目次:
1.化学賞は「次世代シーケンサー」か?
2.生理学・医学賞は「ゲノム編集」?
またまたこの季節がやってまいりました。
本庶先生がノーベル生理学・医学賞を受賞されてから、もう1年も経つのですねぇ。
そこで、今年2019年のノーベル化学賞(10月9日発表)と生理学・医学賞(10月7日発表)を独断と偏見で予想してみます。
(わたしゃ、物理はわからん。なので物理学賞は予想できましぇ~ん)
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1.化学賞は「次世代シーケンサー」か?
生物学や遺伝学を著しく発展させた技術に、タンパク質やペプチド(タンパク質の短いやつ、との理解でいいでしょう)のアミノ酸配列の決定法と、遺伝子(DNA)の塩基配列の決定法があります。
この二つの技術を開発したのは同一人物。フレデリック・サンガーさんという方でした。
この二つの偉大な発明で、サンガー先生はノーベル化学賞を二度受賞された唯一の人として知られます。
さて、サンガーさんの偉業に続くであろう技術があります。
それが「次世代シーケンス技術」!
ヒトゲノムプロジェクトでは、全ゲノム30億の塩基配列を解読するのに13年かかりました。
費用は30億ドルとも、それ以上とも言われています。
この時に使われたゲノム解読方法はサンガー先生の方法です。
しかし、サンガー法では、どうしても膨大な時間と費用がかかってしまうのでした。
その解読スピードとコストを飛躍的に改善したのが「次世代シーケンサー」です。
ヒト一人のゲノム解析に要する時間は、わずかに数日!
費用も1000ドル程度!
この技術は生命科学に飛躍的な進歩をもたらしました。
まさにパラダイム・シフトです。
そのインパクトを書き連ねると長くなるので、過去ブログをご参照くださいね。
今年のノーベル化学賞は「次世代シーケンス技術の開発」で決まりでしょう!(まったくの独断偏見!)
2.生理学・医学賞は「ゲノム編集」?
iPS細胞がもたらしたインパクトは、非常に大きいものがありました。
山中先生がノーベル生理学・医学賞を受賞したのが2012年。
マウスのiPS細胞の開発から6年、ヒトのiPS細胞からわずかに5年という、自然科学分野のノーベル賞としては異例の速さでの受賞でした。
その山中先生をして、「ものすごい技術! iPS細胞など足元にも及ばない!」と言わしめたのが「ゲノム編集技術」です。
ヒトを含めたあらゆる生物種で、思いのままにゲノムを改変できる恐るべき「神の御業」!
農産物の生産性を上げたり、病気に強い品種を作ったり、というのは屁のカッパ。
マラリアを媒介しない蚊を作ってマラリアの根絶を目指すプロジェクトや、AIDSの治療への応用が進められています。
その可能性は、アイデア次第でほぼ無限!
でも、正直言うと、今年のノーベル賞受賞は時期尚早ではないかとも思うのです。
というのも、開発者たちが特許の所有権を巡って争っていたりして、法的に誰が本当の開発者か決着がついていなかったりするのです。
開発当時、「数年以内のノーベル賞受賞確実」と言われていた青色LEDの開発者、中村修二さんが受賞に20年以上もかかったのは、会社との特許訴訟の悶着に決着がつくのに時間がかかったことが一因とも言われいます。
さらに、ゲノム編集には倫理的な問題が。。。
ゲノム編集のヒトへの応用に関する倫理問題について世界規模で議論が展開されている中で、中国の研究者がHIVに感染しない赤ちゃん(デザイナー・ベビー)を誕生させて、大変な批判を受けた事件は記憶に新しいところです。
さらに、オリンピック・イヤーを前年に迎えて、「遺伝子ドーピング」の問題が最近話題になっていますね。
ゲノム編集技術を使えば、遺伝子改変の痕跡を残さずに筋肉量を増強させることも可能です。
これをやられると、不正を調べようがない。ばれっこないのです。
完全に人間の倫理観が問われているのです!
このような大きな問題・課題があるために、そのインパクトの大きさに反して、今年の受賞はまだ早い?とも思うのです。
さて、どうなるでしょう?
とても楽しみです。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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