Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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【10月2日ノーベル生理学・医学賞受賞者発表!】坂口志文先生、本庶佑先生、か?

またまた今年もこの季節がやってまいりました(^^)

2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞者発表は10月1日夕方(日本時間)です。

 

今年こそ、制御性T細胞の発見者・坂口志文(しもん)先生と、新規ながん免疫療法(免疫チェックポイント阻害)の発見者・本庶佑(ほんじょたすく)先生のダブル受賞だろうが!

 

昨年は(私にとっては)残念な結果でしたが、ちょうど1年前のブログをリンクしますので、よろしければ前祝いにお読み下さい(^^)

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

090【ワーファリン誕生秘話】害獣を殺す「毒」から人を生かす「薬」へ

目次:

  1. 血栓症を予防するワーファリン

  2. 全米屈指の名門、ウィスコンシン大学

  3. 奇病!「スイートクローバー病」

  4. 特定された原因物質

  5. 殺鼠剤「ワーファリン」命名の由来

  6. 殺鼠剤で自殺を試みるも死に切れず!

  7. 殺鼠剤で死なないスーパーラット

  8. 飲み忘れても、決して一度に2回分を飲んではいけない!

  9. その後、スイートクローバー病はどうなったの?

  10. スイートクローバー病の牛には、この食材を食べさせろ!

 

今回は軽~い読み物です。

 

お盆休みにアメリカに行ってきました。娘といっしょにです。

19年前に単身赴任で住んでいた懐かしの場所を再訪。

ウィスコンシン州のマディソンと言う、日本人にはあまり馴染みのない街ですね。(ちなみに、映画「マディソン郡の橋」は何の関係もありません)

日本人はあまりいませんが、いるとすれば、ウィスコンシン大学の留学生など、大学関係者でしょうね。

 

この場所に来てみて、あることを思い出しました。

この大学で生まれた有名な薬のことです。

血液をサラサラにする薬「ワーファリン」(「ワルファリン」とも)

今回は、このワーファリンの誕生秘話です。

 

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1.血栓症を予防するワーファリン

 

心臓に人工弁をつけている人や心房細動(不整脈)のある人は、血液の流れが乱れるので、血管の中で血が固まりやすくなります。

この血の塊、つまり「血栓」が体のあちこちにとんでって血管が詰まるのが血栓症

脳で詰まると「脳梗塞」、心臓で詰まると「心筋梗塞」を起こして命に関わります。

それを防いでくれるのがワーファリンで、60年以上も使われ続けている良い薬です。

でも、飲む量が多すぎると、血が固まりにくくなって、脳出血などのリスクが高まるので、飲み方には気を使う難しい面もあります。

 

2.全米屈指の名門、ウィスコンシン大学

 

アメリカ旅行に話が戻りますが、娘が私に尋ねました。「ウィスコンシンって何が有名?」

何が有名かって、ウィスコンシンの名物とかかい?

う~~ん、牛か? チーズか? それから、それから、ええ~っと、あとはビールくらいか?

そう、ウィスコンシンは農業、特に酪農とビールの州で、あと、これといったものはプロアメフトチームのグリーンベイ・パッカーズMLBミルウォーキー・ブルワーズ、それにウィスコンシン大学くらいのもので、他にはこれと言って何もありません。

 

このウィスコンシン大学は、アメリカの州立大学の中でも屈指の名門で、ノーベル賞受賞者を多数輩出し、スポーツでも全米屈指の強豪!

まさに「文武両道」の名門校なのです。

 

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2018年8月15日 ウィスコンシン大学マディソン校にて

 

3.奇病!「スイートクローバー病」

 

1920年代。北米で牛がバタバタと死ぬ奇病が発生しました。

解剖してみると、体中で内出血を起こしていました。

これは伝染病なのか!?

 

数年後には、どうやら飼料として与えていた腐ったスイートクローバー(シナガワハギ)を食べた牛が死んでいることが分かってきました。

しかし、なぜ死に至るほどの内出血を起こすのか? 詳しい原因は長らく不明でした。

 

この奇病は酪農州であるウィスコンシンの農家には死活問題です。

腐ったスイートクローバーを与えなければ良いわけですが、雪の積もる冬季には、どうしてもサイロで長期保存した牧草を食べさせなければならず、この病気のリスクは完全には避けられません。

 

ここで一人の研究者が立ち上がりました。

ウィスコンシン大学の生化学者、カール・パウル・リンク博士(1901~1972)です。

 

 

4.特定された原因物質

 

「スイート」ってくらいだから、スイートクローバーってのは、バニラに似た甘い芳香がして、家畜が好んで食べるそうです。

この独特の芳香は、クマリンと呼ばれる化学物質によるもので、今では大量に合成され、香料として利用されています。

リンクは、大量の腐ったスイートクローバーから様々な成分を抽出し、ついに動物に内出血を起こさせ、死に至らしめる物質を突き止めたのです。1940年のことでした。

 

その物質とはジクマロール

スイートクローバーを腐らせる微生物の作用で、クマリンからジクマロールが大量に作られていたのでした。

 

血液が固まるにはビタミンKが必要です。

ジクマロールは、このビタミンKの働きをジャマして血液を固まりにくくしていた、言い換えると、出血しやすくしていたことが分かりました。

 

こいつはいい! こいつは使える!

何がいいの? どう使えるの? ねえってば⁇

 

なんと、翌年の1941年には、ジクマロールは殺鼠剤として販売されたのでした。

これを食べたネズミは、目の網膜で内出血を起こし、視力が落ちるので明るいところに出てきて死ぬといいます。

つまり、ネズミ駆除の効果が目に見えるわけですねぇ。

本当にこいつはいい!

 

1948年。リンクは、このジクマロールを改良して、出血作用をさらにパワーアップさせた恐怖のスーパー殺鼠剤を作り出すことに成功しました。

これこそが「ワーファリン」です。

 

5.殺鼠剤「ワーファリン」命名の由来

 

ワーファリンの特許は、リンクが所属していた Wisconsin Alumni Research Foundation(「ウィスコンシン同窓研究基金」とでも訳せるのでしょうか?)が保有していました。

この頭文字「WARF」とクマリン(coumarin)のお尻の「arin」とをつなげてWarfarin(ワーファリン)と名付けられたのでした。

 

最初は害獣を「殺す」ための毒だったのですが、その後、人を「生かす」ための薬として使われるようになります。

薬として使われるようになったキッカケを調べてみると、どうも偶然から生まれたようですね。

 

6.殺鼠剤で自殺を試みるも死に切れず!

 

スーパー殺鼠剤「ワーファリン」

 

1951年。アメリカ陸軍の兵隊さんが、このスーパー殺鼠剤を大量に飲んで自殺を図りました。

でも、死ねませんでした。

ワーファリンは即効的には効きません。飲み始めは、効果が出るまで時間がかかります。

ワーファリンはビタミンKの働きをジャマすることが分かっていました。

この兵隊さんは、医師の機転で大量のビタミンKが投与されて一命を取りとめたようです。

 

この一件から偶然にも、ワーファリンはビタミンKの量とのバランスを取れば、命を落とすような出血を起こすことなく、凝固能をコントロールできることが分かったのです。

そして、早くも1954年には、抗凝固剤としてアメリカで医薬品承認されたのでした。

 

7.殺鼠剤で死なないスーパーラット

 

ずいぶんと昔のことですが、ワーファリンを食べても死なないラットが話題になったようです。

20年以上も前、NHKの特集番組のなかで「スーパーラット」と呼ばれて以来、学者の間ですら「スーパーラット」の呼称が定着したようです。

 

スーパーラットがワーファリン抵抗性をもつ原因は分かっています。

過去ブログで、ミクソーマウイルスに感染しても死なない「スーパーラビット」や、HIVに感染すらしない「スーパーヒューマン」がいることを紹介しましたが、これと同じです。

takyamamoto.hatenablog.com

 

ヒトにも動物にも多様性があります。

ビタミンKの代謝に重要な働きをしている遺伝子「VKORC1」

実のところ、ワーファリンはこの遺伝子の働きをジャマするのです。

そして、ワーファリンの効かないスーパーラットは、特別な型のVKORC1遺伝子を持っていることが分かっています。

この型のVKORC1遺伝子にはワーファリンは効かないのです!

これは人間も同じです。

 

VKORC1以外にも、ワーファリンの効き目に影響する遺伝子がいくつかあって、その遺伝子の型が違うために、ワーファリンの効き目は、人によって結構差があるのです。

たとえば、人並みの量では効き目が弱く、多めに飲まないといけない人もいれば、逆に少なめにしないと、出血のリスクが高まって危険だったりする人もいます。

なので、お医者様は一人ひとりの患者に対して、血液の固まり具合(血液凝固能)を検査しながら、患者ごとに最適なワーファリン量を決めているのです。

 

8.飲み忘れても、決して一度に2回分を飲んではいけない!

 

ワーファリンの投与量は一人ひとり適切に調節されています。

誤って多めに飲んでしまうと、効き目が強すぎて出血しやすくなるので、非常に危険です。

なので、飲み忘れに気づいても、絶対に一度に2回分を飲んではいけません!

1回くらい飲み忘れても、ワーファリンの効果は数日続くので問題ありません。

飲み忘れよりも、飲みすぎのほうが危険だということを憶えておいてください。

まあ、そこんところは、お医者様や薬剤師などのおっしゃることを良く守ってくださいね。

 

9.その後、スイートクローバー病はどうなったの?

 

えっ!? 一体どうなったのでしょうね?

ネットで調べても、その後のスイートクローバー病の顛末を書いている人はいないので、私は知りません。(そんな無責任な)

 

リンク博士は当初、ウィスコンシンの酪農家の助けになりたくて、この病気の原因究明に立ち上がったのでした。

ところがこの話は、病気の原因物質の発見から一転、殺鼠剤への応用、そして医薬品の承認へと展開していき、スイートクローバー病問題がどうなったのかは、ネットを調べてみても分かりませんでした。

 

でも大丈夫! 現代医学は既にこの病気を克服している、、、はずです。

 

10.スイートクローバー病の牛には、この食材を食べさせろ!

 

ワーファリンを服用している人が食べることを固く禁じられている食べ物があります。

何だと思います?

 

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ワーファリンを大量に飲んで自殺しようと思っても、ビタミンKを打たれれば死のうにも死ねません。

そのくらいビタミンKはワーファリンの効果をチャラにする作用が強いのです。

納豆はビタミンKが非常に豊富な食材です。

ですから、納豆を食べるとワーファリンが効かなくなるのです。

ワーファリン服用者が、どうしても納豆を食べたいと言うのなら、自分の命と引き換えにする覚悟がいりますね。

 

スイートクローバー病の原因物質ジクマロールもワーファリンと同じです。

なので、スイートクローバー病の牛には納豆を食べさせればいい!

ってか、ビタミンKを打てばいいのですよ。

たぶんね (^^)

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せください。

大変励みになります。

 

 

089【イタ~い帯状疱疹に水ぼうそうワクチン??】ヘルペスウイルス(その1)

目次:

  1. 帯状疱疹水ぼうそうと同じウイルスが原因

  2. ヘルペスウイルスは二度と体から追い出せない!

  3. 最近まで発見されなかった8番目のヘルペスウイルス

  4. 水ぼうそうワクチンを開発したのは私の先生

  5. 水ぼうそうには二度とかからないのに、どうして帯状疱疹になるのか?

  6. 帯状疱疹の予防に水痘ワクチン

  7. 帯状疱疹にかかっても薬がある

 

中年以降の大人がかかる病気、帯状疱疹(たいじょうほうしん)」

五十路を過ぎたら要注意です!

私は経験ありませんが、すっごく痛いらしいですね。

痛くて眠れないほどとか、外出もままならないとか、QOL(生活の質)を著しく損なうようです。

でもあれの予防に水ぼうそうのワクチンが効くって知ってました?

どういうわけ? 水ぼうそうって子供がかかる病気でしょ??

なのに、なんで大人の病気の帯状疱疹に効くわけ??

 

帯状疱疹にならないかと心配な方は、少しお時間を頂いて読んでみてください。

 

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1.帯状疱疹水ぼうそうと同じウイルスが原因

 

中年以降の大人がかかる病気「帯状疱疹」。

実はこの病気、子供がかかる水ぼうそう(水痘)と同じウイルスが原因です。

なのでこのウイルス、「水痘帯状疱疹ウイルス」と呼ばれます。

 

お子さんをお持ちの方ならご存知だと思いますが、はしかと同じで、水ぼうそうは一度かかると免疫ができて、普通は二度とはかかりません。(二度かかることも稀にはありますが。。。)

水ぼうそうにはワクチンが有効です。

ワクチンで免疫を作らせてやると、ほとんどの場合、水ぼうそうにかからずに済みます。

水痘ワクチンは効果が高く、重篤な副作用もほとんどなく、非常に有効なワクチンなのです。

 

水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルスの仲間です。

ヒトに感染するヘルペスウイルスには8種類あり、そのうちのひとつです。

ヘルペス感染症は、口周りに発疹(ほっしん)が出たり、赤くはれ上がったりして痛む「口唇ヘルペス」と、主に性交渉で男性も女性も性器に感染する「性器ヘルペス」が一般にも良く知られていますね。

いずれも、健康状態がよければ、それほど問題にならない感染症なのですが。。。

 

2.ヘルペスウイルスは二度と体から追い出せない!!

 

断言します!(今回の「断言」!)

世の中には全くの「病気知らず」、というか、まったく何の病原体にも感染していない人なんて、まず、たったの一人もいない!、、、はずです。

どんなに健康自慢の人でも、知らず知らずのうちに様々な病原体に侵されているものなのです。

そのような病原体の代表がヘルペスウイルス。

ほとんどの人は、8種類のヘルペスウイルスのうち、複数種類に感染しており、一見健康に見えても、体内にはヘルペスウイルスが確かに存在しているのです。

 

ヘルペスウイルスの最大の特徴は「潜伏感染」することです。

「潜伏」ってくらいだから、体の中で息を潜めてじっとしているのか?

その通りです。普段は隠れるようにして大人しくしています。

ところが、宿主(「しゅくしゅ」、あるいは「やどぬし」と読んでもかまいません)がストレスや体調不良などが原因で免疫力が落ちると、がぜん暴れ出すのです。

宿主の体調の良し悪しを見計らって暴れ出すので、このようなウイルスの再活性化による感染を日和見(ひよりみ)感染」と言います。

 

一部のヘルペスウイルスには良い薬があり、暴れるウイルスの勢いを止めて、症状を沈静化することはできますが、残念ながら体から完全に追い出すことはできません。

勢いを削いで、元通り大人しく「潜伏感染状態」にお戻り頂くだけです。

つまりは、一生ヘルペスウイルスとうまく付き合って、共存して生きていくしかありません。

 

3.最近まで発見されなかった8番目のヘルペスウイルス

 

1980年代初頭に突如現れた20世紀の黒死病「AIDS」!

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

AIDS患者に非常に珍しい種類の皮膚ガンが頻発することが分かりました。

それまでも、悪性腫瘍などで免疫が落ちている患者に稀にみられた「カポジ肉腫」

非常に珍しいガンであったため、研究がそれほど進んでおらず、長らく原因は不明でした。

ところが、AIDS患者で頻発することから注目され、盛んに研究されるようになった結果、新種のウイルスが関連していると分かったのです。

 

当初、この新しく発見された謎のウイルスは、便宜的に「カポジ肉腫関連ウイルス」と呼ばれましたが、その後、遺伝子配列が解明された結果、ヘルペスウイルスの一種であることが分かったのでした。

そこで晴れて、8番目のヒトヘルペスウイルスということで「ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)」という立派なお名前を襲名したのでした。

HHV-8は、有史以前からの永きにわたって、滅多に悪さをすることなく、ひっそりと人間の体内に潜んで来たため、AIDSという病気が流行するまで人間様に見つからずにいたのでした。

 

普段は大人しい(潜伏感染)。でも、免疫が極端に落ちると暴れ出す(再活性化、日和見感染)。

この「潜伏感染」と「日和見感染」がヘルペスウイルスに共通した最大の特徴です。

 

4.水ぼうそうワクチンを開発したのは私の先生

 

繰り返しますが、水ぼうそうワクチン(水痘ワクチン)は効果が高く、その上、重篤な副作用が非常に少ないワクチンの優等生です。

子供の水ぼうそうの予防確率は、なんと、ほぼ100%!

ゆえに、このワクチンはWHOが認めた世界中で使われている唯一の水痘ワクチンなのです!

 

ウイルスのワクチンには、生きているけれども病原性を弱めたものや、弱めただけでは不安とばかりに、完全に殺して感染力をなくしたもの、あるいは、ウイルスの成分の一部を使って作ったものだったりと、様々なタイプがあります。

水痘ワクチンは、生きてはいますが、病原性を弱めた「弱毒化ワクチン」ですね。

この弱毒化ワクチンって、どうやって作ったのでしょう?

 

同じウイルスでも、様々な人に感染しているウイルスは、病原性や感染力など、それぞれ微妙に性質が違うものです。

つまり、水痘やインフルエンザが流行っても、一人ひとりに感染したウイルスの性質は、遺伝子配列のレベルで微妙な差があるものなのです。

このように、同じウイルスでも由来が違うがために、微妙に性質や遺伝情報の異なるウイルスの系統のことを「株(かぶ)」と言います。

 

病原性は低いけれども、免疫をつける力は強い!

こんなウイルス株が弱毒化ワクチンには理想的ですよね。

この、世界で唯一の水痘ワクチンに使われている水痘帯状疱疹ウイルスの株は、まさにそんな理想的なウイルス株なのです。

 

この水痘ワクチンに使われているウイルス株を樹立したのは、元大阪大学名誉教授の故・高橋理明(みちあき)先生。

高橋先生は、あっちで水ぼうそうにかかった子供が出たと聞けば駆けつけ、水ぶくれの内容物を採って研究室に持ち帰っては、それをシャーレ(実験皿)の細胞にふりかけて培養しました。

 

宿主である患者が違えばウイルスの性質も微妙に違う!

つまり、ウイルスの「株」が違うわけです。

高橋先生は、たくさんの水ぼうそう患者の子供から、たくさんのウイルス株を集めてきて、その中からワクチン製造に適した株を捜し求めたのです。

特別な条件でウイルスの培養を繰り返し、そうすることでさらにウイルス株の性質が変化し、そのなかから、病原性が弱まって免疫をつける力の強い理想的な新たなウイルス株が現れる、、、かもしれない。

 

そんなウイルス株が必ず得られる確証などありません。

確率はと言うと、宝くじを当てる様なもので、成果が出るかどうかも分からない、根気のいる気の滅入る仕事です。

そうして高橋先生が見つけたウイルス株が「岡株(おかかぶ)」と呼ばれる、世界で唯一の水痘ウイルスワクチン株なのです。

 

なんで「岡株」と呼ばれるのか?

たぶん、岡さんという方の子供さんから取ったウイルス株だったのでしょう。

病原ウイルスの株の名称は、ウイルスが採られた患者さんの姓がつけられることが多いものです。

おたふくかぜのワクチンに使われた「ウラベ株」

当時、大阪の豊中市の団地に住んでいらした占部(うらべ)さんちのお子さんの耳の下の腫れ物から採られたウイルス株だそうです。

占部株を樹立された私の恩師(山西弘一大阪大学名誉教授)から直接お聞きした話ですので、間違いありません。

 

さて、実はこの高橋先生。私が阪大にいたときの研究室の教授だったのです。

つまり私は、高橋研究室の出身です。

 

高橋先生は、なんか昭和天皇みたいな感じの方で、口数が少なく、私たち研究生や大学院生なんかと屈託なく話をするでもなく、高橋先生と二人っきりなんかになると、さっぱり会話が弾まないので、先生の前でどう振舞えばいいのか?なんて戸惑っていたことなどが思い出されます。(笑)

そんなに偉い先生だと知ったのは、研究室に入って何ヶ月も経ってからだったと思います。

だって、誰も高橋先生の業績の話なんて、してくんなかったんだものなー。

 

現在では、多くのワクチンが世界中に普及し、昔に比べると感染症の脅威が格段に減りました。

特に高橋先生の水痘ワクチンは、その効果と安全性の点から高い評価を受け、世界中で使われています。

このことを記念して2006年、日本ワクチン学会は「高橋賞」を設立し、毎年、感染症予防の分野で優れた業績をあげた人たちに授与されています。

 

5.水ぼうそうには二度とかからないのに、どうして帯状疱疹になるのか?

 

水ぼうそうにかかると、水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫ができて、普通は二度と水ぼうそうにはかかりません。(二度かかることもあります)

二度とはかからないと言っても、免疫によってウイルスを完全に撃退したわけではなく、水痘帯状疱疹ウイルスは一生に渡って、私たちの体の中に潜んでいるのです。

 

子供のとき、はじめて水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、全身でウイルスが増えて、そのせいで体中に水ぶくれができます。

この水ぶくれの中はウイルスでいっぱいです。

やがて、症状が治まるとウイルスも消えていきますが、一部は神経節を隠れ蓑にして潜伏感染するのです。

私たちが元気で、免疫力が強い間はそこ(神経節)で大人しくしています。

しかし、ストレスや病気や加齢で免疫力が落ちると、知覚神経の走りに沿ってウイルスが増殖し始めます。(強い日光に当たるのも要注意!)

なので、神経に沿うように皮膚が帯状に腫れ上がり、直接、知覚神経を刺激するので、ひどく痛むのです。

 

6.帯状疱疹の予防に水痘ワクチン

 

まずは、子供のときに水痘ワクチンを打つべきでしょう。

水ぼうそうをほぼ100%防いでくれ、当然、帯状疱疹になることも、まずありません。

 

中年以降の大人も、帯状疱疹を予防するために水痘ワクチンを打つとよいでしょう。

たとえ、子供のときに水ぼうそうにかかったことがあって、免疫ができているとしてもです。

否、水ぼうそうにかかったことがあるからこそ、帯状疱疹になる可能性があります。

2016年3月、厚生労働省帯状疱疹の予防を目的に、50歳以上の成人に水痘ワクチンを打つよう勧告を出しています。

 

帯状疱疹予防で打つワクチンは、水痘予防を目的に子供に打つワクチンと、まったく同じものです。

子供の水痘予防では普通、二度ワクチンを打ちますが、大人の帯状疱疹予防では一度で十分です。

一度ウイルスに感染しているのですから、元々免疫ができており、加齢と共に落ちてきた免疫を再度増強してやるのが大人の水痘ワクチン接種の目的です。

元からある免疫を増強するのが目的なら、一度の接種で十分なのです。

これで高い確率で帯状疱疹を予防できますし、もし、かかったとしても軽症で済みます。

 

普通、帯状疱疹にかかると、二度かかることは稀です。

これは、免疫が落ちたところでウイルスが暴れ出し(再活性化)、帯状疱疹を発症するわけですが、これによって水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫が再度増強されるからです。

稀に二度かかる人もいますが、たいていの場合、二度目は一度目より軽症で済むことが多いようです。

でも、できれば一度だってかかりたくありませんよね。だって、超イタイそうですからね!

それに、一部の患者さんでは帯状疱疹が治まっても、知覚神経がひどくダメージを受けたせいで、神経痛の重い後遺症に苦しむことになる人もいます。

 

是非、ワクチン接種を考えてみてください。

 

7.帯状疱疹にかかっても薬がある

 

帯状疱疹には比較的良く効く薬があります。

代表的なのが「アシクロビル」という薬で、静脈注射や飲み薬や塗り薬があります。

これは、水痘帯状疱疹ウイルスが増えるのになくてはならない遺伝子(チミジンキナーゼ遺伝子)の働きをジャマします。

一方、私たち人間が生きていくのに、この遺伝子は必要ありません。

なので、薬でこのウイルスの遺伝子をシャットアウトしても人間には影響がなく、ウイルスの増殖だけを阻止することができる優れモノなのです。

こういうタイプの抗ウイルス薬の仕組みについては、過去ブログでお話しています。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

ただ、どんな薬でもそうですが、万人に効くものではありません。

なかには効きにくい人、あるいは効きにくいタイプのウイルス株もいますので、やはり予防に努めるのに越したことはないですね。

 

どんな人でも潜伏感染しているヘルペスウイルス。

そして、ヘルペスは宿主である貴方の免疫力が落ちるときがチャンスと、虎視眈々と狙っており、そのときが訪れるまで、何十年も我慢強く息を潜めているのです。

 

ですから、ヘルペス日和見感染予防に限りませんが、健康維持のために何よりも重要なのが日頃からの免疫力の維持です。

過去ブログも参考に、日頃から免疫力の維持向上に努めてくださいね。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せください。

大変励みになります。

 

 

号外【DNA二重らせん構造発見物語】盗んだデータでノーベル賞!?

目次:

  1. ワトソン博士はバードウォッチャー

  2. DNAの構造を解明するには、どうすればいい?

  3. ウィルキンスとの出会い

  4. ウィルキンスの悩み

  5. 決め手になったデータは盗んだもの!?

  6. 果てしのない模型いじり

  7. そしてノーベル賞

  8. ロージィとウィルキンスとノーベル賞

  9. 誰か一人が欠けても100年に一度の大発見はなかった!

 

「ウイルス発がん説」、「がん遺伝子」、「逆転写酵素」、「iPS細胞」、「遺伝子増幅技術PCR法」と、ノーベル賞の中でも特に生命科学の常識を一変させたような偉業の裏に、泥臭い人間物語があったことを、このブログでも何度となく紹介して来ました。

 

takyamamoto.hatenablog.com

50年先を行っていた男!「ウイルス発がん説とがん遺伝子の発見」

 

takyamamoto.hatenablog.com

偉大なるフランシス・クリックの敗北!「逆転写酵素の発見」

 

takyamamoto.hatenablog.com

山中先生の苦闘!「iPS細胞」

 

takyamamoto.hatenablog.com

カノジョとのドライブからノーベル賞!?「遺伝子増幅技術PCR法の発明」

 

さて今回は、20世紀の生命科学史上最大の発見、DNAの「二重らせん構造モデル」。

その息を呑むようなあまりの美しさに魅せられ、本ブログのカバー写真には、このモデルを描いたイラストを使わせて頂いています。

 

米国のジェームズ・ワトソン博士と英国のフランシス・クリック博士が、Natureで論文発表したのが1953年。

その業績により、ワトソンとクリックは1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 

この二人に加えてもう一人、同賞を共同受賞した研究者がいたのをご存知でしょうか。

英国のモーリス・ウィルキンス博士です。

でも、ワトソンとクリックの伝説的な偉業に比べると、ウィルキンスのことについては、あまり一般的には知られていないようです。

 

ワトソンは後年、彼自身の記憶と記録(恩師や両親に送った手紙など)を頼りに、この偉大な発見に至るまでの数年間の経緯を回想録に書き記して出版しています。(この本は世界的なベストセラーとなりました)

この著書によると、3人のこの業績の陰には、やはり研究者同士の誠に泥臭い人間物語があったのです。

 

この著書で驚かされたことのひとつは、どうやらワトソンとクリックが二重らせん構造モデルに行き着くに当たって、彼ら自身は何らの実験データも得ていなかったらしいことです。

そして極め付け! 中でも驚きのエピソードは、二人をらせん構造に導いた決定的なデータを、他人から「盗んだ!」とワトソン自身が告白していることなのです。

 

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ワトソンの著書「The Double Helix」(左)と邦訳本「二重らせん」(右)

 

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1.ワトソン博士はバードウォッチャー

 

ジェームズ・ワトソン博士はシカゴ生まれの米国人。

22歳の若さで博士号を取得した秀才です。

いまでこそ、分子生物学の伝説的巨人ですが、もともと彼は鳥類学者でした。

秀才ではありましたが、論理的思考はそれほど得意ではなく、数学も物理も化学も苦手。

彼がいかに化学の劣等生であったのかは、化学実験で何度か爆発事故を起こしたエピソードを著書の中で自慢げに(笑)披露していることからもうかがえます。

そんな彼のことを、相棒のクリックは、親愛の念をこめて「バードウォッチャー」と揶揄していました。

 

一方のクリックは物理屋さんで、戦時中は英国海軍で機雷などの兵器の開発に従事していました。

彼は数学に強い理論派で、秀才と言うよりは、天才肌の人でした。

当時、生物に関心を抱く物理学者は多く、クリックもその一人でした。

終戦後、彼は得意な物理学の手法で生命現象を解明したいと考えていたのでした。

天才的でありながら、戦争もあって、まだ博士号も取れていなかったのですが、それには彼の特異な性格も原因していました。

 

そんな二人が出会ったのは、ワトソンが留学してきた英国のケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所でした。

1951年の秋、ワトソン23歳、クリック35歳。

このひとまわりも歳の違う米国人と英国人の二人は、なぜだか妙に気が合い、DNAこそが遺伝物質であり、構造が解明できれば、そのことを確実に証明できるという考えを同じくしていることをお互いに知り、意気投合したのでした。

 

2.DNAの構造を解明するには、どうすればいい?

 

ハイ、この第2章は少しばかり技術的な話ですので、興味のない方は次の第3章まで読み飛ばしていただいて結構です。

実際、私も、この第2章には全然興味も御座いません(笑)

冗談ですよ。是非、お付き合いください(^^)

 

私、この分野は全く皆目解らないのですが、DNAやタンパク質などの巨大分子の構造を決定する方法として、X線回折法というのがあります。

まずは、構造決定したい物質の純度を上げて、結晶を作らせなければなりません。

この結晶化が難しく、ワトソンたちも相当苦労しました。

 

さて、苦労の末、質の高い結晶が出来たとします。

結晶の中では、単一の物質が規則正しく配列しているため、X線を当てると構造に応じて特定の方向にX線が進路を変えて進みます(回折現象)。

後ろにフィルムを置いておくと、回折したX線がこれを感光させ、その物質の構造に特有の模様をフィルム上に描きます。

ところが、この模様が物質のどういう構造を反映しているのか?回折像の解析が物凄く難しいようなのです。

これには物理と数学の知識が必須です。

いい写真が撮れても、にわかに構造が分かる訳ではありません。

これほどまでに、結晶のX線回折による構造決定は「修羅の道」なのです。

 

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X線回折の原理(ウィキペディアから拝借)

 

当時、キャベンディッシュ研究所の所長を務めていたのは、X線回折による構造解析の基礎理論を確立したノーベル賞受賞者、ローレンス・ブラッグ卿でした。

さらに同研究所には、ワトソン、クリックと同じ1962年に、X線回折によるヘモグロビン蛋白の構造決定によりノーベル化学賞を受賞することになる、ジョン・ケンドルーとマックス・ペルツもいたのです。

キャベンディッシュ研究所にX線回折の世界的権威がこれだけ一堂に会していたとは、当時、世界中の他のいかなる場所にもなかったことでしょう。

ワトソンがDNAの構造決定を目的に、留学先にキャベンディッシュを選んだのは、誠に賢明だったと言うしかありません。

この人たちの援助を受けて、きっとDNAの構造決定もサクサク進んだに違いありません。

 

3.ウィルキンスとの出会い

 

ところがどっこい、うさぎさん。事はそう甘くは運びませんでした。

 

相棒のクリックは気難しいお天気屋。

数週間、実験に集中したかと思うと、次の数週間はまったく実験台に向かわず、論部読みに没頭し、思索にふけるという風でした。

それで新しいアイデアなんかを思いつくと、そのアイデアがいかに素晴らしいかを大声で研究所中に吹聴してまわり、皆を辟易させる天賦の才の持ち主だったのです。

頼りになる時は、めっぽう頼りになる。

しかし、ウザい時は、所長のブラッグ卿ですら所長室から姿をくらますくらいにウザったい。

 

一方のバードウォッチャーはというと、物理も数学もからっきしダメときたもんだ。

独学でX線回折を勉強したりしましたが、全然身につかず、関連の学会に参加しても、発表内容がチンプンカンプンだったと、著書の中で告白しています。

ワトソンは実際に、何度もDNAの結晶化を試みましたが、回折実験に使えるような質の高い結晶はなかなか作れませんでした。

結晶化には、きっと熟練の「匠の技」みたいなのが必要で、素人がちょっと聞きかじった知識と技術で簡単に出来るようなシロモノではなかったのでしょう。

 

その間、クリックはというと、X線の回折写真が出来上がったら「俺様が解析してやるぜっ!」とばかりに、ワトソンが出来のいい写真を持ってくるのをひたすら待つというありさま。

「俺様キャラ」のクリック自身が結晶作りに汗を流すということはしなかったようですな~。

 

ケンドルーやペルツも、ワトソンに有益なアドバイスはしますが、結局はワトソン本人が自力で結晶を作るしかありませんでした。

それはそうです。ケンドルーにしてもペルツにしても、ノーベル賞級の困難な仕事を抱えていたのですからね。

 

キャベンディッシュに来る以前、ワトソンは、イタリアの学会でDNA結晶のX線回折の研究成果についての発表を聞いたことがありました。。

淡々と話す彼の発表内容は他の誰よりも群を抜いて素晴らしく、スクリーンに映し出されたX線回折の写真も、これまでに見たことがないほど鮮明なものでした。

 

ワトソンは彼を捕まえて話をする機会を得、一緒にDNAの研究がしたいと思うほどに惚れ込んでしまったのでした。

しかし彼は、ワトソンとの食事が終わると、「もう行かなくては」と別れの言葉を残して、そそくさとホテルに帰って行きました。

ワトソンの想いは彼には届かず、片想いの悲恋に終わったのです。

この人物こそ後年、ワトソン、クリックとノーベル賞を共同受賞することになるキングス・カレッジ・ロンドンのモーリス・ウィルキンスその人だったのです。

 

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Maurice Hugh Frederick Wilkins(1916年12月15日~2004年10月5日)

 

4.ウィルキンスの悩み

 

ワトソンにとって幸運だったのは、ウィルキンスとクッリクは、もともと同じ物理学者で、お互いにDNAに関心があり、汽車でわずか2時間の距離のキングス・カレッジ・ロンドンとキャベンディッシュにいるという共通項の多さから旧交があったのです。

そんな訳で、ワトソンはクリックと共に、時には一人でしばしばキングス・カレッジのウィルキンスを尋ねるようになりました。

 

そんなある日、ウィルキンスがキャベンディッシュにやって来たときのこと。

ひと通りDNAについての意見交換をした後に、ウィルキンスは二人に赤裸々に自分の悩みについて話し始めました。

今、彼の頭の中は、ある女性のことで占められていて、仕事も手につかないといいます。

でもそれは、その女性に恋したなどという艶(つや)やかな話ではありませんでした。

彼が助手として雇った女性研究者が非協力的というか、ボスである自分に反抗的で、彼女のデータすら見せてくれないというのです。

なので、彼女の仕事がどこまで進んでいるのか、皆目分からないと言います。

ただでさえ研究がうまく進んでいないというのに、彼女との人間関係にホトホト憔悴しきっている、かわいそうなウィルキンスなのでした。

 

その女性研究者、ロザリンド(ロージィ)・フランクリンは、結晶作りとX線回折写真の技術が抜群で、その腕を買ってウィルキンスは彼女を助手として採用したのでした。

もちろん、DNAの構造解析の仕事を加速するためです。

 

当時の科学界は男性社会で、どんなに優秀でも、女性を一人前の研究者と認めない風潮があったようです。

ロージィはとても才気ばしった性格で、独立心と自意識が旺盛で、そのために博士号も取得している自分を助手としてしか扱わないウィルキンスに反発していたようでした。

 

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Rosalind Elsie Franklin(1920年7月25日~1958年4月16日)

 

後日のこと、ワトソンがウィルキンスの研究室でロージィと対峙!

「DNAはらせん構造だ!」と主張するワトソンと、「らせんを示す証拠などない!」と言い張るロージィとが口論になり、感情の高ぶったロージィがワトソンの鼻先に詰め寄ると言う事態が勃発!

なんと無謀にもジミー坊やは、いくつも歳上のおプライドの高いお姉さまに、「もう少しお利口だったら、DNAがらせんだと言うことくらい理解できるだろう!」的なことを口走ってしまったのです。(怖)

そら、怒るわな。。。

彼女のあまりの剣幕に気圧(けお)されたワトソンは、ほうほうの体(てい)で部屋から逃げ出し、廊下でウィルキンスと鉢合わせ。

そのとき、ワトソンはウィルキンスに言いました。「モーリス、今やっと君の気持ちが分かったよ」

 

ワトソンは著書の中で、ロージィが自己制御の出来ないヒステリックな女性であったかのように描写しています。

誤解のないように言っておきますが、ワトソンが描写したロージィ像は、当時の若きアメリカ人青年ジムが受けた彼女に対する率直な印象に過ぎないと言うことです。

そのことは、ワトソン自身が認めています。また、彼女が優れた科学者であったことも。そして、結構いいナオンだったことも。

しかしながら、世界的ベストセラーとなった高名なワトソンの著書のために、ロージィの人柄に対する誤解が世界中に広まったと、彼女の死後、その名誉を回復しようとする人たちが著書を出し、生前のロージィの真の姿を伝えています。

 

5.決め手になったデータは盗んだもの!?

 

そんなある日、ワトソンはウィルキンスから呼び出されました。是非、見せたいものがあると言います。

ウィルキンスは、ワトソンに一枚のX線回折写真の写しを見せました。

なんとそれは、ウィルキンスがロージィの留守中に、彼女が撮影したDNA結晶のX線回折写真をこっそり持ち出し、コピーを取ったものだというではあ~~りませんかっ!(そんなん、ありか!?)

 

明らかなる不正!!

高名なるノーベル賞受賞者のワトソンが、過去に自ら不正をした事実を、なんと自身の著書の中で臆面もなく告白しているのですよ!!

それも、ノーベル賞受賞対象の偉大な業績に直接関わる不正なのですよッ!!

(この件については、後にロージィとの間で和解したようです)

 

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あまりにも有名なフランクリンが撮影したB型DNA結晶のX線回折写真(こいつを盗んだ!)

 

どうどうどう。

気持ちを落ち着かせて、話を元に戻しましょう。

その写真の回折パターン(上図)を見せられて、さすがのワトソンもらせんを確信しました。

彼は、帰りの汽車の中で、昼間見た写真の回折パターンを、記憶に頼って新聞の切れはしに模写していました。

この模写から、DNAのより正確な構造を予測するには、賢人クリックの頭脳が頼りです。

 

そして今、クリックが長いあいだ待ち望んでいたものが、まさに彼の目の前にあります。

彼は、その新聞の切れはしを見て、彼が一番知りたかったこと、すなわちDNAの塩基のハシゴの間隔とらせんの直径をザッと計算したのです。

これから、DNAのらせんが、どれくらいの間隔でひと巻きしているのかが分かります。

そして、計算から予測された直径にDNAの三つのパーツであるリン酸と糖と塩基を規則正しく収納させなければならないという、絶対条件も分かりました。

これらは、とんでもなく重要な情報で、DNAの構造決定に向けて、二人に大きな前進をもたらしたのです。

 

となると、彼らが次にやるべきことは何か?

それは、「らせん」であることを大前提として、DNAが取り得る構造の分子模型を作ることだったのです。

それも、二本のDNA鎖が互いにねじれ合った「二重らせん構造」です。

 

なぜ二重かって? ワトソンの直感です。

理論家のクリックは、「理論上は三重らせんも四重らせんもあり得る」と言いましたが、ワトソンは、陰と陽、プラスとマイナス、オスとメス、生物を含めて自然はあらゆるものが「対」になっており、シンプルなはずだと考えたのです。

そして、その彼の直感は、見事彼らを勝利に導いたのでした。

 

6.果てしのない模型いじり

 

DNAが糖、リン酸、塩基の3つの部品から出来ていることは分かっていました。

これら3つの部品の構造もです。

DNAが、これら3つのパーツのいずれかの組合せでできていることは明らかで、その無限とも思える組合せの中から、二重らせんを見事に形作る唯一の構造を見つけ出すことができれば、彼らの頭上に栄冠が輝きます。

 

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DNAの3つの部品。糖(S)、リン酸(P)、塩基(G、A、T、C)の構造

 

ワトソンたちは、この3つのパーツのブリキ製の模型をたくさん作ったのです。

大学内の工作室に発注したのですが、ワトソンの設計図どおりに手作業でブリキ板を切り出し、ハリガネをねじ曲げ、ハンダ付けしたりするのですから、納品にはそれなりに時間がかかります。

ブリキのパーツが出来上がるまでの間、彼らが何もせず手をこまねいていたのかと言うと、そうではありません。

ワトソン自ら厚紙を切り抜いて、糖、リン酸、塩基のパーツを作って、どう組み合わせたら二重らせん構造に収まるか、ああでもない、こうでもないと、日がな一日パーツを組み合わせるという模型いじりに興じたのです。

(模型いじり? これが世紀の大発見をもたらした「科学」なんすかね?)

 

「これだッ!」というパーツの組合せが出来上がるたびに、ワトソンはクリックを呼びつけます。

クリックは、ワトソンが組み立てた模型の前で険しい顔をして腕を組み、ときおり模型の分子間の距離を定規で測ったりしています。

その様子を不安そうな面持ちで見守るワトソン。

そして、そのたびにクリックからダメ出しされるのがオチでした。

「この構造は、熱力学的にあり得ない」とか、なんとかかんとか、ってな具合ですな。

 

ロージィの写真の模写を見る、ずっと前。そう一年以上も前のこと。

彼らは、十分なデータがない状態で、すでに模型作りを始めていました。

ある日、クリックも「これならいいだろう」とワトソンにOKを出して、さあ、いよいよ模型をお披露目だと言うことで、ウィルキンスやロージィに見てもらったことがありました。

ウィルキンスは無表情。

その彼の表情を、不安そうにのぞき込むワトソンとクリック。

一方、ロージィの眼が見開かれました。

「なんなのこれは! こんなのがDNAであるはずないじゃないっ!!」

キャベンディッシュくんだりまでやって来て無駄骨だったとばかりに、毒まき散らして(笑)帰って行ったとさ。

 

この一件以来、クリックは慎重になりました。

この時の二人の失策は、所長のブラッグ卿の耳にも入るところとなり、卿を小おどりさせることとなりました。

卿は日頃、30代半ばにもなるというのに、まだ博士号すら取れない輩が天才づらして何にでも首を突っ込み、研究所中をかき回した挙句に何の成果ももたらしたことのないクリックを苦々しく思っていたのです。

クリックには、DNAなんてものに熱を上げないで、まずは博士号を取るための本来の研究テーマに集中して欲しい。これはブラッグ卿の親心でもありました。

一方のクリックにしてみれば、DNAが何の頭文字かも知らない前時代の遺物のような老人に、これ以上、自分にDNAの仕事をやめさせるための口実を与える訳にはいきません。

 

クリックは、少しでも疑念のあるモデルについては、納得いくまで検証しました。

しかし、100%の確信を持って「これだ!」と言えるものは見つけることができません。

 

7.そしてノーベル賞

 

こんなことを無為に繰り返していたある日、偶然にもワトソンは決定的なヒントを得ます。

これこそが、模型いじりから彼らをノーベル賞に導いた極めつけの情報でした!

 

ワトソンからDNAの模型を見てくれてと頼まれた化学者、ジェリー・ドナヒューが、ワトソンの塩基の模型の構造が間違っていると指摘したのです。

「ええっ!? 化学の教科書に載ってる通りに模型を作ったんやでッ!」

「だ、か、らぁ、教科書に載っている塩基の構造が、ほとんど全部間違ってるんだよねー。うんうん、知らないの君?」

「な、な、なんやとぅ? 教科書が間違ってるなんて思いもせえへんかったど!なんじゃそりゃあ〜!」

それが本当だとして、じゃぁ、なんでこの男だけがそのことを知っているんだ? こいつが教科書が間違ているって証拠を持っているってのかよ??

ドナヒューは、実際のDNA分子の中で、塩基が教科書に載っているような構造を取りえないことと、その理由について説明しました。

これは最近分かったことなので、多くの化学者がまだ知らないし、修正されていない古い教科書は全部間違っているのだと。。。

 

つまり、間違った構造の模型をいくらいじくり回しても、正しい答えにたどり着けるはずもなかった訳です。

化学の落第生、ワトソン君の面目躍如!

ワトソンは、化学の専門知識がなかったために、何日もの時間をムダに浪費したのでした。

否、クリックも知らなかったわけですから、仕方ありません。

 

彼はさっそく、ドナヒューが正しいと教えてくれた構造の塩基の模型を厚紙で作り、また、ああでもない、こうでもないと、模型いじりを再開しました。

それはまるで、幼児のブロック遊びと同じに見えました。

そしてついに、ワトソンの頭にビビッと来るものがありました。

あの有名な二重らせん構造の組合せに出くわしたのです。

 

塩基のGとC、AとTが向かい合って対を作ることで必然的に二重らせん構造になる。

これは全てがシックリくる!

これまでに知られているあらゆるDNAの性質とも矛盾しない。

つねにGとC、AとTの数が同じと言う「シャルガフの経験則」も完璧に説明できる!

親細胞の遺伝情報をどうやって正確に複製して、分裂後の娘細胞に受け継がせることができるのかも!!

そして何よりも、ロージィの回折写真と矛盾しない!

 

しかし、ワトソンはそれでも不安でした。

ドナヒューに自分の思いつきについて話し、何か不都合があるかと尋ねました。

彼が「いや、大丈夫だ」と答えたときには、天にも登る心地がしました。

ついに自分は、生命の造形物の姿を見出したのだと!

 

今までのモデルはどれも、自分でも「ちょっと無理があるな」と感じるものばかりでした。

そして、そのようなものは決まってクリックからダメ出しを食らって、あるものは瞬殺されてきたのでした。

しかし、今度のは違う! ワトソンには確信に近いものがありました。

 

さっそく、クリックを呼びつけます。急いで来いと。

今度はワトソンも自信満々!

しかし、相変わらずクリックは苦虫噛み殺した顔で模型のあちらこちらに定規を当てたりしています。

その様子を見て、またもや不安に駆られるワトソン。

わずかな時間が、永遠に続くかとすら思うほど、長く感じられます。

やはり、今度も自分は間違っているのか!?

その時、クリックの表情がゆるみました。そして、感情が爆発しました。

「やったなジム!ついにやったんだーッ!!」

 

今、二人の目の前には、厚紙ではなく、精密に作られたブリキ製のパーツからなる精緻な二重らせん構造の模型が威風堂々、誇らしげにその姿をさらしています。

 

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二重らせん構造の模型とJames Dewey Watson(1928年4月6日~)(左)、Francis Harry Compton Crick(1916年6月8日~2004年7月28日)(右) 相変わらずクリックは定規を手にしていますね(笑)計算尺かな?

 

全てが完璧! 全てが理論通りの数値に当てはまる!

 

ウィルキンスがやって来て、「おめでとう」と祝福してくれました。

ワトソンとクリックは、ロージィにも来て見てくれるように頼みました。

今度こそ彼女を屈服させ、「ざま見ろ」と言ってやりたい心境だったのでしょうか?

否、彼女に見てもらうことこそ試金石!

 

ロージィは険しい顔で模型を凝視しています。

この時は、さすがのクリックも胃の腑が締めつけられるような思いで彼女を見つめます。

そしてついに、ロージィの口が開かれました。

「こんなに美しいものが、間違いであるはずがないわ」

 

目の前にあるそのモデルは、生命がこれほどまでにシンプルで美に溢れたものかと、万人にため息をつかせるほどの完璧な調和を表現していたのです。

 

8.ロージィとウィルキンスとノーベル賞

 

その後、ワトソンはアメリカに帰国しました。

キャベンディッシュに残ったクリックは、ロージィと親交を深めました。

ロージィはクリックに、よく仕事上のアドバイスを求めたようです。

二人は互いに認め合うよき友人になっていました。

やがてロージィは体調不良を訴えます。

卵巣がんに侵されていたのです。

1958年、37歳の若さで逝ってしまいました。

 

ノーベル賞は故人には授与されません。

その代わり、といってはウィルキンスには失礼ですが、彼はワトソン、クリックと共に1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。

 

takyamamoto.hatenablog.com

珍事! 故人にノーベル賞授与!

 

ロージィは、DNAの仕事の他にもタバコモザイクウイルスの構造決定など、結晶化学者として傑出した業績を残しています。

彼女が優秀な科学者であったことは疑いようもありません。ワトソンもそのことは認めています。

彼女は一人前のひとりの科学者として認めてもらいたかっただけなのです。

自分の業績を正当に評価してもらいたかった。。。

ですが、当時の社会の女性に対する不当な扱いの前に、高い知性と自尊心を備えた彼女は男性社会との苦闘の路を選んだのでしょう。

 

一方のウィルキンスはと言うと、ワトソンの著書では、ロージィのことに頭を悩ます内向的で神経質で慎重な研究者のイメージです。

しかしながら、当初、ワトソンはウィルキンスの知性の高さと落ち着いた物腰に惚れ込み、彼と仕事をすることを切望するほど、非常にいい印象を持っていたのも事実です。

ロージィと同様、ワトソンの著書で描かれたウィルキンス像もまた、若きアメリカ人青年ジムが受けた印象に過ぎなかったわけです。

 

二重らせん構造発見の話題になるたびに、ワトソンとクリックが並び称されるのに対して、ウィルキンスのことが取り上げられることは、ほとんどありません。

これは、良くも悪くもエキセントリックなワトソンとクリックのキャラクターに対して、ワトソンの著書によって固定化されたウィルキンスの地味なイメージのせいなのでしょうか?

実際にも、ウィルキンスは高い知性を備えた優秀な科学者だったとワトソンも書いている一方で、クリックからすれば、ウィルキンスはDNAに賭ける情熱も自分たちほど熱くなく、「金の卵を手にしていながら、何をぐずぐずしているんだ!」と蹴りを入れたくなるような、おっとりな性格だったようですね。

 

9.誰か一人が欠けても100年に一度の大発見はなかった!

 

  • 自分達ではDNA結晶のX線回折データを取得できなかったワトソンとクリック
  • 高品質の回折写真を撮りながら、DNAがらせん構造だと思い至らなかったロージィ
  • 不正にコピーしたロージィの写真をワトソンに見せたウィルキンス
  • 新聞の切れはしから、DNAのらせん構造の詳細を知ったクリック
  • らせんは二重構造だと直感したワトソン
  • 化学の教科書が間違っていることをワトソンに教えたドナヒュー

 

科学の進歩は、ひとりの人間の抜群な頭脳さえあれば良いと言うものではないのですね。

ロージィの腕、ワトソンの直観力、クリックの頭脳、ウィルキンスの確信犯的行動(笑)。そして、たまたま居合わせたドナヒューの見識。

その他の些末にも思えるような人々の営みと出来事。

これら一つひとつのことは一見別々の事象のようで、実は点と点を結ぶ一本の線。つながった結果の偉業だったのです。

この点と線のどれか一つでも欠けていれば、この偉業はなかったでしょう。

 

その中で、ロージィとウィルキンスの人間関係は不幸でしたが、ロージィの貢献が素晴らしかったことは疑いようもありません。

私を含めた多くの人が、ロージィが存命だったらノーベル賞を受賞しただろうと考えてしまうのです。

そういう意味で、ウィルキンスはもっとも不遇なノーベル賞受賞者かもしれません。

しかし、彼が誰よりもいち早くDNAの結晶解析に着手し、その仕事を進めるためにロージィを雇い、その結果がノーベル賞につながったことも、また真実なのです。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、ご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

088【「ヒトゲノム計画」のその後】終わってみて、何かいいことあったのかい?

目次:

1.「アポロ計画」より、はるかに高くついた?

2.全部分かったとして、それで何かいいことあるの?

3.「1000ドルゲノムシーケンス」を実現した技術革新!

4.既に何千人もの日本人のゲノム情報が登録されている!

5.人間は神の領域に踏み込もうとしているのか?

 

ゲノムについては、このブログでも何度が触れていますね。

ゲノムとは、ある生物種がもつ遺伝子(基本的にDNA)の全体のことです。

ヒトでは、一つひとつの細胞の核の中にGATCの4種類の塩基の並び(塩基配列)が30億個もあります。

この30億もの文字の並び(400字詰め原稿用紙で実に750万枚!)を全て解読しようというのが、この国際プロジェクトの全てにして唯一の目的です。

 

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1.「アポロ計画」より、はるかに高くついた?

 

この30億もの文字列を解読するのに、当時の技術で、どれくらいの時間と費用がかかるのか、想像できるでしょうか?

 

「ヒトゲノム計画」は、日米英などが1990年に30億米ドルの予算を組んで幕が切って落とされた、一大国際プロジェクトでした。

30億塩基で30億ドルですから、一塩基1ドルと言うわけですね。非常に切りのいい金額で分かりやすいです。

目標期間は15年。2005年の完了を目指して始められました。

 

過去ブログでも詳しくお話した遺伝子増幅技術「PCR法」の普及や、塩基配列解析の自動化が進むなどして、解読作業が効率化されたため、目標より2年早い2003年(奇しくもワトソンとクリックによるDNAの「二重らせん構造モデル」の提唱から50周年)に全配列が決定され、プロジェクトが完了しました。

 

PCR法については以下の過去ブログをご参照

takyamamoto.hatenablog.com

 

とは言え、費用は当初の予想をはるかに超えて膨大になりました。

お金の価値は当時とは違いますが、一説には、「アポロ計画」をはるかにしのぐ金額だったとの噂もあります。(あくまでも噂レベルです)

ちなみにウィキによると、17回ロケットを打ち上げ、6度の月面着陸を成功させたアポロ計画の全費用は200億ドル以上にのぼったとあります。

 

2.全部分かったとして、それで何かいいことあるの?

 

よく「遺伝子」と言いますが、古典的な遺伝子の定義は「タンパク質のアミノ酸配列を規定した領域」のことです。

DNAの塩基配列は一見デタラメに見えますが、タンパク質のアミノ酸の配列がGATCの文字列の組合せで指定されていることと、遺伝子の始まりと終わりを示す配列が分かっているので、今では、コンピュータを使って、長大な塩基配列のデータの中から、タンパク質の配列を指定しているゲノム上の領域、すなわち「遺伝子」が存在する領域を予測することができます。

しかしそれは、タンパク質のアミノ酸配列が分かるだけであって、そのタンパク質の機能まで正確に予測することは困難です。

機能が分からなければ、やはりそれはただの文字列に過ぎないのではないか?

莫大な資金を投じて、文字列だけを全部解読して一体何が分かるってのか? 何かいいことでもあるのか?

 

全部読んでみた結果、研究者や専門家たちを驚かせたことのひとつは、人間の遺伝子のおおよその数が分かったことでしょう。

プロジェクト前は、ヒトの遺伝子の数は5万個とも10万個とも15万個とも予測されていました。

ところが蓋を開けてみると、、、多かったのか?少なかったのか?

実は、ヒトの遺伝子の数は3万個にも満たなかったのです。

これは驚きでした。

これほどまでに複雑な生命体である人間が、これほど少ない数の遺伝子で生きていけるとはっ❗️

 

本論に戻りましょう。

プロジェクトが始まる前から、ヒトゲノム計画の意義について様々な意見がありましたが、次のような対極的な指摘がありました。

指摘1:ヒトの病気と遺伝子との関わり合いの解明など、人類の幸福と生命科学の発展に大きく寄与する。

指摘2:所詮はただの文字列。たくさんの人のゲノムを比較解析しないと、また、遺伝子の機能が分からないと、重要なことはほとんど何もわからない。

 

ヒトゲノム計画が終了してちょうど15年。果たしてどちらが正しかったのか?

「どちらも正しかった」が正解でしょうか。

 

指摘2のとおり、遺伝子と病気などとの関わり合いについては、多くの人で比較しないと分かりません。

ところが、ヒトゲノム計画の終了後、2000年代の後半からゲノム解析の技術が超飛躍的進歩を見せたのです。

現在では、「1000ドルゲノムシーケンス」といって、10万円程度で人ひとりの全ゲノム配列を解読することが出来ます。それも、わずか数日で!

 

ですから、現在の「ヒトゲノム計画」に対する評価は、指摘1のとおりと言ってもいいでしょう。

なぜなら、現在では実際に、何百人、何千人ものゲノムを網羅的に比較解析し、特定の病気に関与する遺伝子などが見つけられているのですから。

 

takyamamoto.hatenablog.com

暴力犯罪者800人のゲノム解析で「犯罪遺伝子」を発見!?

 

3.「1000ドルゲノムシーケンス」を実現した技術革新!

 

ひとつには、コンピュータによる膨大な配列データ解析の精度とスピードの向上があります。

そしてもうひとつ、非常に革命的な技術革新が「次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer;NGS)」と呼ばれる、高速自動塩基配列解読装置の登場です。

このNGSは、生命科学分野にパラダイムシフトを起こすほどのインパクトがあったと言っていいでしょう!

 

イルミナ社の次世代シーケンサーの1機種

 

NGSでは1回の解析で、30億どころか1兆以上もの塩基配列を読み取ってしまいます。それもわずか1日!(これこそパラダイムシフト!)

NGSからアウトプットされた膨大な配列データをコンピュータで解析するのに要する時間を含めても、人ひとりのゲノム配列の決定が数日で完了します。

ですから、何百人ものゲノムの比較解析を行う研究なんてのも、それほど造作もないことなのですね。

 

上記の「指摘2」のように、ヒトゲノム計画の意義について否定的に考えた人たちだけでなく、ほとんどの専門家が、ヒトゲノム計画の完了後に、これほどの技術革新が起こるとは予想していなかったのではないでしょうか?

 

ちょっと古いですが、NGSについての分かりやすい記事がありましたので、リンクしておきます。

tech.nikkeibp.co.jp

 

4.既に何千人もの日本人のゲノム情報が登録されている!

 

NGSで市場をリードする米国のイルミナ社などが「100ドルゲノムシーケンス」、つまり100ドルまでのコストダウンを目指して技術開発にしのぎを削っています。

そうなってくると、医療の現場で、病気の診断や、患者ごとに最適な治療方法を決定するなどの目的で、全ゲノム解析が行われるようになるのでしょうか?

 

ゲノム配列は基本的に一生変わることがありませんので、一度解析すれば二度と行う必要がありません。

調べられたあなたのゲノム配列情報はデータバンクに登録され、必要なときにはいつでも情報を引き出すことが出来るようになるのかもしれません。

自宅からでも、病院の診察室の端末からでも。。。

 

以下の理化学研究所のプレスリリースにあるように、既に何千人もの日本人のゲノム配列情報がデータバンクに登録されており、研究への協力の同意の得られた人たちの情報が、様々な研究に有効に利用されています。

全ゲノムシークエンス解析で日本人の適応進化を解明 | 理化学研究所

 

現在、更なるコストダウンを目指すだけでなく、更なる高速化を目指した「次々世代シーケンサー」(「第三世代シーケンサー」とも)の開発が行われています。

この分野の技術革新はとどまるところを知りません。

 

5.人間は神の領域に踏み込もうとしているのか?

 

しかし、そんなに速くしてどうするんですかね?(は~やいことはいいことだ♪ってか?)

あらゆる生物種のゲノムを丸裸にして、生命の神秘を解き明かし、神の領域にまで踏み込もうというのでしょうか?

 

また、人間のゲノムの比較解析が進むにつれ、「優秀」な遺伝子と「劣等」な遺伝子なんかが見つかったりとか、現在ではタブー視されている「優生学」が復活したりして。。。

つまり、ゲノム解析から、優秀な人間と、そうでない人間に区別されたりとか。。。

 

以下の過去ブログでお話した通り、いまや人類は、生物のゲノムを思いのままに自由に改変する技術(「ゲノム編集」と「遺伝子ドライブ」)を手にしつつあります。

いや、もう既に「手にした」と言ってもいいのかもしれません。

「優秀」といわれる遺伝子を人間の受精卵に入れ込むことなど、現在の技術では、もはや造作もないことなのです。

倫理観と道徳心に欠けた人たちが、これらの技術を濫用するとどういうことになるのか?

最悪の絶望的なシナリオに付き、再度、以下の記事をお読み頂けると幸いです。(自分でも「力作」と思っている記事です)

takyamamoto.hatenablog.com

 

今回も最後までお読み下さり。。。

いやいや、このまま暗い感じで記事を終えると、なんだか後味悪いですよね(笑)

では、トリビアなウンチクをひとつ。

 

ヒトゲノム計画では、一人の人のゲノムが解析されたのではなく、各国のプロジェクトチームが、それぞれに別個の人のゲノムサンプルを使っていました。

なので、人種すら異なる複数の人の配列情報をつなぎ合わせたモザイクというか、キメラ(キマイラ)というか、、、そういう全ヒトゲノム配列だったのです。

 

キマイラ(山羊の胴体にライオンの頭、毒蛇の尻尾をもつギリシャ神話の動物)

 

個人が特定された、完全に一人の人間の全ゲノム配列が世界で始めて公開されたのは、あのDNA二重らせん構造モデルのジェームズ・ワトソン博士その人のものだったのです。2007年のことでした。

ちゃんちゃん♪

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

今度は本当に終わり(^^)

 

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是非、ご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

087【「丸山ワクチンの真実」がん(その11)】着想から70年以上!末期がんから生還した人、数知れずも、いまだ未承認の「元祖がん免疫療法剤」

目次:

1.ワクチンでガンが治るって?

2.がん免疫療法の祖、丸山博士は皮膚科医

3.結核ワクチンが、なぜハンセン病にも効くのか!?

4.腫瘍免疫学を半世紀以上先取りしていた偉人

5.口コミで広がった丸山ワクチン

6.承認治療薬を目指して

7.不当な「不承認」

8.製薬行政の「大人の事情」って?

9.条件を満たせば、丸山ワクチンの治療は誰でも受けられる

 

丸山ワクチン」ってご存知ですか?

聞いたことくらいはあります?

どんな印象を持ちます?

ワクチンでガンが治るなんて、それも末期がん患者が治るなんてうさん臭い?

まあ、そんなところかなと思います。

 

丸山ワクチン」は世界初のがんワクチンです。

その考え方は斬新でした。

斬新すぎて、返って受け入れられにくかったのかもしれません。

 

免疫力でガンを治す!

免疫チェックポイント阻害剤に先立つこと60年!

丸山先生がご存命なら、ノーベル賞を受賞しても全然おかしくない!!

丸山先生のコンセプトが正しかったことは、21世紀の医学研究が証明しています。

 

※ 本ブログ記事は、丸山ワクチンの抗腫瘍効果を保証するものではありません。臨床試験にて「効果なし」との報告も多くあり、その効果は科学的には未だ証明されていません。

 

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1.ワクチンでガンが治るって?

 

ワクチンというのは、感染症の予防で使用される予防接種ですよね。

細菌やウイルスに対する免疫力をつけさせてやることで、感染症を予防するものです。

 

「がんワクチン」

がんは感染症ではありませんよね。

なのにワクチンでガンが治る?

 

本ブログの熱心な読者の方はよくご存知のことと思いますが、本来、我々の体は、自身の免疫力でガンをやっつけられるだけの強力な治癒力を備えているものなのです。

その人間が本来持つ免疫力を引き出すのが、ひとつは「免疫チェックポイント阻害剤」であり、あるいは私がよく話題にしてきた自然免疫を強力に誘導する「βグルカン」なのですが、この両者がなぜガンによく効くのかが理解されるようになったのは、やっと今世紀に入ってからです。

しかし、戦後間もなく、既にこのことに気がついた、誠に先見の明をもった医学者がいたのです。

丸山千里(ちさと、私の娘と同じ名前です)博士その人です。

 

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丸山 千里(1901年~1992年)

 

2.がん免疫療法の祖、丸山博士は皮膚科医

 

丸山先生は皮膚科医でした。

太平洋戦争も激しさを増す1944年、丸山先生は結核のワクチンを作ろうとしていました。

当時、結核のワクチンとしては、細菌学の祖、ロベルト・コッホが1890年に開発したツベルクリンがありましたが、あまりにも副作用が強く、ワクチンとしては決して有効とは言えませんでした。

当時の日本人の死因第一位は圧倒的に結核

なんとかこの疾病を防ぐすべはないものか!?

 

コッホが開発した結核ワクチンは、結核菌の抽出物からできたものでした。

免疫というのは、病原体の物質に対して免疫を作るのですから、病原体の抽出物を注射して免疫を惹起する。この考え方はワクチンの基本です。

ではなぜ、これほどまでに副作用が強いのか?

丸山先生は、コッホのワクチンには結核菌由来の毒性の強い物質が含まれていると考え、その有害物質を特定し、取り除く研究を日夜続けていました。

しかし、その研究は困難を極めました。

寝ても覚めてもそのことばかり。家庭も顧みず研究に没頭する日々。

それもこれも、ひとりでも多くの命を救いたいがためでした。

 

3.結核ワクチンが、なぜハンセン病にも効くのか!?

 

試行錯誤すること3年。

研究に没頭するうちに戦争は終わっていました。

そして、ついに研究は成功。

動物実験で副作用の出ない結核ワクチンの開発に成功したのです!

 

結核の患者によく効き、ツベルクリンよりも断然副作用が少ないのでした。

ワクチンというと「予防」とお思いかもしれません。

しかしワクチンは、発症したあとからでも免疫力を増強することで、病気を回復させるものもあります。

 

皮膚科医の丸山先生はハンセン病患者も診ていました。

な、なんと、結核ワクチンである丸山ワクチンは、なぜかハンセン病患者にもよく効いたのです。

ハンセン病はらい菌によります。

結核菌に対する免疫は結核菌のみに有効で、他の菌に効果があるはずありません。

これは当時の免疫に関する経験則では常識でした。

はしかに対する免疫が水疱瘡に無力なのと同じです。

なぜ丸山ワクチンハンセン病にも効くのか?

理由は分かりませんが、とにかく丸山先生はハンセン病患者も注意深く観察しました。

 

4.腫瘍免疫学を半世紀以上先取りしていた偉人

 

当時、東京・東村山のハンセン病患者専門の療養施設には1300人もの患者がいましたが、ある日、丸山先生は、施設にこれだけのハンセン病患者がいながら、ほとんどガン患者がいないことに気がついたのです。

なぜ???

そこで、丸山先生はご自身が診ている結核患者についても調べてみました。

やはり、ほとんどガン患者はいなかったのです。

なぜ? なぜ?? Why??? ホワ~イ????

 

丸山先生は考えました。

ハンセン病患者に結核ワクチンが効くはずがない。結核にせよ、ハンセン病にせよ、病原菌に感染している状態であることが、ガンにはならない原因なのではないか? 理由は解らないが。。。」

ここが丸山先生の凄いところ。誠に先見の明です。

 

ほんの数十年前まで、いや、21世紀に入ってからも、「アレルギー疾患の人は免疫が過剰なので、ガンや感染症にかかりにくい」とか、逆に「感染症の人は免疫が落ちているから、ガンにかかりやすい」なんてことを平気で言う人がいました。

そんなことはありません。いや、むしろ大間違いです。

感染症にかかりながらも、ガンにもならない人は少なくないのです!

このことについては、以下の過去ブログで詳しくお話しています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

過去ブログでお話したとおり、免疫は「強いか弱いか」という、シーソーのような二元的なバランスで成り立つものではないのです。

当時の免疫の常識に囚われることなく、早くもそのことに気づいた丸山先生は、まさしく偉大だったと思います。

まことに半世紀以上、時代を先取りしていた人です。

 

5.口コミで広がった丸山ワクチン

 

結核菌であれ、らい菌であれ、何らかの病原菌に感染していると、ガンになりにくい。

自分のワクチンは結核菌から抽出したもの。

これを接種すれば、結核菌やらい菌に感染したのと同じ効果を与えて、ガンを抑制するのではないか!

丸山先生は、自身の思いつきを確かめたくって仕方ありませんでした。

でも、ひとりでできることは限られています。

そこで、全国の病院・医院を回り、自分の発見と自身の考えを説いて、協力者を募りました。

 

丸山先生の話に強い関心を示したひとりの医師がいました。

彼は急性リンパ性白血病の少年を診ていました。

それも、大きな大学病院で抗がん剤治療を受けたものの、もはや打つ手なしと見放された子です。

その医師も半信半疑だったことは言うまでもありません。

でも、他に何ら手立てはないのです。

失うものは何もありません。

 

その患者に丸山ワクチンを各日で打ちました。

なんと、少年は1年で退院出来るまでに回復したのです。

こうして少年は、丸山ワクチンで末期ガンから生還した「症例第1号」になったのです。

 

でも丸山先生は、この1例だけで浮かれることはありませんでした。

その後、丸山先生は、多くのお医者様の協力を得て、丸山ワクチンの評価を続けました。

喜びの患者の声は、患者から患者へ! 驚きの医師の声は、医師から医師へ!

全国から、丸山ワクチンに最後の望みを託した患者さんたちが、丸山先生を頼んでやって来るようになったのです。

 

6.承認治療薬を目指して

 

1966年7月になってようやく、丸山先生は、「結核菌体抽出物による悪性腫瘍の治療について」という臨床報告をしました。

イタリアのフィレンツェで行われた国際癌学会でも発表し、大きく注目されました。

 

そして日常に戻れば、結核菌を培養して抽出液を調製する作業と、全国からやって来るがん患者に向き合う日々をひたすら続けるのでした。

丸山先生は70歳を超える年齢になっていました。

丸山先生の息子さんたちは、もし父親に万が一のことがあれば、丸山ワクチンが永遠に失われることを危惧していました。

製薬メーカーにノウハウを譲れば、丸山ワクチンは生き続けることができます。

しかし、人の命を盾にとって利益を得るような製薬メーカーの手に渡れば、いい金儲けの道具にされるだけではないか?

丸山先生は迷っていました。

しかし、息子さんたちは、僅かな希望をこの薬にかける多くの患者さんのため、幻の薬に終わらせないようにと丸山先生を説得しました。

 

丸山先生が選んだのは、中堅の新興製薬メーカーでした。

ゼリア新薬工業

丸山先生が、なぜこの会社を選んだのか? いろいろ調べましたが分かりませんでした。

利益第一主義の大手製薬メーカーに不信の念があったのでしょうか?

 

ゼリア新薬丸山ワクチンの権利を得たことを受けて、報道が過熱しました。

日本国内はもとより、海外からも丸山ワクチンを求めて患者が殺到したのです。

丸山先生に協力する医師や医療機関からも、続々と臨床データが発表されました。

様々なガン種において、手の施しようのない末期がん患者で5割を越える5年生存率を示す結果が続々と報告されたのです。

これは驚くべき数字です。

単純に数字を比較できるものではないのですが、もしかすると「免疫チェックポイント阻害剤」よりもすごいかも知れない!

しかも、副作用はほとんどなし!

 

7.不当な「不承認」

 

1976年。丸山先生は、数々の驚くべき臨床データを含めた著書を発表しました。

その著書の中で、丸山先生は、「丸山ワクチンは、放射線療法や化学療法との併用よりはむしろ、単独で使用してこそ効果がある」と言ってのけたのです。

これは、医学会や製薬業界に非常に強い不快感を与えたようです。

丸山先生のこの本は、一般の人の興味を惹きましたが、一方で丸山ワクチンの「悲劇の始まり」ともなったようなのです。

なぜなら、これ以降、一日も早く治療薬として国の承認が欲しいと願い、丸山先生がガン関連の学会で最新の成果を発表すると、学会の重鎮から「こんなうさん臭い薬で人心を惑わすことはやめるべきだ」というようなことまで言われる始末なのでした。

同年11月。ゼリア新薬は当時の厚生省に「抗悪性腫瘍剤」として承認申請をしましたが、国はなかなか丸山ワクチンの効果を認めようとはしません。

「提出されたデータでは効果は確認できない」として、何度も何度も追加のデータの提出を求めては、ダラダラと承認を引き伸ばしました。

 

1981年8月。ついに厚生省は「不承認」を決定したのです。

ところが、ここが役所のよく分からんところです。

「引き続き有効性を検証するため」として、「有償治験薬」としたのです。

「有償治験薬」って何じゃ?

ホンマに「何?」ですね。

 

普通、治験(実際に患者さんに薬を投与して効果や安全性を検証する、端的に言えば「人体実験」)と言えば、患者が費用を負担することは一切ありません。

ほとんどすべての費用は申請する製薬メーカーが負担するものです。

これは極めて異例な扱いです。

なぜ患者が治験の費用の一部を負担しないといけないのか?

確かに、たとえ有償でも「丸山ワクチン」を投与して欲しいと望む患者さんは後を立たなかったのは事実です。

国が、そういう人たちに配慮したのでしょうか?

「却下」した薬でも、望む人には与えられるようにと。

いや、うがったところでは、どうしても丸山ワクチンを治療薬として認められない大人の事情があったのかもしれません。

しかし、それでは丸山ワクチンを必要としている多くのガン患者さんからの謗り(そしり)は免れない。

それなら、「有償治験薬」という名目で、「完全に却下した訳ではない」とアピールしたかったのではないのでしょうか?

 

8.製薬行政の「大人の事情」って?

 

以下は、ネットに書き込まれた多くの人の見解をまとめた上での推論に過ぎません。そのことを事前にお断りした上で書かせていただきます。

 

丸山ワクチンの承認申請以前には、いや、その後でも、副作用が強く、効果もそれほど顕著でない抗がん剤が多く承認されてきました。

そこに驚くべき効果と副作用の少ない丸山ワクチンの承認申請があったわけです。

抗ガン作用のメカニズムはほとんど不明。でも効き目は凄い!

もし、こんな怪しいものでほとんどのガンが治ってしまったら、これまでの抗がん剤はいったい何だったのか?

承認した国も、使用を推奨した医学会もメンツ丸潰れです。

いや、潰れるのはメンツだけでは収まりません。

抗がん剤を主力製品にしている大手製薬メーカーまでも潰れかねません。

経済界・産業界が打撃を被ります。

 

のらりくらりと承認を避けながらも、必要とする患者からは決して取り上げはしなかった。

ネットで世論の論調を読んでいると、おおかた上のような事情の様に読み取れます。

 

9.条件を満たせば、丸山ワクチンの治療は誰でも受けられる

 

ゼリア新薬の申請から42年が経過した現在。丸山ワクチンはいまだ承認されていません。

しかし、現在でも、「有償治験」に参加する意思がある患者は誰でも(治験対象患者の条件を満たせば)、丸山ワクチンの投与を受けられるのです。

でも、気になりますよね。

先進医療みたいな特別な治療法って、全国でも一部の医療機関でしか受けられないですよね。

丸山ワクチンの投与を受けられる医療機関って、全国でどれくらいあるんですか?

実は、がん治療を行っている医療機関であれば、全国のほとんどすべての医療機関で投与を受けられるそうです。

そして、気になる費用は1ヶ月分1万円弱!

なんと、1年でも10万円程度です。

 

治療薬として厚労省から未だに承認されておらず、もちろん保険適用もされていないわけです。

でも、それが一月1万円ってどういうことですか???

これで末期ガンから生還できるかもしれないとの希望が持てるの?

それだったら、厚労省の承認なんて必要ないですよね?

 

でも、承認薬でないことのデメリットもあります。

ひとつには、丸山ワクチンの正しい情報が、それを必要としている人に伝わりにくいということです。

打つ手のなくなった患者に、諸手を挙げて丸山ワクチンを薦める医師も、そう多くはないでしょうし。

 

丸山ワクチンのオフィシャルサイトがあります。

丸山ワクチン・オフィシャルサイト

 

また、医療機関によっては、ホームページで丸山ワクチンの情報を取り上げているところも少なくありませんので、検索してみて下さい。

 

この記事が、情報を必要としている方々のお役に立てれば幸いです。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

是非ともご意見・ご感想、ご批判・お叱りのコメントをお願い致します。

大変励みになります。

 

 

読者の皆様へのお礼【「ピノコ」と「エクソシスト」がご好評を頂いています】

本ブログを始めて、1年と1ヶ月が過ぎました。

過去110個の記事の中で、最近ご好評を頂いているのが「ピノコ」と「エクソシスト」ですね。

お読みくださった読者の皆様、本当にありがとう御座います。

とても励みになっています。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

まだお読み頂いてない方も、是非ともお目通し下さい。

 

それから、最新記事の「20世紀の生命科学史上最大の大発明、遺伝子増幅技術PCR法の誕生秘話」も、かつてないほどご好評を頂いています。

この記事で私が気に入っているのは、ノーベル賞受賞科学者に対する美智子様神対応的な粋なお言葉なのです。

心がホッとすること請け合いですよ(笑)

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

お読み頂いた皆様、本当にありがとう御座います。

この記事は正直、最近の記事の中でも渾身の一作だと思っています。

 

でもですね、過去の記事で、最近では、もうほとんど読まれていないのですが、自分自身では今でも大々大好きなのが、以下の二つの記事なのです。

私が最も得意とする「がん」と「遺伝子」と「サイエンティスト」と「発見」について書いた二つの記事です。

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

takyamamoto.hatenablog.com

 

この機会に是非、一度お目を通しして頂ければ幸いなのです。

よろしくお願い致します。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

号外【ガールフレンドとドライブしてノーベル賞だって?】20世紀の生命科学史上最大の発明「PCR法」誕生秘話!

目次:

1.ある夜の出来事

2.逆転の発想!

3.DNAそのものをコピーして増やす!!

4.PCR法の原理

5.シータス社の技術者たちの苦闘!

6.ノーベル賞は誰のものか?

7.PCR法初体験の私の感動物語

8.PCR法がもたらした革命!

9.「それでは、もうひとつ大発見ができますね」美智子様の粋なお言葉

 

生命科学のみならず、様々な分野で革命を起こした遺伝子増幅技術「PCR法」!

その誕生秘話と人々の悲喜こもごもについてお話しします。

 

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1.ある夜の出来事

 

1983年4月のある金曜の夜、アメリカのバイオテック企業「シータス社」の上席研究員キャリー・マリス博士は、助手席にガールフレンドを乗せて車を走らせていました。

その時、彼の頭の中を占めていたのは、隣にいる魅惑的なジェニファーのことではなく、この数年もの間、彼を悩ませ続けてきたあることだったのです。

 

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Dr. Kary Banks Mullis(1944年 12月28日 - 2019年 8月7日)

 

当時、シータス社では、画期的な遺伝子検査技術の開発に取り組んでいました。

 

「鎌状赤血球症」は、ヘモグロビン遺伝子のたった一個のDNA塩基の変異によって起こります。

異常なヘモグロビンにより、赤血球はそれこそ「鎌」の刃のようにねじ曲がった形をしており、重篤な溶血(赤血球が壊れること)性貧血症状を呈します。

しかし一方で、鎌状赤血球症の人はマラリア感染に高い抵抗性を示すのです。

ですから、私達アジア人やヨーロッパ人には少ないのですが、アフリカや中東、南アジアの一部地域など、マラリアが多く発生する地域に多く分布しています。

 

正常赤血球(左)、鎌状赤血球(右)

 

この鎌状赤血球症の遺伝子診断が可能になれば、遺伝子変異による他の多くの病気も、遺伝子レベルでの診断が可能になるのです。

医療の発展に寄与するとともに、会社に莫大な利益をもたらすことは疑いようもありません。

 

このゲノム上のわずかなDNAの差異を如何にして高い精度で検出するか。

当時のシータスの研究者達は、この難題に挑んでいたのです。

 

そして、マリスはこのとき、決定的な解決方法を思いついたのでした。

それはまるで、天から舞い降りてきたかのように!

 

2.逆転の発想!

 

当時の技術で、わずかなDNAの差異を感度よく検出する方法はこうです。

 

DNAのわずかな差異を見つけることは、そう難しくありません。

過去ブログでお話したとおり、DNAやRNAは特定の配列と結合する能力があり、変異のあるDNA配列に結合する短いDNA鎖を探査プローブとして使うのです。

その辺の原理については、以下の過去ブログで説明しています。

takyamamoto.hatenablog.com

 

問題は、変異部位に結合したプローブを検出する感度です。

当時、最も高感度な方法は放射性同位元素を用いることでした。

プローブにあらかじめ同位元素を標識しておくことは難しくありません。

検体のDNAに結合した同位元素標識プローブは放射線を発します。

この放射線X線フィルムを感光させ、フィルムの上に黒いシミ(以後「バンド」と呼びます)となって現れるのです。

 

ところが、この方法でも感度は十分ではありませんでした。

検体のDNAの絶対量が足りないのです。

 

患者の血液検体から、可能な限り多量のDNAをかき集めて、何日も何週間もフィルムを感光させても、あるのかないのか、わずかな薄いバンドしか得られません。

何週間もかかっていては、とても実用的な検査方法とは言えません。

 

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DNA量が少ないほどX線フィルムを感光させて出現するバンドは薄くなり、一定量以下では検出できなくなる

 

どうすれば、もっと検出感度を上げられるのか??

シータスの研究者たちは、検出技術の感度を上げることばかりを考えていたのです。

 

ところが、マリスの発想は、それとはまったく別のものでした。

 

3.DNAそのものをコピーして増やす!!

 

当時、シータス社で遺伝子検査技術の開発を行っていた研究員の多くが分子生物学者でした。

分子生物学とは、遺伝子やタンパク質の構造や機能を研究する学問であり、分子生物学者は遺伝子、すなわちDNAやRNAを解析する技術に習熟した者ばかりです。

一方、マリスはと言うと、化学者でした。厳密に言うと、核酸の合成化学者だったのです。

 

マリスはむしろ、遺伝子解析技術に精通した分子生物学者でなかったことが幸いして、解析技術の感度の向上だけに執着せずに済んだのでしょう。

 

60億塩基対もあるヒトのゲノムのうち、わずか一塩基の違いを検出する技術。

塩基が60億個も入ったコップの中の、たった1個しかない差異を見つけ出すには、それはもう大変な高感度が必要です。

でも、確かめたいのは、ヘモグロビン遺伝子のごく一部の領域であり、ゲノムのそれ以外の大部分はジャマなだけの存在であって、はっきり言ってみれば、ゴミ以外の何ものでもありません。

だったら、この目的の遺伝子領域だけをコピーを繰り返して増やし、そのコピーでコップを満たしてやれば、解析するのにそれほどの高感度は必要ないはずです。

従来の技術でも十分に検出できるでしょう。

 

検出技術の感度を上げることしか頭になかった他の研究者と違い、マリスは検体であるDNAそのものを増幅することと、その基本原理を思いついたのです。

この技術は「PCR(polymerase chain reaction;DNA合成酵素連鎖反応)法」と呼ばれ、マリスはこの業績により、1993年にノーベル化学賞を単独受賞しました。

 

4.PCR法の原理

 

写真のネガフィルムからポジ写真が、ポジからもネガをコピーできます。

これを無限に繰り返せば、1組のネガとポジから2組のネガとポジが、2組から4組、4組から8組、8組から・・・と言う具合に、倍々でいくらでもコピーを増やすことができます。

 

二本鎖のDNAも、それぞれの配列が互いに写しになっており、片方からもう一方がコピーされ、またその逆も然りです。

このDNAのコピーは、私たちの細胞が分裂するときには、当たり前のように起きていることです。

それと同じことを試験管の中でやればいいだけなのです。

「やればいいだけ」と言っても、後で述べる通り、それはかなりの修羅の道ではあったのですが。。。

 

DNAのコピーは、細胞内で起きているのと同じく、DNA合成酵素を使って行います。

このコピー作業を試験管の中で繰り返せば、同一の短いDNAの断片を、理屈では無限に増やすことができるのです。

 

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PCR法の原理

 

5.シータス社の技術者たちの苦闘!

 

PCR法の発想を得たマリス。このアイデアを得意満面に上司に説明します。

そのアイデアの合理性を理解した賢明なる彼の上司は、これを実験で検証するため、開発チームのメンバーを選定しました。

ところがマリスは、これを拒否。なんと自分ひとりでやって見せると言い放ったのです。

うまくいけば世紀の大発明間違いなし!

うがった見方では、彼は偉大な発明者の栄誉を他人に渡したくなかったのかも知れません。

ところが、事はそう簡単ではありませんでした。

 

DNA合成酵素により、試験管内でDNAのコピーを繰り返して、それこそ1個のDNAを無限に増幅するPCR法の原理は、完全に分子生物学の知見を必要とするものでした。

ところが、分子生物学の素養のない化け学屋のマリス。

何ヶ月経っても、いいデータは出てきません。

 

シータスの分子生物学者たちは苛立ちました。

「自分達なら、たちどころにやって見せるのに!」と。

そしてついに、マリスの上司も堪忍袋の緒が切れ、分子生物学のリサーチ・アソシエイツからなるPCR検証チームを立ち上げたのです。

 

リサーチ・アソシエイツというのは、日本で言うテクニシャンに当たるでしょうか。

博士号は持っていなくて、上司や指導者、リーダーのもとで、ことさら実際に手を動かして実験データを取得することが求められている人たちです。

なかには、ただ言われたとおりに実験するだけではなく、自分で考え、実験方法を企画・提案できる人や、また、凄く実験の腕のいい人など、優秀な人も多くいます。

 

今でこそ、PCR反応は完全に自動化されていますが、当時、この原理を検証するための手作業は非常に煩雑で、大変な労力と時間を要するものでした。

そして、忍耐強く、献身的なメンバー達の働きによって、ついにPCR法の原理の妥当性が立証されたのです。

このPCR法に関する最初の論文は、「Science」誌に掲載されました。

1985年12月のことです。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

PCR法の最初の論文

 

6.ノーベル賞は誰のものか?

 

PCR法の検証チームの中で、最も重要な役割を果たしたのは、Scienceの論文の筆頭著者であるリサーチ・アソシエイツのランドール・サイキです。

マリスがノーベル賞を単独受賞したとき、サイキをはじめ、PCR法の確立に貢献したシータスの人たちは、ノーベル賞選考委員会に強く反発の意を示しました。

マリスはアイデアを思いついただけで、何もしていない。自分達がいなければPCR法はなかったと。

 

伝統的にノーベル賞の受賞者選考に当たっては、最初の発案・着想が重要視される傾向にあるようです。

自身で、その発想が正しいことを証明したかどうかは、さして重要ではないようですね。

 

ウイルス発がん説を発表してからノーベル賞受賞まで55年もかかったラウス。

彼自身は、その説の正しさを証明出来ませんでした。

そして、50年後にそれを証明したのはアメリカのテミンでした。

takyamamoto.hatenablog.com

 

そのテミンは後に、クリックの「セントラル・ドグマ(中心教義)」を根底から覆す大発見をし、ノーベル生理学・医学賞を受賞します。

RNAウイルスの「逆転写酵素」の発見によってです。

テミンの説を実証した実験を行ったのは、日本人研究者の水谷哲さんでした。

しかし、水谷さんは受賞には至りませんでした。

takyamamoto.hatenablog.com

 

2002年にノーベル化学賞を受賞し、「サラリーマン受賞者」として一躍時の人となった島津製作所田中耕一さん。

質量分析技術の開発への貢献での受賞でしたが、実は田中さん、世界的には、その分野でほとんど無名でした。

国際的な論文や海外の学会で、あまり積極的に発表をしていなかったからです。

ですので、田中さん自身も受賞を知らされたとき、まさかノーベル賞だとは思わず、「ノーベル賞に似た、なんか別の賞」だと思ったくらいなのでした。

この業績でノーベル賞を有力視されていた他の研究者達ではなく、「なぜタナカなのか?」

当時、多くの疑問の声が上がったといいます。

実は、有力視されていた研究者達の論文発表よりも前に、田中さんが日本国内の学会でブレークスルー的な研究成果を発表しており、ノーベル賞選考委員会は、賢明にもこれを見逃さなかったのです。

「着想はタナカの方が早かった」と言うわけですね。

 

7.PCR法初体験の私の感動物語

 

私が始めてPCR法を行ったときの驚きと感動は、今でもリアルに覚えています。

1990年のことです。

 

DNAの解析をするには、大量のDNAサンプルが必要です。

目的のDNAを増やすのに、大腸菌を培養し、大量の大腸菌酵素有機溶剤で溶かして、タンパク質や脂質などの邪魔者を除き、一晩超遠心機にかけて、比重で高純度のDNAだけを分離し、手袋をしているとは言え、発がん性のある試薬にまみれながら根気の要る作業を何日も続けるのです。

発がん性物質で汚染された注射針を誤って自分の指に刺したときなんか、死ぬんじゃないかと思いましたよ。(笑)

 

ところが、PCR法では、その作業は1日で終わります。

少量のDNAが含まれているサンプルに試薬を加え、その試験管を装置にセットして「チチンプイプイ」とおまじないをかけて数時間待つだけ。

電気泳動のゲルに、そこにあるはずのないDNAのバンドが現れたときには、まるで魔法を見ているようで、驚き、感動しました。

 

PCR産物の電気泳動

PCR増幅されたDNAのサイズで移動度が変わる)

 

一度PCRを使うと、もう手放せない。

工夫次第で、それまで出来なかった色々なことが出来るではありませんか!

すっかりPCR法に取り憑かれてしまい、汎用性の極めて高いPCR法の可能性を追究した末、ついに「PCR使い」を自認するようになっていました。

 

8.PCR法がもたらした革命!

 

人類がPCR法を手にしていなければ、ヒトの全ゲノム配列を決定する「ヒトゲノム計画」など到底あり得なかったでしょう!

 

今日では、医学や生命科学のみならず、様々な分野で広く活用されており、それぞれの分野で革命的進歩をもたらしています。

農業(品種同定、品種改良)、犯罪捜査(犯人や被害者の同定)、法医学、親子鑑定、考古学、文化人類学などなど。。。

 

よく知られたところでは、クリントン大統領の不倫スキャンダル。

モニカ嬢のスカートに付着したクリントンさんの体液(なんで「精液」と正しく報道しないのかね?)から、個人を特定できる遺伝子領域を増幅して遺伝子型を解析。

その検査結果により、大統領のものと断定されたのですね。

 

太古の昔に琥珀に閉じ込められた「蚊」が吸った血液から恐竜のDNAを取り出し、現代に蘇らせる。

PCR法がなかったら、マイケル・クライトンも、こんな発想には至らなかったでしょう。

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DNAはかなり安定な化学物質です。

乾燥してカピカピになったスカートの精液からでも、なんと考古学では数百万年前の類人猿の骨からでも、わずかなDNAを頼りにしてPCR法で増幅することが可能です。

数千万年前の蚊から恐竜のDNAを増幅することも、あながち荒唐無稽なこととは言えないのです。

 

9.「それでは、もうひとつ大発見ができますね」美智子様の粋なお言葉

 

マリスが1992年に日本国際賞を受賞して来日し、祝賀パーティーに出席したときのお話。

その席で皇后陛下がマリスにお声をかけられたそうです。

皇后様は、マリスがPCR法の原理を思いついた時のエピソードをご存知で、それで、彼に同伴する女性に目を移されて、「この方がその女性ですか?」とお尋ねになりました。

マリスの答えは、「いえ、彼女は違います」

 

ガ~~~~~ン! それはアカンやろ❗️

美智子様ともあろうお方が、なんたる失態!

周囲の一同が凍りついたことは想像に難くありません。

しかし、すかさず美智子様はこう返されたのです。

「それでは、もうひとつ大発見ができますね」

 

なんたるウィットにあふれたお言葉!!

さすがは美智子様

 

 

参考図書

書評『PCRの誕生』 | 科学技術のアネクドート

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

路線変更第3弾【日本語ができない日本人】

目次:

1.エリート官僚も知らない「海千山千」の意味

2.「うがった意見」って悪い意見? それともいい意見?

3.アナウンサーの「あわやホームラン!」??

 

今回の【路線変更】は、か~~るい読み物になっています。

どうぞ、気楽にお読みください(笑)

 

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タイトル読んでドキッとされた方います?

私は自分で書いておきながら、自分でドキッとしています。

 

1.エリート官僚も知らない「海千山千」の意味

 

あるネット記事で読んだ話です。

 

40年くらいも昔。アメリカで日米外相会談が行われたときの話だそうです。

会談の中で外務大臣の園田直さんが、「海千山千」という言葉を使ったそうです。

通訳していた外交官が、それを何と翻訳したか?

な、な、な、な、な(しつこい!)、なんと、「Sea thousand, mountain thousand」と訳したのだそうです(寒!)

(マジかっ! 直訳にもほどがあるやろっ!)

 

「海千山千」とは、デジタル大辞泉小学館)によると、「海に千年、山に千年住んだ蛇(じゃ)は竜(りゅう)になるという言い伝えから、世間の経験を多く積み、物事の裏表を知り抜いていて悪賢いこと。また、そのような人。したたか者」とあります。

「海千山千の強敵」なんて言いますね。

 

適切な英語にするのなら、「A sly old dog」とか「An old fox」だとかだそうです。

歳とった犬とか狐は「狡猾な食わせ物」という事なのですね。

プログレッシブ英和中辞典(小学館)では、「a person experienced in the ways of the world(「世の中の諸事情に精通した人」とでも訳せるでしょうか?)」と説明されています。

 

英語が抜群に堪能なはずの外交官。

日米外相会談なる国益のかかった非常に重要な場面で、なぜこのような失策を演じたのか?

この記事の著者は、実はこの外交官が「海千山千」の意味を知らなかったのではないか?と書いています。

その場で大臣に「どういう意味でしょうか?」と聞けばよかったのですが、抜群に頭のいい高級官僚のプライドが邪魔をしたのでしょうか?

「何を言っているんだ君は。そんなことも分からないのかっ?」と大臣から一喝されるのを恐れたのでしょうか?

 

当然、相手方のアメリカ政府高官は「???」となりますよね。

「何言ってんだ? こいつはバカか?」となりますよ。

結果的に、大臣に大恥をかかせるという大失態になってしまったそうです。

 

いくら英語ができようが、「日本語ができなければ正しく英語も使えない」と言うのが、この記事の結論でしたとさ。

 

2.「うがった意見」って悪い意見なの? それともいい意見なの?

 

「うがった」

これ、私は頻繁に使いますね。特に会議なんかでは意識して頻繁に使うようにしています。

なんでか?

 

どうも世間では、「うがった」について、二通りの意味で捉えられているようです。

「疑わしい」とか「怪しい」という悪い意味

そして、もうひとつが、「物事の本質を捉えている」といういい意味です。

間逆ですよね。

 

下のグラフは、「うがった見方をする」の意味について、「どちらの意味だと思うか?」という質問をしたアンケート結果です。

 

f:id:takyamamoto:20180410212417p:plain

 

いやぁ、どの年代でも、「物事の本質を捉えた」という「いい意味」は旗色悪いですね。そして、すべての年代を通して、あまり割合に差はありません。

 

一方、「疑わしい」という「悪い意味」の方は、どの年代でも高い支持率を得ていますが、古い言葉とかについて物知りだと思われる中高年(50歳代以上)で支持率低下がみられるのは注目ポイントですな~。これは興味深い!

ということは、「いい意味」が正解なのでしょうか?

でも、おもしろいことに、物知りなはずの中高年で「(どちらか)分からない」が支持率急上昇なのですね。

どういうこっちゃねん? ん!?

 

「うがつ」というのは「穿つ」と書きます。

「穿つ」とは「穴を開ける」の古風な表現新明解国語辞典第7版(三省堂)にはあります。

さらに、「人情の機微や事の真相などを的確に指摘する」とも。

 

「雨だれ、よく岩を穿つ」などと言います。

一滴一滴では力ない水滴も、絶えず続けて垂れていれば岩にすら穴をあけると言う意味です。これは「継続は力なり」という言葉に意味は似ています。

このことから、穿ったとは、物事を深掘りして、本質を捉えている様を表します。

 

一方で、「穿ち過ぎ」という言葉もあります。

これは物事の真相を掴もうと固執するあまり、逆に真実からかけ離れてしまうことを言うようです。

 

現代人の多くが、本来とは逆の意味で理解している原因として、この「穿ち過ぎ」との混同・誤用が広まったのではないかと指摘する人もいます。

まあ、単に「うがった」が「うたがった」に音が似ているから、多くの人が勝手に勘違いしてるだけという、誠にうがった見方が有力のようですが(笑)

 

という訳で、私が意識して穿ったと言う言葉を使うのは、本質を見抜く、その人の洞察力を賞賛する意図なのです。

でも、相手が「穿った」の本当の意味を知らなければ、逆に気を悪くするかもしれませんよね。

このアンケート結果を見て、考え込んでしまいましたよ。

う~~~ん、気を付けねば。

 

3.アナウンサーの「あわやホームラン!」??

 

「惜しい! あわやホームランと言う当たり! 打球にあとひと伸び足りませんでした」

日本語のプロであるアナウンサーでも、平気でこう言ってますね。

すべて民放です。少なくともNHKのアナウンサーで、このような使い方をした人を私は知りません。(あくまでも私個人の経験の範囲内での話ですよ)

 

「あわや」については、小学校の国語の教科書に、その意味と使い方について書かれていたのを読んで以来、ずっと私の頭の中に染み付いています。

 

「あわやホームラン」は、ピッチャーにとっては「あわや」ですが、バッターにとっては全然「あわや」じゃないのですね。

だって「あわや」は、「あわや大惨事」のように、好ましくない事態が幸運にも避けられたときに使う表現なのですから。

 

 

日本語は難しいです。

ブログを書くようになって、人様に読んでいただくからには恥ずかしい文章を書きたくないので勉強もし、できるだけ吟味しているつもりなのですが、全然できていないのでしょうなぁ。

 

できていなかったら、是非ともお叱りのコメントをお送り下さい。

なんのコメントないより喜びます(笑)

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご意見やご感想、お叱りをコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

086【凶悪犯罪者は病気なのか!?】明らかにされつつある「犯罪遺伝子」の存在!

目次:

1.バイオレンス系のビデオゲームが、青少年の凶悪犯罪を誘発するひとつの原因となっているのか?

2.凶悪犯罪は心の病気か?

3.神経伝達物質のシュレッダー

4.シュレッダーは「戦士の遺伝子」

5.「戦士の遺伝子」は「犯罪遺伝子」なのか!?

ちょっと寄り道:ダーティ・ハリーは遺伝子変異を持つ暴力嗜好癖者か??

6.なぜ男に暴力嗜好癖が多いのか?

7.人を犯罪に走らせる遺伝子以外の要因

8.MAOA遺伝子異常! 遺伝子の病気による犯罪として減刑される国アメリ

9.凶悪犯罪は「心の病気」で片付けられないのだよ、トランプ君!

 

アメリカでは、毎年のように無差別な銃乱射事件でたくさんの人が死ぬ事件が起きていますね。

特に、学校が犯行現場になることが多く、子供たちが犠牲になっていることは痛ましい限りです。

 

最近では、2018年2月14日のバレンタインデーの日(現地時間)に、フロリダ州パークランドの高校で17人の生徒と学校関係者が亡くなり、負傷して病院搬送された人は40人に上りました。

拘束された容疑者は、素行不良が原因で同校を退学処分になった19歳の少年。

この少年は、以前から暴力や銃器に対する嗜好性があったといいます。

 

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1.バイオレンス系のビデオゲームが、青少年の凶悪犯罪を誘発するひとつの原因となっているのか?

 

米国では、近年多くの10代の青少年(特に男子)がコンバット系やシューティング系などのビデオゲームに熱中し、その悪影響を指摘する人が多くいます。

ただ、これらのゲームと暴力への嗜好性、そして犯罪誘発との因果関係については、明確な研究結果はないようです。

例えばですが、凶悪事件を起こした若者の90%がバイオレンス系のゲームを日常的にやっていたとします。

このことから、このゲームの影響で、若者達が凶悪事件を起こしたと結論付けられるでしょうか?

Yes? それともNo?

 

でも同時に、これらの犯罪を犯した若者の90%がスーパーマリオブラザーズも好んでやっていたとしたらどうです?

誰も「スーパーマリオが凶悪犯罪の原因だ」とは思わないでしょう?

このように、ゲームを嗜好することと、犯罪誘発の因果関係を証明することは容易ではありません。

 

例えば、以前観たテレビ番組で、街行く人たちに次のような質問をしていました。

「日本の凶悪犯罪者の実に97%が毎日食べている食材がある! このような食材は厳しく禁止すべきではないか? 貴方はどう思うか?」

この質問に対し、かなり多くの人が「禁止すべき」と答えていましたね。

97%もの犯罪者が食べているんだから、犯罪を引き起こす原因になっているに違いないと。

いや、そんなことはありません。

なぜなら、その食材とは「白米」だからです(笑)

 

2.凶悪犯罪は心の病気か?

 

このように、銃器による凶悪犯罪が後を絶たない米国においては、銃規制の必要性を訴える国民や、一部の議員の間でも声が高まっています。

しかしながら、パークランドの事件の直後、トランプ大統領は銃規制の問題には一切触れず、「(このような悲劇を繰り返さないために)我々は精神疾患という難しい問題に取り組まなければならない」とコメントしたのです。

事件の原因は「心の病気の問題」であり、「そこに銃があるからではない」という意図と受け止められ、多くの米国民からの批判を浴びました。

(相変わらず、そんな批判はへっちゃらですけどね。あの人は)

 

それはともかく、私は本ブログで政治の話をするつもりはありませんので、いみじくもトランプさんが言及したように、凶悪犯罪者は本当に精神疾患なのか?

近年の研究で分かってきた、犯罪と遺伝子の関係性について書きたいと思います。

 

3.神経伝達物質のシュレッダー

 

モノアミン酸化酵素(MAOA)神経伝達物質を酸化することで、神経伝達物質の機能を無効にする酵素です。

資料を読んだ後、不要になったものをシュレッダーにかけて処理するように、MAOAは過剰な神経伝達物質、特にノルアドレナリンセロトニンを失活させ、そのバランス調節を行っているのです。

 

ある種の精神疾患患者では、ノルアドレナリンセロトニンが少なく、これがうつ病や不安障害などの原因のひとつになっていると考えられており、うつや不安障害では、ノルアドレナリンセロトニンを増やしたり効き目を増強したりする薬が使われます。

ということは、逆にノルアドレナリンセロトニンが過剰になると、うつや不安障害とは逆の症状がでるのではないか?

つまり、過剰に積極的な性癖、もっと言うと、攻撃的な性格になるのではないか?

実は、その仮説は正しいようなのです。

 

近年のゲノム研究で、MAOA遺伝子に変異があり、MAOAが十分に働かず、神経伝達物質をうまくシュレッダーできない人たちがかなりいることが分かってきました。

 

4.シュレッダーは「戦士の遺伝子」

 

2004年ころ、かの世界最高峰の科学雑誌のひとつ「サイエンス」誌の記事で、この神経伝達物質をシュレッダーする遺伝子のことが紹介されました。

そして、「サイエンス」誌の記事がこの遺伝子に与えた異名が「戦士の遺伝子」だったのです。

 

2007年、ニュージーランドで小規模な遺伝子の調査が行われました。

ニュージーランド土着のポリネシア人であるマオイ族に、このMAOA遺伝子の変異を持つ人が多いというのです。

古来より、マオイ族の男達は勇猛な戦士として知られていました。

ラグビーニュージーランド代表チーム「オールブラックス」が、試合前に独特のダンスを踊ることをご存知の方も多いでしょう。

あれは「ハカ」といって、マオイ族が他部族との戦闘に臨む前に必勝を祈願して踊った伝統舞踊です。

 

 

オールブラックスのハカ

 

MAOA遺伝子の変異による神経伝達物質量の違いが、マオイ族の勇猛な性格と関係があると言う訳です。

しかし、専門家の中には、対象者の少ない小規模な調査で、マオイ族の戦士としての資質や性格とMAOA遺伝子変異との間に明確な関連性があるとは結論付けられないと指摘する人もいます。

 

5.「戦士の遺伝子」は「犯罪遺伝子」なのか!?

 

暴力や銃器への嗜好性を示す人は確かに少なからずいるようです。

特に男性に圧倒的に多いですよね。

 

人の性格や嗜好性というのは、現在では様々な神経伝達物質や、それらの量を制御する様々な遺伝子の働きの影響を受けることが分かってきました。

喜びや悲しみ、怒りといった感情も、様々な物質や遺伝子の働きによるものです。

ただし、外部環境、例えば幼少期の経験や生活環境なども人格形成に大いに影響を及ぼすので、一概に体内物質や遺伝子の働きだけで、人の性癖や性格を説明できるものではありません。

この外部環境要因の影響については、別々に育てられた一卵性双生児(遺伝要因は同じ)の研究結果がかなりあり、遺伝子の型だけで性格形成を十分には説明出来ないことが示されています。

 

上記のマオイ族についても、MAOA遺伝子の変異だけで結論付けることはできないはずです。

結論を得るには、もっと大規模な調査が必要です。

 

近年のゲノムの網羅的解析技術の目覚しい進歩と低コスト化によって、より多くの人を対象にして、様々な病気と遺伝子の機能との関係を調べることも可能になってきました。

 

2014年、スウェーデンカロリンスカ研究所のチームが、フィンランド800人もの暴力犯罪者(受刑者)の網羅的なゲノム解析を行いました。

その結果、暴力犯罪者に目立って多い遺伝子の変異として、件(くだん)のMAOA遺伝子に加えて、CDH13という遺伝子が浮かび上がってきました。

CDH13遺伝子は、脳の扁桃体の形成に関与しており、扁桃体の不全は、恐怖、攻撃性、アルコール依存と強く関連しており、これらは暴力犯罪を引き起こす要因になり得るというのです。

 

ちょっと寄り道:ダーティ・ハリーは遺伝子変異を持つ暴力嗜好癖者か??

 

中学生のころからの私の憧れのヒーローだったクリント・イーストウッド演じる「ダーティ・ハリー」

全部で5作が作られましたが、私が好きなのは3と4ですね。

 

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 「先に撃てよ。おれも気が楽になる」やて?? いや、この翻訳は違うやろっ!

原文は、あのあまりにも有名な名セリフ「Go ahead, make my day!」

正しい訳は、「撃ってみろや。いてこましたるわいっ!」

(なぜか大阪弁)笑

 

続編を重ねるごとにハリーのバイオレンスはエスカレート!

3や4で、マグナム44(こんなデカイ拳銃持つなんて、完全に犯罪者の生命を軽視しているよな)で悪党どもを躊躇なく撃ち殺す様は、警察官というより、もはや異常者以外の何ものでもない!!

ハリーは絶対にMAOAとCDH13遺伝子の変異保因者だな! 断言するぜ!

(ひさびさ、「今回の断言」!)

 

でも、3と4がやっぱりスカッとして好きなのです。

特に4のクライマックスで、マグナム44をオートマチックに持ち換えて、逆光のなかシルエットで悪党どもの前に現れるハリーのカッコよさにはしびれるぜ!

 

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やっぱり男って、多かれ少なかれ、バイオレンスを嗜好する遺伝子を持っているのでしょうね。

でなけりゃ、北斗の拳なんかがあんなにウケるはずないからね。

 

6.なぜ男に暴力嗜好癖が多いのか?

 

やっぱり、男の子はバイオレンス物が好きですよね。

それは、先のMAOA遺伝子変異で説明できるのかもしれません。

 

MAOA遺伝子は性染色体のX染色体に存在します。

X染色体の遺伝子変異は、「劣性伴性遺伝」するのです。

 

劣勢伴性遺伝については過去ブログ【054】で詳しく説明していますが、もう一度簡単に説明します。

takyamamoto.hatenablog.com

 

男の性染色体の組合せは「XY」です。

X染色体のMAOA遺伝子に変異があって働かないとなると、神経伝達物質のバランスが保てなくなり、攻撃的な性格になるという説明でしたね。

女性はというと、性染色体の組合せは「XX」です。

仮に片方のX染色体のMAOA遺伝子に変異があったとしても、もう片方のX染色体のMAOA遺伝子が正常に働いていれば、神経伝達物質のバランスは保たれるのです。

もちろん、女性でも、両方のX染色体のMAOA遺伝子に変異があれば、やはり攻撃的な性格になるのかもしれませんが、そのような人は稀でしょう。

でも確かに、稀ではありますが、女性でも凶暴・凶悪な犯罪者はいますからね(笑)

 

概して、アルコールに溺れ、毎日のようにDVを繰り返し、器物を破壊するような男性は多くいますよね。

このような人は、MAOA変異を持っている可能性が高いと言えます。

実際、ある国で、暴力志向性の強い男性が多い家系があって、この家系の人たちに対してMAOA遺伝子変異の保有率が調べられたことから、MAOAがX染色体に連鎖した遺伝様式をとることと、暴力嗜好性との関連が強く示唆される結果が導き出されたそうです。

 

7.人を犯罪に走らせる遺伝子以外の要因

 

繰り返しますが、人の暴力嗜好や犯罪に走るリスクは遺伝子の型だけでは説明できません。

MAOAとCDH13の変異を持つ人は、実に5人に1人に上るという調査結果もあります。

つまり、MAOAとCDH13の変異は、非常にありふれたものだと言えるのです。

 

犯罪遺伝子を持っているからといって、全ての人が犯罪を犯すわけではないし、むしろ、犯罪を犯さないのが普通です。

ただ、一般の人に比べると、凶悪犯罪者のグループではMAOAとCDH13の変異を持つ人は顕著に多く、犯罪の誘発要因のひとつになっている確率が高いと言えるだけです。

 

加えて、MAOAとCDH13の変異を持つ犯罪者のプロフィールを調べた調査から、幼少期に親などから暴力的あるいは性的な虐待を受けた人が実に多いことが分かりました。

何十人と殺した殺人者も、MAOAとCDH13の変異を持っていたとしても、もし幼少期に受けた心の傷がなかったら、凶悪な犯行には及ばなかったのかもしれないのです。

 

そして、特にアメリカでは、生活環境の中で身近に銃があります。

子供でさえ親の銃を手にし、暴発事故で誰かが死ぬなんて、日本人には馬鹿げたとしか思えない事件がアメリカでは起きたりもしますよね。

「戦士の遺伝子」だか「犯罪遺伝子」だか知りませんが、そんな遺伝子を持っている人でさえ、銃さえ手にできなかったら、犯行に及ばなかったはずと考える専門家も多くいるのです。

 

なんか、「確率が高い」とか、「かもしれない」だとか、「はず」だとか、実に歯切れの悪い表現が多くなってしまいましたが、しかし、遺伝学は確率の科学なのです。

100%確実などとは、誰も断言できない学問なのですね。

だからこそ、科学的な検証結果はあくまでも「確率論」と受け止めていただいて、その上で、犯罪だとか、法規制だとか、被害者補償だとかの問題は、国民自ら声を上げて頂かないといけないのですね。

 

 

実に皮肉なことですが、一般人による銃乱射事件などが頻発するのは、世界中でもアメリカをおいてはありません

だったら、その原因は何なのか?

是非とも、確率論に基づく科学的な検証をしていただき、その方々には、ずば抜けて頭のいい(はずの)国を動かしている方々にも分かるように説明していただき、ご理解頂きたいものです。

 

8.MAOA遺伝子異常! 遺伝子の病気による犯罪として減刑される国アメリ

 

米国では近年、凶悪犯罪を犯した人のゲノム解析が盛んに行われているとのことです。

そして、その解析結果が裁判で証拠として提出され、量刑に影響を及ぼす例も実際にあるということなのです。

 

MAOA遺伝子やCDH13遺伝子の変異を持つ犯罪者の犯行の多くが計画性に乏しく、衝動的なものだといいます。

米国では、被告人の遺伝子変異の存在が法廷で証拠として提出され、弁護側は「原因が明確な遺伝子の病気なんだから、減刑されるべきだ」と主張し、それに理解を示す陪審員もいたり、本来なら第1級殺人とされるべき凶悪なケースでも、第2級殺人として減刑された判例もあるといいます。

さらに上述したように、幼少のころに親から虐待を受けたなどのトラウマを負っている場合、さらに情状酌量されることもあるようです。

 

しかしですね、しかしですよ。

人間は多様性の生き物なのですよ!

人間に限らず、生物の多様性は、それぞれの生物種が繁栄するために求めてきた結果なのです。

だから私は、遺伝子に関して「異常」という言葉を極力使わないようにしてきたのです。

だって、遺伝子に関して、何が異常で、何が正常だと、だれが明言できるのでしょうか?

それが、凶悪犯罪を引き起こす遺伝子だったとしても、それは、数十億年の生命の進化の過程で、必然か非必然かは分かりませんが、誰の過失でも落ち度でもなく、今日まで受け継がれて、存在し続けている遺伝子なのですから。

 

異常な遺伝子による犯行だから、減刑して然るべき?

異常か正常か?

量刑を計るに当たって、誰がどこで線引きできるというのでしょうか?

 

9.凶悪犯罪は「心の病気」で片付けられないのだよ、トランプ君!

 

日本では、一般人が銃を入手するなんて、まず無理です。

その代わり、遺伝的に犯罪者の素因を持っている人は、繁華街の人の群れに車で突っ込んだり、行きずりの人を次々と刺したり、という犯行に至ったのでしょうか?

もし、日本でも銃が簡単に手に入るようなら、米国と同じように、銃乱射による無差別殺人事件が頻発するのでしょうか?

それは、私なんかには分かりようもありません。

 

国ごとの銃規制等の社会状況と凶悪犯罪の発生率、そして遺伝子変異との因果関係。

これを明確にするような研究なんて、とても難しいのでしょうね。

でも、それが可能になれば、神経伝達物質の調整を行う治療薬による攻撃性の抑制、つまり薬物による予防と治療が可能になったりするかもしれません。

でも、それよりもまずは、容易に銃を入手できないようにする銃規制の議論が進んで欲しいですね。

 

核心である銃規制の問題に触れずに、凶悪犯罪を「心の病気」と言い切った某国の大統領。

犯罪を誘発する外部要因が明らかに存在し、それを多くの科学者、専門化が科学的根拠に基づいて指摘されつつある現状に至っては、もはや、その要因(簡単に銃器を手にできる社会)を取り除かなければ、凶悪犯罪は減らないのだよ、ドナルドくん!

 

今回は私の主義(ネットで政治と宗教の話はしない)に反して、政治的な論点でオチをつけてしまいました。

 

 

ぞうぞ、是非ともご批判・お叱りのコメントをお願い致します。

大変励みになります。

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

 

 

 

 

訃報【ホーキング博士逝く】難病ALSと戦い続けた「車椅子の天才物理学者」

3月14日、イギリスの理論宇宙物理学の巨人、スティーヴン・ホーキング博士が亡くなりました。

とてもショック!

だって、この人が死ぬ日が来るなんて、考えたこともなかったから。。。

 

www.bbc.com

 

すでに就学前(つまり幼稚園のとき)からウルトラセブン大好きであり、中学以降は松本零士先生などの作品(特に「キャプテン・ハーロック」)や、高校になるとスター・トレックなどのSFモノに入れ込むようになった私は、実に実に、子供のころから宇宙大好きっ子でした。

たとえば、アインシュタインの「相対性理論」なんて言葉のカッコよさに憧れて、相対性理論量子力学の入門本なんかも熱心に読んだこともありますが、物理と数学が大の苦手の私は、途中で挫折することがほとんどでした。

大体、小難しい数式が出てくると、もうその時点から以降は全くついていけなくなり、ゲンナリして宇宙への憧れの気持ちがしぼんでいくのを感じて、地団駄踏む思いなのでした(涙)

 

私がいかに数学と物理ができなかったのかについては、是非とも以下の過去ブログをお読み下さい。そして、慰めのコメントをお寄せ下さい(笑)

takyamamoto.hatenablog.com

 

ときに西暦1988年

伝説的なベストセラー本が出版されました。(日本語訳は1989年)

「ホーキング、宇宙を語る」です。

この本が画期的だった点は、宇宙の起源やブラックホールの行く末などに関して、当時の世界中の物理学者達に衝撃を与え続けてきたホーキング博士の斬新かつ難解な理論や仮説を、なんと、なな、なんと、、、難しい数式をまったく使わずに平易に説明した点にあります。

たったひとつの公式を除いては。。。

 

うろ憶えですが、この本の冒頭で、ホーキング博士は次のような趣旨のことを書いていたように記憶しています。(間違っていたらゴメンなさい。なんせ30年も前の話ですから)

「難しい宇宙物理の理論について、一般の人にできるだけ理解してもらえるように努力して書いた。そのためには、数式を一切使わないと決めた。ただひとつ、E = mc2を除いては」

 

この本の内容については、今となってはほとんど憶えていませんが、珍しく最後まで読み切ったことだけは確かです。

 

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若くして天才的理論物理学者として世界から注目されたホーキング博士

なんと、大学院在学中の21歳のときにALS(筋萎縮性側索硬化症を発症し、し、し、しかも、余命2年と診断されたのです!

 

ALSは神経細胞のうち、なぜか運動神経だけが冒される病気で、いまだにその原因はほとんど不明、治療法なしの、わが国でも難病に指定された特定疾患です。

運動神経だけが侵されるというのは、どういうことかと言うと、つまり、他の種類の神経、すなわち、痛さや熱さ・冷たさを感じる知覚神経、それから内蔵の動きなんかを自動的に制御している自律神経などはほとんど正常ということです。

唯一、呼吸もかなりの部分が自律神経により制御されていますが、ALSによって呼吸不能になることも多く、ホーキング博士も気管切開し、喉からチューブが挿入されている画像を観ることが出来ますね。

 

つまり、基本的にALSでは、運動機能だけが徐々に弱まっていき、体を動かせなくなり、声を失い、最後には指先すら動かせなくなるので、そのような人には「文字盤」を使って眼球の動きで文字を追わせ、それによって患者の意思を確認するという方法がとられます。

しかし、そのような人も、やがては眼球すら動かせなくなり、そうなると本人の意思を確認することができなくなるとか。。。

何たる悲劇。。。

 

この病気の残酷なところは、知能を司る脳の神経細胞は全く正常なことが多いという点です。

頭もボケるのなら、本人はまだ幸せかも知れませんが、自分の体が衰えていき、言うことをきかなくなる様を認識しながら、どうする術もないのです。

そして、知性や感情は失われていないのに、自分の気持ちや欲求を誰にも伝えることができない。。。

絶望の淵に追い堕とされても、自ら死を選ぶこともできないし、誰かに死を請うこともできない。。。

この状況で、誰とも意思疎通できず、誰にも伝えられず、そして、ここが最も辛いところなのですが、「周りの人は、自分に人間としての知性と意識があることを疑っているのではないか?」という思いにすらなるようなのです。

でも、もはや、自分の気持ちを相手に伝える手段もなければ、相手の気持ちを知る手段もあり得ない。

生き地獄です。。。。

 

21歳で2年の余命を宣告された若きホーキング博士が、その後55年も生き永らえることができたのはなぜなのか??

博士が人並みはずれた強い意志と使命感を持った人だったことは間違いありません。

そのような人間の「心」の力が強い自然治癒力を引き出したのではないか、、、な〜んて言うと、とっても月並みだし、めちゃくちゃ陳腐すぎるから言いたくはないのですが、それは裏を返せば、我々の医学知識では病気の理解は不十分だし、生命現象の仕組みに至っては、ほとんど未知だということなのでしょうね。

 

歴史上、もっとも偉大な3人の物理学者の一人として、ニュートンアインシュタインとともに、「本人役」で「新スター・トレック」に出演したホーキング博士(だから本人だってばよってばよっ)

 

観た観た!もちろん観たよ、このエピソード(笑)

この画から、博士がこの出演をすっごく楽しんでいたのが、当時観たときからすでに分かってましたよ、私には。

演技と撮影を笑顔で楽しんでおられました(^^)

 

晩年のホーキング博士については、私はあまりよく存じ上げないのですが、その命の炎が消えるまで、生命のエネルギーを放ち続け、人類に多大な影響を与え続けて下さったのでしょう。

 

博士の場合、当時最先端の「重度障害者用意思伝達装置」の合成音声により、意思疎通をし、研究活動を続け、講演を行い、メディアに対応し、、、エトセトラ、エトセトラ。 

「重度障害者用意思伝達装置 ホーキング 画像」の画像検索結果

 

本来は無機質に聞こえるはずの合成音声によるホーキング博士の言葉。

いやむしろ私には、あの合成音声に博士の人間としての心を感じるのです。

ときに辛辣に、ときにユーモラスに。。。

 

たとえ博士が、自力では一言も発することができなくとも、合成音声の博士の言葉にすら人間の心が宿っているように思えるからこそ、博士の言葉が今後も語り継がれ、さらに人類が進歩を続けていく助けになるのだと思うのです。

 

「死後の世界など無い!」と言い切ったホーキング博士

それでも、あちらから、人類の行末を見守ってくださいね、博士(^^)

 

 

今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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085【「感じの悪い」笑顔を見るとストレスがたまる】

笑顔の素敵な貴方に(笑)

今回は、会社の人が教えてくれた心理学の論文の内容を紹介します。

 

www.natureasia.com

 

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皆さん、「笑顔」が持つパワーって絶大ですよね。

「私は貴方の味方ですよ」、「貴方は大丈夫です」、「頑張ってね」、「応援しています」といった理解や承認の意を示す笑顔は、相手に安堵感と親密感と自信を与えます。

ところが、心理学では、必ずしも笑顔がいいことばかりでなく、返って相手にストレスを与え、時に相手との人間関係にも大きな影響を及ぼすこともあるというのです。

そう、相手の健康を害するような、悪い影響すら与えると言うのです。

なんで笑顔が???

 

以前から、前向きな言葉がけが相手にいい影響を与えることは知られていました。

たとえば、スピーチのあとで人から、「良かった」、「おもしろかった」、「話がうまい」なんてい言われるとまんざらでもないですよね。

極度のあがり症の私が、人前で話す前にやっている「アンカリング」という手法は、過去に他人から頂いた前向きな言葉がけによって自己暗示をかけることで、自信を強化するテクニックです。

他人からの暖かい応援の言葉は、本当にありがたいものだと思いますよ。

 

takyamamoto.hatenablog.com

アンカリングについては、過去ブログをご参照下さい

 

逆に「良くなかった」と追い討ちをかけるような言葉は、本人が思う以上に相手に精神的ダメージを与えるようです。

たとえ、相手が欠点を修正することで、もっと良くなると思ったとしてもです。

特にその人の立場が、上司や先生や親など、相手よりも立場が強い場合ほど、その影響は顕著だと、この論文では述べられています。

ですから、会社でも学校でも家庭でも、特に子供なんかには、欠点を修正させる教育ではなく、長所を褒めて伸ばすべき、というのが現在の一般的な考え方のようですね。

 

このような「言語」による働きかけは、視床下部-下垂体-副腎軸」という人体で最も重要なストレス応答系に影響を及ぼすそうです。

ストレスによる様々な生理機能の変化、心拍数の増加、血管の収縮と血圧の上昇、呼吸の深度と回数の変化などは、副腎から放出される「コルチゾール」などのストレスホルモンが自律神経に働きかけて起きるものです。

 

さて、耳から入る言葉の影響が良く研究されている一方で、眼から入る「笑顔」が相手にどんな心理的影響を与えるのかと言うと、あまり研究結果は多くなかったのだそうです。

そこが今回の研究の動機のようですね。

この論文では、90名の男子学生を被験者にして、いくつかの種類の「笑顔」が与える心理学的影響について調べられています。

 

「笑顔」なら、何でも相手にいい影響を及ぼすのかと言うと、そうでもないらしく、人間は「誠実な」笑顔と「不誠実な」笑顔を無意識に識別し、精神的な影響を受け、その結果、さらに身体的影響にも及ぶのだそうです。

身体的影響とはどういう意味か?

それはすなわち、ストレスなどの悪影響を与え、病気すらもたらすかもしれないという事のようですね。

 

今回の研究では、笑顔を①行動を強化する「報酬」の笑顔②脅威がなく社会的な絆を促進または維持する「親和」の笑顔③社会的地位に基づいて不承認を示唆する「優越」の笑顔、の3つに分けるとして、それぞれの笑顔に対する被験者の反応を、唾液中のストレスホルモン、コルチゾールの濃度を測定することで評価しています。

唾液にコルチゾールが多いほど、ストレスを強く受けている証拠というわけですね。

 

この3つの種類の笑顔の定義について、あまり具体的な説明はないのですが、①ならば会社の上司が部下に「頑張れよ」て笑顔で激励するような場合でしょうか。「結果を出せば、報われるぞ」という「報酬」の笑顔。

②ならば、同僚や近しい人から「大丈夫だよ。応援してるから」ってな笑顔でしょうか。相手を心から思いやる「親和」の笑顔。

そして問題の③は、笑顔で「ダメ」と言われるような場合ですが、往々にして、会社の上司や先生など、その人の方が相手より地位の高い場合に当てはまる、「優越」の笑顔というわけのようです。

 

この第三の「優越」の笑顔に対して、被験者の唾液中のコルチゾール濃度は有意に増加したという結果です。

つまり、笑顔で「ダメ」ですが、これが相手のことを思っての「ダメ」ならまだしも、その人に「俺の方が上」とか、「決定権は俺にある」なんて「優越」の意識を感じさせる場合に、相手に強いストレスを与えるようです。

「作った笑顔」というのは、相手に不誠実な「感じ悪さ」が伝わるのですね。

 

ストレスは、一時的に身体の生理機能に変化を及ぼすだけでなく、特に長期的なストレスの持続は、脳卒中心筋梗塞など循環器系疾患のリスクだけでなく、うつ病などの精神疾患の発症率も高めます。

感じの悪い上司の下で働かなければならない人たち。

ただひたすら、日々のストレスに耐えるしかない。。。

そうして、2年3年、5年10年。。。

 

うつ病患者の自殺率の高さは、わが国では非常に深刻な社会問題になっています。

そう、「感じの悪い笑顔」が他人を病気にし、極端に言うと死に追いやる可能性もあるということですね。

だから、上司や先生だからって、「上から目線」は禁物なのですね。

いかん、いかん。。。

反省、反省。。。

 

他人に優しい笑顔を心がけたいものです。

しかし、「これがけっこうむずかしい」(クレヨンしんちゃん調)

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今回も最後までお読み下さり、ありがとう御座います。

 

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