Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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069【日本人女性の半数以上はマンモグラフィが役に立たない!? 「高濃度乳房」とは?】がん(その10)

目次:

1.乳がんは罹りやすいが治りやすい

2.乳がんとは?

3.「高濃度乳房」とは? 日本人女性の半数以上はマンモグラフィが役に立たない!?

4.「高濃度乳房」かもしれないと思う人は、直接聞いてみよう!

 

がんシリーズを始めた当初、「10回はやって見せるぜ!」と豪語したものの、9回で息切れして以来、随分と日が経ってしまいました。

takyamamoto.hatenablog.com

 

久しぶりのがんシリーズ10回目です。

 

女性特有の病気だからか、たまたま勉強する機会がなかったからなのか、自分でもよく分かりませんが、私は、がんの中でも乳がんには詳しくないのでした。

恐らく、ホルモンの影響を受けて発症するという、がんの中でもユニークで、他のがんの発症メカニズムを当てはめてもうまく説明できないので、私にはとっつきにくかったのかもしれません。

 

でも最近、たまたま乳がんについて勉強する機会があったので、せっかくですので私が勉強したことについて書いてみたいと思います。

 

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1.乳がんは罹りやすいが治りやすい

 

国立がん研究センターのデータによると、2014年の乳がん罹患率乳がんに罹った人の割合)は、女性のがんの部位別で第1位でした。

でも、2012年には、がんの部位別の死亡率で1位であったのが、2014年には5位に大きく後退しており、実際に死亡数も減少しています。

このことは、乳がんの早期発見と治療法の進歩によるものと思われます。

 

乳がんのステージは、IからIVまでに分けられますが、しこりもリンパ節への転移もないステージIで発見できた場合、10年後の生存率(正確には「相対生存率」と言います)は実に93.5%と、他の部位のがんに比べても高く、早く見つけられれば、ほとんどが治ると言えます。

一方で、ステージが進んでからでは、リンパ節や肝臓、肺、骨、脳などへ転移しやすいので、やはり早期発見が重要です。

 

2.乳がんとは?

 

乳房には乳頭を中心に放射状に15~20の乳腺があります。

乳腺は小葉に分れ、小葉は乳管でつながっています。

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乳がんは、この乳腺から発生するのですが、90%以上は乳管から、5~10%が小葉から発生します。

 

乳がんの早期発見には、特に注意が必要な40~50歳代の人で1年から2年に1度の検診が大事です。

検診には、女性はよくご存じのマンモグラフィと超音波検査とがあります。

それぞれ一長一短ありますが、初期の小さな腫瘍の発見には、マンモグラフィが有効だそうです。

 

3.「高濃度乳房」とは? 日本人女性の半数以上はマンモグラフィが役に立たない!?

 

「高濃度乳房」とは聞きなれない言葉かもしれません。私は全く知りませんでした。

乳房は乳腺と脂肪とからなります。

欧米人女性に多いふくよかな乳房と言うのは、概して脂肪が多いわけです。

一方、日本人を含め、アジア人の多くの女性の小ぶりで硬い乳房と言うのは、非常に脂肪が少ないのです。

この脂肪の少ない「高濃度乳房」と言うのが、マンモグラフィによる検診では非常に厄介なのだそうです。

 

表 脂肪の量と分布による乳房の分類

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硬いがん組織は、マンモグラフィでは白く映ります。

しかし、高濃度乳房では、乳房全体が白く映り、がんがあっても、その影がかき消されてしまって、発見が難しくなるそうです。

乳腺専門医の間では、これを「雪原で白うさぎを探すようなもの」と比喩するそうです。

 

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マンモグラフィの高濃度乳房の画像(右端)

 

日本人女性の実に50~80%が高濃度乳房だとの指摘があります。

それが本当ならば、半数以上の人にはマンモグラフィが役に立たない可能性があることになります。

 

マンモグラフィは米国で開発が進められ、乳がん検診のためのガイドラインの制定なども米国主導で進められてきました。

高濃度乳房の少ない米国では、それほど問題にならなかったのかもしれませんが、これを日本に導入したところ、日本人女性に多い高濃度乳房の問題が顕在化したようです。

 

米国では、受診者が高濃度乳房の場合、ほとんどの州で、本人にその旨伝えるのが普通だそうです。

マンモグラフィでははっきりとは分からないので、超音波検査を受けることを薦めます」と言うことですね。

ところが日本では、高濃度乳房のために「よく分からない」ケースでも、本人には「異常なし」で検査結果を通知するのだそうです。

 

日本では、なぜ本人に通知しないのか?

どうもよく分かりませんが、通知した結果、その人たちが全部、超音波検査に流れてきたら対応できないとか、体制整備が整っていないことが大きな理由のようです。

 

体制整備ってなんでしょう?

超音波検査装置が足りないとか?

機械の不足などは、お金で解決できる問題です。

超音波検査と言うのは、非常に熟練を要するそうです。

どうも、熟練の技師や医師が不足しているのが実情のようです。

 

一部の地方自治体では、高濃度乳房で適正に検査できなかった可能性のある受診者には、その旨通知するようにしたいと動き始めているところもあるようです。

ところが、関連の学会では、「現時点で一律に乳房濃度を通知することは時期尚早である」として、対策は進んでいないようです。

 

4.「高濃度乳房」かもしれないと思う人は、直接聞いてみよう!

 

ある乳腺専門医の方がサイトで書いていました。

マンモグラフィで「異常なし」と言われても、自分が高濃度乳房かもしれないと安心しきれない人は、「私は高濃度乳房ではないですか?」と尋ねてみましょうと。

現在、学会や医療界では、「通知しない」と言う方針ですが、受診者から直接尋ねられると、回答を拒否したりはしないようです。

自分が高濃度乳房かどうかは本人の個人情報です。受診者には、自分の個人情報を知る権利があるのですから。

 

自分が高濃度乳房だと分かれば、超音波検査のことなど、お医者様に相談することもできます。

高濃度乳房のことを知らずに、「異常なし」の検査結果で安心して油断してしまうことが怖いですね。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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