Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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号外【なぜわが子はかわいいのか? なぜ男は浮気するのか?】「利己的遺伝子」とは? 遺伝子の働きから考える

目次:

① なぜわが子はかわいいのか?

② 昨日までの「愛情」は何処へ行った? ある日突然豹変するお母さん熊

リチャード・ドーキンスの登場。「利己的遺伝子」とは?

④ 再度「愛情」と「浮気」について ~「利己的遺伝子」理論から考えよう~

⑤ 我われ人間は、知性と理性によって本能をも克服した唯一の存在

 

今回もまた、健康の話でも病気の話でも御座いませんので、号外でお送りします。

 

生命とは何なのか? 生物はなぜ何のために存在するのか? そして、多くの生物の中で、果たして人間は特別な存在と言えるのか?

てなこと、考えてみたことがおありでしょうか?

 

こういう深遠で根源的なテーマについて考えを巡らせることができる生物は、地球上で人間だけです。

このテーマに対しては、生物学的に考えることもできますし、哲学的に考える人、宗教的に考える人もいることでしょう。

考え方は人それぞれであり、ひとつの明確な「正解」などはないものと思います。

重要なのは、正解を求めることではなく、「考える」という行為そのものだと思うのです。

人間は「考える葦」なのですから。。。

 

私が今回お話しするのは、生命について非常に「ドライ」な捉え方をしたもので、こういう考え方に反感を持たれる方もおられるでしょう。

それは別に構いません。

一見突飛な、こういう考え方でも生物の行動をうまく説明できるということ、そして、どのような考え方であろうとも、考えるという行為を行うことで、「我々」とは何か?という哲学的な問いに対して、「回答」とまではいかなくとも、ひとつの糸口くらいはつかめると思うのです。

 

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① なぜわが子はかわいいのか?

 

なぜわが子はかわいいのか?

「そんなの当たり前じゃないか!」っておっしゃいますよね。きっと。

じゃあ、なんで当たり前って言いきれるのか、その根拠は?って聞かれると明確に答えられるでしょうか?

 

なぜ男は浮気するのか?

私は、もしわが子がかわいいと思うのが当たり前だと言うのならば、「男が浮気するのも、生物として当たり前」と答えます。

「はぁ? 何言ってんの??」

 

② 昨日までの「愛情」は何処へ行った? ある日突然豹変するお母さん熊

 

子供を出産して、子育てするヒグマのお母さんを追ったドキュメンタリー番組をご覧になられたことのある方、多くいらっしゃると思います。

お母さん熊がわが子を慈しみ、大事に育てる様子が描かれていました。

お母さん熊の子供に対する「愛情」は非常に深く、我われ人間が、子連れの母ヒグマに遭遇した場合などは非常に危険だそうです。

 

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そしてまた、貴方はこんなシーンも見られたのではないでしょうか?

子育てして2年ほども経ったある日、お母さん熊が突然、人が(クマが)変わったように子熊に牙をむき、唸りを上げて威嚇して、追い払おうとするのです。

泣きすがる子熊たちには、何が何だか分かりません。

しかし、お母さん熊は容赦しません。

このお母さん熊の豹変ぶりは一体何なのか?

昨日までの子熊に対する深い「愛情」は何処に行ったのか?

 

一見異常にも思えるこの行動。メスのヒグマの至って正常な行動です。

なぜなら、すべての母熊が、誰に教えられた訳でもないのに、全て同じ行動を取るのですから。

つまり、この行動はヒグマの本能的な行動であり、本能的な行動はつまり、遺伝子にプログラムされた行動であり、遺伝子のプログラムに命じられて起こすものです。

 

一見奇妙に思える、様々な動物の本能的な行動。

それらはすべて、遺伝子の命じるがままに突き動かされた結果に他なりません。

 

リチャード・ドーキンスの登場。「利己的遺伝子」とは?

 

30年余りも前になりますが、英国の動物行動学者リチャード・ドーキンスが唱えた「利己的遺伝子(The Selfish-Gene)」の理論が世界中で話題になり、日本でも訳本利己的な遺伝子がかなり売れました。

 

www.kinokuniya.co.jp

 

ドーキンスのこの理論によると、

1.生命の本体は遺伝子であり、我々生物の体は遺伝子の単なる「乗り物」に過ぎない

2.遺伝子は己の「目的」を果たすために、あくまでも「利己的(自分勝手)」に振る舞う

3.その「目的」とは、自分の遺伝子の複製を「できる限り多く」後世に残すことである

まあ、こんな内容だったかと思います。

 

この理論は科学的に証明されたものでもなんでもなく、「こういう風に考えることもできるんじゃないの?」とか「こう考えると、いろいろな動物の一見奇妙な行動も、うまく説明できるんじゃないの?」という程度のものに過ぎません。

ドーキンス自身、この理論は「科学上の学説と言うよりも、サイエンス・フィクション(SF)のように思ってもらいたい」と言っているくらいです。

しかし、この彼の理論は多くの知的な人の心をくすぐりました。

実際彼が書いた多くの「SF本」がベストセラーになり、多くの印税を得られたようです。

(かく言う私も、見事に1冊買わされましたよ(笑))

 

④ 再度「愛情」と「浮気」について ~「利己的遺伝子」理論から考えよう~

 

お母さん熊の愛情は何処へ行ってしまったのでしょうか?

あの愛情は「ウソ」だったのか、あるいは「見せかけ」だったのでしょうか?

遺伝子に命じられた本能的な行動とは言え、なんであんな風に急に変われるのか?

われわれ人間には理解不能ですよね。

 

母熊が子供を追い払うのは、次の繁殖に備えるためです。

母熊の利己的遺伝子の目的は、子どもたちを育てて一人前になってもらうことで、自分の遺伝子を残すことです。

その子熊が大人になって子供を作ってくれれば、自分の遺伝子はさらに後世まで残り続けることができます。

「ここまで育ったら、もう大丈夫。あとは独り立ちして、自分で生きて行きなさい。お母さんは、また子どもを産まないといけないので、貴方たちとはここで別れなければならないの」

こう考えると、母熊の気持ちも理解できるでしょうか。

でも、利己的遺伝子はあくまでもドライです。

「子育てはこれにて終了! ハイッ、次行こッ!」です。

 

ヒグマと同じように、人間の母親が子どもに愛情を注ぐのは、利己的遺伝子的にとっては「当然」のことです。

お腹を痛めて生んだわが子を大事に育んでいくことは、すなわち自分の遺伝子を残すことに他なりません。

それこそ、利己的遺伝子の究極にして唯一の目的ですから。。。

 

人間の女性が一生の間に生める子供の数には限りがあります。

ですから、子ども一人ひとりを大事に愛情注いで育てるのが良策なのです。

わが子に愛情を注ぐのは当たり前? そう、利己的遺伝子に愛情を注ぐように命じられた結果なのですから、そう振る舞うのが「当たり前」なのです。

そして、それが最善の策です。

 

一方、男はと言うと、、、これが情けない(トホホ)

女性と違い、男はいくらでも自分の遺伝子のタネを蒔くことができます。

その数に限りはありません。(精力と財力次第ですが、、、(失笑))

だったら、いくらでも外でオンナ作って、いくらでもタネを蒔くべきです。

なので、あっちこっちに作らせた子ども一人ひとりの子育てなんかしてられません。

「『認知しろ』って? いちいち知るかっ! うっせー!」

こんな人でなしもいますよね。(ホンマ情けない。。。)

 

利己的遺伝子はあくまでも自分勝手です。

自分の遺伝子を残すためなら、他者がどうなろうと知ったこっちゃありません。

そう、男はたくさん子供を産ませておいて、後は生ませたオンナに任せっきりのほったらかしの方が、自分の遺伝子を「できるだけたくさん」残すという点では圧倒的に効率がいのです。

 

このオトコとオンナの行動の違い。すべて利己的遺伝子の戦略」の違いによるものです。

 

ヒグマも、オスは子育てには全く参加しません。

メスと交尾したら、それっきりです。

つまりヒグマのオスは、生涯を通じてわが子の顔を全く知りませんし、また知る必要などないのです。

利己的遺伝子的には、それでまったく「No問題」なのです。

 

ヒグマのオスは、翌年の繁殖期には、また別のメスと交尾できます。

ですから、子育てに参加することで時間を浪費するようなことをしない方が、子孫を残す上で戦略的に有利なのです。

でも、メスは出産と2年の子育てがありますから、3年おきにしか繁殖できないのです。

ですからメスは、子供が独り立ちするまで大事に育てる必要があるのです。

 

⑤ 我われ人間は、知性と理性によって本能をも克服した唯一の存在

 

利己的遺伝子の支配力は非常に強力で、ヒグマのような高等哺乳類ですら、遺伝子の意のままに行動を操られます。

ましてや、昆虫などの原始的な動物になると、自己の意思や感情などは一切なく、遺伝子の命じるがままに突き動かされる、単なるマシーンのようなものです。

その最たる例が、アリやハチなどの社会性昆虫です。

 

しかし、我われ人間には知性と理性があり、利己的遺伝子の命令にも抗って子供を育て、パートナーへの忠心を尽くし、他者への献身的な行動ができる地球上で唯一無二の存在です。

ここんところが、人間が他の生物と違う点です。

 

他のほとんどすべての生物が抗うことのできない「利己的遺伝子」の強力な支配力をも打ち砕く「知性と理性」を獲得した我われ人類は、道徳心と倫理観を重んじ、「利己的」ではなく、他人のため、社会のために意義のある「利他的」な行動を心がけなければならないと思うのです。

でなければ、「人」として生まれてきた甲斐がないというものです。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

052【関節リウマチ(その3)】制御性T細胞研究から生まれた薬「アバタセプト」がリウマチに効く訳

本ブログを始めた当初は、週に1回のペースで最低でも1年間、つまり52回を目標に始めました。

それが今回でその52回目を迎えることができました。号外を含めれば60回以上になります。

1年の予定が、わずか3ヶ月余りでのこれだけの記事を掲載できたのも、多くの皆様が私の記事を読んで下さったおかげです。

そう、最初は1年のつもりでしたが、書き始めてみると楽しくてしようがなく、次々と筆が進んでいくのでした。

皆さま、本当にありがとう御座います。

 

正直なところ、とっくにもちネタが尽きた状況の中で、毎日ネタ探ししながら書いている状況に陥っていますが、それでも100回を目指して頑張ります。

今後ともご支援のほど、よろしくお願い致します。

 

前回に引き続き「関節リウマチ(その3)」をお送りします。

 

目次:

① 制御性T細胞が自己免疫反応を抑える仕組み

② ハイテク人工タンパク質製剤「アバタセプト」

③ 生物学的製剤はなぜ高額なのか?

④ 生物学的製剤の功罪

 

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① 制御性T細胞が自己免疫反応を抑える仕組み

 

リウマチ治療の最期の砦、「アバタセプト」。

タンパク質からできた生物学的製剤であり、ヘルパーT細胞の活性化を抑える、強力な免疫抑制剤です。

 

このアバタセプトが、どうしてこれほど強力に免疫を抑えることができるのか?

それは、制御性T細胞(Treg)が免疫を抑える仕組みを巧みに利用しているからです。

Treg研究の成果から生み出された最先端医薬と言えます。

 

Tregが免疫を抑えるメカニズム(仕組み)はいくつかあって、そのすべてが解明された訳ではありませんが、最も理解が進んでいるのが、Tregが細胞の表面に発現するCTLA-4というタンパク質を介したメカニズムです。

 

アバタセプトが免疫を抑える仕組みを理解するために、まずは、抗原を貪食した樹状細胞などが、どのようにしてヘルパーT細胞を活性化するのか、そして、Tregはどのようにして、ヘルパーT細胞の活性化を抑制するのか、を知らなければなりません。

その仕組みを見ていきましょう。

 

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樹状細胞が異物を食べると、細胞内でそれを分解して、その破片を抗原として細胞表面に提示します。こうして活性化した樹状細胞は「抗原提示細胞」になります。

この細胞表面に提示された抗原をヘルパーT細胞が認識するのですが、それは、ヘルパーT細胞の表面にある「T細胞受容体」と言うタンパク質で認識します。

この抗原提示細胞表面の抗原の形と、ヘルパーT細胞の表面のT細胞受容体の形とが、あたかも鍵と鍵穴のようにピッタリと合わさったとき、抗原提示細胞からヘルパーT細胞に「活性化シグナル」が入って(図の①)ヘルパーT細胞が活性化し、獲得免疫が働き始めます。

 

実は、正確に言うと、抗原提示細胞表面の抗原とヘルパーT細胞表面のT細胞受容体が結合するだけでは十分ではありません。

異物を食べて活性化し、抗原提示細胞となった樹状細胞の表面には「CD80/86」(こんな名前、覚えなくてもいいです)というタンパク質が発現します。

このタンパク質が細胞表面にあるということは、「自分は活性化した抗原提示細胞ですよ」という身分証明書を示しているようなものなのです。

一方、ヘルパーT細胞の表面にはCD28(これも覚えなくていいです、笑)というタンパク質があって、これがCD80/86と結合します(図の②)。

ヘルパーT細胞のCD28が、「確かに」と身分証明書を確認するわけですね。

これで初めて、抗原情報を得たヘルパーT細胞の活性化が起こります。

 

免疫とは非常に用心深いシステムです。

ヘルパーT細胞は、抗原を確認しただけでは活性化せず、相手が本当に活性化した抗原提示細胞であることまでダブルチェックしない限り、簡単には活性化しないようになっているのです。

 

さて、抗原提示細胞が細胞表面に提示している抗原は、何も異物だけとは限りません。

なんと自分の抗原、「自己抗原」まで提示しています。

なんで自己の抗原を提示する必要があるのか分かりませんが、どうやら抗原提示細胞は、自己と非自己を区別せずに細胞表面に提示しているようです。

そして、本ブログ【017】でお話ししたように、健康な人でも、誰でも、自己に反応する免疫細胞を持っています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

抗原提示細胞上に提示された自己抗原を自己反応性のヘルパーT細胞が認識し、抗原提示細胞の身分証明書であるCD80/86を確認してしまったならば、提示抗原が自己だろうと異物だろうとお構いなく、ヘルパーT細胞は活性化します。

これが自己免疫疾患の大元の原因です。

 

でも、たいていの人が自己免疫疾患にならないのは、Tregが働いているからです。

もう一度、先ほどの図を見て下さい。

活性化したTregは、細胞表面にCTLA-4(こいつだけは覚えておいて下さい)と言うタンパク質が発現しています。

このタンパク質は抗原提示細胞の身分証明書CD80/86に結合します(図の③)。

CTLA-4がCD80/86に結合すると、抗原提示細胞に「抑制的シグナル」が入る(図の④)とともに、CD80/86がどんどん消えていくのです。

そして、身分証明書を失った抗原提示細胞は、ヘルパーT細胞を活性化できなくなります。

こんな仕組みでTregは自己に反応する免疫細胞の活性化を抑えているのですね。

 

② ハイテク人工タンパク質製剤「アバタセプト」

 

アバタセプトは、Tregがもつタンパク質CTLA-4の一部と、抗体の一部を遺伝子工学技術を駆使してつなげ合わせた「融合タンパク質」です。

患者に投与されると、CTLA-4の部分は抗原提示細胞の身分証明書CD80/86に結合します。

そうすると、TregのCTLA-4が結合した時と同じように、抗原提示細胞に抑制シグナルが入り、かつCD80/86は消えていきます。

このCTLA-4のCD80/86に対する結合力は、ヘルパーT細胞のCD26の20倍も強力なのです。

ですから、否応なし! 強制的!

ヘルパーT細胞は手出しする暇もなく、抗原提示細胞は身分証をどんどん失っていきます。

これによってヘルパーT細胞は活性化されなくなります。

これが、アバタセプトが免疫系全体を強力に抑制するメカニズムです。

 

それから、アバタセプトでは、CTLA-4の一部に抗体の一部を融合させていますが、抗体部分をくっつけることによって体内での安定性が格段に増し、それによって、1回の投与で数週間から1ヶ月以上も効果が持続するのです。

 

③ 生物学的製剤はなぜ高額なのか?

 

従来の医薬品の多くは、人工的に合成された低分子化合物です。

低分子化合物とは、すなわち化学物質であり、ほとんどの場合、安い原料から工場で大量に生産されます。

ところが、タンパク質である生物学的製剤は、現在の技術では、生き物の細胞を使わない限り大量生産は不可能です。

 

CTLA-4の遺伝子(DNA)と抗体の遺伝子(DNA)を結合して、動物の細胞(よく使われるのは、チャイニーズハムスターの卵巣細胞)に組み込みます。

それを巨大なタンクで培養し、増殖した細胞から培養液中に大量に産生された目的のタンパク質が放出されます。

これを高純度に精製して薬にします。

 

ところが、この培養液が実に高い。

「無血清培地」という、タンパク質をほとんど含まない特殊な培養液を使うのですが、これがメチャンコ高いのです。

研究者も実験で使いますが(使わざるを得ないときのみですが)、500mLが数万円ですよ!

貧乏研究室では、とても買えない代物です。

工場で生物学的製剤を作るときには、これを何トンも使うのですから。。。

 

それから、培養液中には、目的のタンパク質以外にも、細胞が作り出した様々なタンパク質が含まれます。

薬にするときには、不純物を取り除き、限りなく100%に近い高純度に精製しなければなりません。

もし、他のタンパク質が少量でも含まれていると、投与された人にアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

一番怖いのはアナフィラキシーショックです。これは死に至りますからね。

 

そんなわけで、何段階もの精製工程を経て純度を上げるのですが、当然、精製するたびにロスが生じます。

精製工程を何度も繰り返すほどロスが多くなるので、収率が悪くなります。

ですから、製造効率が悪いのですね。

収率を上げるような効率のいい精製方法の工夫や改善が重要です。

 

④ 生物学的製剤の功罪

 

生物学的製剤は、確かに効果の高いものがたくさんあります。

もちろん、何の問題もないものなんてありません。

それなりの問題を抱えつつも、ベネフィットとリスクを考慮しつつ、適切に使用されるべきものです。

 

ただ、医療費の高騰に警鐘を鳴らす立場としては、高額な生物学的製剤を声高に奨励する気にはなれません。

使わずに済めば、それに越したことはないのです。

 

生物学的製剤のメリットとデメリット。

末期ガンからの生還をも可能にする「免疫チェックポイント阻害剤」。しかし、効く患者と効かない患者の見極めがまだできない。

高い効果を示すガンの「分子標的薬」。でも、一部の適合した患者にしか効果がない。

既存薬で効果のないリウマチ患者に高い効果が期待できる「アバタセプト」。致死的な感染症のリスクがある。

 

う~ん、効果は期待できるが問題もリスクあるし、なんちゅっても金もかかる。

生物学的製剤の事を考えると、いつもブルーな気分になるのです(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

お薬を作っていらっしゃる側の方のご意見も伺えればうれしく思います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

051【関節リウマチ(その2)】病気の原因の大元を叩く生物製剤

本ブログ【046】でお話した「関節リウマチ」。

今回「その2」をお送りします。

 

目次:

① 原因の大元を叩く薬があった!

② おさらい ~司令塔が機能しなくなったらどうなる?~

③ アバタセプトは超強力な免疫抑制剤

④ 「関節リウマチに対するアバタセプト使用ガイドライン

 

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① 原因の大元を叩く薬があった!

 

本ブログ【046】にて、「自己免疫疾患(その1)」として、関節リウマチのお話をしました。

その中で、抗体医薬など、タンパク質でできている生物学的製剤が効果を上げているということでした。

046【関節リウマチ】自己免疫疾患(その1) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

【046】でお話したのは主に、リウマチで強い炎症反応を引き起こす原因となっている炎症性サイトカイン、TNF-αまたはIL-6の働きを抑える薬でした。

これで炎症を抑え、病気の進行を止めたり、症状の改善(寛解)が期待できるものです。

しかし、大元の原因である、これらのサイトカインを出す免疫細胞は依然、健在であり、根本的な治療にはなっていないとの指摘をしました。

攻撃してくるミサイルを打ち落としても、ミサイル基地を破壊しない限り、いくらでもミサイルは飛んできます。

これでは消耗戦です。

 

病気の根治のためには、大元を叩かなければなりません!

 

実は、比較的新しい生物学的製剤で、大元の免疫細胞を抑える薬があるのです。

 

「アバタセプト(商品名:オレンシア)」というのがそれで、米国では2005年12月、日本では2010年7月に承認された、比較的新しい薬と言えます。

 

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② おさらい ~司令塔が機能しなくなったらどうなる?~

 

アバタセプトの適用は、生物学的製剤も含む既存のリウマチ治療薬を3ヶ月以上継続的に使用しても症状がコントロールできない、非常に効果の宜しくない患者になります。

つまり、この薬はリウマチ治療薬の「最後の砦」的な存在です。

 

この薬は、病気の大元を叩く訳なので、大きな効果が期待できますが、一方でリスクも大きいのです。

すなわち、「副作用」です。

 

ここで、なぜアバタセプトがリウマチに効くのかを理解するために、もう一度、免疫系全体の復習を致しましょう。

 

過去ブログ【019】のおさらいです。

 

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まず、体内に異物が侵入すると、自然免疫の貪食細胞たちがこれを捕まえて食べます(図の①)。

貪食細胞のうち、特に樹状細胞は、食べた異物(抗原)を細胞内で分解し、分解してできた抗原の破片を自身の細胞の表面に出します。

次に、まだ活性化していないヘルパーT細胞が、この樹状細胞と結合し、樹状細胞の表面に提示された抗原の情報を受け取り、これによってヘルパーT細胞は敵の正体を知るのです(図の②)。

こうして活性化したヘルパーT細胞は、細胞性免疫(図の③、④)と液性免疫(図の⑤~⑦)の両方を臨戦体制にするのです。

 

この薬は、図の①から②の部分、即ち、樹状細胞などの「抗原提示細胞」と呼ばれる細胞が、免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞に抗原の情報を伝達して活性化するところをブロックします。

熱心な読者でしたら、もうご存知の通り、司令塔が活性化しなければ、細胞性免疫と液性免疫の両方が機能しませんし、マクロファージやナチュラルキラー細胞などの自然免疫の細胞への刺激もなくなります。

ですから、TNF-αやIL-6を産生する免疫細胞も大人しくなるのです。

そして当然、自己抗体を作るB細胞も活動を停止します。

 

なんだか、いいことだらけのようです。

 

③ アバタセプトは超強力な免疫抑制剤

 

ヘルパーT細胞が機能しないとどうなるかについては、本ブログ【020】でAIDSのお話をしました。

020【免疫力の本来のパワー(その2)】「AIDSが明らかにした免疫系の“アキレス腱”ヘルパーT細胞!」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

HIVはヘルパーT細胞に感染し、これを破壊しながら増えて別のヘルパーT細胞に感染し、また増えて別のT細胞に、、、と言う風に、どんどんヘルパーT細胞が死滅して減っていきます。

その結果が「後天性免疫不全症候群」AIDSです。

アバタセプトは、これと似た状態を引き起こす、非常に強力な免疫抑制剤である訳です。

(そりゃあ、リウマチの症状も良くはなるわな)

 

ですから当然、アバタセプトで最大限注意すべき副作用は感染症です。

特に、風邪を含め、呼吸器感染は致死的です。

致死性の感染症にかかった場合は、リウマチ治療どころではありません。

すぐに投与を中止し、感染症治療に専念すべきです。

 

④ 「関節リウマチに対するアバタセプト使用ガイドライン

 

効果的ではありますが、致死的なリスクのあるこの薬。

2017年3月に日本リウマチ学会などから「関節リウマチに対するアバタセプト使用ガイドライン(改定版)」が出され、注意が促されています。

https://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_abt.pdf

 

ガイドラインの内容は、大体以下のような感じです。

特に感染症やワクチン接種に関する要注意事項です。

 

まず、明らかに活動性の感染症に既にかかっている人には禁忌(「きんき」絶対ダメと言う意味)です。

また、一見健康そうでも、結核菌やB型、C型の肝炎ウイルスを持っている、いわゆるキャリアへの使用は慎重に検討し、ベネフィット(利益)がリスクを十分に上回ると判断される場合にのみ使用されるべきだとのことです。

 

それから、生ワクチン(弱毒化した生きた菌やウイルスを使用したワクチン)の接種も禁忌です。

無害なはずの生ワクチン株に感染するリスクがあるとのことです。

 

それから、それから、このガイドラインを読んで一番驚いたのは、妊娠後期の妊婦にアバタセプトを投与した場合、生まれてきた赤ちゃん(生後6ヶ月まで)に生ワクチンを接種すると、なな、なんとなんと、ワクチン株に「感染」する危険性があるそうです。

アバタセプトを投与されたのはお母さんの方ですよ!?

なんで!?

 

生まれたての赤ちゃんは、ほとんど抗体を作れません。非常に無防備な状態です。

でも、そんな赤ちゃんを外敵から守る仕組みがあります。

それは、妊娠の後期に、お母さんの抗体が胎盤を通して赤ちゃんの血液の中に入っていくのです。

これを「移行抗体」と言い、赤ちゃんにしっかりした免疫ができる生後数ケ月の間、このお母さんからもらった抗体で赤ちゃんを守るのです。

 

理論的には、抗体医薬に近いアバタセプトが、投与を受けたお母さんから、胎盤を通して、胎児の中に移行するということが考えられます。

 

抗体医薬を含むほとんどの生物学的製剤は、血中でかなり安定です。

1回投与すると、数週間から1ヶ月は効果が持続しますので、アバタセプト投与患者が感染症にかかってから慌てて投与を中止しても、すぐには免疫力が回復しない訳です。

これは非常に厄介です。

 

アバタセプトは、既存薬が効果のなかった患者への有効性が高く、実際の副作用発現率はそれほど高くないと言いますが、感染力や病原性の強い感染症のリスクはもちろんのこと、日頃は悪さをしないような病原体の感染でも重篤化する日和見感染の可能性もあります。

 

免疫抑制によって予測されるリスクと言えば、感染症以外では、がんでしょう。

しかし、この薬の発がんリスクへの影響を評価するには、あまりにも長期データがなさすぎます。

ガイドラインでは、がんの既往歴・治療歴のある人や前がん病変を有する人への投与は「避けることが望ましい」とだけ言及しており、がんの危険性については多くを語っていません。

 

このガイドラインは、この薬の日本での承認が遅かったことから、日本人での長期データが不足しており、そのため外国での臨床データを基にして作成されたとのことです。

日本人では何が起こり得るのか? まだまだ分からないことが多いのです。

 

このように、アバタセプトは非常に有効ではありますが、生命にかかわるような非常に危険な面もありますので、投与を受けている人は、感染症にかからないよう、日頃の生活にはくれぐれも注意しましょう。

と、いうくらいのことしか言いようがないのでした。。。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

050【アンカリングとは?】イチローもやっている、緊張を解き、集中力を高める方法

目次:

ゴルゴ13ギラン・バレー症候群ではなかった!!

② 手の震えが止まらない! 「本態性振戦」とは?

③ 自律神経の働きをコントロールできる人がいるって!?

④ あがり症の私が、人前で話す前に行っていること ~イチローもやっている「アンカリング」とは?~

 

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ゴルゴ13ギラン・バレー症候群ではなかった!!

 

本ブログでは何度か、ゴルゴ13の持病「ギラン・バレー症候群」について触れました。

 

完全無欠の殺人マシーン「ゴルゴ13

そんな彼にも人間的な弱点があり、それが読者のシンパシーをくすぐり、またゴルゴがその弱点の故に窮地に陥ることを、多くの読者が密かに期待するのでした。

そして、読者が本当に期待しているのは、絶体絶命の窮地から一転、ゴルゴがどのようにして起死回生の銃弾を撃ち込むのか?

そこんところに爽快感を感じるのですね〜^_^

いや、ゴルゴは死ぬまでやめられん(笑)

 

ところが先日、「ゴルゴ13シリーズ」の最新刊、Vol.196を買って読んだところ、長年ゴルゴを悩ませていた彼の右手の震えが、実はギラン・バレー症候群によるものではないことが判明したのです。

(ご注意:これから読まれる方。本記事には一部ネタバレがありますので、十二分にご注意下さい)

私もビックリ!

今までの話は一体何だったのか? 読者はみんな騙されていたのか?

 

これまでにいくつもあった、ゴルゴのギラン・バレー症候群に関するエピソード。

その中には、医師による診察シーン、診断内容の説明などについての描写がありましたが、多くの人から「おかしい」ギラン・バレー症候群の症状ではない」との指摘があることは私も知っていました。

まぁ、漫画やねんから、そうムキにならんでも。。。まっ、そんな感じ^_^

 

ゴルゴがギラン・バレー症候群ではないという主な理由は二つ。

まず、ギラン・バレー症候群では四肢のすべて、すなわち両手両足すべてに症状が出るということです。特に足から出ることが多いと。。。しかし、ゴルゴの震えは右腕だけです。

もう一つは、ギラン・バレー症候群は一過性の病気で、たいてい予後は良く、ゴルゴのように数年を経て何度も繰り返し発症することはない、というものです。

 

ギラン・バレーのエピソードでは、医師監修のもとに描かれたものもあったそうですが、さすがに、さいとう・たかを先生も、この病気の原因や症状や診断方法などの詳細について、医学的な側面での調査が不充分なまま描いてしまったようです。

 

さて、今回明かされた彼の右腕の震えの原因は何なのか?

作中では病名は特定されませんでしたが、症状や考えられる原因の説明を読んでいると、この病気じゃあないでしょうか。

動画をご覧ください。

ゴルゴがこの病気だとすると、結構ショッキングですよ。

気になる「ふるえ」~本態性振戦って知ってますか? | 病気の知識 | 大日本住友製薬

これではスナイプは不可能ですね。

 

② 手の震えが止まらない! 「本態性振戦」とは?

 

これだけ批判が噴出しては、今後はギラン・バレー症候群をネタにしたエピソードは、いかにも描きづらい。どうにか落とし前をつけないといけない。

さいとう先生はそう思われたのでしょう。

「ほんなら、いっそのこと開き直って、始めっからギラン・バレー症候群やなかったことにしたらええんちゃう?」(さいとう先生は私と同郷、大阪府堺市のご出身ですわ)。

「これは名案💡」

 

では、ゴルゴのこの症状に似た病気はないのか?

ありました。症状、そして、特にその原因が、ゴルゴの職業上の理由から見事に説明できる病気です。

 

この病気、本態性振戦(ほんたいせいしんせん)といいます。

(あくまでも作中では病名は特定されていません。。。)

聞き慣れない病名だと思いますが、知らずにこの症状を経験したことのある人は結構多いと思います。

この病気、年齢が高くなるほど患者が多くなり、40歳以上の年齢層では発病率は6.1%、つまり16人に1人が患者であるそうです。

やはり、多いのですね。

症状は手だけで、体全体が震えることはないそうです。

 

原因は、不安や緊張などからくるストレスです。

例えば、人前で字を書くときに手が震えたりとか。。。

あと、人前でしゃべるときに緊張で声が震えたりとか。。。これは手の震えではありませんが、原因は同じです。

ただ、このように特定の状況で、手以外の震えが出るのは「社会不安障害」の可能性が高いですね。

後で話しますが、私がそれです。

 

③ 自律神経の働きをコントロールできる人がいるって!?

 

本態性振戦の原因は、不安や緊張などのストレスからくる自律神経の失調です。

この点では、前回【049】の「過敏性腸症候群」と原因が共通しています。

049【内科では分からない?】心の病気「過敏性腸症候群」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

自律神経とは、自律して働いている神経です(そのまんまやんけ!)。

聞きなれた交感神経と副交感神経がそれです。

心拍数や血圧や腸のぜん動運動なんかをつかさどっており、自分の意思ではコントロールできないと言われているものです。

 

しかし、まったくコントロールできないかと言うと、そうでもありません。

緊張で心拍数が上がっても、目を閉じて神経を集中させたり、邪念を払うように努めたりすることで恐怖心を制御できれば、心拍数も自ずと下がってくる、、、なんてことは、私たちも経験するところです。

今回のゴルゴ13のエピソードでも述べられていますが、ヨガなどで解脱の境地に達したマスターなどは、瞑想により、心拍数や血圧を抑えたり、果ては痛みですら制御できるそうです。

まさに、「心頭滅却すれば火もまた涼し」です。

 

しかし、我々常人には、そのようなことはとても無理です。

せめて、日常生活のなかで、不安や緊張を少しでも和らげる方法ってないものでしょうか?

 

④ あがり症の私が、人前で話す前に行っていること ~イチローもやっている「アンカリング」とは?~

 

私は子供のころからあがり症でした。

成人してからそれが顕著になり、学会発表や社内の研究成果発表など、人前でプレゼンすることが避けられない「研究者」と言う職業が苦痛で、何度やめようと思ったかしれません。

 

そう、数年前、「社会不安障害」と診断されたことで(本ブログ【049】ご参照)、私は社交的な状況、つまり人前で何かをするということに対して、強い恐怖心を持っているのだということがハッキリと分かったのです。

 

そんな私が、講演会などで話す前に行っている、緊張を解き、集中力を高める方法についてお話します。

それは、「アンカリング」と言う、心理学に基づいた手法です。

 

皆さんは、ある曲を聴いたり、ある映画のことなどを思ったりしたら、必ず決まって特定の人のことを思い出したりしませんか?

私は、ボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」(1982年)を聴くと、今でも当時好きだった女の子のことを思い出します。

 

まぁ、私の若い頃のほろ苦い恋の話なんかはどうでもえぇとして、あるものと、別のあるものとが、頭の中で強力に関連付けられた状態。

あたかも、錨(アンカー)が撃ち込まれたように、切り離そうにも離せないくらいに強力につながった状態。

これが「アンカリング」です。

 

イチローがバッターボックスで行う、あまりにも有名なルーティン。あれこそアンカリングです。

(ただのカッコつけじゃないんですよ)

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「靴下は必ず左足から履く」なんていうような、いわゆるジンクスとか、ゲン担ぎとか言われているものも、それに似ていますが、アンカリングははるかに強力なものです。

 

マエケン体操? さあ、どうでしょう?

あれで集中力を高めていないとも限りませんね(笑) 

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要は、ある決まった動作を、自分の調子の良かったころの心理状態とか、成功体験に結び付けるのです。

自分の求めるイメージとまったく何の関係もない動作でも構いません。

人に気付かれたくなければ、目立たない小さな動作でもいいのです。

(講演前にマエケン体操始めたらヤバイですからね(笑))

とにかく、その動作が、自分の望むイメージと強力に結び付けることさえ出来ればいいのです。

 

具体的なアンカリングのやり方については、以下のサイトを参照して下さい。

実際に私も、このサイトを見てトライしました。

visionary-mind.com

 

私が人前で話す前に行っている、アンカリングの具体的な方法についてお話します。

右手である種のサイン(ピースサインとか、その程度のもの)を作ります。それだけです。

その動作は余りにも目立たないので、聴講者に気取られることはありません。

例えば、司会者が私のプロフィールを紹介している間(いよいよ私の出番です。緊張は最高潮のはずです)、私は会場の後方に立って、紹介が終わるのを待っているのですが、その時、右手で「メロイック・サイン(コルナ)」を作っているのです。

コルナ - Wikipedia

 

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Ronnie James Dio, The greatest hard rock singer

 

私は、右手でこのサインを作る動作と、自分が過去にとても上手くできたときの体験を自己暗示でつなぎ合わせ、アンカリングしました。

登壇する直前に右手でこのサインを作りながら、目を半眼に開いて、「俺は話がうまい」「俺の話はウケる」と念じ、過去にウケた講演会のことや、人から「良かった」「面白かった」「話が上手い」と言ってもらった言葉などに思いを巡らせ、自己暗示をかけるのです。

これでスイッチONです。

 

それでその日の話もうまくいくと、このサインと成功体験とのつながりが強化されます。

これを繰り返して、さらにさらに、この単純な動作と成功体験とのつながりを強めて行きます。

そうなると、このルーティンによって簡単に集中力を高められ、自信を持てるようになります。この積み重ねです。

イチローのルーティンはまさにこれだと言えます。

 

子供が、親の励ましでチャレンジして成功体験を重ねれば、大きな自信につながるように、自分自身で成功体験を積み重ね、確たる自信を得るのです。

 

アンカリングを成立させることは必ずしも簡単なことではないかもしれません。

まずは、どんな小さな成功でもいいので、成功体験を作らなければなりません。

何もないところからはアンカリングできないのですから。

ホント、小さなところから始めて下さい。

また、本当に強固なつながりを形成するには、それなりの自己暗示の訓練が必要で、それにも時間がかかるかもしれません。

一朝一夕にはいかないかもしれませんが、ひとたびアンカリングが成立すれば、貴方の強力な味方になります。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外【免疫学史上最大の謎??に挑む】「サプレッサーT細胞」は何処へ消えた?

今回は、健康の話でも病気の話でも御座いませんので、悪しからずご了承のほどを。

 

でも、免疫学に関心のある方の中には、同じ疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな疑問について、勝手に迫ります(笑)

 

目次:

① サプレッサーT細胞は何処へ消えたのか?

② サプレッサーT細胞には発見者がいた!

③ 細胞マーカー分子とは?

④ 引導は分子生物学者によって渡された!

⑤ 坂口志文(しもん)の登場

⑥ なぜ、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのか?

⑦ 「サプレッサーT細胞」という呼称を今でも使う人

 

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① サプレッサーT細胞は何処へ消えたのか?

 

これまでの私の記事の中で、皆様に最もたくさん読んで頂いているのが【017】の「自己免疫疾患と制御性T細胞」です。

制御性T細胞について、こんなにも多くの人が高い関心を持たれていることを知ることができましたし、大変な励みになりました。

皆さま、本当にありがとう御座います。

takyamamoto.hatenablog.com

 

この記事を投稿した後、ある方から、「昔、『サプレッサーT細胞』というのがありましたが、『制御性T細胞』に名前変わったんですか?」というご質問を頂きました。

 

1983年だったと思います。私が大学生だったときに読んだ本(講談社ブルーバックス)には、「T細胞には、ヘルパーT細胞とキラーT細胞とサプレッサーT細胞とがある」と書かれていました。

その本には、確かに、「サプレッサーT細胞はある」と明記されていたのです。

実は、その本を読んだその当時の時点で、既にサプレッサーT細胞の存在が否定されていたことを、私は全く知る由もありませんでした。

その時以来、20年近くにもわたって、「サプレッサーT細胞はある」と信じ込んでいたのです。

(それまでの私は、免疫学は専門ではありませんでしたので)

 

で、気が付いたのは、わが国の免疫学の世界では、サプレッサーT細胞の話題に触れることが、あたかもタブーであるかのように、誰もサプレッサーT細胞の話をしない雰囲気があることでした。

早くも1960年代に、洞察力に優れた免疫学者によって、「免疫を抑える細胞」の存在が予言され、サプレッサーT細胞は否定されたとは言え、1995年の制御性T細胞の発見によって、その予言が正しかったことが見事に証明されたにも関わらずです!

なんでなのか??

 

どういういきさつでサプレッサーT細胞は消え去ったのか?

質問を頂いたことをきっかけに調べてみました。

 

② サプレッサーT細胞には発見者がいた!

 

サプレッサーT細胞の発見者は、当時、千葉大学教授だった多田富雄先生だとされているようです。1971年の事です。

 

60年代から「免疫現象は、免疫を抑制(suppress)する細胞の存在を仮定しないと説明できない」と考える人たちがいました。その先端を走っていたのが多田先生であったようです。

多田先生が、どんな証拠に基づいてサプレッサーT細胞を発見したと言われたのかはよく分かりません。

 

当時の定義によれば、サプレッサーT細胞の最も重要な特徴は、I‐Jと呼ばれるタンパク質が細胞に発現していたことです。

言い換えると、I‐Jタンパク質はサプレッサーT細胞の目印と言えます。

つまり、サプレッサーT細胞であればI‐Jタンパク質を発現しているし、逆にI‐Jタンパク質を発現している細胞はサプレッサーT細胞だと言えるとされていたのです。

 

③ 細胞マーカー分子とは?

 

先ほど、I‐Jというタンパク質は、サプレッサーT細胞の目印だと言いました。

このように、ある細胞の特徴を表す目印となるタンパク質、言い換えると、その細胞がどんな種類の細胞であるのかを決定するのに使われるタンパク質を、「細胞マーカー分子(単に「マーカー分子」とも)」と言います。

 

免疫細胞のうち、T細胞の最も重要なマーカー分子に、「CD4」「CD8」と呼ばれるタンパク質があります。

例外もありますが、ほとんどのT細胞は、CD4を発現する「CD4陽性T細胞」とCD8を発現する「CD8陽性T細胞」の2つに分類されます。

 

T細胞は、現在では大きく「キラーT細胞」、「ヘルパーT細胞」、「制御性T細胞」の3つに分類されますが、キラーT細胞はCD8陽性細胞(CD8を発現する細胞)であり、ヘルパーT細胞と制御性T細胞はCD4陽性細胞(CD4を発現する細胞)なのです。

 

そして、ここが重要なのですが、当時、「サプレッサーT細胞」は「CD8陽性細胞」、すなわち、キラーT細胞のお仲間だと信じられていたのです。

 

④ 引導は分子生物学者によって渡された!

 

1970年代後半には、多田先生が発見したとされる「CD8陽性/I‐J陽性」のサプレッサーT細胞の遺伝子の働きや、免疫を抑える仕組みの研究が、世界中の研究者によって競うように行われたようです。

その研究には、免疫学者だけでなく、遺伝子やタンパク質の構造や機能を研究する、いわゆる「分子生物学者」たちも参入してきたのです。

 

そして1981年、私には詳しいことは分かりませんが、ついに、I‐Jタンパク質は、遺伝子的にサプレッサーT細胞の「分子マーカーではあり得ない」ことが、分子生物学者によって決定的にされたそうです。

 

その後、免疫学者たちの「サプレッサー熱」は急速に冷めていき、また、多くの研究者が落胆したのです。

「あぁ、免疫を抑える細胞の存在を信じていた俺たちは間違っていたのだろうか?」

「あの熱く燃え上がった情熱を研究に注ぎこんだ日々は何だったのか?」

 

⑤ 坂口志文(しもん)の登場

 

現、大阪大学教授の坂口志文先生は、その後も免疫を抑える免疫細胞の存在を信じていました。

多くの免疫学者が、免疫を抑える免疫細胞の探究から去っていく中でです。

80年代から既に、志文先生は、「CD8陽性細胞」に囚われず、一から免疫を抑える細胞の探索を行っていたようです。

 

そしてついに、免疫を抑える細胞の発見に至るのですが、それはなんと「CD8陽性細胞」ではなく、「CD4陽性細胞」だったのです。

 

80年代の多くの研究者が、免疫を抑える細胞は「CD8陽性細胞」だという先入観に囚われて、疑うことすら知りませんでした。

このことは、かつてサプレッサーT細胞の研究に打ち込んでいた研究者にとっては、非常に大きな失策のように思われたのかもしれません。

一方、志文先生は、過去の先入観を完全に捨て去っていたのですね。

 

⑥ なぜ、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのか?

 

本ブログ【017】でお話しした通り、制御性T細胞は、「自己免疫反応を示す細胞を抑制する細胞」として発見されました。

「抑制」する者とは、英語でまさしく「suppresor」です。

ですが、「サプレッサー(suppresor)T細胞」ではなく、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられました。

何故なのか?

 

志文先生は、阪大のご自身のホームページの中で、制御性T細胞が自己免疫反応を抑える働きを、「抑制」ではなく「調整作用」と表現しています。

www.osaka-u.ac.jp

 

「Regulatory」とは、「制御性」とか「調整的な」とか「調節の」という意味です。

なので、「制御性(regulatory)T細胞」と名付けられたのでしょう。

 

でも、こんな邪推をすると叱られるかもしれませんが、敢えて「サップレッサーT細胞」の呼称を避けたのかもしれません。

しかし、その真実の事情については、私などの知るところではありません。

 

⑦ 「サプレッサーT細胞」という呼称を今でも使う人

 

「サプレッサーT細胞」という呼称は、当時、多田先生が海外の研究者仲間2人とワイガヤで話し合って決めたそうです。

つまり、多田先生は、名付け親の一人なのです。

 

1960年代の時点で既に、免疫を抑える免疫細胞の存在を予言していた点で、多田先生の功績は大きいと言えます。

ところが、1981年にサプレッサーT細胞の存在が分子生物学者によって完全否定されたことにより、多くの免疫学者たちは面目を失ったのでしょう。

そして、わが国でそのフロントランナーであった多田先生も、その後、非常に辛い目に会われたようです。

多田先生は、ご自身の手記の中で、「ある国際学術雑誌のなかで、『それでも地球は動く』という論説を書いた」と記しています。

ご存知の通り、「地動説」を唱えて、異端審問で追及されたときのガリレオの有名な言葉です。

 

そんな多田先生の胸中を思ってか、当時のわが国の免疫学者たちは、「サプレッサーT細胞」という言葉を使わなくなったのではないでしょうか。

それが今日にまで続いているように思えます。

 

また逆に、当時、多田先生のお弟子さんとしてサプレッサーT細胞の研究に情熱を燃やしていた人などは、当時の「熱き探究の日々」を懐かしむかの如く、制御性T細胞の事を「CD4陽性/CD25陽性サプレッサーT細胞」などと呼ぶのです。

(CD25は、制御性T細胞の主要な分子マーカーです)

JSI Newsletter Vol11 No1. p7

サプレッサーT細胞は「CD8陽性」やっ、ちゅうねん(笑)

 

本ブログ【041】と【042】の「がん遺伝子発見物語」でも、科学の裏側で繰り広げられる研究者たちの人間物語についてお話しましたが、偉大な科学の発展は、研究者たちの苦悩と葛藤、栄光と挫折に支えられているのですね。

takyamamoto.hatenablog.com

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

本記事の真偽の程について、正しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ともお教え頂きたく思います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

049【内科では分からない?】心の病気「過敏性腸症候群」

目次:

① 緊張する状況で下痢、って経験あります?

② 心療内科は怖くない(笑)

③ この俺が心の病気に? じゃぁ、誰でもなり得るってことか!?

④ この病気には絶対に立ち向かうな!

 

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① 不安な状況で下痢、って経験あります?

 

私の弟が中学生の時、定期考査試験の前になると、必ずお腹壊してました。

 

私はというと、大学生のころ、急行列車なんかに乗ると急にお腹が痛くなり、吊革につかまって体ねじりながら、冷や汗かいて、顔面蒼白になりながら、「駅まであと5分・・・」、「あと2分・・・頑張れ!」と自分を励ましながら、次の駅まで耐えに耐えました。

ところが、不思議なもので、駅に着くと腹痛が治まるのです。

「あっ、大丈夫や、治まった。これやったら次の駅まで行けるなぁ」なぁ~んて思って、ドアがピシャリと閉まった瞬間に、再び激しい痛みが襲ってくるのです。

そして、さらに「恐怖の15分間」との闘いが始まるのです。

死にそうな思いで耐えに耐え、やっと駅のトイレに駆け込んだとき、個室の前に列なんかできていると、もう失神しそうになりましたね。

そして、その刹那にこう思うのです。

「この苦しみから解放されるのなら、クソまみれになって死んだ方がマシ」と(笑)

いや、当の本人にとっては、笑いごとでは御座いません。

(今は腸内の状態がとてもいいので、そんな恐怖体験は皆無です)

 

子供であれば、人前でのピアノの発表会の前とか。。。

大人では、会社や取引先での大事なプレゼンの前。

それから、前述の私の経験のように、すぐにはトイレに行けないという状況で強い不安を感じているようなとき。

これは、緊張や不安、プレッシャーなどからくるストレスが一因となっている心因性の疾患であろうと考えられます。

 

この病気、過敏性腸症候群は、内科で内視鏡などの検査を行っても炎症や潰瘍などの身体的異常が認められないにも関わらず、下痢や便秘、腹痛、ガス過多などの症状を示す病気の総称です。

わが国の患者総数は約1,200万人とみつもられており、子供から20~40歳代の比較的若い世代に多く見られます。

 

大きくは「下痢型」、「便秘型」、「下痢と便秘を交互に繰り返す型」の3つに分けられます。

断然、「下痢型」が多いですね。

 

大腸のぜん動運動が活発になると、大腸の内容物(つまりウンコ)からの水分の吸収が不十分となり、下痢します。

逆に、ぜん動運動が鈍くなると、内容物が大腸内に留まる時間が長くなり、その間に水分が過剰に吸収されて便秘になります。

腸のぜん動運動は自律神経に支配されており、自律神経の失調が一因となっていると思われます。

 

前に、ある状況でお腹が痛くなった体験があると、再び同じ状況に置かれたときに、「またお腹が痛くなるのでは?」と意識すればするほど不安に襲われ、その強い不安が神経を失調させます。

そのような経験を何度も繰り返すことで、不安とストレスが強化され、恐怖心すら覚えるようになります。

このような悪循環にまで陥ると、何らかの精神的な診療が必要になります。

 

② 心療内科は怖くない(笑)

 

前述の通り、内視鏡所見に異常がなく、このような症状でお悩みの方は、心療内科や精神科を受診されてみて下さい。

この病気は実際、内科ではなく、心療内科や精神科で診断されることが多いのです。

 

「診療内科」や「精神科」というと抵抗を感じる方も多いかも知れませんが、今はそんなことありません。

「病気」であるのにも関わらず、昔だったら「根性がない」とか「気合が足りん」とか一蹴されていたのが、今ではれっきとした病気であるとの認識が一般にも広まってきました。

私も心療内科に通ったことがありますので分かりますが、老若男女、本当に患者さん多いですよ。

待合室でテレビ見たり、本読んだりして順番待ちしている人たちを見ていると、とても病人には見えません。

それでも、それぞれに他人には分からない苦痛に悩んでる人たちなのです。

実際、私もその一人でした。

ただ、たまにテーブルの上に突っ伏してピクリとも動かないような、「うわっ、この人凄っげぇ具合悪そ~」っていう人もいましたが。。。

 

③ この俺が心の病気に? じゃぁ、誰でもなり得るってことか!?

 

ちょっとここで、私の話をさせて下さい。

4年ほど前、前々職のことです。

その時は単身赴任でした。

仕事が順調の反対で、上司の役員とも折り合いが悪くなり、強い不安と焦燥感を感じるようになり、不眠に悩まされました。

眠れないのと、不安感を解消するために、毎晩多量に飲酒し、そのことで荒れた生活になっていました。

これがまた、症状を悪化させていたのだと思います。

「このままここにいたら、俺の人間の部分は完全に壊れてしまう」と思ったものです。

 

思い立って心療内科に行き、「社会不安障害」と診断されました。

病気と診断されたとき、不思議と、なんだか安心しましたね〜。

でも、なかなか良くならず、ついには重度のうつ患者と同じ最大用量の抗うつ薬(選択的セロトニン再取込阻害剤)を飲むまでに至ったのです。

それで私の取った選択。結局、その状況から逃れるしか道はありませんでした。

 

④ この病気には絶対に立ち向かうな!

 

多くの心の病気では、「頑張って」はいけません。

「根性で克服してやる!」などと思わないことです。

取り返しのつかないことになりかねません!

 

急行列車がダメな過敏性大腸炎の人は、1時間早く家を出て、各駅停車に乗って通勤したりとか。

いつでも最寄りの駅で降りてトイレに行ける状況だと、不安から解放され、それだけでお腹が痛くなることもありません。

仕事でのプレゼンが苦痛な人は、上司に相談して他の仕事に回してもらうとか。。。

 

逃げていいんです‼︎

 

この病気に限らないのですが、心因性の病気は薬だけに頼っても、なかなか完治は難しいかも知れません。

やはり不安の原因となっているものを取り除くことが一番です。

私の場合、その会社を辞めたら、1年もしない内に治りました。

おかげさまで、今は超元気じゃけん(なんで急に広島弁になる?)

 

過敏性腸症候群にかかっていながら、「たかが下痢(便秘)程度で」とか、「下痢(便秘)しやすい体質なだけ」などと軽く考えて受診せず、市販の下痢止め(便秘薬)でしのぎながら、相変わらず急行列車やプレゼンの恐怖と闘い続けていると、不安と緊張が増強し、やがてうつや不安障害を併発する可能性があります。

 

消化器内科を受診しても異常が見つからず、しかし確かにこのような症状で強いストレスを感じているのなら、是非、心療内科か精神科を受診して下さい。

そこでは、貴方のストレスや不安の程度を測るテストが行われるかもしれません。

テストと言っても、アンケートに答えるようなもので、何の苦痛もありませんし、身構える必要もありません。

質問事項に対して率直に答えれば、かなり精度高く、貴方の精神状態を数値化してくれます。

私も何度か受けましたが、確かに症状が良くなってくると、このテストの数値も下がってくるのです。

 

症状の程度に応じて、不安を和らげるための精神安定剤や、時には抗うつ剤が処方されるかもしれません。

薬はお医者さまの言う通りに服用して下さい。

その上で、症状をうまくコントロールしながら、原因となっている生活環境や職場環境の改善を試みて下さい。

 

いいですか? 絶対にこの手の病気に立ち向かってはダメですよ!!

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

048【「免疫チェックポイント阻害剤」に期待し過ぎてはいけない!】がん(その9)

目次:

① 「免疫チェックポイント阻害剤」は誰にでも有効という訳ではない!

② どんながんに効きやすいかが解ってきた!?

③ どうやったら、簡単にDNA修復遺伝子に異常があるのかどうかを調べられるのか?

④ 壊れたガードレールを探せって??

⑤ 21世紀のがん治療は「免疫力」!

 

10回はやると言いていた「がん」シリーズですが、8回で息切れしてお休みしてしまいました。

断言したからには男の子! 何が何でもやるぞッ!

久しぶりの9回目をお届けします。

 

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① 「免疫チェックポイント阻害剤」は誰にでも有効という訳ではない!

 

本ブログ【021】にて、今期待の「免疫チェックポイント阻害剤」のお話をしました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

なにせ、「手術」「抗がん剤」「放射線」の3大療法に見放された末期のメラノーマ(悪性黒色腫)で4割の人が延命するのですから、画期的な薬です!

でも、4割と言うことは、皆が皆、これで治る訳ではありません。

それはそうです。まだこの世に、誰にでもがんに効く薬なんてありません。

ましてや末期の患者さんに対してですから。

なので、過度に期待するのではなく、今一度、冷静になって、この薬の問題点について考えてみる必要があります。

 

免疫チェックポイント阻害剤にも、いくつかの問題点があります。

人間本来の免疫力を引き出す薬ですから、元々免疫力の落ちている高齢者には、それほど効果は期待できないようです。

また、重度の自己免疫疾患の人にこれを使うのは、自己免疫疾患の病状を悪化させるリスクがあります。

 

② どんながんに効きやすいかが解ってきた!?

 

メラノーマは悪性度の高いがんではありますが、「免疫チェックポイント阻害剤」が比較的効きやすいがんです

しかし、悪性度にかかわらず、がんの種類によっては、効きにくいものもたくさんあります。

 

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この違いはどこにあるのか?

高額な薬ですから、あらかじめ効きやすい人とそうでない人とを見分けられると、非常に有効です。

 

そのことはまだ、ほとんど分かっていませんが、ひとつのヒントが15年10月放送のNHKの「クローズアップ現代」で示されていました。

www.nhk.or.jp

 

 

実は、この薬が効きにくいと言われる大腸がんにも関わらず、中にはよく効く人のいることがわかったのです。

それが「リンチ症候群」と呼ばれる、家族性(すなわち遺伝性)の大腸がんなのです。

このリンチ症候群については、がんシリーズ(その3)でお話しました。

是非もう一度おさらいを。

takyamamoto.hatenablog.com

 

リンチ症候群は、がんの原因となる遺伝子の変異を修復する遺伝子、すなわちDNA修復遺伝子に生まれつき変異のある人が発症しやすい家族性腫瘍です。

DNA修復遺伝子は、遺伝子の故障を修理する「修理工」です。

その修理工が故障したら、いったい誰がその修理工を修理するのか?という先天性のがんなのですね。

 

リンチ症候群患者の大腸がんに、なぜ免疫チェックポイント阻害剤がよく効くのか?

そのメカニズムは、まだほとんど分かっていないようです。

とにかく、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいかどうか、本当にこの「DNA修復遺伝子の異常」が「カギ」なのでしょうか?

 

③ どうやったら、簡単にDNA修復遺伝子に異常があるのかどうかを調べられるのか?

 

さてさて、DNA修復遺伝子に変異があるのは、何も先天的なリンチ症候群だけではありません。

後天的な原発性がんの多くでDNA修復遺伝子に変異がみられます。

つまり、がん患者のがん組織を採って(生検)、DNA修復遺伝子に変異があるかどうかを調べて、そのような人に免疫チェックポイント阻害剤が効くかどうかを調べればいいのです!!

 

過去ブログ【035】でお話しましたが、リ・フラウメニ症候群ならp53遺伝子を、家族性乳がんならBRCA1BRCA2のふたつの遺伝子の塩基配列を調べれば、変異のあるなしが分かります。

実際それで、アンジーのBRCA1遺伝子の変異が見つかりました。

035【遺伝するガン「家族性腫瘍」】がん(その3) - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

ところが一口でDNA修復遺伝子と言いますが、実は種類がたくさんあるのです。

例えばMsh2Mlh1Msh6PMS1、、、それから、それから、ええ~っと、ええ~っと。。。

とにかく何種類もあるので、こんなんいちいちDNA配列の検査なんかしてられん訳ですわい。

じゃぁどうするのか?

たとえ、よく効くことが分かっていても、それを検査することが難しいんじゃ、しょうがないんじゃないの!?

 

いや、いい手があります。

DNA修復遺伝子の機能異常のために、DNAに変異が起きても修復できないということは、DNAの変異は放置されたまま残ります。

ですから、変異が起こって修復されずに放置されている現場を押さえれば、それを状況証拠として、間接的にDNA修復遺伝子の機能異常が疑われます。

じゃあ、ゲノム(遺伝子の全部)のどこを探せば修復されずに放置されたままの現場を押さえられるというのか?

60億もある塩基配列のどこをどう探せばいいのか?

太平洋でメダカを探すようなもんですよ。ハロウィンの日に渋谷でウォーリーを探すようなもんでしょう(泣)

 

④ 壊れたガードレールを探せって??

 

安心して下さい。スッゴク簡単な方法があります。

 

ガードレールに車がぶつかって壊れたら、修理に来ますよね(車じゃなくって、ガードレールの話ですよ)。

もし、修理屋さんが働けなくなったら、壊れたガードレールは修理されずにほったらかしになります。

だから、壊れたガードレールがいつまでも修理されずに放置されていたとしたら、それは修理屋さんがどうにかなってしまった、と言うふうに考えることができる訳です。

なので、そういう壊れたまま放置されたガードレールがたくさん見つかれば、修理屋さんに、とても具合の悪いこと、つまり「ご不幸」が起きてしまったということが分かるわけですよ。

わっかるかなぁ? 分かんねぇだろうな~(でんでん調)

 

なので、日本中の道路の壊れたまま修理されていないガードレールを探す訳ですが、貴方ならどこを探しますか?

どこを探せばいいか、分かります?

 

答えは、スッゲェ車がぶつかりやすいところです。

某国道の急カーブの先にある人家前のガードレールとか、山道の狭くて曲がりくねったところで、ローリング族(知ってます? ローリング族って?)がドリフトで攻めるコーナーの立ち上がりの外側部分のガードレールとか(具体的には六甲山のドライブウェイとか旧阪奈道路がそれだな)、そう言うところです。

それから、首都高や阪神高速の急カーブ部分で合流する地点なんて、まさにガードレール損傷のホットスポットですよ!

 

実は、ゲノムにもそういう壊れやすいホットスポットがあります。

つまり、スッゴク塩基配列に変異が起こりやすい場所がたくさんあり、それがどこにあるのか、ほとんど分っているため、そのような部分の遺伝子配列を集中的に異常が無いかを調べればいいわけです。

ガードレールが壊れやすい場所で、壊れたらちゃんと修理されてるのかどうかを監視するように、DNAに異常が起こりやすいところを監視して、修復されているかどうかを確かめることによって、DNA修復遺伝子がちゃんと働いているのか否か、が分かるというのでありまする。。。

こんな下手なたとえ話でお分かり頂けます? 心配だなぁ。

 

DNAの4種類の塩基(G, A, T, C)のうちCとAが何度も繰り返している配列部分があります。

例えば、(CA)の2塩基が3回繰り返されたCACACAみたいな感じです。

この繰り返しが数回から数十回、時に百回以上に及ぶ部分があります。

このような繰り返し配列は「マイクロサテライト」と呼ばれ、その繰り返し回数は人ごとに一定です。

このマイクロサテライトの特徴として、細胞の分裂に伴ってDNAが複製されるときに「滑り」やすく、繰り返し回数が変わりやすいということがあります。

 

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でも、DNA修復遺伝子が正常に機能していれば、この「滑り」は修復されるので、この繰り返しの回数が変わることはありません。

しかし、DNA修復遺伝子がうまく機能しないと、そのまま修復されずに放置され、この回数が長くなったり、短くなったりするのです。

 

下の図を見て下さい。

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マイクロサテライト部分のDNAを電気泳動した図です。

DNAは、図の上方から下に向かって、電気の引き付ける力によって寒天の中を移動します。

短いDNAほど早く(より下の方に)、長いほどゆっくりと移動するので、この移動度によってDNAの長さが分かります。

 

電気泳動では、DNAの位置は黒いバンドとして現れます。

図のNは正常な大腸の組織のマイクロサテライトのDNAのバンドの位置。Tは大腸がん細胞のマイクロサテライトのDNAのバンドの位置です。

正常な場合は、繰り返し回数が一定ですから、長さも一定なので、バンドは一本です。

でも、がん細胞では、正常細胞と同じ長さのバンドに加え、短いバンドも見られますね。

正常な長さのメインのバンドの少し上に、薄っすらとバンドらしきものが観られますね。

もしかしたら、長くなったマイクロサテライトを持つがん細胞も少しあるのかも知れません。

 

これが、短くなったり、長くなったり、異常を起こしているのに、修復されずに放置されたまんまのマイクロサテライトDNAなのです。

 

このように、マイクロサテライトの長さを一定に保てない状態を、「マイクロサテライト不安定性」といって、これはDNA修復遺伝子の異常の証拠となり、このようながん患者さんを対象に免疫チェックポイント阻害剤が効くのかどうかを検証すればいいのです。

 

それに第一、この検査法は非常に簡単なので、DNA修復遺伝子異常の研究に、とっても有効なのです。

ほんと、ちょっとした装置さえあれば、中学校の理科室でもできる程度のものなのですから。。。

 

⑤ 21世紀のがん治療は「免疫力」

 

2015年、非常に権威のある医学雑誌「The New England Journal of Medicine」から、大腸がんの他、胆道がん、子宮内膜がん、小腸がん、胃がんなどについて、マイクロサテライト不安定性のあるがんと、ないがんとで、免疫チェックポイント阻害剤の効果を検証した論文が発表されました。

果たして、リンチ症候群と同様に、マイクロサテライト不安定性の大きいがん、それも大腸がんに限らず、DNA修復遺伝子に異常があるであろう多くの後天性のがんで、免疫チェックポイント阻害剤が有効であると報告されました。

 

まあ、ひとつの画期的な論文も、他者が追試・再現できなければ、本当かどうかは断言できません。

「断言」はもう少し待ちましょう、 

 

今後も様々な研究により、免疫チェックポイント阻害剤が有効ながんの特徴が明らかにされていくことでしょう。

まさにこれからのがん治療は「免疫力」!

21世紀のがん治療のキーワードは「免疫力」といっても過言ではないのではと思うのです。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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