Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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046【関節リウマチ】自己免疫疾患(その1)

目次:

① 人類最大の自己免疫疾患

② リウマチになる仕組み

③ リウマチの治療薬

④ リウマチへの効果――根拠はまだないが、βグルカンは期待できるはず

 

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① 人類最大の自己免疫疾患

 

関節リウマチ(以下「リウマチ」と言います)は、人類最大の自己免疫疾患です。

平成23年度の報告では、わが国のリウマチ患者は70~80万人と推計されており、毎年1万5千人もの人が新たに発症しています。

 

リウマチは、すぐに生命にかかわるような病気ではありませんので、軽視されがちですが、長年にわたって炎症がくすぶり続け、徐々に関節の痛みと腫れ、変形が強くなり、やがては関節の線維化、癒着が起こって曲がらなくなり、日常生活に大いに支障を来たすようになります。

男性に対して4倍と、なぜか女性に圧倒的に多く(その理由を私は知りません。どなたかご存知の方、是非お教え下さい)、それも仕事・家事・育児に忙しい30~50代で発病することが多いのですから大変です。

 

しかし近年、リウマチは早期発見・早期治療によって予後(病気の経過や結末)が著しく改善することが分かってきました。

いい薬も出て来ていますが、薬に頼りっきりになるのではなく、やはり、リウマチの原因を知ることで、自身で予防や治療の促進に努めるべきです。

 

② リウマチになる仕組み

 

自己免疫疾患であるリウマチ、標的となるのは自己の関節の細胞です。

抗体やT細胞によって関節の細胞が攻撃されると、滑膜(かつまく)細胞と言う細胞が異常増殖を始め、増えた滑膜細胞は大量の炎症性サイトカインを放出するようになり、毎度お馴染み「慢性炎症」が引き起こされます。

 

関節には関節液があり、関節の動きをスムーズにしています。潤滑油のような役割ですね。

滑膜細胞は栄養源を血管からではなく、関節液に頼っていますので、増殖した滑膜細胞が関節液を食い尽くしていきます。

潤滑油が足りなくなった関節が動きづらくなり、痛みが生じるのも無理からぬことです。

 

更に滑膜細胞が産生する炎症性サイトカインは、滑膜細胞自分自身に作用して、軟骨を破壊するMMPというタンパク質を作らせ、軟骨をゆっくりと崩壊させていきます。

炎症性サイトカインの中でも、TNF-α(ティーエヌエフアルファ)IL-6(アイエルシックス)は、「破骨細胞」を活性化し、骨組織の破壊に拍車をかけます。

 

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このように、ひとつのこと(自己免疫反応)をキッカケに、次から次へと悪いことばかりが連鎖的に起こっていくのです。

炎症が長引くことで骨の破壊も長期に継続し、長い時間を経て痛みや変形が徐々に進行していきます。

 

因みに、破骨細胞とは、その名の通り骨を破壊(骨吸収)する細胞です。

なんで、そんな細胞がいるのかというと、骨も皮膚や小腸粘膜などと同じように、細胞が絶えず入れ替わっています(この現象を「ターンオーバー」と言います)。

つまり、常に細胞の「破壊と再生」が行われている訳ですね。

そのターンオーバーのために、骨細胞を破壊する破骨細胞が必要なのです。

その細胞が、リウマチでは暴走するのですね。

 

③ リウマチの治療薬

 

さて、上記のような骨破壊の進行の仕組みが解っていなかったときには、痛みや腫れを抑えるなどの対症療法しかできず、病気の進行そのものを止めることができませんでした。

しかし、今では、メトトレキサーという薬の登場で、骨破壊に関わっている酵素の産生を阻害することで、病気の進行を抑えることができるようになりました。

また、この薬は、リウマチのごく初期には予防にも有効なことが分ってきています。

現在では、メトトレキサートはリウマチ治療の第一選択薬となっています。

 

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メトトレキサートの構造式

 

リウマチの重症化に関わっているものとして、上述の炎症性サイトカイン、TNF-αとIL-6があります。

近年、この二つのサイトカインに対する生物学的製剤(抗体医薬など)が、かなり良い効果を上げています。

ただ、炎症性サイトカインを抑える薬と言うことは、一種の免疫抑制剤であると言えますので、細菌・真菌・ウイルスの感染症に注意が必要です。

それに、生物学的製剤は高額ですから、医療費削減を声高に唱える私としては、これを使うようになる前に何とかしたいところです。

 

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④ リウマチへの効果――根拠はまだないが、βグルカンは期待できるはず

 

リウマチの根源的な原因は自己免疫反応です。

ですから、生物学的製剤で自己免疫反応の結果として誘導されているサイトカインを抑えたとしても、本当の原因は残ったままです。

元をたたかなければなりません。

とは言っても、元から持っている自己反応性免疫細胞を除くことはできません。

では、どうするか?

 

思い出して下さい。

ひとつの有効な方法は、免疫のバランスを調整することで、制御性T細胞(Treg)を元気にするのです。

免疫のバランス調整と言うとβグルカンでしょう。

 

βグルカンでリウマチが劇的に良くなったという人は結構います。

しかし、しかしです。βグルカンが「リウマチに効く」という論文は、実は非常に少ないので、私もあまり声高には言えないのです。

「治った」、「良くなった」と言う人の「体験談」では、根拠とは言えません。

 

βグルカンは、糖尿病には確かに効きます。

1型糖尿病モデルマウスには顕著に効きます。

理由として、自己免疫疾患が原因で起こるタイプの1型糖尿病で、βグルカンがTregを誘導していることが十分に考えられます。

ただ、まだそのことを証明した論文はありません。

 

ですから、断言はできませんが、リウマチでも1型糖尿病と同様に、βグルカンによってTregを誘導することにより、自己免疫反応を抑えてくれることが期待できます。

 

私たちは、ヒトの自己免疫疾患やアレルギー性疾患において、βグルカンがTregを誘導するのかどうかに非常に高い関心を持っています。

今、大学との共同研究にて、このことを確かめようと、実験を計画中です。

 

βグルカンがTregを誘導、活性化することが証明されれば、自己免疫疾患やアレルギー性疾患に悩む多くの人たちへの福音となるはずです。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

今回は実にまじめにやったぞ!(笑)

 

 

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