目次:
1.「臨床検査」って?
2.検診で「要精密検査」。でも、面倒だから行きたくないんだけど。。。
3.死を覚悟した私の実体験
4.検診で「要精密検査」。でも、精密検査では異常なしってこと、結構あります
5.疑わしきは全員逮捕! 「スクリーニング検査」とは?
6.がんの宣告を恐れる人の心理
7.陽性? 陰性? スクリーニング検査で、どこで線引きするか?
次回予告:
超最先端の神の技術「ゲノム編集」から一転、皆さんにとって、とっても身近な、皆さんが病院で受ける「臨床検査」のお話をしましょう。病院で受ける検査。あれです。
「いつまでも健康に生きるために大切な事」
なんか久しぶりに、本ブログの初心に戻ったような感じですね。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
1. 「臨床検査」って?
体調に変化を感じたら病院に行きますよね。
お医者様は問診し、胸の音を聞き、喉や首のリンパ節の腫れを診、血圧を測ります。
それで診断がつかなければ、疑われる病気の当たりをつけ、その見立てが正しいかどうかを確かめるため必要な検査をします。
どんな病気なのか、どこがどの程度悪いのか、適した治療法は何か、などを判断するために必要な検査。
これが「臨床検査」です。
「臨床検査」は大きく2つに分類されます。
ひとつは「生理機能検査」と呼ばれ、患者の体を直接調べる検査で、例えば、レントゲンやCT、エコーなど、画像で診断するもの、胃カメラなどの内視鏡で直接目で見るもの、心電図や脳波など、物理的データで示されるものなどがあります。
もうひとつは、「検体検査」と言って、患者の体ではなく、患者から採取された「検体」を検査する方法です。検体としてポピュラーなのは断然、血液と尿ですね。
皆さんも健康診断に行けば、尿と血液は必ず採られるでしょう?
他に検体となるのは、喀痰(かくたん)、鼻水、便、唾液などは採取が容易なので、使われることが多いです。
あまり多くはありませんが、疑われる病気に応じて採取される検体に、脳髄液(これは採取には、かなりの危険が伴います)、膣ぬぐい液(性感染症など)、肺胞洗浄液(気道感染症など)などがあります。
疑われる病気に応じて、様々なものが「検体」として人体から採取され、検査されます。
2.検診で「要精密検査」。でも、面倒だから行きたくないんだけど。。。
とある地方自治体が実施したアンケートで、がん検診を受けない人たちに、受けない理由を聞きました。
回答の上位に来たのは、1.面倒、2.健康に自信あり(根拠のない自信だなぁ。アホだよ、この人たち)、3.忙しい、でした。
まあ、「自分に限っては大丈夫」とか、「病気になったら、その時はその時」くらいに思っているのでしょう。
こういう人たちは、自分の健康問題に関して、間違いなく意識が薄いですね。
これらに次ぐ回答は、なんと「異常が見つかるのが怖いから」でした。
病気かも知れないけれども、それでも知るのが怖い。それなら知らない方が幸せ。
少なくとも、「否応なく、病気の恐怖を思い知らされるまでの間は」という条件付きですがね。
でも、私には、こういう人たちの気持ちはよ~く分かります。
いや、分かるような気がします。
なぜなら、私にも同じような経験がありますから。
3.死を覚悟した私の実体験
過去の本ブログでも書きましたが、もう一度お話しますね。
私の長女も今は大学3年生。ということは、もう20年以上も前の話です。
私たちの第一子である長女が妻のお腹にいるときでした。
会社の検診を受けたのですが、人事部から「もう一度検査を受けるように」と言われました。
理由を聞きましたが「知らない」と言います。とにかくもう一度、病院に行くようにとのことです。
怪訝に思いながら病院に行きました。
そこで、お医者様から言われたのは、血液細胞の検査で「異形細胞が認められる」ということでした。
形の異常な血液細胞
当時、臨床診断薬メーカーの研究開発部門に務めていた私には、そのことが意味することは至極明白でした。
白血病の疑いです。
もう一度採血されました。
血液細胞の検査というのは、血液検体から血球細胞を分離して、固定処理や染色処理を施して標本を作り、その後に顕微鏡下で資格を持った検査技師が、直接目で見て判定します。
ですので、結果が出るまで時間がかかるのです。
ただでさえ時間がかかる検査なのに、その時はゴールデンウィーク前で、検査会社もお休みです。
結果が出るのはGWの後です。
それまでの約2週間。せっかくのGWというのに、私は陰々滅々たる思いで過ごさねばなりませんでした。
「ああ、この子は父親の顔も知らないテテなし子になってしまうのか」と、まだ生まれてもいない娘を不憫に思うと同時に、自身の死に対する恐怖と戦っていました。
世間がGWに浮かれていると言うのに、私は常にどんよりとして気が晴れず。晴れるはずもありませんが。。。
そして、検査結果を聞きに行く日がやってきました。
もし、なんともなかったのなら、紙切れ一枚で知らせてくればいいこと。検査の結果は「陰性」だったと。
でも、会社は結果を聞きに病院に行けと言います。
直接、先生が私に結果を通達する?
いや、それは間違いなく悪い結果だ。でなかったら、紙切れで知らせればいいはず。
私は死を覚悟しました。
覚悟したと言っても、不安でいっぱい。病院に向かう私の歩は、地を踏みしめている感覚がなく、目の前の風景はグラグラ、ユラユラと揺れていました。
そして、待合室で呼ばれて、診察室に入るよう言われたとき。
気を失いそうで、自分の足で歩いて診察室のドアまで行けるのかどうか。行けたとしてもドアをノックして入室できるのだろうかと思うほどの心の動揺。
果たして先生の口から出た言葉は、、、
「陰性」
前回の結果は「アーチファクト(人為的な要因による誤判定)」だったろうとのことでした。
私は幸いにも、これまで大きな病気をしたことがありません。
病気の経験がない人には、なかなか病気で苦しむ人の気持ちは分からないのだろうと思います。
でも、この経験によって、短い期間でしたが、私は病気への不安、死に対する恐怖を味わいました。
とても得難い経験でした。
もうずいぶん前の事ではありますが、あの時の気持ちを忘れないよう、時々思い返しては、病気の人の気持ちを考えるようにしています。
4.検診で「要精密検査」。でも、精密検査では異常なしってこと、結構あります
上記の自治体のアンケートは、がん検診を受けなかった人を対象として、なぜ検診を受けないのかを聞いた結果ですが、検診や健診(あっ、「検診」と「健診」の違いについては別の機会があればお話ししますが、今は「大差ない」ものとお考えいただいて差し支えないでしょう)を受けて「要精密検査」という結果を受けても、精密検査を受けない人も結構いるようです。
その理由はというと、上のアンケート結果と似たようなものでしょう。
「がんを宣告されるのが怖い」
分かります。すっごく分かります。
一方で、まったく別の理由によって、精密検査を「受けに行かなくなった」人もいるのではないでしょうか。
というのも、検診(健診)で何かの検査項目が陽性になり、忙しいなか、せっかく休みを取って精密検査を受けに行っってやったのにも関わらず、結果は「異常なし」!
「なんやて!?ふざけんな!!」
そんな経験をした人はたくさんいるでしょう。
異常がなかったのだから、喜ばしいことなのですが、忙しい中、せっかく精密検査に「行ってやった」のに、異常なしとは何事か!!
そんなら、最初から「陽性」とか、「要精密検査」とか言うな!!と言うわけです。
そして、何度かそんなことがあると、「どうせ今回も、何の異常もないんだろ?」ってなオオカミ少年状態になり、以後、一切、精密検査に行かなくなるのです。
私もありました。
便潜血検査で「陽性」が出て、「要精密検査」。大腸内視鏡検査を受けましたよ。
朝から夕方近くまでつぶれてしまいますね。
結果は異状なし。
先生からは、「きれいな大腸してますね」とお褒めの言葉を頂きました。(ウフッ)❤
たぶん、精密検査で異常がなかった人には、誰にでもそう言ってるんじゃないかと思いますね。
中には、「異常ないのなら、初めから精密検査なんかに呼びつけるな! 忙しんだ、こちとらはよ!!」と逆切れする人もいるかもしれないので、検査したお医者さんとしても、その予防線を張っているのかもしれません。
それはともかく、検診(健診)で「陽性」、「要精密検査」と言われて、精密検査を受けた結果は「異常なし」。
なんでこんなことが普通に頻繁に起こるのでしょうか?
それは、検診(健診)が、疑わしい人を出来る限り見逃さず拾い上げることを目的とした「スクリーニング検査」だからです。
5.疑わしきは全員逮捕! 「スクリーニング検査」とは?
「スクリーニング検査」とは、ネットの「コトバンク」によると、「大勢の人の中から『その病気の疑いのある人』を早く発見し、早期の適切な治療や病気のコントロールにつなげるための検査です。多くの場合、結果は『疑わしい』というもので、さらに詳しい検査をする必要があります。」
疑わしい人を残らず拾い上げて、更なる精密検査で病気の有る無しを確定する。それが「スクリーニング検査」
だから、グレーの人もすべて逮捕しておき、その後のさらなる詳細な捜査で白黒をハッキリさせるわけです。
それで白と分かれば、「きれいな大腸ですね」とご機嫌取りの言葉をかけられて、晴れて無罪確定となるわけですな。(笑)
検診(健診)で陽性となっても、精密検査の後、異常なしと分かる人は結構いる訳です。
それでは、労多くして実少ないような気もします。
精密検査をするお医者さんや技師さんにしても大変だし、第一、病気でもない多くの人に費用のかかる精密検査を実施して、医療費の無駄使いのようにも思えます。
だいたい、そもそもの話として、「検診(健診)の検査一発で、病気か病気でないかがハッキリ分かればいいじゃないか!!」と申される御仁も多いででしょう。
でも、検診(健診)では、そうもいかないのです。
6.がんの宣告を恐れる人の心理
下のリンクのサイトでは、大腸がん検診である「便潜血検査」で陽性と出ても、精密検査を受けなかった人にアンケートを取り、精密検査を受けなかった理由について聞き取りをしています。
多かった理由は、「忙しい」。次いで「痔があるから」。
そう、便潜血検査は、それが大腸がんによる出血なのか、痔によるものなのか、一切識別できません。
私も小さな「ぢ主」ですが、やはり便潜血検査で陽性と出て、精密検査を受けろと言われたときに「どうせ痔のせいやろ」と思うと、あの苦痛を伴う大腸内視鏡検査を受けるのは、非常におっくうでしたね。
だって、あの検査って、胃カメラと同様、お医者さんの腕によって、楽と苦が大きく分かれるし。。。
そして、次いで多い理由が、やはり「大腸がんと宣告されるのが怖い」というものです。
上のリンクのサイトにもあるように、「父親が大腸がんで亡くなっているから、自分も多分大腸がんだろう。だから病院へ行くのが怖い」と言う人がいたとか。
この気持ちは分からないでもありません。
でも、だからこそ、貴方がリスクの高い人だからこそ、早期発見が何よりも重要で、そのための検診なのです。
今この恐怖を乗り越え、真の勇気をふり絞らないと、この人に待っているのは、「確実なる死の恐怖」ってこともあり得ます。
「あの時、勇気を出して精密検査に行っていれば、、、」なんて後悔しても、後の祭りなんですよ。
知るのが怖いのは分かります。
私は、実際にがんになったことはありませんし、だからもちろん、がんを宣告された経験もありません。
でも、上記の体験をした私には、少しは分かるような気はします。
再検査の結果を聞きに行った時の私の混乱ぶりと言ったら、そう、歩いていても、まともに歩いている感覚すらなかったのですから。。。
自身を制御することすら難しかった。。。
そう。私が再検査の結果を聞きに病院に行った時の事。20年以上たった今でも鮮明に思い出せます。
なんとか診察室のドアをノックして入室し、先生の前に座って、先生の口元だけを見ていました。とても先生の目なんて見られませんでしたよ。もう、恐ろしくって。。。
そして、先生の口からどんな言葉が発せられるのか?
もう、心臓はバクバクです。
死の宣告の確率はどのくらいか? 50/50? コイントスのようなもの?
自分の運命はさいの目に委ねるしかない?
すべては神の思し召し? すべては天命?
よく「走馬燈」とか言いますが、そのようなイメージが、本当に走馬燈のようにグルグルと私の頭のなかを駆け巡っていたのです。
そして、「アーチファクトだった」と聞いた瞬間に私の心を包み込んだ、言いようもなく大きな安堵感。
7.陽性? 陰性? スクリーニング検査で、どこで線引きするか?
検診(健診)とはスクリーニング検査です。
疑わしい人を出来るだけ多く炙り出すのが、その最大の目的です。
でもですね。
そのために、ちょっとしたことで嫌疑をかけると、誰でも彼でも「逮捕」ってことになりますよね。
とりあえず逮捕して、後でよく調べる。
それでは、後のご詮議が大変です。
それでもやはり、「(確証はないけれど)疑わしい」と言う者を拾い上げ、とりあえず「逮捕」するのが、検診(健診)によるスクリーニング検査の基本なのです。
厳しく逮捕すれば、精密検査する人が増えて、検査する側は大変です。
じゃあ、逮捕するかしないか、どこで線引きすればいいのでしょうか?
逆に取り締まりを緩くすれば、再検査は減りますが、「黒」の人、つまり、本当に病気の疑いがある人を多く見逃すかもしれません。
厳しくしても、緩くしても「一長一短」
そこのところが、スクリーニング検査の悩ましいところなのです。
次回以降、実際の検査項目、例えば腫瘍マーカーを例に挙げて、その辺りを具体的にお話します。
次回予告:
-
スクリーニング検査で疑わしきを全て捕まえると、一体どうなるのか?
-
なぜ、一回の検診(健診)で病気を確定できないのか?
-
検査で、病気の人を正しく病気と判定する確率「感度」、病気でない人を正しく病気ではないと判定する確率「特異度」とは?
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。
大変励みになります。