今月初めは「これでも師走か?」というような陽気が続きましたが、やっと冬らしくなって来ましたね。
薄手の掛け布団で寝ていたら、見事に風邪をひいてしまいました。皆さんも体調管理にはくれぐれもお気をつけ下さい。
でも、なんで布団かけないで寝ると風邪ひくんだろ。布団には感染防御機構が備わっているの、かな?(笑)
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かつて精神疾患は、「怠けている」「甘えている」「気合が足りない」とか言われて、かかったことのない人には、なかなか理解してもらえませんでした。
現在でも、「心の病気」とか言って、体の病気とは何か別物のように捉えられている傾向があって、いまだにそれが、一部で無理解の原因になっているように思います。
「心の病気」と「体の病気」は、まったく違うものなのでしょうか?
現在では、ドーパミンやセロトニンなどのモノアミン系神経伝達物質のバランス異常が多くの精神疾患の原因になっていることが分かっており、このことが明らかに、精神疾患が生理的機能異常による「病気」であることを示しています。
モノアミン系神経伝達物質が少なくなると、うつなどの神経疾患の原因になります。
一方で近年、これらの物質が過剰になると、攻撃性が増し、犯罪に走りやすくなることも指摘されています。(過去ブログご参照)
さて、過去ブログでお話したとおり、我々の体には「神経系」「内分泌系」「免疫系」という3つの系があり、これらが相互にバランスを取り合って身体機能の恒常性を維持(ホメオスタシス)しています。
この3つの系のひとつが不調に陥ると、それが他の系にも悪影響を及ぼして恒常性が破綻し、病気になります。
神経伝達物質というと「神経系」ですね。
神経系のバランスが崩れて精神疾患にかかるのはもっともなこと。
でも、神経疾患が神経系だけの問題かというと、そうではありません。
たとえば、ドーパミンやセロトニンの元になる前駆物質の大半は腸内細菌が作っています。
腸内細菌叢の変化が性格にまで影響していることは以前のブログでお話しました。
腸内細菌叢のバランスは腸管免疫と密接な関係にあります。
免疫系が不調になると腸内細菌叢も乱れ、それが心の調子にも大きな影響を与えているわけです。
心の病気は神経系だけの問題ではないのですね。
近年、うつなどの精神疾患の人の血中で、免疫系の伝達物質であるサイトカインのバランスが崩れていることが分かって来ました。
なかでも炎症性サイトカインの代表格であるインターロイキン6(IL-6)が異常に増えており、IL-6を阻害する方法がうつの治療に有効かもしれないと言うのです。
IL-6は多くの炎症性疾患で増加が認められ、強い炎症反応の引き金となって、いろいろな悪さをしています。
例えば関節リウマチ
そこで、IL-6を抑える薬が登場しました。抗体医薬品です。
本ブログの熱心な読者の方ならご存知かと思いますが、悪さをする物質を抑えるのに抗体医薬品が多く使われています。
(先だってノーベル賞を受賞した本庶先生の免疫チェックポイント阻害剤も抗体医薬品です)
事実、抗IL-6抗体は関節リウマチ対して高い効果を示します。
繰り返しになりますが、「神経系」「内分泌系」「免疫系」は互いに連携しながら体の恒常性を維持しています。
その連携の不調が原因となって様々な生体内物質のバランスが変化し、その影響が臓器や組織に現れた結果が、いわゆる「体の病気」の状態です。
でも、ここまで述べてきたように、多くの精神疾患においても生体内物質のバランスが崩れており、それが脳に影響を及ぼして多くの精神疾患の原因となっているのです。
体内の様々な物質のバランスの変化の影響が、他の臓器や組織ではなく、脳を含む中枢神経系に及んだ結果が精神疾患なのであり、心と体の病気の大元の原因が共通していることが多々あるのだということが分かって来ました。
こう考えると、「心の病気」と「体の病気」とを分けて考えることに、あまり意味がないように思えます。
そして、誰でも体の病気になり得るように、誰もが心の病気になり得るということなのです。
近い将来、リウマチの薬が精神疾患の治療に使われたりするかもしれませんね。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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