幅技術のことです。

この技術は、その原理の単純明快さと汎用性の広さとから、発明後瞬く間に世界中に広がり、世の研究者経つによってPCRの応用技術が開発されたりして、その有用性は数年で世に知らしめられました。

 

PCR法の普及によって、以前は不可能だったことの多くが可能となりました。

もちろん特許はあります。

特許権者は、いろいろと巡りめぐって、最終的にはスイスのメガファーマ・ロシュ社が保有するに至りました。

この特許はがんじがらめです。

PCRは遺伝子診断などの有用な技術として各国で認可されましたが、すべてはロシュ社のものです。

ロシュの許しなしには、誰もPCRに手出しできません。

そこで技術者や研究者が考えるのは「特許抜け」です。

PCRのアイデアを拝借しながら、PCR特許の盲点を突き、類似の技術の特許成立を狙うものです。

 

別に特許抜け自体は違法でもないし、私も批判するつもりもありません。

事実、PCR法の特許を「抜く」ための類似の遺伝子増幅技術の開発が盛んに行われ特許申請がなされました。

でも、言わせてもらえれば、言葉は悪いですが、PCRの「バッタもん」なのです。

バッタもんを開発すること自体は、悪いとは言いません。

でも、許せないのは、PCR法でもないのに、「PCR法」という言葉を宣伝に使うことなのです。

エースコックのを「カップヌードル」と呼ぼうが、AIWA製を「ウォークマン」と呼ぼうがかまやしません。

しかぁ~し!

PCR法でないバッタもんを「PCR」と呼称して宣伝に使うことは許しがたい!!(怒)

そして、このようなPCRのバッタもん技術開発の動きは、特に我国において顕著だったのです。

 

4.で結局、格安検査、大丈夫なのぉ~?

 

改めて以下のサイトの文言をお読みください。

 

1検査 1,980 円〜! 最短2時間半で検査結果がわかる新型コロナウイルス次世代 P C R 検査 P C R/SmartAmp 法 を用いた”駅前検査”場が 12/10(木)オープン!|株式会社ダナフォームのプレスリリース

 

新型コロナウイルス次世代PCR法、PCR/SmartAmp法を、、、云々、、、」とありますね。

はい、ここで知らない単語「SmartAmp」というのが出てきました。

なんすか?そのスマートアンプって?

 

これこそが、我が日本の著名な公的研究機関とあるベンチャー企業が開発した独自の「遺伝子増幅技術」なのです!

でもね、、、、、、その原理の根本は核酸合成酵素を用いた遺伝子複製であって、言葉悪いですけど、言わせてもらえば、PCRの「パチモン」なんですよねー。

そのパチモンを、上記の広告では、「PCR」と言っている訳ですな。

しかも「次世代PCRと呼称している!

これは許しがたい!!

PCRよりも優れていると言わんばかりじゃないかッ!パチモンがッ!!

 

カップ麺ならなんでも「カップヌードル

携帯カセットプレーヤーならなんでも「ウォークマン

遺伝子増幅法ならなんでも「PCR法」

 

いやいや違うでしょ!

PCRとSmartAmpは似てまったく非なるもの!!

ちゃんと区別せねば!!!

 

これはマスコミも悪い!!!

SmartAmpの格安検査センターオープンをニュースで取り上げておきながら、「PCR検査センター」と報道していた!

「そんなこと、どうでもいいんじゃない?」ってか?

いやいや

医療機関で医師の判断のもと行われる新型コロナウイルスPCR検査は厚生労働省の承認を受けて実施されているものですが、民間業者が行うSmartAmpの新型コロナウイルス検査サービスは未承認なのですよーーーーーっと。

これを安いからと言ってサービスを受けるのは、受ける人の自由勝手ではありますが、その有効性、つまり感度や特異度と言った検査精度については科学的な根拠が示されていないと言っていいのです。

 

まあ、皆さん多くの方が初詣にもうられたら100円とかでおみくじ引くこともあるでしょ。

でもね、おみくじがハズレたからって、神社が責任取ってくれないように、このスマートなんとかの検査結果がハズレても、だーれも責任取ってくれへんし、な~んの補償もあらしまへんのやで~。

まあ、おみくじと同じように科学的根拠のない、PCRでもないのに「次世代PCR」と謳っている、ハッタリにしても度の過ぎた検査を気休めにイチキュッパで受けられるのなら、お受けになればいいんじゃないですか。

 

はい

私はこのような科学を装った無責任な量販型遺伝子検査業者に批判的なのです。

ご反論があれば、なんぼでもお受けしますよーーーーー

炎上大歓迎!!

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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号外【祝!ノーベル化学賞受賞!】ゲノム編集技術

皆さん、おひさです。

 

昨年私は、「ゲノム編集技術」がノーベル生理学・医学賞を受賞すると予想しましたが、見事に外れてしまいましたね。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

今年こそはと思っていましたが、見事ノーベル化学賞を受賞しました。

話題のゲノム編集技術について、手っ取り早く知りたい方は、私の過去ブログをお読み頂ければ幸いです。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

 

098【新型コロナウイルスの検査法「PCR検査」ってなに??】

今日のニュースで、来週から新型コロナウイルスの検査が保険適用になるとか。。。

風邪症状で具合の悪い人は、全員新型コロナウイルスの検査を受けることになるのでしょうか?

いや、そうなると検査会社はてんやわんやの大忙しですね。

 

ところで、新型コロナウイルスの検査って、どういうものなのでしょう?

ニュースでもやってますよね、「PCR検査」

いったいPCRってなに???って感じですよね。

 

全ての生物は遺伝子を持っています。

そんでもって、生物か無生物かよく分からないウイルスも、やはり遺伝子を持っています。

遺伝子(DNAやRNA)というのはコピーして増やすことができるのですね。

ひとつの細胞が増殖して、ふたつの細胞に分裂する時には、一組の遺伝子が二組にコピーされるのですが、その原理を応用して、試験管の中で遺伝子のコピーを重ねて数百万倍、数千万倍にも増やせるのがPCR法です。

つまり、原理的には、検体の中に1匹のウイルスがいれば、そのウイルスの遺伝子のコピーを繰り返して無限に増やすことができるのです。

ひとつがふたつ、ふたつがよっつ、よっつがやっつ、やっつが、、、、という具合に倍々に増えていくのですね、遺伝子が。。。

 

新型コロナウイルスは呼吸器官(肺、気管支、咽頭)で増えます。

ですから、綿棒で咽頭(喉の奥)をぬぐって、そのぬぐい液がPCR検査の検体になります。

その検体の中に、数十匹のウイルスがいれば、PCR法によって確実にウイルスの遺伝子を増やして、専用装置でウイルス遺伝子の存在を検出することが可能になるのですね。

 

実はPCR法というのは、20世紀の生命科学史上最大の発明と言われる超画期的な技術なのです。

世紀の大発明ですから、当然ノーベル賞受賞してます。

PCR法がなかったら、輸血によるエイズウイルスや肝炎ウイルスの感染も防げなかったし、ジュラシックパークもなかった、と言えましょう?

ん?何のこっちゃ?と思われる方は、是非、以下の過去ブログをお読みください。

PCR法の誕生秘話からPCR法が実現した技術革新までについて語っています。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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097【ついに登場!アレルギー性疾患の特効薬】デュピクセント

目次:

1.私はアトピーもち

2.どうしてアレルギーになるの?

3.免疫バランスについて、もう少し詳しく

4.デュピクセントはTh2サイトカインの作用を邪魔する

5.で、おいくら万円くらいかかるの?

 

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1.私はアトピーもち

 

私にはアトピー性皮膚炎の持病があります。

子供のころからひどいアレルギー体質です。

小さいときは小児喘息に卵アレルギーがありましたが、これらは大きくなるにつれ治癒しました。

でも、アレルギー性鼻炎は子供のころから今も続いています。

そして、大人になってから、30歳くらいのころにアトピーを発症し、それ以来25年以上、この病気と付き合い続けています。

 

「最近、症状がひどい」と主治医に告げると、先生は「デュピクセントって薬知っていますか?」と言います。

「知らない」と言うと、サノフィ株式会社(製薬メーカー)の「デュピクセントを使用される患者さんへ」という小冊子を渡されました。

 

「デュピクセントとは」の画像検索結果

 

2.どうしてアレルギーになるの?

 

私のブログの読者なら、もうご存じかもしれませんが、アレルギー反応とは私たちの体を守るための生体防御反応、すなわち免疫反応です。

免疫系は絶妙な制御によりバランスが保たれており、攻撃するべき相手と、攻撃してはいけないものとを見分けています。

しかし、その人の体質(遺伝的要因)と近年の生活環境の変化(衛生環境や食生活の欧米化など)によって、本来攻撃してはけないものに免疫が過剰に反応する。これがアレルギー性疾患です。

 

過去ブログでもお話ししましたが、免疫系にはバランスを保つためのブレーキとアクセルとハンドルがあります。

 

f:id:takyamamoto:20191217110340p:plain

 

過去ブログもご参照

takyamamoto.hatenablog.com

 

アレルギー反応とは、この免疫のアクセルが踏まれて過剰に強くなり、ハンドルが右側の液性免疫(2型ヘルパーT/Th2)の方へきられた状態であると言えます。

Th2側にシフトすることによって抗体、抗体の中でもアレルギー反応を引き起こすIgE(アイジーイー)という種類の抗体を大量に産生する状態になっているのです。

 

3.免疫バランスについて、もう少し詳しく

 

もう少し詳しくお話ししましょう。(少し小難しくなるので、ここは読み飛ばして、4に進んで下さって構いません)

 

免疫のブレーキとアクセルはどうやって踏むのか? ハンドルはどうやってきるのか?

それにはサイトカインという免疫物質が大きく関わっています。

サイトカインは百種類以上もあって、その全部の役割が分かっている訳ではなく、また全部を覚えきれるものではないのですが、主要なサイトカインがどういう働きをするのかを下の図にまとめました。

 

f:id:takyamamoto:20191217110707p:plain

 

幼弱なT細胞(ナイーブT細胞)は、細胞性免疫をつかさどるTh1細胞や液性免疫(抗体)をつかさどるTh2細胞に分化します。

図の右側のTh2細胞はある種のサイトカインを出しています。

IL-4, 5, 6, 10, 13と呼ばれるものです。

これらのサイトカインが、抗体産生B細胞に作用して、アレルギーの原因になるIgE抗体の産生を強力に促すわけです。

ですから、アレルギーを防ぐためには、Th2の方にハンドルが切れないようにしてやればいいことが分かります。

口で言うのは簡単ですが、そのような薬ができるものなのでしょうか?

 

4.デュピクセントはTh2サイトカインの作用を邪魔する

 

さて、デュピクセントですが、これは抗体医薬、すなわち生物学的製剤です。

 

生物学的製剤については、過去ブログご参照

takyamamoto.hatenablog.com

 

抗体医薬品には、特定の物質に特異的に結合して、その働きを妨害するタイプのものがあります。

過去ブログでご紹介した、昨年の本庶先生のノーベル賞受賞で脚光を浴びたオプジーボも抗体医薬です。

 

オプジーボについては過去ブログご参照

takyamamoto.hatenablog.com

 

デュピクセントは、Th2サイトカインであるIL-4とIL-13の働きを妨害することで、皮膚の炎症を沈め、皮膚のバリア機能を回復させる効果・効能があるのです。

 

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デュピクセントの作用メカニズム

 

5.で、おいくら万円くらいかかるの?

 

生物学的製剤というと、すぐに思い浮かぶのが高い薬価です。

オプジーボなんかは、一人分で1000万円以上かかります。

デュピクセントも数百万円かかるようです。

でも、高額医療制度があるので、申請すれば一部は戻ってきますので、自己負担額は年収によって異なるのですが、実質一人、数十万円のようですね。

主治医は「劇的に効く」といいますが、それでも私には手が出ない金額ですので、「今回はとりあえず見送ります」と答えました。

 

この治療が受けられるのは、従来の治療法、例えばステロイド剤でも症状をコントロールできない患者です。

町医者ではこの治療は行っていないので、かかりつけ医に紹介状を書いてもらい、大病院に数カ月にわたって数回通うことになります。

ただ、自己投与、つまりインスリンみたいに自分でも注射できるので、忙しくて頻繁に通院できない人でも大丈夫なようですね。

 

デュピクセントは、喘息の患者さんも投与の対象になっています。

ひどいアレルギーで長年悩んでおられるのなら、一度、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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096【細胞間の対話をする体内の小さな袋】エクソソーム(1)

最近話題です。

「エクソソーム」

 

NHKでも特集番組が放送されました。

www.youtube.com

 

エクソソームとは何か?

細胞間で「対話」を行う小さな小さな袋

その袋には、情報を伝達する様々な物質が含まれています。

私がここで多くを語るより、まずはNHKの番組をご覧ください。

そして、エクソソーム(2)、(3)と記事を続けていきます。

 

今回も最後までお読みくださり、ありがとう御座います。

 

ご感想やご意見、ご批判をコメントで頂けると、大変励みになります。

 

号外【ノーベル生理学・医学賞受賞者 本日発表!】満屋裕明先生か!?

いよいよ今夕です。

ノーベル生理学・医学賞の受賞者発表!

 

前回のブログで「ゲノム編集技術」と予想しましたが、やっぱ時期尚早でしょうね。

それで予想変更しま~~す(^^)

ずばり、日本人研究者「満屋裕明」先生で決まりで~~す。

 

巷の予想では、日本人候補者の先鋒として京都大学の森和俊先生のお名前が挙がることが多いですね。

森先生も十分にありです。

でも、私は満屋先生を推します。

なぜかって?

それは、私のブログで満屋先生を取り上げさせて頂いたことがあるからです。

 

いえ、ただそれだけの理由ではありません。

AIDSの原因ウイルスHIVの発見者たちは、2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

ウイルスの発見が、その後の検査法や治療法の開発につながったことが評価されたからです。

そして、実際に次々と新しい薬が開発され、現在ではほぼほぼAIDSはコントロール可能になったのです。

その最初のAIDS治療薬を開発したのは満屋先生その人でした。

 

いったんHIVに感染すると、ウイルスを体から完全に排除することはできません。

でも、今ではウイルスを制御し、患者がウイルスとうまく付き合いながら生きていくことができるようになったのです。

 

(満屋先生の業績について、詳しくは過去ブログご参照)

takyamamoto.hatenablog.com

 

20世紀の黒死病エイズ」の治療に道を切り開いた満屋裕明先生。

十分にノーベル賞に値する業績だと思うのです。

 

発表が楽しみです。

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

 

号外【2019年ノーベル賞大予想!】

目次:

1.化学賞は「次世代シーケンサー」か?

2.生理学・医学賞は「ゲノム編集」?

 

またまたこの季節がやってまいりました。

本庶先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されてから、もう1年も経つのですねぇ。

takyamamoto.hatenablog.com

 

そこで、今年2019年のノーベル化学賞(10月9日発表)と生理学・医学賞(10月7日発表)を独断と偏見で予想してみます。

(わたしゃ、物理はわからん。なので物理学賞は予想できましぇ~ん)

 

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1.化学賞は「次世代シーケンサー」か?

 

生物学や遺伝学を著しく発展させた技術に、タンパク質やペプチド(タンパク質の短いやつ、との理解でいいでしょう)のアミノ酸配列の決定法と、遺伝子(DNA)の塩基配列の決定法があります。

この二つの技術を開発したのは同一人物。フレデリック・サンガーさんという方でした。

この二つの偉大な発明で、サンガー先生はノーベル化学賞を二度受賞された唯一の人として知られます。

 

 

さて、サンガーさんの偉業に続くであろう技術があります。

それが「次世代シーケンス技術」

 

ヒトゲノムプロジェクトでは、全ゲノム30億の塩基配列を解読するのに13年かかりました。

費用は30億ドルとも、それ以上とも言われています。

この時に使われたゲノム解読方法はサンガー先生の方法です。

しかし、サンガー法では、どうしても膨大な時間と費用がかかってしまうのでした。

 

その解読スピードとコストを飛躍的に改善したのが「次世代シーケンサー」です。

ヒト一人のゲノム解析に要する時間は、わずかに数日!

費用も1000ドル程度!

 

この技術は生命科学に飛躍的な進歩をもたらしました。

まさにパラダイム・シフトです。

そのインパクトを書き連ねると長くなるので、過去ブログをご参照くださいね。

takyamamoto.hatenablog.com

 

今年のノーベル化学賞は「次世代シーケンス技術の開発」で決まりでしょう!(まったくの独断偏見!)

 

2.生理学・医学賞は「ゲノム編集」?

 

iPS細胞がもたらしたインパクトは、非常に大きいものがありました。

山中先生がノーベル生理学・医学賞を受賞したのが2012年。

マウスのiPS細胞の開発から6年、ヒトのiPS細胞からわずかに5年という、自然科学分野のノーベル賞としては異例の速さでの受賞でした。

takyamamoto.hatenablog.com

takyamamoto.hatenablog.com

 

その山中先生をして、「ものすごい技術! iPS細胞など足元にも及ばない!」と言わしめたのが「ゲノム編集技術」です。

takyamamoto.hatenablog.com

 

ヒトを含めたあらゆる生物種で、思いのままにゲノムを改変できる恐るべき「神の御業」!

農産物の生産性を上げたり、病気に強い品種を作ったり、というのは屁のカッパ。

マラリアを媒介しない蚊を作ってマラリアの根絶を目指すプロジェクトや、AIDSの治療への応用が進められています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

その可能性は、アイデア次第でほぼ無限!

ノーベル賞に値するインパクトがあるでしょう。

 

でも、正直言うと、今年のノーベル賞受賞は時期尚早ではないかとも思うのです。

というのも、開発者たちが特許の所有権を巡って争っていたりして、法的に誰が本当の開発者か決着がついていなかったりするのです。

開発当時、「数年以内のノーベル賞受賞確実」と言われていた青色LEDの開発者、中村修二さんが受賞に20年以上もかかったのは、会社との特許訴訟の悶着に決着がつくのに時間がかかったことが一因とも言われいます。

 

さらに、ゲノム編集には倫理的な問題が。。。

ゲノム編集のヒトへの応用に関する倫理問題について世界規模で議論が展開されている中で、中国の研究者がHIVに感染しない赤ちゃん(デザイナー・ベビー)を誕生させて、大変な批判を受けた事件は記憶に新しいところです。

 

さらに、オリンピック・イヤーを前年に迎えて、「遺伝子ドーピング」の問題が最近話題になっていますね。

ゲノム編集技術を使えば、遺伝子改変の痕跡を残さずに筋肉量を増強させることも可能です。

これをやられると、不正を調べようがない。ばれっこないのです。

完全に人間の倫理観が問われているのです!

takyamamoto.hatenablog.com

 

このような大きな問題・課題があるために、そのインパクトの大きさに反して、今年の受賞はまだ早い?とも思うのです。

さて、どうなるでしょう?

とても楽しみです。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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