目次
1. 「プロジェクト・アリストテレス」とは?
2. 共通項が見つからない!
3. 団塊世代の課長の悲しいチームマネジメント
4. 私の議論の進め方
5. 答えは「心理的安全性」
前回の記事から1ヶ月以上も空いてしまいました。
以前、病気のネタが尽き、路線変更の記事を掲載させて頂きましたが、今回はその第2弾をお送りします。
前回の路線変更第1弾
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1.「プロジェクト・アリストテレス」とは?
かのGoogle社には、実に数百もの社内プロジェクトがあるそうです。
当然ながら、うまくいくプロジェクトもあれば、そうでないものもある。
こういうプロジェクトの成否のカギを握るのは、もちろんプロジェクトメンバーの力量も大きく影響するでしょう。
メンバーのスキルがプロジェクトのテーマに合っているのかどうかも重要でしょう。
でもそれだけなのか?
Google社で調べてみたところ、どうやら、高い成果をあげられるチームは、プロジェクトのテーマ・内容にかかわらず安定して成果を出せるし、出来ないチームは何をやらせてもできないのだそうでした。
Googleほどの世界的企業ならば、優れたスキルを持つ社員が多いはず。
なのになぜ、出来るチームとできないチームとに明確に分かれるのか?
その分かれ目は一体何なのか?
それを突きとめるためにGoogleが立ち上げたのが「プロジェクト・アリストテレス」!!
2.共通項が見つからない!
様々なデータや要因を分析して解決策を見出すのはGoogle社の得意とするところ。
成功し続けるチームと、そうでないチームには明確な差があります。これは間違いない!
では、結果を出し続けるチームには共通点があるのか?
例えばチームに規律が保たれているのかどうか?
あるチームは、規律が厳しく、会議等への遅刻は厳禁! 就業時間中は業務に専念し、無用の私語は厳禁!
一方で、砕けた雰囲気で、リラックスしたムードの中で仕事をするチーム。
オフでもアフターファイブでの飲みニケーションや休日を家族ぐるみの付き合いで一緒にレジャーしたりとか。
でも、そんなことはプロジェクトの成果とは何の関係もみられませんでした。
さらに、別のやり方でもうまくいくチームはうまくいくし、方法を変えてもダメなチームは相変わらずダメなのです。
一体どういうこと?
それから冒頭でも述べたチーム編成について。
プロジェクトテーマに応じて専門性の合致度の高いメンバーを厳選したチームでも、必ずしも良い結果が望めるわけではなかったそうです。
驚いたことに、あるチームで高い成果を出していた人が、別のチームに参加すると、まったく能力が発揮できない!なんて例も多くみられたそうです。
なぜこのようなことが起きるのか??
そしてついに、アリストテレスメンバーは唯一の答えを見つけ出します。
3.団塊世代の課長の悲しいチームマネジメント
(誤解のないように一言。全ての団塊世代の方々が、以下に述べるようだとは申しておりません)
私が社会人になったとき、上司の30代後半の課長は「団塊世代」ど真ん中。
ライバルが多いので、いかに自分が他の課長より優れているのかを会社にアピールしたいという心理は当然のこととして理解はできました。
ところが、そのアピールの仕方がどうにも間違っている。
会議で他の課長さんが発言すると、重箱の隅をつつくようなどうでもいい指摘をし、詭弁を弄して相手を沈黙させる技に長けた私の上司。
毎朝のミーティングでは、各研究員が前日の実験データを見せてディスカッションするのですが、私たち新人や若手研究員のちょっとした発言にも難癖をつけてくるのです。
弁の立つ課長に私たち若手が反論できるはずもなく、何も言えない私たちの姿を見ては、課長は独り悦に入るのでした。
当然、若手研究員は余計な発言をしなくなるし、そのうちデータすらも出さなくなっていったのでした。
これが正しいチームマネジメントなのか?
こんなやり方で、若い研究員の芽を潰す以外に、どんな成果が得られるというのか??
社会人になったばかりの私ですら、そう思うようになっていました。
4.私の議論の進め方
私はこれまで、いろんな会社で研究チームのリーダーを務めてきました。
研究と言うものは、なかなか思うようにはいかないものです。
なぜ期待するような実験結果が得られないのか? 理由は何か? 原因は何か?
問題解決のためのアイデアは多ければ多いほどいいに決まっています。
ひとりで考えられることには限りがあります。
「3人寄ればなんとやら」。アイデアはできるだけ多くの人から出してもらうべきです。
時と場合によりますが、問題解決を目的とした私の議論の進め方はこうです。
まずは「ブレインストーミング」
皆さんご存知の事と思います。何も特別な事ではありません。
会議出席者に自由に発言させます。
ここではいくつかのルールがあります。
①自分でどんなにつまらないアイデアだと思っても、遠慮なく発言すること
②その場では、他人の意見やアイデアを絶対に批判・否定しないこと。よって、発言の途中でさえぎるなど言語道断!
③各人が、最低ひとつはアイデアを出すこと
まずはブレストで話を拡散させておき、その場では結論は絶対に出しません。
各自持ち帰って再考してもらいます。
日をおいて2回目の会議。
ここでは、いったん拡散させた話を収束させに行く作業です。
より良いアイデアは一体どれか?
そのより良いアイデアを絞っていく過程においては、「これとこれはダメ」なんて消去法は一切行いません。
「このアイデアは合理的で現実的じゃない?」、「的を射ていると思うけど、どう思う?」と言う具合に、よりよいもの、さらによいものを求めるように前向きな収束のための議論を私が誘導します。
メンバーに積極的に発言させますが、ダメなアイデアのダメなところを指摘させるのではなく、優れたアイデアのどこがどういう理由で優れているのかを述べさせるようにします。
さきほど「議論を誘導する」と言いましたが、それはつまり、私が答えを出すのではなく、示唆は与えるが、議論はメンバーたちで行わせるということです。
そして大事なのはここ。メンバーの意見を聞いた上で、結論はリーダーである私が出します。
決してメンバーの多数決では決めません。リーダーが結論を出すべきです。
そして、結論が出たからには、反対意見を持っていたメンバーにも、結論に従うようにしてもらいます。
その際に大事なのは、失敗した時の責任も、結論を出したリーダーである私が取ることを明確にしてあげることです。
この私のやり方がベストだとは言いませんが、経験的にはよい成果を得て来たと思います。
よく見る残念な会議は、リーダーが部下を集め、自分の考えがいかに素晴らしいのかをたれて、一方的に部下たちに同意と称賛を求めるというものです。
部下に意見など求めちゃあいません。
こんな雰囲気では、メンバーもリーダーの考えに対して否定的な発言なんてできませんよね。
多くの場合、このようなやり方で得られるのは成果ではなく、リーダーの「自己満足」だけです。
さらに残念なのは、こういうリーダーに限って、失敗した場合に、実際の業務を担当した部下に責任を押し付けるという事です。
そんなの、しょっちゅう見ますから。本当に悲しい(涙)
5.答えは「心理的安全性」
アリストテレスのメンバーがついに見出した結論は、心理学用語で「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれるものでした。
「心理的安全性」とは、簡単に言うと、「アイデアや質問、心配事とか自分のミスについて発言しても、叱責されたり、ペナルティを課される心配がない状態」のことを言うそうです。
皆さん、以下のような経験はありませんか? 若いころ、私はたくさんありました。
例えば、「そんなことも知らないのか?」って思われたくなくって、質問できなかったり。
自分のミスについて報告すると、ひどく叱責されることが分かっているので、ミスを隠すようになったりとか。
意見を言うと、「差し出がましい」とか、「的外れな意見だ」とバカにされるんじゃないかと思って、積極的に発言できないとか。。。
そういうネガティブな考え方に支配されることです。
ハーバード・ビジネススクールのLeadership and ManagementのAmy C. Edmondson教授によると、人は他人から次のようにみられることに恐怖を感じると言います。
n 無知だと思われたくない
n 無能だと思われたくない
n 出しゃばりだと思われたくない
n 消極的だと思われたくない
他人からこのように思われる心配のない状態、それが「心理的安全性」ということです。
Amy C. Edmondsonハーバード・ビジネススクール教授
では、貴方のチームに「心理的安全性」をもたらすには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
色々な考え方や意見があるとは思いますが、すごく簡単で、貴方の職場でもすぐに実践できそうなのが、ある研究者が提案する次の方法です。
n 業務をただ行うのではなく、学習の機会だと捉える
n 人はミスをするものだという事を認める
n 相手にたくさん質問する
こういったことを、リーダーとメンバーとの間で共通認識に至っている状態を作り出すことだと言います。
どうです? これならすぐ出きるっぽくないですか?
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
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