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Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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号外【がん遺伝子発見物語(番外編)】がん原遺伝子くんの言い分「ボクはガンを引き起こす遺伝子じゃない!!」

【041】、【042】と2回にわたってお送りした「がん遺伝子発見物語」は、大変ご好評を頂き、私も驚いています。

お読み頂いた皆様、本当にありがとう御座います。

 

これに気を良くして、「がん遺伝子発見物語」の「番外編」をお送りします。

今回もよろしくお願いします。

 

目次:

①    「がん原遺伝子」というネーミングはへんちくりん

②    がん研究に飛躍的な発展をもたらした、がん原遺伝子の発見

③    研究者たちは「がん原遺伝子」と名付けてしまったことを後悔している?

 

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①    「がん原遺伝子」というネーミングはへんちくりん

 

2回にわたってお送りした「がん遺伝子発見物語」。

041【がん遺伝子発見物語(前編)「50年早く行き過ぎた男」】がん(その7) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

042【がん遺伝子発見物語(後編)「内なる敵か!? がん原遺伝子の発見!!」】がん(その8) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

また、それ以前の記事でも、ガンになる仕組みとして、がん原遺伝子とがん抑制遺伝子の変異・異常が大きく関与していることをお話してきました。

034【どのようにして細胞に遺伝子の変異が蓄積するのか?】がん(その2) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

多くのがん細胞で、「がん原遺伝子」、「がん抑制遺伝子」、「DNA修復遺伝子」に変異があります。

これらの遺伝子の機能異常によりガンが引き起こされることに疑いの余地はありません。

 

それにしても「がん原遺伝子」と言うのはおかしなネーミングです。

元々は細胞増殖の制御に関わる「まともな」遺伝子です。

なのに、本来の機能を表現した名前ではなく、ガンとの関連を強く示唆するような名前になっていることに、私は昔から違和感を覚えてきました。

 

②    がん研究に飛躍的な発展をもたらした、がん原遺伝子の発見

 

「がん遺伝子発見物語」をお読み下さった読者の方は、がん遺伝子とがん原遺伝子発見の経緯についてはご存知ですね。

src遺伝子は、まさにガンを引き起こす遺伝子としてラウス肉腫ウイルスから発見されました。

「がん遺伝子」と名付けられて当然です。

 

しかし、がん原遺伝子は、当時はまだどんな働きがあるのかも分からず、ただ単に、がん遺伝子であるsrcに似た遺伝子として発見されただけです。(「だけ」なんて言うと、ビショップ先生とヴァ―マス先生に怒られますが。。。)

で、後になって、やはりビショップとヴァーマスが、これが変異するとがん遺伝子に豹変するのだと解明したのです。

なので、がん遺伝子(oncogene)の元(プロトタイプ)であるとして、がん原遺伝子(proto-oncogene)と名付けられた、というか、話の流れ的に、発見の経緯的に、そう名付けざるを得なかったのですね。

 

もっと、遺伝子の機能とかが解ってから名付けていれば、こんなへんちくりんな名前じゃなく、その機能に見合ったふさわしい名前を得たはずです。

可哀そうながん原遺伝子くん。

 

さて、「だけ」なんて無礼なことを言ってしまいましたが、ビショップとヴァーマスの業績は、ガンが遺伝子の異常による病気であることを決定づけ、発がんメカニズムへの深い理解と、それらの知見に基づいた新たな診断方法、新たな治療薬の開発につながりました。

がんの分子標的薬などは、まさにこのような多くの科学的な知見の積み重ねがあってこそ生まれてきたものです。

これらのことは全て、ビショップとヴァーマスの業績があったればこそです。

 

ビショップは、自身の業績についてこう評しています。

「がん解明に向けて、人類はついに確かな手掛かりを得ました。この発見を糸口として、がんという致命的な病気の秘密もいずれ明らかにされるでしょう。(中略)がん征服はもはや夢物語ではありません。生物医学に30年もたずさわって来て、初めてそう信じるに至りました」

 

③    研究者たちは「がん原遺伝子」と名付けてしまったことを後悔している?

 

「名は体を表す」と言いますが、「がん原遺伝子」という呼び名は如何にも誤解を生みます。

全然、体を表していません。

 

おかげで私は、がん原遺伝子の説明をするときに、いちいち、「いや、別にこの遺伝子がガンを引き起こすわけではありませんよ。本来の機能は、、、」と、がん原遺伝子くんの弁護から始めるのが常です。

正直、めんどくさいです。

名付けた研究者たちも、きっと同じ思いをしてきたはずです。

「いちいちめんどくさい。別の名前にすりゃあよかった」と(笑)

 

実際、研究者たちも「がん原遺伝子」と言う言葉を使うことはほとんどありません。(少なくとも私はほとんど聞いたことがありありません)

日本語版ウィキペディアにも「がん原遺伝子」という項目はありません。

ウィキでは、「がん遺伝子」の項目の中で、がん遺伝子について説明するために、必要に迫られて「がん原遺伝子」について触れているみたいな体(てい)です。

がん遺伝子 - Wikipedia

何たる不当な扱い!

 

実際には、多くの研究者が「細胞増殖調節遺伝子」とか、その他、より本来の機能を表すような呼称を便宜的に使っていることが多いようです。

それはやはり、「がん原遺伝子」と言う名称を使うことで、ひとに誤解を与えることを恐れてのことではないでしょうか。

 

断言します!

もはや「がん原遺伝子」という名称に意味はありません。

 

「がん原遺伝子は、がん遺伝子の元になる遺伝子」ではなく、「細胞増殖を制御するある種の遺伝子が変異を起こすことによって、時にがん化の原因になる」という正しい理解を得られるよう、是非、今からでも名前変えちゃって下さい。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外補足【考えると夜も眠れない by 三球師匠(笑)】「なぜ白血病は『がん』扱いされないのか?」

目次:

1.辞典で用語の定義を調べてみたら・・・

2.白血病をガン扱いしない理由とは!?

3.断言:白血病もリンパ腫もガンだよ~ 当たり前だろ~?

 

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若い方はご存じない? 春日三球・照代師匠。

あなた、地下鉄はどこから入れるか分かります?

考えてごらん。夜も眠れないから(笑)

 

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前回の【号外】で、白血病もリンパ腫もガンなのに、あまり「がん」とは呼ばれないようだと言いました。

そして私は、

「癌」+「肉腫」+(血液のがん)=がん(ガン)=悪性腫瘍

と説明しました。

 

いやぁ、「血液のがん」を括弧つきにしておいて正解でしたね。

 

いろいろ調べても、「ガンには癌腫と肉腫の2つに分類される」と書かれていることが多いです(それもお医者さんとかが書いてるんですよ!)。

私は「えッ? 血液ガンはどうしたの!?」って思うのですがねぇ。

なんでシカトすんのか分からん!

 

どう考えても、白血病もリンパ腫も、病理学的にも発症メカニズムの点からも、立派に「がん」です。

中には、白血病・リンパ腫を「液性ガン」という分類にして、ガンとして扱っている人もいますが、「液性ガン」という言葉はあまり一般的ではありませんね。

 

医学会には、昔からの習慣というか、伝統というのか、適切ではないと分かっていながら、皆使い続けてる、みたいなことがよくあります。

白血病も立派なガンでありながら、あまり「がん」という言葉が使われないのは、その辺の習慣的なものによるのではないかと思うのです。

そこで、、、

 

1.辞典で用語の定義を調べてみたら・・・

 

なぜ「がん」は「癌腫」と「肉腫」の二つであって、血液がんはシカトされるのか?

前回の号外の記事を書いた後、ず~っと考えてました。(夜も眠れないほどじゃないですよ)

 

「がん」はすべての悪性腫瘍の総称であって、そのうち、上皮組織にできるものが「癌(腫)」です。

実は昔は、今で言う「がん」、つまり悪性腫瘍全体のことを「癌」と言っていました。

だから、「日本癌学会」なのです。(歴史と伝統ある学会なので、学会名を変えることはないでしょう)

「がん(ガン)」と「癌」の定義が現在のように変わったのは、ごく近年のことです。

このように病気の定義や分類や用語も、必要に応じて見直され、学会などでの議論を経て変更されることがあります。

 

白血病がガンと呼ばれないのには、医学会の歴史的な事情があるように思います。

そこで、埃をかぶった古い医学事典を引っ張り出してきて、調べてみました。

昔の定義はどうだったのかと。。。(ゲホッ、ゲホッ。スゲー埃)

 

南山堂「医学大辞典」(第16版、1978年初発行)によると、「腫瘍」(tumor)とは、「身体の細胞あるいは組織が自律的に過剰増殖したものと定義される」とあります。

「見ろッ! 白血病も細胞の自律的な過剰増殖じゃないかッ! 立派なガンだろッ!」

 

同じく同辞典から、「白血病」とは、「造血組織の原発腫瘍性疾患で、流血中に病的な幼弱血球(白血病細胞)が出現し・・・(後略)」とある。

「見ろ、見ろ!! 『腫瘍性疾患』って書いてあるし!!」

 

このように、昔の定義では白血病腫瘍であり、それが悪性であれば、まぎれもなく「がん」です。

 

じゃぁ、今の定義ではどうなのか? ズバリ最新版だと思われるウェブの「デジタル大辞林」で調べてみました。

「腫瘍」とは、「身体の一部の組織や細胞が、病的に増殖したもの。ほとんどの場合、増殖した細胞が腫れものをつくるが、白血病のように塊をつくらないものもある。筋腫脂肪腫などの良性腫瘍と、癌腫 肉腫などの悪性腫瘍とがある」です。

 

なんと、これによれば、今でも白血病腫瘍であると、明記されているじゃぁあ~りませんか。

 

でも、この短い文章をよく読むと、いろいろと血液がんがガンとは認められない理由がいくつか書き散りばめられていることに気が付きます。

 

まず、「癌腫 肉腫などの悪性腫瘍とがある」とあります。

血液がんは癌腫でも肉腫でもありません。

そのどちらでもない血液がんは、やはりガンではないと示唆するものです。

 

また、腫瘍の重要な特徴として、「ほとんどの場合」と断りながらも、「腫れもの」という言葉があります。

血液がんでは腫れものはできないことが多いですからねぇ。

(リンパ腫では、リンパ節が腫れることがあります)

 

ただし、「癌腫 (がんしゅ) 肉腫など」の「など」を付けているところがミソですねぇ。

癌腫と肉腫以外にも「血液のガンもありますよ」なんて、暗に言ってるつもりかもしれません。

 

つまり、この辞典の文章は、血液がんはガンであるとも捉えられるし、ガンではないようにも、どちらにでも解釈できるような、ダブル・ミーニングな説明です。

 

「こんな曖昧な定義しか示せなくって、『辞典』だとか言ってんじゃねぇ!!」(怒)

 

つまり、どこを見ても、何を調べても、血液のガンは腫瘍と言えるような、言えないような、そんな歯切れの悪い記述しかないのですよねぇ。

なんでこうなの?

 

2.白血病をガン扱いしない理由とは!?

 

その他、ネットで色々と調べました。

その結果、まとめると以下のような背景があって、それがあまり白血病をガン扱いしない事情ではないかとの結論に至ったのです。

 

Tumorは日本語の「腫瘍」に当たる言葉ですが、元々は、ラテン語「腫れたもの」という意味だそうです。

つまり、腫脹した塊ですね。

 

がん遺伝子は英語でoncogene。

Oncoは「がん」。Geneは「遺伝子」。

このonco、ギリシャ語で「塊」を意味するそうです。

 

また、日本では、江戸時代にはガンのことを「いわ」と言いました。

やはり硬いしこりを岩に例えたのでしょう。

 

つまり、昔からガンについては、硬い「塊」を作ることが大きな特徴でした。

このガンに対する「塊」のイメージが、今でも大きな影響を残しているようです。

 

白血病など、血液のガンの多くでは塊を造りません。

この固まらないところに、「がん」と呼ぶのをためらわせるものがあるのではないか?

そういう風に思うに至ったのです。

 

ちなみに、がん細胞が塊を造るかどうかの違いは、「細胞接着因子」という、細胞同士がくっつくために必要なたんぱく質の違いにあります。

固形ガンと血液ガンの最大の違いのひとつはそこです。

 

3.断言:白血病もリンパ腫もガンだよ~ 当たり前だろ~?

 

「がん」にまつわる用語について、いろいろと調べてきましたが、結局のところ、実際かなりテキトーで、ころころ変わりもするものなのですねぇ~。

反対に、医学的におかしいことが分かっていながら、修正せず、昔の定義を踏襲し続けることも多いのですね~。

 

結局、白血病もリンパ腫もガン。断言できます!

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

また、今回の記事は、医師でもない私が素朴に思った疑問について独自に調べた結果です。

お医者様や医療関係者、その他専門家の皆様、もし記述に間違いがありましたら、ご指摘をお願い致します。

また、是非正しい答えをお教え頂きたいと思います。

 

 

 

号外【「がん」と「ガン」と「癌」 違いは??】

プチ知識:

    「がん」と「ガン」と「癌」。違い分かります?

    なんで「蟹」なの?

 

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    「がん」と「ガン」と「癌」。違い分かります?

 

「がん」と「ガン」と「癌」。それから「悪性腫瘍」。

違い分かります?

 

「がん」と「ガン」は同じです。別にどちらを使っても構いません。

私は、ひらがなの方をよく使いますが、「がんががんがん増える」なんて書くと意味分かんないでしょ? そんなときは「ガンがガンガン増える」って書きます。

 

「悪性腫瘍」は? 「がん」と同じと考えて差し支えありません。

「がん(ガン)」は全ての悪性腫瘍の総称です。

なので、良性腫瘍はガンには含まれません。

 

じゃあ「癌」は?

 

「がん」は二つに分けられます。

上皮組織にできる「癌」と骨・神経・筋組織にできる「肉腫」です。

二つ合わせて「がん(ガン)」です。

 

上皮組織にできるガン(癌)とは、内臓にできるガンと考えていいと思います。

肺がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、エトセトラ、エトセトラ。みんな「癌」です。

 

サインはV」のジュン・サンダースで一躍知名度を上げた「骨肉腫」(知らない人。貴方は若いということです(^^))

肉腫なので、「がん」ではありますが、「癌」ではありませんので、お間違えなきよう。

(ジュンが骨肉腫で死んだ時には、涙しましたね〜)

 

あっ、それから、白血病とかリンパ腫とか、「血液のがん」もありますよね? これはどうなの?

なぜだか知りませんが、血液のがんは、あんまり「がん」とは言わないですね。

でも、ガンですよね。

ガンは全ての悪性腫瘍の総称ですから、血液のガンも「がん」のはずですが。。。

 

こんがらがって来ました?

 

つまり、まとめるとこんな感じかな?

癌+肉腫+(血液のガン)=がん(ガン)=悪性腫瘍

 

あっ、それから「悪性新生物」なんて言葉もありますね。

Malignant neoplasiaまたはMalignant neoplasmの訳語ですが、これもイコールがんです。

保険なんかではよく使われますね、この言葉。

でも、言いにくいし、使いにくいですよね。

業界用語のようなものでしょうか?

 

と言うことなので、「国立癌センター」というのはなくって、「国立がんセンター」といいます。

だって、「癌センター」だったら、「ウチは肉腫や白血病はお断り」と門前払いを食わされます(笑)

 

でも、「日本癌学会」は「日本がん学会」ではないのですね。

これには歴史ある当学会の事情があるようです。

あえて変ないことで、歴史の重みと威厳を感じさせます。

「日本がん学会」じゃチャラくないですか?(笑)

 

あと、お医者さんはカルチ(Carcinoma)とかチューモア(Tumor)とか言いますね。

Tumorは論文なんかでよく使われます。

ひとつの論文の中で、時にcancerと言ったり、時にtumorと書いたり、どう使い分けてるのか分かんないことも多いです。

かく言う私も、「ここはcancerだろ」、「ここはtumorだ」ってな具合に書き分けてましたが、別に確たる根拠も理由も御座いません。

 

まあ、みんな結構テキトーですよ。

 

だいたい、医学用語として、「がん」に関わるこれらの言葉の定義は、そんなに厳密ではありません。

 

とりあえず、「がん(ガン)」と書いておけば、間違いないですね。

 

それから、テレビドラマ「仁」では、乳がんのことを「ちちのいわ」と言ってました。

ネットで調べたら、「乳岩」転じて「乳癌」になったとか。

なるほどねぇ~~。

 

    なんで「蟹」なの?

 

英語でCancer、ドイツ語でKrebs。どちらもカニです。

なんでカニなのか? 私、知りません。

ネットで調べたら、ガンを最初にカニに例えたのは、古代ギリシャの医学の祖、ヒポクラテスだとか。。。

で、なんでカニなの、ヒポちゃん?

 

以前、日本癌学会のロゴマークには、リアルな蟹の絵があしらわれていました。

たぶん、ワタリガニです。ちがう?

どうも最近、ロゴマーク変わったようです。

新しいロゴマーク、やはりカニのハサミと蟹座をモチーフにしているそうですが、知らなければピンときませんね。

 

日本癌学会 ロゴマーク(サンプル)

日本癌学会のHPから拝借 ニュー・シンボル・ロゴ・マーク

 

前の方が歴史と威厳が感じられてよかったです。

 

以上、ガンの用語にまつわるプチ知識でした。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

042【がん遺伝子発見物語(後編)「内なる敵か!? がん原遺伝子の発見!!」】がん(その8)

目次:

①    ラウスの本当の偉大さ

②    「セントラル・ドグマ」ってなんですか?

③    「逆があった!」

④    がん原遺伝子の発見!

⑤    偉大な科学の進歩には「源流」がある

 

前回【041】は、お陰様で好評です。

この続編で皆様のご期待に応えられるのか、すっごく不安なんですけど。。。(笑)

 

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①    ラウスの本当の偉大さ

 

半世紀もの時を経て、「道化師」から歴史に名を刻む「偉大な科学者」となったフランシス・ペイトン・ラウス。

 

ラウスが「道化」でないことを証明したのは米国のハワード・マーティン・テミンです。

テミンは、これをきっかけにラウス肉腫ウイルスの研究に没頭していきます。

また、このことが、「絶対」だと信じられていた生物学の「中心教義」を覆すような偉大な発見につながっていきます。

 

前回言い忘れたのですが、1966年のノーベル生理学・医学賞は、ラウスの単独受賞(ひとりだけ)です。

55年もかけてやっと正当に評価され、さらに、その偉業が彼一人の貢献によるものだと認められたのです。

こんな科学者っていないですよね。

 

私は、ラウスのことを「偉大」なんて言葉では、到底十分には言い表せていないと思うのです。

ラウスの業績は、テミンをはじめ、後に多くのノーベル賞受賞者を輩出することとなります。

ラウスが近代生命科学に与えた影響は計り知れません。

 

②    「セントラル・ドグマ」ってなんですか?

 

20世紀の生物学史上、最大の発見と言われるDNAの二重らせん構造モデル。

1953年に、ワトソンとクリックによってこのモデルが提唱される以前は、まだDNAが遺伝子の本体であるということは明らかではありませんでした。

驚くことに、タンパク質こそが遺伝子だと考える研究者の方が多く、ワトソンとクリックのように、DNAが遺伝子だと見ていた研究者の方がむしろ少数派でした。

 

その後、クリックは、遺伝暗号であるDNAの塩基配列の謎を次々と解明していきました。

それらの研究を重ねる中で、彼にはある確信が芽生えていたのです。

生命現象の中心的な教義とも言える絶対法則です。

 

DNAにはタンパク質のアミノ酸配列の情報が、4種類の塩基の並びの組み合わせで記録されています。

酵素がその配列を読み取り、一旦、DNAの配列をRNA、正確にはメッセンジャーRNA(mRNA)に写し取ります。

mRNAの配列は、正確にDNAの配列情報を写し取っています。

このmRNAの配列が更に読み取られて、タンパク質が作られます。

 

「DNA ⇒ mRNA ⇒ タンパク質」

1958年、フランシス・クリックは、この流れは絶対的な「中心教義(セントラル・ドグマ)」であると提唱しました。

この逆はあり得ないと!

多くの研究者がこの考えを受け入れました。

まぁ、偉大なクリックの言うことでもあるし。。。彼と面と向かって議論するのはしちめんど臭いし。。。(笑)

 

③    「逆があった!」

 

ラウス肉腫ウイルスはRNAウイルスです。

RNAウイルスが細胞に感染した後、どのように振る舞うのかというと、セントラル・ドグマに従えば、ウイルスのRNAから直接タンパク質が読み取られることになります。

 

RNAはDNAに比べると、細胞内ではずっと不安定です。

そして、がんウイルスが感染したからと言って、細胞がガン化するには、それなりの時間が必要です。

そんな長い間、ウイルスのRNAが細胞内で安定して活動を続けられるというのは、少し不自然なようにも思えます。

 

「ウイルスのRNAからDNAができていると考える方が自然じゃないのか?」

テミンは1964年頃から、そのようなことを考えていたようです。

しかし、そんなこと、うかつに大っぴらには言えません。

今度は自分が「道化師」になってしまいます。

 

1970年、テミンは日本人研究者・水谷哲とともに、ラウス肉腫ウイルスがもつ、常識はずれの酵素を発見します。

DNAからmRNAが写し取られることを「転写」と言いますが、なんと、テミンと水谷はウイルスのRNAから塩基配列を写し取ってDNAに逆に転写する酵素を発見したのです。

 

テミンの洞察力は正しかったのですね。

賢明にも彼は、道化にならずに済みました。

 

こうして「セントラル・ドグマ」は崩れました!

生物学の教科書を書き換えなければなりません。

しかし、偉大な、あの「フランシス・クリックが間違っていた」と書き直さなければならないのですから、教科書の編集者には気の重かったことでしょう(笑)

 

そんな話はいいとして、この「逆転写酵素を利用することにより、不安定で扱いにくいRNAを安定なDNAに転換できるようになりました。

この逆転写の技術によって、その後のRNA研究は飛躍的に進歩することになったのです。

特に、RNAウイルスであるHIVC型肝炎ウイルスの研究に、この逆転写酵素は多大な貢献をしたのです。

私も逆転写酵素さまには大変お世話になりました(笑)

テミン先生、ありがとうございます😊

 

1975年、テミンは「逆転写酵素発見」の業績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞します。

因みに、ほとんどの実験を行ったのは水谷でしたが、彼は受賞を逃しました。

やはり、大事なのは、固定観念にとらわれない着想なのですね。

 

④     がん原遺伝子の発見

 

史上初めて発見されたがん遺伝子、ラウス肉腫ウイルスのsrc遺伝子。

Srcタンパク質の構造

 

1979年、米国のジョン・マイケル・ビショップとハロルド・ヴァーマスは、ニワトリのゲノム、すなわち、ニワトリ自身の細胞の中に、このsrc遺伝子の配列に非常によく似たものを見つけました。

なんで、細胞のゲノムにウイルスのがん遺伝子が存在するのか?

 

そうなると当然、「じゃあ、ヒトはどうなのか?」となります。

果たして、我々ヒトの細胞にもsrcによく似た配列の遺伝子が見つかったのです。

 

ウイルスのがん遺伝子に酷似した遺伝子!

なんでこんな危険なもんを我々は持ってなあかんのんや!?

当然の疑問です。

 

じゃあ、他の動物ではどうなのか?

調べてみると、出るわ出るわ!

脊椎動物から無脊椎動物に至るまで、ほとんどの動物が、当たり前のように、元からsrcを持っているじゃぁあ~りませんか!!

 

そして、この遺伝子が変異を起こすと、ラウス肉腫ウイルスのsrcのような発がん性を獲得するのだということが分かりました。

元々は細胞の増殖制御に重要な働きをしているのですが、一旦故障するとがん遺伝子となり、暴走を始める。

がん遺伝子の元になり得る遺伝子ということで、我々の細胞が持つがん遺伝子に似たものは「がん原遺伝子」と呼ばれるようになったのです。

 

こういう訳で、src遺伝子は動物界に広く存在するありふれた遺伝子だったのです。

そして、かつてウイルスが宿主細胞からこの遺伝子を獲得して、独自の進化を果たした結果、がんウイルスになったのだということも分かりました。

 

つまり、がんウイルスなるものを生み出したのは、他ならぬ私たち自身だということです。

 

1989年、「ウイルスのがん遺伝子は細胞由来である」ことの発見で、ビショップとヴァーマスはノーベル生理学・医学賞を受賞します。

 

⑤     偉大な科学の進歩には「源流」がある

 

ラウス肉腫ウイルスにまつわる、これら偉大な業績の数々。

ラウスの人並み外れた洞察力にその源流があります。

 

近年ではiPS細胞。

誰からも「そんなことできる訳がない」と言われ、研究費の獲得に相当の苦労をされたと言いますが、山中先生の執念が実り、現在、医療への実用化に向けた努力が山中先生ご自身をはじめ、世界中の研究者によって進められています。

 

山中先生の着想を源流としたこの偉大な流れが、どういう成果を生み出すのか?

見守っていきたいと思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

041【がん遺伝子発見物語(前編)「50年早く行き過ぎた男」】がん(その7)

細胞増殖の制御に重要な働きをする「がん原遺伝子」無くてはならない重要な遺伝子です。

でも、これは変異を起こすことでガンを引き起こす「がん遺伝子」に変身します。

がん原遺伝子は、私たちの細胞にとって、いわば、両刃の剣と言えます。

 

このがん遺伝子とがん原遺伝子の発見には、非常にドラマチックなストーリーがあり、私は色々と考えさせてくれるこの物語が大好きなのです。

皆さんにも共感して頂けるかどうかは分からないのですが、今回と次回の2回に分けて、がん遺伝子発見物語の語り部をさせて頂きます。

 

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天才的な才能よりも、常人にないような鋭い直感力を持った人が偉大な発見・発明をすることが多いようです。

中には、あまりにも洞察力に優れ、あまりにも時代を先取りし過ぎていたがために、人から理解されず、評価されないばかりか、世の中の笑いものになった人すらいます。

 

ドイツ人のヴェーゲナーという気象学者。

ある時、世界地図を見ていて、北アメリカ大陸ヨーロッパ大陸南アメリカ大陸とアフリカ大陸とがジグソーパズルのピースのようにピッタリつながることに気が付きました。

1912年、よせばいいのに、彼はドイツの地質学会で「大陸移動説」を発表します。

これが、時代の先を行き過ぎた彼の悲劇の始まりです。

 

彼の優れた洞察力と直感に基づいたこの説には、ほとんど科学的根拠がありませんでした。

陸地の形が合うという状況証拠だけでは、大陸同士がつながっていたという証明にはなりません。

だいたい、これだけ大陸を移動させた、とてつもなく巨大なエネルギーの源について説明できる人なんて、当時は誰もいませんでした。

 

彼は、自分の説の正しさを証明しようと、残りの人生をかけて調査・研究に打ち込みました。

そんな彼を、人は変人扱いし、笑っていました。

 

1930年、ヴェーゲナーは地質調査先のグリーンランドで、50歳の若さで失意のうちに亡くなりました。

恐らく過労による心臓発作であったろうとウィキには書かれています。

 

当時、人類はまだ、彼の説を証明するだけの知識も科学技術も持ち合わせていませんでした。

しかし今では、この「大陸移動説」を疑う人は誰もいません。

 

何の話でしたっけ??

あぁ、がん遺伝子でしたね。

 

20世紀の中頃まで、ほとんどの人がガンと遺伝子との間に関係があるなんて、思いもしていませんでした。

今では、ガンが遺伝子の変異や異常によって引き起こされる病気であることは明白です。

ウイルスによってもガンになります。

このことに初めて気が付いたのは誰で、いつのことなのでしょう?

 

米国の病理学者のフランシス・ペイトン・ラウスという人。

彼はニワトリのガンについて研究していました。

ニワトリのサルコーマ(肉腫;筋肉や骨にできるガンです)の細胞の抽出液を別のニワトリに接種すると、やはりサルコーマになることを見出したのです。

その細胞の抽出液を素焼きの陶器で濾過してもガンになります。

ということは、ガンを引き起こすのは、陶器を通り抜けることのできる、細菌よりも小さなもの、ということになります。

 

1911年、奇しくもヴェーゲナーの「大陸移動説」発表の前年、ラウスは「ウイルス発がん説」を発表します。

ところがギッチョン、彼もまた世界中の研究者のもの笑いになってしまいました。

「ウイルスでガンやて? おまえはアホか!?」

しかし、ラウス先生は、腐ることなく病理学の分野で研究活動を続け、色々と大きな業績を上げられました。

 

「フランシス ラウス 画像」の画像検索結果

Francis Peyton Rous (1879-1970)

 

時は流れて1958年、米国のハワード・マーティン・テミン(1975年ノーベル生理学・医学賞受賞)という遺伝学者が、このウイルスが試験管内でニワトリの胎児の細胞をガン化することを発見しました。

「発見」というより、ラウスの発見の「再発見」というべきですね。

 

しかし、この時点ではウイルスのどういう働きによって宿主の細胞がガン化するのかまでは解明されていません。

そこで、多くの研究者が、このウイルスの遺伝子の機能解析の研究に殺到しました。

そして遂に、ニワトリの細胞をガン化する働きを持つウイルスの遺伝子が特定されたのです。

これが世界初の「がん遺伝子」の発見です。

 

皆から嘲笑を買い、忘れ去られていた「ウイルス発がん説」ですが、50年もの時を経て、こうして正しいことが証明されたのです。

 

このウイルスのがん遺伝子、ニワトリにサルコーマ(sarcoma)を発生させる遺伝子ということで、src(「サーク」と読みます)遺伝子と名付けられました。

 

また、これまで半世紀もの長きにわたって名無しの権兵衛だったこのウイルス。

生命科学に偉大な進歩をもたらしたウイルスが、このまま名無しという訳にはいきません。

このウイルス、50年も先を行っていた偉大な科学者に最大の敬意を表し、晴れて「ラウス肉腫ウイルス」と命名されたのです。

 

1966年、ラウスはノーベル生理学・医学賞を受賞します。

87歳での受賞は、当時の最高齢記録です。

受賞対象の研究発表から55年というのは、現在でも最長記録です。

 

ラウスは、ノーベル賞受賞の4年後、1970年に亡くなっています。

ヴェーゲナーと違い、存命中にノーベル賞という科学者にとって最高の栄誉をもって賞賛されたラウス。

 

正しい仕事は必ず評価される。

ラウス先生は、なんか失敗したり、落ち込むことがあっても、己を信じることの大切さ教えてくれているように思えるのです。

 

次回予告:

ラウスの偉大な発見は、多くのノーベル賞受賞者を「芋づる式」に生み出しました。

ラウス肉腫ウイルスがニワトリ細胞をガン化させることを再発見したテミン。後年、彼はさらに、このRNAウイルスが、それまでの生物学の常識では考えられないような遺伝子を持っていることを発見します。

そしていよいよ、私たち自身の細胞の中に在る両刃の剣、「がん原遺伝子」の発見に至ります。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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040【抗がん剤は「毒」だと言っておきながら なんですが、、、】がん(その6)

前回の【039】にて、抗がん剤は本来「毒」だと断言しておきながら、なんでは御座いますが、別に抗がん剤を完全否定するものではありません。

毒も使いようでは有効です。

 

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正常細胞を殺す抗がん剤の効果は、明らかに「毒」と断言していいものです。

毒をもってガンを制するのが抗がん剤です。

事実、抗がん剤が功を奏する場合も少なくありませんが、それはガンの性質や患者さんの体質(恐らく遺伝的要因や免疫応答能の違いによるところが大きい)に大きく依存します。

多くの患者さんで、抗がん剤の主作用を生かし、副作用を軽減する手立てはないものでしょうか?

 

あります!

あまり知られていませんが、「生物学的応答調節剤」という種類の薬があります。

 

レンチナンの特徴と副作用

レンチナンというこの薬、お医者様でもご存じない方、結構いらっしゃるようです。

 

単独でもある程度の抗腫瘍効果があるのですが、普通は抗がん剤と併用します。

併用することによって、抗がん剤によってかく乱される免疫系を調整し、その結果、抗がん剤の副作用を軽減して、主作用を引き出すものです。

(効果がないという論文もありますが。。。)

 

この薬、何からできているのかというと、シイタケです。

んっ!? シイタケ!?

そう、この薬、実はβグルカンそのものなのです。

 

本ブログ【027】にて、学会と論文で報告された、あるガン患者さんの症例をご紹介しました。

027【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その2)】「抗がん剤との併用で原発性大腸がんからの肝臓転移がん2つが見事消失!!~ヒトでの症例報告~」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

抗がん剤療法も放射線療法も受けずに、健康補助食品として市販されているβグルカンを1ヶ月摂取した結果、2つの1センチ大の肝臓転移がんが縮小したこと(普通では考えられない)、そして、その後、8クールの抗がん剤治療では、手術で切除するために転移ガンの縮小を企てたのですが、なんと5クールで2つとも完全消失し、残りの3クールの抗がん剤投与と手術が不要になってしまったという症例です。

この患者さん、抗がん剤治療を受けている間も、ずっとβグルカンを飲み続けていました。

その結果、副作用も軽く、抗がん剤の治療効果も高まったのだと考えられます。

 

このβグルカンの効果は、生物学的応答調節剤として承認されていることからも、科学的根拠に基づいて証明されているのです。

なのに、知らないお医者さんが多すぎる

その結果、多くの患者さんが抗がん剤の副作用に苦しまないといけないのだとしたら、これは非常に大きな問題ではないかと思うのです。

 

医者になるほどの知識があれば、健康補助食品サプリメントとして知られているものの効果効能について理解することは難しいはずありません。

でも、お医者様の中には、健康補助食品サプリメントに対する偏見というか、時に「敵意」のようなものまで持っていらっしゃる方もおられるようです。

サプリというだけで目の敵にするような。「俺はそんなものは絶対に認めない」とか。。。

治療中は「サプリメントの類は一切ダメ」と、患者に摂取を禁じている病院も多いですね。

 

「もっと勉強してくれ!」って声を大にして言いたい!

 

私の非常に親しい友人に小児科医がいます。

彼女は西洋医学の限界を認識しつつ、東洋医学的な要素も合理的に取り入れて、患者さんにとっての最善な治療を行うべきだとの考え方を持つ人です。

 

ある時、彼女の病院に「なんとか症候群」って、私など聞いたこともない稀な病気に苦しむ子供の患者さんがいると聞きました。

体中にガンが多発して、抗がん剤も効かなくなり、手の付けようがないと言います。

主治医の先生は、万策尽きて「免疫チェックポイント阻害剤」オプジーボの使用を検討していると言います。

(免疫チェックポイント阻害剤については、本ブログ【021】をお読みください)

021【免疫力の本来のパワー(その3)】「免疫力だけで末期ガンから生還できる!!」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

彼女は主治医の先生にβグルカンの話をしてくれました。

その先生は、βグルカンについては知らなかったようですが、関心はあるというので、私は、βグルカンの抗がん作用についての主だった論文の要旨をまとめたプレゼン資料を作って、お送りしました。

 

その先生は、「これだけ多くの論文報告があるのだったら、試さない手はない」と思われたようです。

高額なオプジーボ以外、本当にもう打つ手はないのですから。。。

でも、それには非常に高いハードルがあります。

病院の倫理委員会や院長先生を説得しなければなりません。

その病院も御多分に漏れず、サプリメントの類には冷ややかだったのです。

 

その後、その子がどうなったのか、彼女と連絡を取っていないので分かりませんが、医療関係者の間にある偏見やいわれのない敵意が、患者の利益に反しているのなら、これは悲劇です。

 

出来るだけ多くの医療関係者に、科学的根拠に基づいた「事実」についてお伝えしていきたい。そう考える毎日です。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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039【がん細胞に特異的でない抗がん剤は「毒」でしかない! がん細胞特異的に働く「分子標的薬」とは?】「がん(その5)」

目次:

① 抗がん剤は本来「毒」!

② 「がん細胞特異的」な治療薬ってあるの?

③ 分子標的薬の具体例

④ 抗体医薬の未来と国民医療費

 

がんシリーズに戻らせて頂きます。第5弾です。

 

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① 抗がん剤は本来「毒」!

 

ほとんどの医薬品には副作用があります。

薬に本来期待する作用を「主作用」、期待しない作用を「副作用」と言います。

 

薬については、主作用が現れる濃度が低くて、副作用が現れる濃度がそれよりもずっと高い場合は都合がいいです。

ところが、主作用と副作用の現れる濃度が近いと、これは問題です。

期待する効果を得るには、ある程度の副作用のリスクも覚悟しないといけないことになります。

そのような代表が抗がん剤でしょう。

 

抗がん剤に期待する主作用としては、当然、がん細胞を殺すことでしょう。

でも、多くの抗がん剤が、正常細胞をも殺す副作用が出て、患者さんはつらい思いをするのです。

 

なぜ抗がん剤には副作用の出るものが多いのか?

それは、抗がん剤が「抗がん」と言いながら、正常細胞をも殺す「毒」からです。

多くの抗がん剤は、増殖の盛んな細胞を殺すものであり、がん細胞だけを選んで殺す薬ではないということです。

つまり、「がん細胞特異的」ではありません

抗がん剤は、正常細胞の中でも増殖の盛んな毛根や小腸の上皮細胞、骨髄細胞なども殺します。

それで、脱毛や吐き気・下痢、骨髄抑制(白血球が減ります)などの副作用が現れるのです。

 

② 「がん細胞特異的」な治療薬ってないの?

 

あります! 「分子標的薬」というのがそれです。

 

がんになる仕組みは、今ではかなり詳しく分かっています。

がん細胞では、色々な遺伝子の変異によって、タンパク質の働きが異常になり、細胞増殖の制御が破たんしています。

ですから、どのような遺伝子、どのようなタンパク質に異常があるのかを調べることによって、そのがん細胞の弱点を見つけ出すことができます

弱点が見つかれば、そこを特異的に攻撃するのです

これが「分子標的薬」の考え方です

これだと、理論的には正常細胞には影響が出ないはずです。

実際には、まったく副作用がないわけではありませんが、がんの性質や患者の体質によっては、非常に高い効果を上げることができます。

 

「がん 分子標的薬 画像」の画像検索結果

 

③ 分子標的薬の具体例

 

分子標的薬には、特定の分子(ほとんどの場合、タンパク質)に結合することで、その分子の働きを阻害するものが多いです。

分子標的薬には、特定の分子と特異的に結合する能力が必要ですが、「特異的な結合」というと、本ブログを熱心にお読み頂いている読者の方でしたら、何かを思いつくに違いありません。

そう、「抗体」です。

分子標的薬には、抗体を利用した「抗体医薬」が多いですね。

 

我々人類は、遺伝子工学と細胞工学の技術により、望みのタンパク質を大量に作り出す能力を得ました。

抗体というのは、B細胞という免疫細胞が作り出すタンパク質です。

ですから、B細胞から所望の抗体の遺伝子を取り出し、別の細胞に組み込みます。

 

さらに、人為的に遺伝子改変を加えて、自然界には存在しないような、自然の性能をさらに高めたり、性質を修正したタンパク質を作り出すこともできます。

 

でかいタンクで、抗体遺伝子を組み込んだ動物細胞(チャイニーズ・ハムスターというネズミの一種の卵巣細胞が使われることが多いです)を高密度で培養します。

細胞は、培養液中にたくさんの抗体を放出するので、その培養液から抗体を高純度に精製して抗体医薬は作られます。

 

Chinese Hamster.jpg

チャイニーズ・ハムスター 

 

例えば、「上皮成長因子受容体」(EGFR)というタンパク質は、細胞の増殖を盛んにする働きがありますが、大腸がんや非小細胞肺がんなど、様々ながんの細胞で、このタンパク質が過剰に作られています。

これは、本ブログ【034】でお話した、細胞増殖を調節する「アクセル」が目いっぱい踏み込まれた状態ですね。

034【どのようにして細胞に遺伝子の異常が蓄積するのか?】がん(その2) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

これでは細胞が過剰に増殖するのも頷けますね。

では、この過剰なEGFRの働きを抑えてやれば、がん細胞の増殖を止められるのではないか?

こんな発想から、EGFRに結合して、その働きを阻害する抗体医薬品が開発されました。

(特定の製薬会社の製品を宣伝したくはないのですが)具体的な例を挙げると、アービタックスとかがあります。

 

他には、ある種の白血病でよくみられる染色体の異常により、Bcr-Ablという完全に異常な遺伝子が出現することがあります。

Bcr-Ablは細胞増殖のアクセルを加速させます。

この遺伝子の働きを阻害することでがん細胞を殺す抗体医薬品にグリベックというのがあります。

Bcr-Ablは正常細胞には存在しないので、がん細胞特異的な作用が期待できます。

 

他にもたくさんのがんに対する抗体医薬品が実用化されていますが、あまりに多すぎて、正直、私も覚えきれません(笑)

 

④ 抗体医薬の未来と国民医療費

 

抗体医薬などの分子標的薬は、がん以外でも、関節リウマチなどの自己免疫疾患で効果を上げています。。

リウマチの強い炎症反応の原因である炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)の働きを抑える抗体医薬品が多く実用化されています。

 

分子標的薬は、病気発症の分子レベルでのメカニズムの理解が進んだことから実現した、新しい概念に基づく治療薬であり、今後、より病気に特異的で効果の高いものが次々と開発されるでしょう。

 

本ブログ【021】でご紹介した画期的ながん免疫療法薬、「免疫チェックポイント阻害剤」も抗体医薬です。

021【免疫力の本来のパワー(その3)】「免疫力だけで末期ガンから生還できる!!」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

しかし、この薬は、な、なんと、一人分で2000万円とも3000万ともかかると言われています。

高額療養費制度(私は法律や制度には詳しくありませんので、詳しくは触れません)が改正されたとは言え、国民医療費高騰への影響はどうなるのでしょうか?

 

今後、抗体医薬をはじめ、タンパク質でできた新規な生物製剤が次々に登場することでしょう。

それによって多くの患者さんが救われるようになるのでしょうけれども、それが本当に良いことなのか?

「高度高齢化による高齢患者の増加⇒高額な先端医療技術の登場⇒国民医療費の爆発的増加⇒医療経済の破たんという悪い流れを加速させるのではないかと懸念されます。

 

そう考えると、ここでやはり同じ結論に立ち返るのです。

出来ることなら、「病気にならずに歳を重ねたい」と。。。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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