目次:
1.「遺伝子ドライブ(Gene Drive)」とは?
2.「メンデルの遺伝の法則」を復習しよう
3.神の技術が「遺伝子ドライブ」を可能にした!
4.「遺伝子ドライブ」で何が出来る?
5.SFホラーか!? 「遺伝子ドライブ」の原理
6.実用化が近い「遺伝子ドライブ」の応用例
7.「クリスパー・キャス9」の最大の問題点
8.「遺伝子ドライブ」がもたらす恐怖のシナリオ!
当初、前・中・後編の3回にわたってお送りしようと思っていた「ゲノム編集」ですが、4回以上のシリーズになりそうですので、3回目の今回のタイトルを「その3」とさせて頂きました。
それから、前回の「次回予告」とは大きく内容が変わっています。
ご了承下さい。
あっ、それから、以下の動画を先にご覧になって頂いてもいいでしょう。(日本語字幕つき)
動画の説明は、分かりやすいですよ。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
1.「遺伝子ドライブ(Gene Drive)」とは?
世の中には、悪魔的に頭のいい人がいるものですね。
こんなことを考えつくなんて、本当に恐ろしい!
キャーー!
今回、「ゲノム編集」の記事を書くに当たって、最新情報を含め、一からゲノム編集を勉強し直しました。
その中で、とてつもなく恐ろしい技術があることを知ったのです。
人類の幸福と発展に資する技術であることは間違いないのですが、使い方を誤ると取り返しの付かないことになる、まさしく「諸刃の剣」!
39億年の長きにわたって築き上げられた自然の生態系をメチャクチャに破壊し、二度と元に戻せなくなるかもしれない。それも数年という、超短期間のうちに!
その名を「遺伝子ドライブ(Gene Drive)」
いや、名前ぐらいは聞いたことがありましたが、どんな技術なのか、何のために使えるのか、具体的には全く承知していませんでした。
勉強はしてみるもんです。
ウィキによると、「遺伝子ドライブとは、特定の遺伝子あるいは遺伝子群が偏って遺伝する現象」とあります。
また、「一定範囲の個体群、または生物種全体を遺伝的に改変する有効な手段」とも。
でも、こんな説明では、よく分かりませんよね。
実にさらりとした、無機質なウィキの説明ですが、そこには実に恐るべき真実が隠されているのです。
2.「メンデルの遺伝の法則」を復習しよう
ヒトの染色体は23組。
それぞれ父親と母親からひとつづつ引き継いだ2本の染色体がセットになっています。
この2本ずつの染色体は、互いに同等なので、「相同染色体」と呼ばれます。
相同なそれぞれの染色体には、同じ遺伝子が含まれています。
基本的に同じ遺伝子を2個ずつ持っているわけで、「相同遺伝子」と呼ばれます
この「相同染色体」あるいは「相同遺伝子」の片方が子供に伝わる確率は1/2です。
「メンデルの遺伝の法則」の基本のキですね。
ヒトの性別の遺伝について考えてみましょう。
23組のヒトの染色体のうち、性染色体XとYだけは互いに大きく構造が異なっており、厳密には「相同」とは言えません。
でも、メンデルの法則について考えるとき、性別は非常に分かりやすいので、例に挙げて考えます。
ヒトの性別は、性染色体の組み合わせで決まります。
XXならオンナ、XYならオトコです。
子供がオトコであろうと、オンナであろうと、母親からはX染色体しか受け継げません。
ですから、子供がオンナかオトコかは、ひとえに父親からX染色体を受け継ぐか、Y染色体を受け継ぐかで決まります。
父親からXを引き継ぐ確率も、Yを引き継ぐ確率も、(ほぼほぼ)50%です。
つまり、オンナが生まれる確率も、オトコが生まれる確率も、(ほぼほぼ)50%ということです。
ですから、何世代を経ようと、男女の比が変わることはありません。
ですが、仮定の話として、もし、父親からYを引き継ぐ確率を60%、70%に引き上げることができたらどうなるか?
もし、Yを100%引き継ぐとしたら、時間はかかりますが、世代を経るうちにオンナは減っていき、ついには世界はオトコだらけになってしまうのであった!!
(あんまり魅惑的な世界ではないな)笑
このように、ある遺伝子が偏った比率で後世に伝わる現象。
これが「遺伝子ドライブ」なのだよ!!
(知らんかったクセに、えらそーに言うな)
3.神の技術が「遺伝子ドライブ」を可能にした!
こんなこと、人間が自然な生殖、つまり自然なセックスをしている限り、起こりっこありません。
しかし、人為的にこの「遺伝子ドライブ」を引き起こすことが、技術的に可能であることを示唆したイギリスの科学者がいました。
2003年のことです。
(この人が、悪魔的に頭のいい人ですよ!)
技術的な可能性は示したものの、当時の技術では、ある特定の遺伝子を、ある生物種の中で偏った比率で効率的に伝播させることは容易ではありませんでした。
しかし、2013年、この「遺伝子ドライブ」を、一気に現実のものにするような革新的技術が登場したのです。
それはまたしても、神のハサミ「クリスパー・キャス9」
クリスパー・キャス9を遺伝子ドライブに応用することを考え出したのは、現ハーバード大の研究者。
この人も悪魔的だな!
でもこの方、自ら発案した遺伝子ドライブ技術について、その使い道を誤るとえらいことになると警鐘を鳴らす世界的オピニオン・リーダー でもあり、とても倫理観の高い科学者なのです。
4.「遺伝子ドライブ」で何が出来る?
さっきから、「悪魔の技術」だとか、「諸刃の剣」だとか、悪し様に言って、やたらと恐怖心を煽っていますが、もちろん、科学は人類の幸福に資するべきものです。
「遺伝子ドライブ」が、どんないいことに応用できるのか挙げてみましょう。
例えば、
などだと言います。
なんか、とっても世の中の役に立つようですね。
それも、以前の科学技術では、とうてい不可能と思われていたことばかりです。
「遺伝子ドライブ」素晴らしい!
「遺伝子ドライブ」LOVE❤
現在、ある国では、国をあげたプロジェクトとして、「遺伝子ドライブ」で有害外来種の撲滅を図ろうとしています。
先にヒトの性別を取り上げて例示したとおり、クリスパー・キャス9を使ったゲノム編集により、オスしか生まれないように外来種を改変し、その改変外来種を少数、野に放つのです。
この改変外来種が、自然界で繁殖を繰り返せば繰り返すほど、どんどんメスが減っていき、ついには撲滅に追い込めるという考えです。
(オスばっかりかぁ。ある意味、むごい仕打ちだよな)
5.SFホラーか!? 「遺伝子ドライブ」の原理
「遺伝子ドライブ」の原理について、例えば、遺伝病を根絶する方法について考えてみましょう。
あっ、ここからはちょっと小難しいので、飛ばして6から読んで下さっても結構ですよ。
過去ブログで、「ウェルナー症候群」という遺伝病を取り上げたことがありました。
ウェルナー症候群は、正常でないWRN遺伝子を2つとも親から受け継ぐことで発症します。
下の図では、両親ともに、正常でないWRN遺伝子(赤色小文字のw)をひとつずつ持っているとします。
それぞれの親から、正常なWRN遺伝子(青色大文字のW)と正常でないWRN遺伝子を子供が引き継ぐ確率は、いずれも50%です。メンデルの法則ですね。
ですから、それぞれの親から正常でないWRN遺伝子を受け継いで、正常でない遺伝子を2つとも持つ確率は1/4です。
ヒトが自然な生殖をする限り、メンデルの法則に則り、この確率が変わることはありません。
ですから、ウェルナー症候群は、この世から永遠になくなることは無いのです。
ゲノム編集技術では、受精卵の正常でない遺伝子を、正常な遺伝子に入れ替えることは、そう難しくありません。
ゲノム編集と遺伝子ドライブとで、遺伝病である「ウェルナー症候群」を駆逐する作戦をシミュレートしてみましょう。
正常でないWRN遺伝子を2つ持った受精卵があるとします。
このまま生まれると、将来、ウェルナー症候群を発症する可能性があります。
まず、この受精卵にゲノム編集により、2つの正常でないWRN遺伝子の片方を、正常なWRN遺伝子と入れ替えてやります。
ですが、このとき、同時に別の2つの遺伝子も一緒に組み込むところが「遺伝子ドライブ」のミソです。
その2つとは、なんと「クリスパー」と「キャス9」の遺伝子なのです。
まずは、通常の手順に従い「クリスパー・キャス9」で正常ではないWRN遺伝子の片方を切断します。(図A)
このとき、「クリスパー」と「キャス9」と「正常なWRN遺伝子」が一列に並んだ「DNAカセット」も、いっしょに受精卵の核の中に注入してやります。(図B)
そして、うまい具合に、片方の正常でないWRN遺伝子を、上記の「DNAカセット」に置き換えることに成功しました。
図Bの中で「相同組換え」という言葉が出てきますが、これは後で説明します。
この受精卵は、母親のお腹の中に戻され、分裂を繰り返しながら分化し、人間の形になっていきます。
このときに、胎児の一つひとつの細胞の中では、実に恐ろしいことが起きているのですよ。
これはもう、背筋も凍るような「SFホラー」の世界です。
でも、これは、SFみたいな架空の話ではなく、今この時も、世界のどこかで実験が行われている超現実なのですよ~~~っと。
キャーーーー!!
おっと、取り乱してしまいました。申し訳ありません。
図の説明に戻りましょう。
受精卵の片方の染色体に、正常なWRN遺伝子とともに組み込まれた「クリスパー」と「キャス9」の遺伝子。
もちろん、この2つの遺伝子は、分裂を始めた細胞一つひとつの中で生きています。
組み込まれた「クリスパー」遺伝子からは、特定の遺伝子配列を見つけ出す「クリスパーRNA」が、そして、「キャス9」遺伝子からは、二本のDNA鎖をぶった切る「DNA切断酵素」が作られます。
細胞の中で作られたクリスパーが、どんなDNA配列を標的にしているのかと言うと、実は、WRN遺伝子そのものなのです。
一つひとつの細胞の、もう一方のWRN遺伝子は元のまま。つまり正常ではありません。
細胞内で作られた「クリスパー・キャス9」が、この正常でない方のWRN遺伝子を切断するのです。(図C)
ここから、ちょっとややこしくなります。
しちめんど臭いと思われる方は、どうぞ飛ばして読んでください。
私たちヒトから細菌に至るまで、細胞にはゲノムの損傷を修復する機能が備わっています。
ひとつには、難しい言葉ですが「相同組換え」という修復の方法があります。
2つある片方の遺伝子が損傷した場合、もうひとつの正常な相同遺伝子のコピーをとって、損傷部分と入れ替えることで元通りに修復します。
もうひとつの正常な相同遺伝子のコピーを使って組み換える。
すなわち「相同組換え」です。
いま、「クリスパー・キャス9」によって、正常でないWRN遺伝子が破壊されました。
細胞は、相同遺伝子の配列のコピーを作って、これを修復しようとします。
ところが、相同なもう一つのWRN遺伝子には、「クリスパー」と「キャス9」という、余計な2つの遺伝子も一緒に並んでいます。
正常な相同遺伝子のWRNとともに、この2つの余計な遺伝子も、相同組換えによって、破壊されたWRN遺伝子と置き換えられるのです。(図D)
このときに、互いの遺伝子配列と同じ部分、つまり相同な配列部分(図の黒いボックスH1とH2)を「のりしろ」にして組み換えるのです。
つまり「相同組換え」ですね。
どうです? これで、2つの相同遺伝子とも、正常なWRN遺伝子に変換されました。
ただし、「クリスパー」と「キャス9」という、お邪魔な遺伝子も一緒です。(図E)
分かります?
生きて分裂する細胞の中で、「クリスパー・キャス9」によって導入された「クリスパー・キャス9」遺伝子から「クリスパー・キャス9」が作られて、その「クリスパー・キャス9」が、もう片方の正常でないWRN遺伝子をゲノム編集した結果、もう片方にも「クリスパー・キャス9」を入れ込むのです。
???
ついて来れます?
「クリスパー・キャス9」で「クリスパー・キャス9」を入れて、そんでもって、また「クリスパー・キャス9」を入れ込む。
きゃぁぁぁぁぁ!!
この「クリスパー・キャス9」の連鎖反応が、ある生物種で特定の遺伝子を猛烈なスピードで伝播させる原動力、すなわち「Driving Force」になるのです。
これが、「遺伝子ドライブ」の恐るべきパワーです。
これによって正常化したWRN遺伝子は、その子供にも受け継がれます。
もはや子孫にウェルナー症候群という病気が遺伝する心配はありません。
たとえ、正常でないWRN遺伝子を持つパートナーとの間に子供が出来ても、ゲノム編集を施された片方の親から受け継がれた「クリスパー・キャス9」遺伝子が、パートナー由来の正常でないWRN遺伝子を、生きた細胞の中で自動的に正常なWRN遺伝子に、次々と置き換えていくのです。「クリスパー・キャス9」遺伝子ともども。。。
キャーーーーーー!!
おっと、また取り乱してしまいました。失礼!
この処置を、出来るだけたくさんの正常でないWRN遺伝子を持つ受精卵に施し続ければ、ウェルナー症候群はどんどん減っていき、いずれ撲滅できます。
何十世代もかかりますが。。。
ただ、「クリスパー」と「キャス9」という余計な遺伝子を一生背負ったままです。
そして、この余計な遺伝子は、永々と子孫にまで伝えられるのです。
「クリスパー」と「キャス9」は、もともと細菌由来の遺伝子です。ヒトにはありません。
細菌の遺伝子を導入され、病気を克服した人類!
これで病気からは救われますが、これはもう、明らかに遺伝子改造人間ですよね。
別の生物種、細菌由来の遺伝子を導入された人間!
「ドクター・モローの島」や「ザ・フライ(ハエ男)」の上を行く超現実!!
キャ~~~~~~~!!(もう、えェってッ!)
こんなことが許されるのでしょうか?
私には分からない。。。。
あっ、実は、遺伝病を遺伝子ドライブで駆逐するのは、何十世代、何世紀もかかりますので、現実的ではありません。
それに、やはり、クリスパー・キャス9の遺伝子が、WRNが正常な人にも広まるので、やはりよろしくありません。
ただ、遺伝子ドライブの恐ろしさをお伝えするのに良い題材かな?っと思って例示しました。
6.実用化が近い「遺伝子ドライブ」の応用例
「遺伝子ドライブ」の応用で、もっとも実用化に近く、そして、人類の幸福に大きく貢献しそうなのが、マラリアの撲滅です。
いやいや、マラリア原虫にゲノム編集して、遺伝子ドライブで撲滅しようということではありません。
マラリアを媒介する蚊を、ゲノム編集でマラリアが寄生できないように改変し、遺伝子ドライブで、このマラリアに耐性を持つ蚊を一気に広めようというのです。
下の「Nature」の日本語記事にあるように、蚊を遺伝子改変することによって、マラリアが寄生できないように出来ることは、以前から分かっていました。
でも、それを効率よく自然界に広める方法がなかったのです。
この問題に、一気に解決の目処を与えたのが「クリスパー・キャス9」による「遺伝子ドライブ」です。
遺伝子ドライブでマラリアと闘う | Nature ダイジェスト | Nature Research
ゲノム編集してマラリアに耐性を持たせた蚊を、少しばかりマラリアの多い地域に放つだけ。
ライフサイクルの短い蚊のこと。うまくいけば、遺伝子ドライブによって、数年で野生型の蚊を、遺伝子改変した蚊に置き換えられると予測する研究者もいます。
この話は、冒頭でリンクした動画でも説明されていますね。
7.「クリスパー・キャス9」の最大の問題点
これまであえて触れませんでしたが、「クリスパー・キャス9」には、克服されるべき大きな欠点があります。
過去の2回の記事で、「クリスパー・キャス9」によるDNA切断の精度が極めて高いかのような印象を、読者の皆さんに与えてしまったのかもしれません。
実は、「クリスパー・キャス9」の精度、つまり切断する配列に関する正確度は、特にヒトへのゲノム編集の応用を考慮した場合、決して高いとは言えません。
端的に言うと、「クリスパー・キャス9」は、狙った遺伝子配列以外の場所でもDNAを切ってしまう可能性が結構高いのです。
これを「オフターゲット効果」と言います。
標的を正しく切る、これが「オンターゲット」。標的以外の、切ってはいけないところを切ってしまう、これが「オフターゲット」と言うわけです。
これは特に、標的DNAの配列と非常によく似た配列が別の場所にある場合、「クリスパー・キャス9」は、その場所を見誤って切ってしまう可能性があるということです。
クリスパーRNAの配列とマッチするかどうかで標的DNAを見つけるのですが、他の場所で似たDNAの配列があって、それが塩基一つか二つくらいの違いであると、切ってしまうことがあるのです。
「オフターゲット効果」の頻度はと言うと、細胞の種類や標的DNAの配列によって大きな差があり、一概には言えないようです。
もし、上述のウェルナー症候群の「遺伝子ドライブ」で、「クリスパー・キャス9」がWRN遺伝子以外の場所で、オフターゲット的にゲノムを切って、そこにある遺伝子を破壊するようなことがあれば、一体どうなるか?
それがもし、がん抑制遺伝子であったなら、ウェルナー症候群からは開放されますが、一方で、遺伝性のがんになる可能性が出てくるのです。
「遺伝子ドライブ」では、全ての細胞に「クリスパー・キャス9」が組み込まれているのですから、全ての細胞で、オフターゲット効果によって間違った遺伝子を全て切り終えるまで切り尽くします。
キャーーーー!!(もうよろしい!)
その結果は明らかですよね。
この人が子供を作ることによって遺伝性のがんが広まります!
現在、オフターゲット効果を減らすべく、コンピューターによるクリスパーRNAのデザイン・アルゴリズムの開発や、キャス9酵素の改良が盛んに行われています。
ヒトの受精卵でゲノム編集を「やっちまった」国もありますが、以上のような現在の技術的限界の側面からも、「クリスパー・キャス9」の精度が「十分安全」と言えるレベルまで改善されるまで、ヒトへの「クリスパー・キャス9」の応用は慎重に考えるべきです。
もちろん将来、ヒトの病気の治療法開発の為に研究を行うのであれば、ヒト受精卵で「オフターゲット」の効率を検証することも重要でしょう。
そういう意味では、ヒト受精卵を用いたゲノム編集の実験は、避けて通れないとも考えられます。
ヒト受精卵実験の問題をどう規制するのか?どこで線引きするのか?
とても難しい問題です。
8.「遺伝子ドライブ」がもたらす恐怖のシナリオ!
ゲノムに組み込まれた「クリスパー・キャス9」遺伝子によって、生物が「生きたまま」ゲノム編集され続ける「遺伝子ドライブ」!
キャァ・・・(ええかげん、やめとこか?)
考えただけで空恐ろしい!
使い方を誤れば、とんでもないことになります。
前回の記事で、遺伝子改変した「優生人類」の作出も可能な域に達しつつあると言いました。
もし、「オフターゲット効果」の問題が克服されたなら、ますますヒト受精卵へのゲノム編集をやりたくなる研究者・科学者がきっと現れるでしょう。
人間に遺伝子的に優れた形質を導入することによって生み出されるであろう「優生人類」
これに「クリスパー・キャス9」による「遺伝子ドライブ」を応用すると、世代を経るにしたがって、その優生人類を増やしていくことが出来るのは、上述したとおりです。
ヒト受精卵のゲノム編集研究を適切に規制しないと、どういうことになるか?
その最悪のシナリオのひとつとして、真剣に以下のような事態を憂慮する人もいます。
大金を払えば、自由に、望みのままに受精卵を操作し、デザイナー・ベイビーを作ってくれるサービスを提供する企業が現れるかもしれません。
こんなサービスが受けられるのは、一部の裕福層だけでしょう。
ゲノム編集によって生まれた金持ちの子供は頭がよく、スポーツも出来るのですから、もともと親が金持ちである上に、さらに自身の社会的地位も上がっていきます。
そして、「遺伝子ドライブ」によって、その子供も、さらにその子供も「優生人類」。一族郎党「優生人類」です。
社会では、一部の優生人類が幅を利かせ、富と権力を意のままにするかもしれません。
そして、遺伝子改変された「優生人類」と、改変されていない「野生型人類」に区別されるようになるかも知れません。
おいしい仕事、いいポジションはすべて優生人類に持って行かれ、スポーツ競技で上位につけるのも、すべて優生人類。
プロスポーツ選手やオリンピック選手、医者、弁護士、政治家はみ~んな優生人類!
ついには、遺伝子改変されていない「野生型人類」は、アパルトヘイトのように生活の場も隔離され、職業選択の自由も結婚の自由も奪われる。
完全に二極化した差別社会。
これまでのどんな差別社会よりも悲惨かもしれません。
なぜなら、「誰もが同じ人間」という意識の芽生えによって、これまで多くの差別問題が克服されて来ましたが、この未来世界では、その前提が成り立たない!
なぜなら、遺伝子改変された「優生人類」は野生型の人間、つまり遺伝子改変されていない普通の人間とは、明らかに同じではないのですから。。。この事実は誰も否定できない。
なんか、「銀河鉄道999」の世界を思い出しましたよ。「機械人間」。金持ちだけが得られる永遠の体。そして、虐げられる生身の人間たち。
いや、決してSF漫画の世界ではなく、真剣にこのような未来を憂える人が少なからずいるのです。
こんなことをさせないためには、私たちはどうすればいいのか?
「神の御技」か「悪魔の力」か!?
「遺伝子ドライブ」は、病気の根絶や、外来種の駆除による生態系の修復など、不可能を可能にする非常に強力な技術ではあるのです。
強力過ぎるが故に、問題は如何に正しく使うか!
我々人類は、大きな過ちを犯すことがないほど十分に賢明なのか?
いや、きっとそうであると信じたい。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。
大変励みになります。