目次:
1.体中のDNAを一本につなげたら、どれくらいの長さになるのか?計算してみよう
2.ヒトの体の細胞って、ぜんぶで何個なの?
3.ヒトゲノムの驚愕の天文学的数字!
4.こんな小宇宙を、どうやってミクロな細胞核に格納している?
「ウルトラセブン」第31話「悪魔の住む花」で、当時15歳の松坂慶子さん演じる少女が宇宙細菌ダリーに感染。吸血鬼と化し、夜な夜な人の生き血を求めてさまようのでした。
ダリーは慶子ちゃんの肺に巣くっているらしいのですが、現代医学は無力。彼女を救えるのはセブンしかいません。
伸縮自在なセブンがミクロ化し、(なんと)慶子ちゃんの鼻から肺に侵入し、直接ダリーを退治するしかない!
「これは非常に危険だ。人間の体とは言えども、広大な宇宙と変わりない。いわば未知の世界だ」ダンは躊躇します。
「よし、未知の世界に挑むぞ!」意を決したダンは、セブンに変身。
しかし、セブンも異物。ダンが懸念した通り、ナチュラル・キラー細胞やなんかがセブンに襲いかかります。
セブン、危うし!
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1.体中のDNAを一本につなげたら、どれくらいの長さになるのか?計算してみよう
私たちの体の数十兆個もの細胞の一つひとつには全遺伝子のセットであるゲノムが格納されています。ゲノムの正体は、すなわちDNAです。
ゲノムを構成する二本鎖DNAの塩基対の数は30億個で、一つの細胞に2セットあるので60億個です。これを一本にして引き延ばすと、なんと約2メートにもなります。
じゃあ、ヒトの体の全細胞のDNAを一本につなげると、どのくらいの長さになるのか?
長年、遺伝子研究に携わってきたのに、今まで一度も、そんなアホくさい計算なんてしようとも思わなかったことに、はじめて気が付きました(笑)
2.ヒトの体の細胞って、ぜんぶで何個なの?
ヒトの体の全細胞数は、かつては約60兆個だと言われていました。
これって、誰が数えたの? いやいや、誰にも正確に数えることなんて不可能で、ざっくり計算して、予測した数字です。
人の体の容積は簡単に測れますね。お風呂に入れば、水位が上昇します。上昇した分が人の体の容積です。アルキメデスの原理ですね(懐かし~)
そして、細胞の容積は、顕微鏡で観察すれば、大体のところは大きな誤差なく割り出せそうです。
なので、人体の容積を平均的な細胞の容積で割り算すれば、細胞数が割り出せるわけです。
しかしですね、困ったことに細胞の容積はというと、臓器・組織ごとにバラバラなのですねぇ。
それで、昔のある人が、肝臓の細胞はこれくらいの大きさで、肝臓の容積はこのくらいだから、肝臓の細胞の数はこのくらいのはず。そんでもって、脳の細胞は、、、心臓は、、、筋肉は、、、という具合に、臓器とか組織別に1個の細胞の平均的な容積とから、ざっくりと細胞数を見積もったのです。
それから導き出された数字が60兆個。長きにわたって、この数字が盲信されてきました。
でも最近、この数字は過大評価だとされているようですね。
具体的な数字として「37兆個」というのをよく目にしますが、これもどうだかわかりません。
だって、体重40 kgの女性も、200 kg超えのアンドレ・ザ・ジャイアント(知らない?)も、同じ37兆個であるはがない、、、まあ、平均37兆個としておきましょうか。
ただし、そのなかには赤血球のようにDNAを収める細胞核を持たないものもあるので、注意が必要です。精子や卵細胞は、ゲノムの半分のセットしか持ちません。
3.ヒトゲノムの驚愕の天文学的数字!
ゲノムを持つ細胞の数を少なめに見積もって20兆個としましょう。
ひとつの細胞の60億塩基対のヒトゲノムを引き延ばした長さは2メートルなので、これを20兆個つなげると40兆メートル、、、ってことは400億kmか!
これって、どのくらいの長さなの? ピンときます? 地球から月くらい? いや、そんなにはない?
地球の外周は約4万km
地球と月の距離が約38万km
地球と太陽が約1億5000万km
太陽から太陽系でもっとも遠い惑星、海王星まで約45億km!
ちなみに、惑星から格下げされた冥王星まで約48億km
ムムッ! これは計算間違ったな。こんなはずがあるわけない! 間違いなく間違ってる!
しかし、何度計算しなおしても結果は同じ!!
誰か、間違っていると教えてくれ~~ッ!!!
光の速度は毎秒約30万km。
ちゅうことは、ヒト一人のゲノムDNAをまっすぐに引き延ばして、端っこからスタートして、もう片方の端っこのゴールまで、光さんに「よ~~~い、ドン!」でタイムスプリントさせたら、そのタイムは400億km ÷ 30万km/秒 = 13万3333秒 = 2222分 = 約37時間!
な、な、なんと、ヒト一人の全ゲノムの端から端まで到達するのに、光速でも1日と13時間を要するのダ-ッ!!
これはもう、ワープ航法が可能なヤマトかエンタープライズに乗ってかへんとアカンやろーー!
(ホントに計算合ってんのかなぁ? 心配だなぁ)
私たちが毎日、こうして生きてられるのも、宇宙スケールのゲノムのおかげなんですねぇ。
いや、ビックリしましたわ。
こいつはスゴイ!「宇宙の大きさを体感できる動画」
4.こんな小宇宙を、どうやってミクロな細胞核に格納している?
全長2メートルの二本鎖DNAは、なんと直径わずか6ミクロン(0.006 mm)の細胞核内に収められています。
折りたたまれて、ねじって束ねられ、さらに折りたたまれて束ねられ、46本の染色体というDNAの束に分けられ、まとめられています。
私たちの体の中では、毎日ひとときも休まず、細胞が活動しています。
骨髄の中では血液細胞が作られ続け、腸粘膜や皮膚の細胞も盛んに分裂し、常に古い細胞と置き換わっています。
細胞が分裂するときには、この染色体がきれいに解きほどかれて複製され、終わればまた丁寧に束ねられて染色体になります。
よくもまぁ、毛糸玉みたく絡まったりしないものですねぇ。
また、細胞が分裂するとき、ゲノムは猛烈なスピードで複製されます。
この宇宙スケールの長大なゲノムをわずか数時間で複製し、しかもわずかの間違いも許さないのですから驚きです。
まさに未知の世界、「驚異の小宇宙」です。
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次回「テロメアと老化」のお話を予定しています。
お楽しみに。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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