わたくし、元々ウイルス学が専門で御座いまして、細菌のことは、とんと分からないのです。
「えっ、細菌もウイルスもおんなじようなもんでしょう!?」
違うッ! 全然ちげェしッ!!
「じゃあ、似て非なるもの?」
違うッ! 全然似てねェしッ!!
つうかお前! オレの過去ブログを読めッつうの(笑)
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トム・ハンクス主演の映画「インフェルノ」にチラッと出てくる「ペスト医師」のあの装束。
あれは一体、な、な、なんですかな??
あのマスクに、ど、どんな意味があんのですかいな??
「ローマの嘴の医者」パウル・フュルスト(1656年作)
へんちくりんな嘴(くちばし)マスクに厚手のローブ、帽子、手袋、杖という装束が定番の中世ヨーロッパのペスト医師。
すっごい不気味なんすけど!
ペストより、あんたらの方が十分怖い!(笑)
さっそく調べてみました。
中世ヨーロッパにおいて、ペスト患者を専門に診た「ペスト医師」。
感染率と致死率の高いこの病気の患者を好んで診る医者なんて少ないに決まっています。
でも、ペストの流行は、何らかの手を打たなければ、国の存亡にも関わる重大事です。
当時のヨーロッパでは、公金(国かな?地方自治体かな?ちょっと分かりませんが)から高い報酬を得て、ペスト患者を専門に診るペスト医師がいました。
しかし、非常に危険な仕事ゆえ、この職に就いた多くの医師が、ヤブや経験の浅い人、経済的に苦しいなどの訳ありの人、中には医師でもない人までいたということです。
この装束は、つまりは素肌を曝(さら)さないようにするためのもので、患者に直接触れずに診察したり、処置をしたりするために杖を持っている訳です。
そして、あの不気味な嘴(くちばし)マスク。
実は、あの長い嘴の部分には、毒気を含んだ空気を清浄するために、藁(わら)や香りの強い香辛料、ハーブなどが入れられていたとのことです。(重そう)
つまり、あのマスクは、外気を直接吸うことを防ぐためのフィルターを備えているという訳で、言ってみれば、現在の防毒マスクのようなものなのですねぇ。
菌もウイルスも知らず、悪霊のようなものによって病気になると信じられていた暗黒時代。
患者と接触することで病気が移る、いや、毒気を含んだ空気によっても移ることを理解していたようで、あの防毒マスクが実際に効果があったかどうかは別として(いや、間違いなく効果なかったでしょう)、コンセプトとしては、適切な感染防止策ですねぇ。
ちょっと感じ入りました。
ペストは黒死病(英語でBlack Death)とも呼ばれますが、敗血症を起こし、ペスト菌が全身に廻ると内出血を起こして皮膚が黒くなって死んでいくことから、そう呼んで恐れたそうです。
ペストで死屍累々のマルセイユの街
あっ、それから、相変わらずウンチクにまみれたダン・ブラウンの小説ですが、映画「インフェルノ」でも、英語で「検疫」を意味するクアランティーン(quarantine)の語源について、トム・ハンクスの口から語られていましたね。
14世紀にヨーロッパでペストが大流行した時、ベネツィアでは東方から来た船(元々ペスト菌は、パレスチナ・中東方面に遠征した十字軍が、帰還時に感染したネズミと共にヨーロッパに持ち帰ったと言われています)を入港させる際、沖合に40日間停泊させるという法律が制定されました。
40日間何も起きなければ、船員や荷物を陸に上げても安全だと判断したのです。
Quarantineは、イタリア語のベネツィア方言で「40日」を意味するquarantenaが語源になっているそうです。
英語でもquarter(4分の1)やquartet(4重奏)とか言いますね。
Quar-で始まる単語は「4」を表すのですね。
ちなみに、今の日本語で「検疫」というと、病原体を持っていないかを調べる「検査」の意味合いが強い印象があると思いますが、英語のquarantineは「検査」と「隔離」の両方の意味があります。
元々は、船を沖合で40日間「隔離」したことに由来する言葉なのですから、もっともですね。
でも、日本語でも英語でも、本来「検疫(Quarantine)」という言葉は、「検査」と「隔離」の両方を含意するようです。
その両方を含めて、本当の「検疫(Quarantine)」だということです。
今回調べてみて、はじめて知りました。
いやぁ、勉強になります。
映画でも、アニメでも。
「インフェルノ」でも「SKET DANCE」でも、そこに見え隠れしているものを見逃さない感性さえあれば勉強できます。
感性次第で知識が増えます。
と言うわけで、調べてみて全く腑に落ちました。
これでぐっすり眠れるなぁ(笑)
皆さん、また明日。
今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。
参考文献:加藤茂孝「人類と感染症との闘い―『得体の知れないものへの怯え』から『知れて安心』へ―第4回『ペスト』―中世ヨーロッパを揺るがせた大災禍」モダンメディア 2010; 56 (2); 36-48.
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