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Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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024【免疫力の高い人はアレルギーになりやすいの?】「免疫の『バランス』についての誤解に答えます!」

目次:

  1. やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

  2. 獲得免疫は「抗原特異的」!

  3. 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

  4. 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

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① やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

 

世間では、「免疫力アップ」とか言って、免疫力は高ければ高いほどいいみたいに喧伝しているきらいが見られますね。

一方で、うがったところでは「免疫はバランスが大事」と言われます。

免疫のバランスとはどういうことでしょう?

 

以前は良く、こんな話を聞きました。

「免疫力の高い人は、がんや感染症には強いけれど、その代り、アレルギーや自己免疫疾患になりやすい」

「アレルギーや自己免疫疾患の人は、免疫力が高いので、がんになりにくい」

これらは、「免疫力というのは、強すぎても、弱すぎても具合が悪く、ほどほどにバランスを保っているのがよい」という考え方です。

つまり、免疫のバランスとは、下の図のように、高いか/低いかというシーソーのようなものだと言うのですね。

 

f:id:takyamamoto:20170428174752p:plain

免疫のバランス 右に傾いても、左に傾いても、どっちもよくない!?

 

この考え方では、免疫力が強すぎるとアレルギーや自己免疫疾患になりやすく、弱すぎるとがんや感染症にかかりやすくなるので、「強すぎず、弱すぎず」のバランスが重要、ということになります。

 

私はずっと、この考え方に疑問を持っていました。

なぜなら、アレルギーや自己免疫疾患知らずで、がんや感染症にも強い超健康な人っているはずだからです。

免疫のバランスがシーソーのように、強いか、弱いか、バランスのとれた真ん中か、のような塩梅(あんばい)だとすれば、このような超健康な人の免疫がどうなっているのか、説明できません。

また、免疫が強すぎてアレルギーになるのなら、いろんなものに対してアレルギーになるはず。

「ヒノキやブタクサやダニは全然平気なんだけど、スギ花粉だけはどうにもダメ」という人がいるのは変です。

説明できません。

 

② 獲得免疫は「抗原特異的」!

 

いきなり「抗原特異的」なんて難しい言葉で申し訳ありません。

 

はしかにかかったことのある人は、はしかに対する免疫を持っています。これは獲得免疫です。

019【免疫力の本来のパワー(その1)】「免疫系の仕組み」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

なので、次にはしかのウイルス(麻疹ウイルス)が侵入してきても、発病することなく撃退できます。

でも、この免疫は、他のウイルス、他の抗原(免疫系によって認識される異物のこと)には全くの無力です。

麻疹ウイルスに対する免疫は、麻疹ウイルスの抗原にしか反応しません。

 

特定の抗原にだけ反応すること、これが「抗原特異的」ということです。

 

マクロ―ファージとかの自然免疫の細胞は、基本的に非自己であれば何でも食べます。

つまり、自然免疫は「非特異的」です。

でも、獲得免疫は、一度覚えた特定の抗原にしか反応しません。

つまり、獲得免疫は「抗原特異的」です。

 

③ 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

 

ここから少し難しくなります。

 

自己免疫疾患やアレルギー性疾患は、抗体を作るB細胞や、がんやウイルス感染細胞など異常な細胞を攻撃するキラーT細胞の仕業です。

B細胞とT細胞による免疫は獲得免疫ですね。

 

制御性T細胞(Treg)もT細胞ですから、獲得免疫の細胞ということになります。

だったら、Tregも抗原特異的に機能するんじゃないのか?

つまり、Tregはある特定の好ましくない免疫反応だけを「特異的」に抑えることができるんじゃないのか?ということです。

 

たとえば、はしかにかかったとします。

当然、免疫系は活発になり、免疫力は高い状態になります。

「免疫力の高い人はアレルギーになりやすい」という理屈が正しいのなら、感染症にかかる度にアレルギーになる人が普通にいるはずです。

でも、そんな人、実際に見たことも聞いたこともありません

 

これはつまり、感染症にかかって免疫力が高まった状態でも、アレルギーや自己免疫疾患などの原因となる好ましくない免疫反応を「特異的に」Tregが抑えてくれているんじゃないかと考えられます。

 

本ブログ【010】で、アレルギー性疾患の少ないアーミッシュの人たちにはTregが多いとか、【017】では、妊婦では免疫系が胎児を攻撃しないようにTregがたくさん子宮に集まっているとかいいました。

010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

017【自己免疫疾患と制御性T細胞】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

これまでの多くの研究では、Tregの数が多いか少ないかが盛んに調べられてきました。

でも、本当にTregの働きを知るには、特定のTregが特定の好ましくない抗原に対する免疫反応を抑えているという、Tregの「特異性」を証明することが重要だと思います。

 

たとえば、「ヒノキもブタクサも問題ないんだけど、スギだけはダメ」なんて人もいる訳です。

このような人の場合、スギ花粉に対する免疫反応だけを抑える「特異的な」Tregが、何らかの原因でうまく働いていないのだと考えると説明がつきます。

 

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如何なゴルゴ13と言えども、何らかの原因で自己免疫反応を抑える抗原特異的Tregが上手く働いていないと、自己免疫疾患にもなり得る!

 

ヒトの抗原特異的制御性T細胞の働きは、技術的な問題から、まだ充分には解明されていません。

でも最近、技術的ブレークスルーがあったとかで、その論文を読んでいるところです。

Cell 167, 1067-1078, 2016

難しくて、なかなか読み進められません、、、(涙)

 

④ 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

Tregの抗原特異的な働きについては、これから解明されるものと期待します。

そしてその結果、超健康な人の免疫とは、「がんや感染症に対する免疫力は強く、同時に抗原特異的なTregが働いて、好ましくない免疫反応は抑えている状態である」ということが証明されるのではと予想しています。

 

病気やケガをすれば、免疫系が活性化して炎症反応を引き起こします。

でも、快方に向かえば、炎症反応は速やかに鎮めなければなりません。

このように、免疫というのは、攻撃するべきときには攻撃し、攻撃してはいけないもの、攻撃してはいけないときには、攻撃は抑えなければなりません。

このように免疫系が絶妙に制御されている状態、これが免疫系の「バランス」がいい状態なのだと思います。

「強い or 弱い」という2元的な単純なものでは決してありません。

そして、そこで重要な働きをしているのが、恐らく抗原特異的なTregです。

(これはまだ仮説であり、実証されている訳ではありませんので、ご注意下さい)

 

ですから、健康のために大切なことは、免疫力をアップさせるというより、免疫力を「調整」することなのです。

 

で、話はまたここに帰着します。

免疫調整のために重要なのは、食事・運動・休息・βグルカンなのですね(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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