日経バイオテクオンライン Vol.3168によると、2019年5月24日に米食品医薬品局(FDA)はスイスのノバルティス社の遺伝子治療薬Zolgensmaを承認しました。
その薬価は、な、な、な、なんと212万5000米ドル(1米ドル=110円で2億3375万円)!!
いやぁ、ブラック・ジャックもびっくらこですよ、ホントに!
この薬、脊髄性筋萎縮症(SMA)という小児の希少疾患に対して、1回の治療で高い効果があるというものです。
SMAは生まれつきある遺伝子に変異があるために起きる遺伝病で、我が国では出生10万人当たり1~2人、推定患者数約1000人という比較的稀な病気です。
出生後まもなくから6ヶ月くらいまでに発症することが多く、歩くことはおろか、座ることもできず、人工呼吸器無しでは2歳まで生きられないという、かなり悲惨な病気です。
私が遺伝病について考えるとき、生まれつきそういう重い障害をもった子を生んでしまった親の苦悩はいかばかりかと思うのです。
もし、それが治るというのなら、ブラック・ジャックにだって、悪魔にだって魂を売ってもいいとすら、親なら思うのではないでしょうか。
SMAでは、既存の治療薬では長年にわたって投与を受けなければならず、10年間治療を続けたとすると、治療費は400万ドル以上かかるとされていました。
ノバルティス社幹部によると、「Zolgensmaは、その半分の費用で済む。効果が高いので費用対効果は十分にある!」と言います。
最終の臨床試験である第III相試験では、21人の患者のうち19人で副作用も無く、効果があった(生存し続けた)といいます。
また、中には立って歩行できるまで回復した子もいたとか。
希少疾患の治療薬というのは、臨床試験をしようにも患者の数が少ないため、精度の高い評価をするのが難しく、また、めでたく承認されたとしても数が売れないわけです。
ですから、単価を高くしないと製薬メーカーの開発モチベーションは上がらないわけなんですね。
今回の米国での薬価決定は、その点にも十分配慮がなされたものと思われます。
我が国においては、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」が高額の薬価(平均約3800万円/年)で話題になりましたが、その後3回にわたって薬価が見直され、現在では当初の3割以下の約1090万円まで引き下げられました。
このような我が国の行政の対応に対して、製薬メーカーの開発モチベーションの低下を懸念する声も多く聞かれました。
それにしても、米国で人一人の命として2億4千万円の高値がついた薬。我が国ではどうなるのか?
誰が、この治療費を払うのか?
我が国の健康保険と言うと3割負担が一般的ですね。
だったら、この治療を受けるには7200万円を個人で支払わないといけないのか!?
いえ、我が国には高額医療制度があるので(私は制度には詳しくありませんが)、せいぜい数十万円程度でしょう。
むしろ、入院費とか、その他の保険の効かない費用の方が高いくらいだと思いますよ。(間違っていたら、ご指摘お願いします)
Zolgensmaは日本でも承認申請されていますが、まだ承認には至っていません。
承認すると、国は90日以内に薬価を決めなければいけません。
高すぎると国民から驚きと不安の声が上がる、安すぎると製薬メーカーが不満を言う。
一度、薬価が決められると、今後出てくる新薬の薬価決定のひとつの基準になるので、厚労省の審査部会も非常に心を砕くところです。
とにもかくにも、医療の目覚しい進歩のおかげで、助からなかった人が多く助かるようになりました。
今後、その命はほとんどが税金で支えられていくことになるでしょう。
私もアラシク(around sixty)。
遠からず高齢者の仲間入りする身を思えば、若い人に過度の負担をかけないように心がけたいと思うのです。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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