Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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038【自己免疫疾患のなぞ】「なぜ自分に反応する免疫細胞が存在するのか?(その2)」

胸腺学校の過酷な卒業試験と落第者の運命!

 

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前回【037】の続きです。

 

卒業候補生の前駆T細胞たちが、ストローマ細胞上のMHCと、その上に提示された自己抗原に対してどのような反応を示すか?

これが、胸腺学校の卒業試験です。

 

ストローマ細胞のMHCの上には、様々な種類の自己抗原が提示されています。

自己抗原なのですから、これに反応してはいけない訳ですが、卒業候補生の中には自己に反応してしまう「不良」もいる訳です。

図を見ながら、説明していきましょう。

 

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超難関! 胸腺学校の卒業試験!!

 

まず、MHCにも、その上の自己抗原にも、まったく反応しない前駆T細胞があります(図の③)。

MHCに反応しないということは、「自分の顔」すら認識できない落ちこぼれです。

このようなものは、卒業させても何の役に立ちません。

という訳で、不合格!です。

 

そして問題なのは、自己抗原に強く反応する前駆T細胞です(図の④)。

これは非常に危険な存在です。

排除しなければ大変なことになります。

自己抗原に反応したことで、好ましくない細胞を排除する仕組み、これを「負の選択」と言います。

この「負の選択」が、自己反応性T細胞を除去する基本的かつ非常に重要な仕組みなのです。

 

という訳で、自分の顔すら分からない出来そこないと、自分を攻撃する不良は、こうしてめでたく排除されるのです。

ところで、この排除はどうやって行われるのかというと、「アポトーシス」によってです。

アポトーシスというのは細胞の「自殺」です。

不合格を言い渡された前駆T細胞は、自ら死なねばなりません。

時代劇大好きな私に言わせれば、「その方たち、不届きに付き、切腹仰せつける」という訳ですねぇ。

酷ですよねぇ。

 

そして、MHCに反応し、自己抗原に反応しないか、弱い反応を示すものが選択されて生き残ります

これを「正の選択」と言います。

 

合格者は、晴れて胸腺学校を卒業して、それぞれ社会に出ていき、活躍が期待されるわけですが、試験合格後に様々な刺激を受けて、どのような刺激を受けたかによって、それぞれどのようなT細胞になるのか、進路が変わってくるという訳です。

 ヘルパーTとか、キラーTとか、Tregとかありますが、ヘルパーにも、キラーにも、Tregにも、それぞれ様々なタイプに細分化されていて、それぞれに役割が細かく分かれているのですねぇ。

社会にも同じような役割の人がいながらも、それぞれに個性が違い、得意・不得意があるのと同じです。

 

さて、この卒業試験の合格率はどのくらいなのか?

合格できるのは、わずか2%スーパーエリートたちだけです。

実に98%もの生徒が、この試験によって、出来そこないか不良というレッテルを張られるのです。

 

私たちの体は、未知のあらゆる異物に対応するために、実に多くの個性をもった前駆T細胞を教育して育てます。

しかし、その大半が役に立たないのです。

なんという壮大な無駄!!

なんたる非効率!!

 

しかし、このわずか2%のスーパーエリートたちによって、何百億という未知の異物に対して戦う能力が獲得されるのです。

 

生命というのは実に効率的かつ合理的に出来ているのかと思うと、とんでもない!

でも40億年もの長い時を経て獲得した超高度で超複雑な防御システム「免疫系」。

こう見えて、これが最も合理的な方法なのかもしれません。

 

この「負の選択」の仕組みによって自己に反応する前駆T細胞が排除されるので、かつては、健康な人には自己反応性T細胞はないはずだと考えられていましたが、現在では、この負の選択のシステムは完全ではないことが明らかになっています。

つまり、自分に反応する一部の「不良」も卒業させてしまっているのです。

でも大丈夫。安心して下さい! 健康な人の免疫系には、この不良をも黙らせる怖いおじさんがいます。

制御性T細胞ですねぇ。

 

制御性T細胞については、本ブログ【017】をお読み下さい。

takyamamoto.hatenablog.com

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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