目次:
① なぜわが子はかわいいのか?
② 昨日までの「愛情」は何処へ行った? ある日突然豹変するお母さん熊
③ リチャード・ドーキンスの登場。「利己的遺伝子」とは?
④ 再度「愛情」と「浮気」について ~「利己的遺伝子」理論から考えよう~
⑤ 我われ人間は、知性と理性によって本能をも克服した唯一の存在
今回もまた、健康の話でも病気の話でも御座いませんので、号外でお送りします。
生命とは何なのか? 生物はなぜ何のために存在するのか? そして、多くの生物の中で、果たして人間は特別な存在と言えるのか?
てなこと、考えてみたことがおありでしょうか?
こういう深遠で根源的なテーマについて考えを巡らせることができる生物は、地球上で人間だけです。
このテーマに対しては、生物学的に考えることもできますし、哲学的に考える人、宗教的に考える人もいることでしょう。
考え方は人それぞれであり、ひとつの明確な「正解」などはないものと思います。
重要なのは、正解を求めることではなく、「考える」という行為そのものだと思うのです。
人間は「考える葦」なのですから。。。
私が今回お話しするのは、生命について非常に「ドライ」な捉え方をしたもので、こういう考え方に反感を持たれる方もおられるでしょう。
それは別に構いません。
一見突飛な、こういう考え方でも生物の行動をうまく説明できるということ、そして、どのような考え方であろうとも、考えるという行為を行うことで、「我々」とは何か?という哲学的な問いに対して、「回答」とまではいかなくとも、人として生まれた私たちは「どう振る舞うべきか」について、ひとつの糸口くらいはつかめると思うのです。
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① なぜわが子はかわいいのか?
なぜわが子はかわいいのか?
「そんなの当たり前じゃないか!」っておっしゃいますよね。きっと。
じゃあ、なんで当たり前って言いきれるのか、その根拠は?って聞かれると明確に答えられるでしょうか?
「そりゃあ、自分の子だからだよ」
答えになっていませんね(笑)
なぜ男は浮気するのか?
私は、もしわが子がかわいいと思うのが当たり前だと言うのならば、「男が浮気するのも、生物として当たり前」と答えます。
「はぁ? 何言ってんの??」
② 昨日までの「愛情」は何処へ行った? ある日突然豹変するお母さん熊
子供を出産して、子育てするヒグマのお母さんを追ったドキュメンタリー番組をご覧になられたことのある方、多くいらっしゃると思います。
お母さん熊がわが子を慈しみ、大事に育てる様子が描かれていました。
お母さん熊の子供に対する「愛情」は非常に深く、我われ人間が、子連れの母ヒグマに遭遇した場合などは非常に危険だそうです。
そしてまた、貴方はこんなシーンも見られたのではないでしょうか?
子育てして2年ほども経ったある日、お母さん熊が突然、人が(クマが)変わったように子熊に牙をむき、唸りを上げて威嚇して、追い払おうとするのです。
「母ちゃん、いったいどうしたの⁉︎」
泣きすがる子熊たちには、何が何だか分かりません。
しかし、お母さん熊は容赦しません。
このお母さん熊の豹変ぶりは一体何なのか?
昨日までの子熊に対する深い「愛情」は何処に行ったのか?
一見異常にも思えるこの行動。メスのヒグマの至って正常な行動です。
なぜなら、すべての母熊が、誰に教えられた訳でもないのに、全て同じ行動を取るのですから。
つまり、この行動はヒグマの本能的な行動であり、本能的な行動はつまり、遺伝子にプログラムされた行動であり、遺伝子のプログラムに命じられて起こすものです。
一見奇妙に思える、様々な動物の本能的な行動。
それらはすべて、遺伝子の命じるがままに突き動かされた結果に他なりません。
③ リチャード・ドーキンスの登場。「利己的遺伝子」とは?
30年余りも前になりますが、英国の動物行動学者リチャード・ドーキンスが唱えた「利己的遺伝子(The Selfish-Gene)」の理論が世界中で話題になり、日本でも訳本「利己的な遺伝子」がかなり売れました。
ドーキンスのこの理論によると、
1.生命の本体は遺伝子であり、我々生物の体は遺伝子の単なる「乗り物」に過ぎない
2.遺伝子は己の「目的」を果たすために、あくまでも「利己的(自分勝手)」に振る舞う
3.その「目的」とは、自分の遺伝子の複製を「できる限り多く」後世に残すことである
まあ、こんな内容だったかと思います。
この理論は科学的に証明されたものでもなんでもなく、「こういう風に考えることもできるんじゃないの?」とか「こう考えると、いろいろな動物の一見奇妙な行動も、うまく説明できるんじゃないの?」という程度のものに過ぎません。
ドーキンス自身、この理論は「科学上の学説と言うよりも、サイエンス・フィクション(SF)のように思ってもらいたい」と言っているくらいです。
しかし、この彼の理論は多くの知的な人の心をくすぐりました。
実際彼が書いた多くの「SF本」がベストセラーになり、多くの印税を得られたようです。
(かく言う私も、見事に1冊買わされましたよ(笑))
④ 再度「愛情」と「浮気」について ~「利己的遺伝子」理論から考えよう~
お母さん熊の愛情は何処へ行ってしまったのでしょうか?
あの愛情は「ウソ」だったのか、あるいは「見せかけ」だったのでしょうか?
遺伝子に命じられた本能的な行動とは言え、なんであんな風に急に変われるのか?
われわれ人間には理解不能ですよね。
母熊が子供を追い払うのは、次の繁殖に備えるためです。
母熊の利己的遺伝子の目的は、子どもたちを育てて一人前になってもらうことで、自分の遺伝子を残すことです。
その子熊が大人になって子供を作ってくれれば、自分の遺伝子はさらに後世まで残り続けることができます。
「ここまで育ったら、もう大丈夫。あとは独り立ちして、自分で生きて行きなさい。お母さんは、また子どもを産まないといけないので、貴方たちとはここで別れなければならないの」
こう考えると、母熊の気持ちも理解できるでしょうか。
でも、利己的遺伝子はあくまでもドライです。
「子育てはこれにて終了! ハイッ、次行こッ!」です。
ヒグマと同じように、人間の母親が子どもに愛情を注ぐのは、利己的遺伝子的には「当然」のことです。
お腹を痛めて生んだわが子を大事に育んでいくことは、すなわち自分の遺伝子を残すことに他なりません。
それこそ、利己的遺伝子の究極にして唯一の目的なのですから。。。
人間の女性が一生の間に生める子供の数には限りがあります。
ですから、子ども一人ひとりを大事に愛情注いで育てるのが良策なのです。
わが子に愛情を注ぐのは当たり前? そう、利己的遺伝子に愛情を注ぐように命じられた結果なのですから、そう振る舞うのが「当たり前」なのです。
そして、それが最善の策です。
一方、男はと言うと、、、これが情けない(トホホ)
女性と違い、男はいくらでも自分の遺伝子のタネを蒔くことができます。
その数に限りはありません。(精力と財力次第ですが、、、(失笑))
だったら、いくらでも外でオンナ作って、いくらでもタネを蒔くべきです。
なので、あっちこっちに作らせた子ども一人ひとりの子育てなんかしてられません。
「『認知しろ』って? いちいち知るかっ! うっせー!」
こんな「人でなし」もいますよね。(ホンマ情けない。。。)
でも許してやって下さい。
彼はただ、「利己的遺伝子」の命じるがままに突き動かされているだけなのですから。。。
なに? 許せない?
そりゃそうです^_^
利己的遺伝子はあくまでも自分勝手です。
自分の遺伝子を残すためなら、他者がどうなろうと知ったこっちゃありません。
そう、男はたくさん子供を産ませておいて、後は生ませたオンナに任せっきりのほったらかしの方が、自分の遺伝子を「できるだけたくさん」残すという点では圧倒的に効率がいいのです。
このオトコとオンナの行動の違い。
すべて利己的遺伝子の「戦略」の違いによるものです。
ヒグマも、オスは子育てには全く参加しません。
メスと交尾したら、それっきりです。
つまりヒグマのオスは、生涯を通じてわが子の顔を全く知りませんし、また知る必要などないのです。
利己的遺伝子的には、それでまったく「No問題」なのです。
ヒグマのオスは、翌年の繁殖期には、また別のメスと交尾できます。
ですから、子育てに参加することで時間を浪費するようなことをしない方が、子孫を残す上で戦略的に有利なのです。
でも、メスは出産と2年の子育てがありますから、3年おきにしか繁殖できないのです。
ですからメスは、子供が独り立ちするまで大事に育てる必要があるのです。
⑤ 我われ人間は、知性と理性によって本能をも克服した唯一の存在
利己的遺伝子の支配力は非常に強力で、ヒグマのような高等哺乳類ですら、遺伝子の意のままに行動を操られます。
ましてや、昆虫などの原始的な動物になると、自己の意思や感情などは一切なく、遺伝子の命じるがままに突き動かされる、単なるマシーンのようなものです。
その最たる例が、アリやハチなどの社会性昆虫です。
しかし、我われ人間には知性と理性があり、利己的遺伝子の命令にも抗って子供を育て、パートナーへの忠心を尽くし、他者への献身的な行動ができる地球上で唯一無二の存在です。
ここんところが、人間が他の生物と違う点です。
他のほとんどすべての生物が抗うことのできない「利己的遺伝子」の強力な支配力をも打ち砕く「知性と理性」を獲得した我われ人類は、道徳心と倫理観を重んじ、「利己的」ではなく、他人のため、社会のために意義のある「利他的」な行動を心がけなければならないと思うのです。
でなければ、「人」として生まれてきた甲斐がないというものです。
今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。
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