Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

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030【「サイレントキラー」と国民医療費】糖尿病(その1)

目次:

① わが国の国民医療費の現状

② わが国の糖尿病患者数の現状

③ 糖尿病は不治の病ではない!!

 

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① わが国の国民医療費の現状

 

私がこのブログを始めた最大の目的は、わが国の高騰する国民医療費になんとか歯止めをかけたいとの思いからです。

 

下の図を見て下さい。

2015年度のわが国の国民医療費は41.5兆円です。

そして、毎年1兆円以上のペースで増え続けており、ペースダウンする気配はありません。

 

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この41.5兆円がどの程度の金額なのか想像つくでしょうか?

フェラーリが何台買えるとかっていう程度の、私の貧困な金銭感覚ではさっぱりピンときませんでしたが、次のように考えると、とてつもない額だと、少しは実感することができました。

 

この41.5兆円を1万円札で積み上げるとどのくらいの高さになるのか?

百万円の厚さが1センチといいます。

それで計算してみました。

41.5兆円ですから、41.5メートルとか415メートルとか、41.5の10倍数になるはずです。

 

皆さんは、直感でどれくらいの高さになると思いますか?

4,150メートル? 41,500メートル? 富士山より高い? そんな訳はない?

 

答えは、、、

信じられなくて、私は何度も計算し直しました。

でも、何度計算しても結果は同じです。

 

正解は 415km です!

 

あの国際宇宙ステーションの高度が400kmですから、あれよりも高い!

まさに宇宙空間にまで及ぶほどの天文学的な金額なのです!!

これほどのお金を、わずか1年間で病気の治療(健診など予防も含みますが)に使い切っているのです!!

 

「国際宇宙ステーション 画像」の画像検索結果

 

そして、当然ですが、高齢になるほど、一人当たりの治療費は高額になります。

歳を取って、病気になって、自分で稼げなくなってから、たくさん医療費を使うことになるのです。

 

「医療費 年代別 画像」の画像検索結果

 

そして、その費用を負担するのは、私たちの子供や孫の世代の若い人たちです。

このことを思うと、食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、自分勝手に生きたいように生きることなどできません。

 

現実を知り、一人ひとりが日本の未来のために何ができるのかを考え、行動しなければ、日本は早晩破たんします。

それを防ぐのは、日本をこういう国にした私たちの世代の、せめてもの責務ではないでしょうか。

 

② わが国の糖尿病患者数の現状

 

医療費の内訳で多いのは、やはり生活習慣病です。

中高年層が医療費の大部分を使っているわけですから、当然と言えば当然です。

 

下のグラフを見て下さい。

 

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生活習慣病でもっとも患者数が多いのは高血圧性疾患です。

2位の糖尿病を3倍近く引き離してダントツです。

しかしながら、皆さんよく耳にされる言葉だと思いますが、「糖尿病予備軍」と言われる人たちを含めると、軽く2000万人を超えると推計されています。なんと、国民(子供も赤ちゃんも含めて)の5人に1人です。

 

予備軍とは、糖尿病と診断されるほど血糖値は高くないが、健常と言えるほど低くもない(境界型)人たちで、生活習慣やその他の原因で、いつ糖尿病になってもおかしくない人たちです。

この人たちをやすやすと糖尿病にしてしまうのか、それとも生活習慣の改善で健康になるのかで、今後の医療費の増減に及ぼす影響は大きく変わってきます

何しろ、現在でも糖尿病治療に8兆円も費やしているのですから!

 

このまま、この予備軍を減らせられないと、毎年100万人の新規な糖尿病患者が出てくることになるという話もあります。

そんなことになったら、本当に日本の医療経済は崩壊です。

 

③ 糖尿病は不治の病ではない!!

 

糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないまま、しかし、確実に進行し、症状が出てからでは完治が難しいと言われるため、「サイレントキラー」と呼ばれます。

 

ですから、症状が出る前の予備軍の方たちには、正しい知識を持って頂き、自分の置かれている状況の危うさを知り、生活習慣の改善に努めて頂かなければなりません

予備軍のうちなら簡単に改善しますよ。

 

糖尿病の専門サイトなどを見ていると、糖尿病のことを、前述の「サイレントキラー」だとか、「完治は難しい」とか、「糖尿病になってからでは遅い」とか、進行した糖尿病患者を絶望させるような言葉であふれかえっています。

糖尿病は確かに過酷な病気ですが、絶望させる必要はありません。

 

私は仕事柄、糖尿病から回復された方を何人か知っています。

例えば、70歳代の男性で、ヘモグロビンA1cが13以上という高値から回復された方を2人知っています。

一人は、ほとんど歩けず車いす生活で、失明をも覚悟した人ですが、今では、かつての様にいくつもの事業を経営し、海外へも行ったりとアグレッシブにご活躍中です。

 

実際、そう言う人たちとお会いし、お話を聞いていますので、糖尿病は決して「不治の病」とは思えないのです。

 

もっと書きたいのですが、今日はここでペンを置きます。

次回も糖尿病についての話を続けます。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

また、私は医師ではありませんので、医学的な誤りがありましたら、是非、御指摘をお願い致します。

勉強させて頂きます。

 

029【ウイルスについての最大の誤解】「ボクは細菌じゃない!」

 

目次:

① ウイルスは「生物」じゃないって?

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

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ウイルスと細菌。

 

まったく違うものなのに、しばしば混同されていますね。

映画などで、明らかにウイルス兵器なのに、「細菌兵器」と平気で言っちゃってます。

劇中で、専門家(微生物学者とかなんとか)のクセに、時に「ウイルス」と言ったり、「細菌」と言ったり、メッチャ混同してます。

これでは映画のリアリティがなくなっちゃうんですよねぇ。

脚本家さんには、ちゃんと書いてほしいです。

 

ウイルス感染症を正しく理解する上で、ウイルスがどういう構造をしていて、どういう風に活動するのかを知っておくことは重要です。

今回はウイルスとは何なのかを、できるだけ解りやすくお話するつもりです。

 

① ウイルスは「生物」じゃないって?

 

細菌とウイルスは全く違う生き物です。

いや、ウイルスは「生き物」とは言えないかもしれません。

「えっ!どういうこと?」

 

実は、「生物」の定義は明確ではありません。

それでも、細菌が生物であることに異論のある人はいませんね。

ウイルスについては生物か否か、長年議論されてきました。

生物をどう定義するのかによって、ウイルスが生物であるか否かが変わってきます。

私はというと、ウイルスは「生物ではない」派です。

 

② じゃあ、ウイルスってなんなの?

 

「生物じゃないんなら、いったい何なの?」
その答えは、核酸とタンパク質からできた「物質」です!

しかし、単なる物質ではなく、重要な情報を内包した高度に複雑な物質です!

 

私たち全ての生物の目的は、出来るだけ多く子孫を残し、種の繁栄を継続させることです。

 

全ての生物には遺伝子があり、その遺伝子のプログラムによって栄養を吸収し、代謝し、エネルギーを生み出し、活動し、子孫を残すという、いわゆる生命活動をしています。

一方、ウイルスも遺伝子を持ち、そのプログラムに従って増殖し、たくさんの子孫を残そうとします。

その点で、ウイルスも生物と言えそうです。

 

しばしばウイルスと混同される細菌については、栄養素や酸素など、生命活動に必要なものを与えてやれば、自立的に増殖できます。

ですから、試験管の中で培養できるのです。

 

しかし、ウイルスには栄養素や酸素を与えても、決して何らの生命活動を行うこともできません。

なぜか?

まず、ウイルスの構造を見てみましょう。

 

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左:アデノウイルス、中:タバコモザイクウイルス、右:バクテリオファージ

 

ご覧の通り、アデノウイルス正20面体、タバコモザイクウイルスはらせん構造、なんとバクテリオファージに至ってはアポロの月着陸船みたいな複雑な形です。

まず、こんな幾何学的な構造や、メカっぽい形をしているのが不思議です。

 

なぜ、このような形をしているのでしょうか?

それは、ウイルスを形作るタンパク質が、このような構造を作る様にあらかじめデザインされており、それらが部品のように規則正しく配列して、自動的に組み立てられるからです。

まるで、あらかじめデザインして作られたプラモデルかレゴのように。

そして、このタンパク質から成る構造物の中に遺伝子である核酸(DNAまたはRNA)が収納されています。

DNA、RNAは言うまでもなくウイルスの遺伝子であり、この遺伝子にウイルスが増殖し、繁栄するために必要なプログラムが書き込まれています。

 

ウイルスとは、言ってみれば、ただこれだけです。

核酸とタンパク質からできた「物質」というゆえんです。

 

原始的な細菌から私たち哺乳類に至るまで、細胞の中には遺伝子があり、遺伝子のプログラムを「自分で」実行して栄養分を利用してエネルギーを作り出したり、運動したり、遺伝子のコピーを作ったり、増殖したりしています。

つまり、生物として自立して生きています。

しかし、物質であるウイルスは、このままでは何もできません。

ただ、存在しているだけです。

このようなものを生物と呼べるでしょうか?

 

結論:ウイルスはプログラムを収めたフロッピーディスク

 

ウイルスが活動するためには、当然、遺伝子を起動しなければなりません。

しかし、ウイルスの遺伝子を動かすには、必ず宿主の細胞が必要なのです。

タバコモザイクウイルスならタバコの葉っぱ、HIVならヒトのヘルパーT細胞という訳です。

 

ウイルスは「自立」していません

宿主に感染して初めて、ウイルスは自分のプログラムである遺伝子を「実行」することができるようになります。

 

言ってみれば、ウイルスの本体は「プログラム」です。

そして、プログラムである核酸を収めるタンパク質から成る容れ物は、例えるならフロッピーディスク(古っ!)と言ったところです。

 

プログラムはフロッピーに収められているだけでは何もできません。

ただそこにあるだけです。

パソコンのドライブに挿入され、プログラムが読み取られて初めて実行されます。

プログラムが実行されるにはCPUが必要です。

ウイルスにとっては、宿主の細胞がCPUに当たります。

 

まず、ウイルスは宿主の細胞にくっつき、核酸を細胞内部に注入し、核酸に書き込まれたプログラムを細胞質のリボゾームという器官で読み取らせてタンパク質を合成させます。このタンパク質の働きで、ウイルスが活動することができるようになります。

 

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パソコンのディスクドライブにフロッピーを挿入し、プログラムを読み取らせ、CPUにプログラム通り実行させる。

ハードウェアとしてのパソコンと宿主の細胞、ソフトウェアであるフロッピーのプログラムとウイルスの遺伝子の関係の類似性がお分かり頂けるでしょうか?

 

本ブログ【025】でお話したミクソーマウイルスであれば、ウサギの細胞に感染する必要があります。

025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

ミクソーマウイルスはウサギにしか感染しません。

なぜなら、ウサギ以外の細胞に感染するようにプログラムされていないからです。

例えるなら、かつてMacのフロッピーがWindowsで読み取れなかったのと同じです。

つまり、ミクソーマウイルスとウサギ以外の細胞との間には「互換性」がないのですね。

本当にコンピューターに例えると分かりやすいです。

 

つまり、ウイルスとは「プログラムを収めた媒体」です。

これが私のウイルスの定義です。

ウイルスを生物ではなく、核酸とタンパク質とからなる物質と考える理由です。

それだけで存在していても、何も出来ません。

しかし、ひとたび宿主細胞に感染すれば、プログラムが読み取られ、代謝し、増殖します。

これは明らかに生命現象です。

 

ですから、ウイルスを生物と定義づける人もいますし、私もそれが間違いだとは言いません。

ただ、ウイルスと宿主の関係を、コンピューターのプログラムとCPUに照らし合わせると、その類似性がよく分かります。

こうやって見てみると、ウイルスが細菌とは決定的に違うことが、よく理解できると思います。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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028【免疫系のアクセルとブレーキと舵】「アレルギー性疾患から考える」

目次:

① 寄生虫感染とアレルギー性疾患の関係

② 寄生虫感染がなくなり、失業したIgE抗体が暴走!?

③ 免疫系のアクセルとブレーキと舵

④ 結局「清潔はビョーキだ」ということ

 

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① 寄生虫感染とアレルギー性疾患の関係

 

本ブログ010で、子供のころの清潔な環境がアレルギーの原因だと言いました。

私たちの免疫を健全に育てるためには、菌と毒素が必要だと。

010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

言い忘れていましたが、もう一つ必要なものがあります。

寄生虫です。

 

下のグラフを見て下さい。

戦後の衛生環境の劇的な改善により、寄生虫感染は激減。19070年代前半には、ほぼなくなりました。

私が小学生のころ(’70年台前半)は、まだシールを肛門にペタッと張り付ける虫卵検査をやっていましたねぇ。

 

そして、寄生虫感染の減少を喜ぶかのように、各種アレルギー性疾患が激増していったのです。

 

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アレルギー性疾患発症のメカニズムはというと、花粉やハウスダスト、ダニなど、本来は無害であり、反応していけないものにIgE(アイジーイー)というタイプの抗体ができることです。

 

「抗体」というと、病原体と戦うイメージをお持ちの人も多いと思いますが、病原体と戦うのは「IgG(アイジージー)」というタイプの抗体です。

無害なものに対して、間違ったタイプの抗体を作ってしまうこと、これがアレルギー性疾患の原因です。

 

② 寄生虫感染がなくなり、失業したIgE抗体が暴走!?

 

従来、IgEは寄生虫感染に対する生体防御にかかわる抗体です。

ところが、寄生虫がいなくなり、IgEは仕事がなくなってしまいました。

「何かやることはないのか?」「なんかやんなくっちゃ」と、IgE抗体を作るB細胞が、花粉やハウスダストなど、従来反応すべきではない抗原に対するIgEを作るような、余計なことをするようになったというわけです。

 

そこで、虫のいない環境でB細胞の暴走をストップさせるのがTregの役目です。

 

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Tregは、ヘルパーT細胞がB細胞にIgE抗体産生の指令を出すのにストップをかけます。

これがうまく働かないと、特定のアレルゲンに対するアレルギーになるのだと考えられますが、このあたりのことは、まだよく分かっていません。

 

Trgは免疫系のブレーキ役ですが、【020】の最後で、免疫系にはアクセル役もあると言いました。

020【免疫力の本来のパワー(その2)】「AIDSが明らかにした免疫系の“アキレス腱”ヘルパーT細胞!」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

③ アクセルとブレーキと舵

 

ヘルパーT細胞には1型、2型、そして17型というのがあり、17型ヘルパーT細胞がアクセルの役目を果たします。

攻撃か撤退か? 総攻撃で短期決戦か、それとも長期の持久戦か?

それをアクセル役の17型ヘルパーTブレーキ役のTregのペダルの踏み加減で調整しています。

 

1型と2型の役割はというと、ざっくりな区分けですが、1型は細胞性免疫(キラーT細胞)を活性化し、2型は液性免疫(抗体)を活性化するという具合です。

ヘルパーT細胞は、敵の情報を受け取って、どのように戦うかを判断しています。

細胞性免疫で戦うか、抗体で戦うか、あるいはその両方を適切な割合で動員して戦うか、です。

 

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つまりまとめて言うと、1型と2型のヘルパーT細胞で舵を取り、17型ヘルパーT細胞とTregで進むのか止まるのかを操作しているのです。

つまり、アレルギー性疾患の場合、2型T細胞(液性免疫)の方向に舵が切られ、アクセルである17型T細胞が優勢になっており、IgE抗体が活発に産生されている状態と説明されます。

 

実際の免疫系は、これほど単純ではありませんが、このように乗り物のようにイメージすると理解しやすいと思います。

 

この左右の舵取りとアクセルとブレーキによる前進後退の制御が、現代人では狂わされています。

その大きな原因が、「菌と毒と虫」の欠如です。

 

④ 結局「清潔はビョーキだ」ということ

 

著書多数でテレビにも多く出演されて高名な、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生。

ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、この方、自身の健康維持と寄生虫が人間の体にもたらす健康増進効果について自ら実証するため、わざとサナダ虫に感染して、「サトミちゃん」と名付けて、数年間、お腹の中で飼っていたそうです。

 

そこまでやれとは言いませんが、猫が糞尿をした砂場で子供を遊ばせるくらい、家にゴキブリの1匹や2匹出るくらいで騒いではいけません。

 

昔は「美人のお腹には虫がいる」と言われましたが、これは本当かもしれません。

藤田先生によると、寄生虫感染が肌の若々しさを保っているそうです。

女性の皆さん、是非参考になさって下さい。

 

あっ、「清潔はビョーキだ」というセリフは、藤田先生からのパクリです(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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027【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その2)】「抗がん剤との併用で原発性大腸がんからの肝臓転移がん2つが見事消失!!~ヒトでの症例報告~」

今回の結論:

切らないと治らないはずだった肝臓の2つの転移がんが切らずに消失した患者!! ホントの話!!

 

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前回【026】で、βグルカンが抗腫瘍効果を示す科学的根拠として、細胞実験と動物実験の論文をお示ししました。

これらは、βグルカンの何千とある論文のうちの、ほんの一部に過ぎません。

 

さて、今回はいよいよヒトで報告された症例を見ていきましょう。

 

我が師匠 飯沼一茂 博士が報告したがん患者さんの症例です。

New Food Industry 58 (11), 29-34, 2016.

 

患者は診断当時73歳の男性。

 

人間ドックで便鮮血陽性となり、大腸内視鏡による精密検査を受けることに。

そこで早速、精密検査の2日前から、某社の黒酵母βグルカン製品をやや多めに摂取開始しました。

で、精密検査の結果は、ステージ3の大腸がん

 

ところが、これに留まらず、大腸内視鏡検査の7日後、今度はCTスキャン肝臓に2か所の転移がん(どちらも約1cm大)が見つかりました。

 

ステージ3の原発性大腸がんに加えて、同時に肝臓転移がん2ヶ所です!

非常に難しい患者です!

どうするのか!?

 

大腸の切除は約25cm、肝臓の方は3/4の切除になります。

両方を一度に切り取ると、患者の命はありません。

そこで、まず大腸がんを腹腔内視鏡手術によって切除し、肝臓の方は、大腸の手術の後の経過が安定したところで抗がん剤治療を始めて、腫瘍を縮小させたところで切り取る、という作戦になりました。

 

大腸の手術までは1ヶ月あります。この1ヶ月の間、患者はβグルカンを毎日飲み続けました。

 

で、大腸がん摘出の手術は無事成功。

手術の3日後、再度CTスキャンを行い、肝臓の様子を探ってみると、、、なんと、肝臓の2つの転移がんが明らかに縮小していたのです。

 

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この1ヶ月の間、何らの抗がん治療も行っていません

やっていたことと言えば、毎日βグルカンを飲んでいただけです。

医者も「考えられない」と首をひねります。

 

そして、肝臓の転移がんを縮小させるための抗がん剤治療が始まりました。

予定では8クール行い、縮小させたところで手術で切除という算段です。

 

ところが、5クール目を終了し、6クール目の直前のCT検査で、なんと2つの肝臓の転移がんが完全に消失してしまっていたのです!!

これには医者も拍子抜け!

予定の手術はキャンセル!!

マジ完治です!!!

とっとと退院させられましたとさ(苦笑)

 

この患者さん、治療終了後4年が経過した今も、再発することなくお元気です。

 

この症例では、まず、何らの抗がん治療もしてない状況での、βグルカン単独での肝臓転移がんの縮小が観察されました。

そして、その後の抗がん剤治療との併用で、医師も予測しなかった完全消失!

抗がん剤との併用では、副作用の程度も軽く、辛い思いをすることもなく、さらに抗がん剤の作用を高めることに貢献したのでしょう。

このことは、前回お話したラットやマウスの実験結果でも示されていましたね。

026【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その1)】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

βグルカンについて、このような体験をした人はたくさんいます。

本当に、余命宣告された人がβグルカンで生還した例は枚挙にいとまがないのです。

その根拠は、「免疫力本来の力」です。

「免疫力本来の力」については、最先端医学が証明しています。

(是非もう一度本ブログ【021】をお読み下さい)

takyamamoto.hatenablog.com

 

ヒトの免疫力は本来、がんに打ち勝つだけのパワーを備えているのですが、その力を100%発揮できていないだけです。

 

しかし、健康食品でがんから生還したとかっていう体験談って、胡散臭いですよねぇ。

また、メーカーも販売企業も、たとえ、それが真実であっても、こんな「がん」からの生還体験談なんて、たとえ言いたくても言えないのです。

だって、手が後ろに回りますから。。。マジでッ。

ジレンマですよねぇ。

 

でも、この症例の様に、正確なカルテ情報とCT画像が得られたことで、正々堂々、論文として発表することができました。

 

私は今後も、本当の正しい情報を皆様にお伝えしていきます

 

 βグルカンの効果について、がんに次いで論文の多いのが糖尿病です。
いずれ、βグルカンの抗糖尿病効果の根拠となる論文についてもご紹介したいと思います。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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026【ズバリ!βグルカンの抗腫瘍効果!!(その1)】

本ブログも26回目になりました。

当初、1週間にひとつずつ1年間記事を書き続けて、52回は書きたいと思っていましたが、1ヶ月半で折り返し点にきました。

お陰様でユーザーさんも増えてきており、読んで下さる方がいらっしゃる限り、続けていこうと思います。

 

目次:

  1. シイタケ由来βグルカンの抗腫瘍効果

  2. βグルカンによる抗がん剤の副作用低減効果(その1)

  3. βグルカンによる抗がん剤の副作用低減効果(その2)

 

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以前は、健康食品なんぞに関心のなかった私。

 

免疫賦活活性だとか抗酸化作用だとかはあるとしても、現在の医療で治らないガンが治るなんて、「どこにも根拠を示していないじゃないか!」という訳です。

「本当に劇的に効くのなら、当然、医薬品として承認されるはず」という考えを持ったのも無理からぬこと。

 

しかし、健康食品の中には、本当に効くにもかかわらず、法律「薬機法(旧・薬事法)」による規制のために、企業は自社製品の宣伝広告の中で効果・効能を謳えず(つまり根拠を示したくっても示せない)、各企業とも拡販に苦慮しているという事情を、私は知りませんでした。

 

確かに、根拠のないまがい物もあります。

しかし、根拠を調べてみれば、確かに本物もあります。

 

では、本物とまがい物とを見分ける根拠とは何か?

研究者たちが客観的な視点から研究した結果を報告した学術論文です。

その学術論文が最も多い健康食品のひとつが「βグルカン」です。

 

今回は、βグルカンについての論文を、ごく一部ですが易しく説明して、そのポテンシャルをご紹介しましょう。

 

これまで、βグルカンの効果については、抗腫瘍効果、抗感染症効果、血糖値抑制効果、中性脂肪抑制効果、コレステロール抑制効果、高血圧抑制効果、動脈硬化抑制効果、抗糖尿病効果等々、広範囲な疾患に対して動物及びヒトでのデータが、世界中の医師・研究者たちから報告されており、論文の数は数千にのぼります。

この論文数は、健康食品の成分としては、類を見ないものです。

 

これらの研究成果が明らかにしたことは、上記のような多くの疾患に対する抑制作用は、βグルカンの強力な免疫調整作用によるものだとの理解です。

 

様々な疾患に対しての効果が示されているβグルカンですが、今回は、最も研究データが多い、抗腫瘍効果についての論文をいくつかご紹介します。

 

1.シイタケ由来のβグルカンの抗腫瘍効果

 

何らかの物質の病気改善効果というのは、結局のところヒトで示されなければ説得力がありません。

でも、ヒトでできる試験には様々な問題があり、限定されます。

ですので、まずは培養細胞での実験、次に動物実験がよく行われます。

 

細胞よりは動物、動物よりはヒト、の方が説得力が高いのですね。

で、まずは細胞の実験結果から。

 

がんから体を守る仕組みは、何重にも張り巡らされています。

最後の砦は「免疫」、その前に細胞の自殺「アポトーシス」という仕組みがあります。

 

前にお話ししましたが、遺伝子に異常のある細胞は、自分でそのことが分かっていて、このまま自分が生き残ってはまずいので、自分で「自殺スイッチ」をONにします。

その結果起こる細胞の死がアポトーシスです。

 

さて、βグルカンが免疫力をパワーアップして抗がん作用を示すことは良く知られています。

でも、下の2016年の論文では、シイタケ由来のβグルカンが、免疫を増強するだけでなく、がん細胞のアポトーシスも起こりやすくするというダブル効果を持っていることが報告されました。

さらに、がん細胞に栄養供給を行うのに必須な、血管の新生も抑えて、がん抑制に働くのです。

 

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最初にこのように培養細胞の実験で観察された現象が、動物やヒトの体内でも起きているのかが証明されることによって、βグルカンの本物である証しが強化されるのです。

 

では、動物のデータを見ていきましょう。

 

2.βグルカンによる抗癌剤の副作用低減効果(その1)

 

シスプラチンは様々な種類のがんに広く使用され、高い腫瘍縮小効果を持つ抗がん剤です。

一方で強い副作用、たとえば腎機能障害や骨髄抑制、吐き気・嘔吐、食欲不振などが現れ、そのためにシスプラチンの投与を断念せざるを得ないケースも多々あります。

 

下の2016年の論文は、パン酵母由来βグルカンを摂取することによって、シスプラチンの重篤な副作用を効率的に軽減するというラットを使った実験の結果です。

 

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健康なラットを4つのグループに分けます。

各グループのラットは9匹ずつ。

  • グループ1:何も投与しない
  • グループ2:シスプラチンを投与
  • グループ3:βグルカンを摂取
  • グループ4:シスプラチン投与とβグルカン摂取

 

健康なラットにシスプラチンを投与した場合、脳神経へのダメージが副作用として観察されます。

ですので、グループ2のラットに神経の損傷が認められました。

ところが、グループ4のラットでは、βグルカンを摂取していたことにより、神経細胞の損傷が著しく軽減したのです。

 

抗がん剤治療の副作用に耐えられず、治療を断念せざるを得ない人は多くいます。

その副作用の辛さを、βグルカンが軽減することによって抗がん剤治療を続けられようになるという動物での結果です。

 

3.βグルカンによる抗癌剤の副作用低減効果(その2)

 

もうひとつ、動物実験の例。

少し古いですが、2008年の、がん細胞を移植したマウスを使った実験です。

 

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グラフの縦軸は、がん細胞移植後21日までの腫瘍の体積の推移

 

マウスにがん細胞を移植して、21日間、特に何もしないと腫瘍の体積はどんどん大きくなります(対照群)。

しかし、9匹中、1匹も死んではいません。

 

フルオロウラシル(5-FU)という、よく使われる抗がん剤の投与を続けると、腫瘍はほとんど大きくなりません(A群)。

ところが、この21日の間に、9匹中4匹が死んでしまったのです。

つまり、5-FUでがん細胞の増殖は抑えているのに、4匹のマウスが薬の副作用で死んでしまったということです。

これでは、何のための薬やら。。。本末転倒ですね。

 

ところが、5-FUを投与していても、同時に黒酵母βグルカンを飲んでいると、1匹も死なずに済みます(C群)。

副作用が軽減されたのです。

腫瘍も完全に抑えるという訳には行きませんが、それでも、何もしないマウスよりは腫瘍が小さくなっています。

 

酵母βグルカンだけを与えたマウス(B群)でも、何もしていないマウスよりは腫瘍を抑えていることが分かるでしょう。

これがβグルカン単独での抗腫瘍効果ということになります。

 

まとめます。

  • βグルカンは単独でもある程度の抗腫瘍効果がある。
  • 抗がん剤と併用することで、抗がん剤の副作用による死亡を防ぎ、腫瘍の増大もある程度抑えることができる。

ということです。

 

ここまでは、いずれも動物実験の結果でした。

 

次回は、いよいよヒトの例を見ていきましょう。

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

025【人類はウイルスなんかで絶滅なんてしない】「免疫は人それぞれ万差億別」

目次:

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

② ウイルスはバカじゃない

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

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ゴルゴ13の持病「ギラン・バレー症候群

ゴルゴが病気になるエピソードって結構ありますね。

「病原体レベル4」というエピソードでは、なんとエボラウイルスに感染し、医療器具の限られた船内で発症。ゴルゴもこれまでか!?

 

感染したサルに唾を吐きかけられたのですが、銃弾すらかわしてしまう反射神経の持ち主が、サルのツバ吐きぐらいかわせなかったのですかねぇ?

 

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ツバかけられたときのゴルゴの無念な表情!

 

さて、古くはダスティン・ホフマン主演の映画「アウトブレーク」。

致死率はエボラ以上、感染力はインフルエンザ以上という最恐のウイルスがアメリカ全土に蔓延の危機! 果たして阻止できるのか⁈というお話でした。

 

さらに、小松左京大先生の「復活の日」に至っては、南極の数百人を残して、人類は絶滅したのでした。

 

でも断言できます。人類はウイルスで絶滅したりしません。

その一つの根拠となった事件が1950年代に起こりました。

 

① 人類が実際に使用した最恐の生物兵器とは?

 

イギリス生まれのピーターラビットアナウサギという種類のイギリスではなじみの深い動物です。

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19世紀、イギリス人がオーストラリアに入植する際、このアナウサギを何匹か(ウサギは「1羽」「2羽」って数えるんでしたっけ?)持ち込みました。

別に愛玩用としてではなく、世界で最も狩猟好きなイギリス人が、ハンティングを楽しむために持ち込んだのです。

動物を追い回して打ち殺す娯楽、ハンティングは「紳士淑女のたしなみ」というわけですねぇ。

 

さて、天敵のいないオーストラリアで、野に放たれたアナウサギは爆発的に繁殖しました。

それが牧草を食い尽くしてしまい、牧羊に甚大な被害が出たのです。

毎年、何百万匹単位で駆除しても到底追いつきません。

 

そこで、オーストラリア政府が取った策が、恐るべき生物兵器の使用です。

その名をミクソーマウイルス!

ウサギだけに感染し、他の生物には全くの無害。

致死率はほぼ100%! 治療法なし!

なんと理想的な!!

 

このウイルスに感染すると、兎粘液腫(うさぎねんえきしゅ)という病気を発症します。

その症状は、ウィキによると「発熱、結膜眼瞼炎、鼻、耳、肛門、生殖器周辺の粘膜と皮膚の境界部皮下にゼラチン様腫瘤を形成する。死亡率はほぼ100%であり、発症後2週間前後で死亡する」とあります。

かなりの苦痛を長期に与えて死に至らしめる、非常に残酷な病気のようですねぇ。

こんなもん使っておいて、「捕鯨は非人道的だ」とか言ってんじゃねぇ!!

いや別に豪州人の方に敵意は御座いません。

 

それは置いといて、この作戦、顛末はどうなったか? 思惑通りに事は進んだのでしょうか?

 

② ウイルスはバカじゃない

 

我々すべての生物種の最大の目的は、できるだけ多くの子孫を残して種の繁栄を築くことです。

ウイルスも例外ではありあません。

 

さてウサギの話に戻りましょう。

1950年にオーストラリアにおいて、このウイルスが野生化したアナウサギに対して使用されました。

ほぼ100%と思われていた致死率でしたが、数百匹に1匹ぐらい、病気を発症しないウサギが現れたのです。

そして、ついに撲滅することができずに終わりました。

 

理由は二つありますが、ひとつは、感染が広まるにつれ、ウイルスの毒性が弱まったのです。

ウイルスは宿主がいてこそ繫栄できます。

すべて殺していたのでは、自分たちの未来もありません。

ですので、毒性が強すぎて、「このままではいかん」と思ったら、自分たちの生存率を最大化するために、毒性の弱いウイルスが優勢になるのです。

そして、ほどほどに宿主を生かし続けます。

結局、数年後には、このミクソーマウイルスの致死率は、およそ50%程度で落ち着いたとさ。

 

このことは、おそらくエボラウイルスでもHIVでも同じです。

決して人類を根絶やしになんかしやしません。

実際、HIVに感染しても発症しない人や、HIVに感染すらしない人がいることが分かっています。

 

③ ヒトの免疫は万差億別!

 

みなさんABO式の血液型はご存知ですね?

これは赤血球の型です。

型を誤って輸血すると、赤血球が壊れて死んでしまいますので、血液型検査は重要です。

ちなみに、この赤血球が破壊される現象、これもまた免疫の働きによるものです。

 

では、白血球にも血液型があるのをご存知でしょうか?

HLAと言えばお分かりの人もいるでしょうか?

骨髄移植や臓器移植では、このHLAの型をできるだけ合わせることが重要です。

拒絶反応を防ぐためです。

 

HLAはABO式のように単純ではなく、計算上は数百億通りの型があることになります。

ですから、一卵性の双子を除いては、この地球上に二人とまったく同じ型の人はいないことになります。

このように、たくさんの型があることを「多様性」といいます。

 

このHLAの型は「免疫の型」と言ってもいいでしょう。

免疫の型に多様性があるということは、ヒトの免疫は人それぞれに異なり、それこそ「千差万別」、「万差億別」です!

 

先ほど、HIVに感染してもエイズを発症しない人がいると言いました。

このような人は「エリートコントローラー」と呼ばれ、特にHIVに感染したヘルパーT細胞を早期に発見し、排除する免疫力を備えています。

ですから、ウイルスはいることはいるのですが、発症するところまでウイルスが増えるのを防ぐことができます。

これは、特定のHLAの型を持っている人であることが分かっています。

 

オーストラリアのウサギ駆除の話に戻りましょう。

撲滅に失敗した原因は二つ。

ひとつは、ウイルス自らが弱毒化したこと。

もうひとつは、アナウサギにも、ミクソーマウイルスに対するエリートコントローラーがいたということです。

 

免疫には多様性があり、人それぞれすべて異なります。

人類は「ある病気にはめっぽう強いが、その他のある病気には弱い」という人の集団です。

ですから、ある疫病が猛威を振るっても、必ず生き延びる人がおり、絶滅することはないのです。

 

う~ん! だから何だというのだ!?

オチなく話が終わってしまった!!

 

ただ、免疫には多様性があるということだけ覚えておいて下さいね。

 

次はお役立ち情報をお届けできるように書きます(ペコリ)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

また、学問には異なる見解があって然るべきです。そのようなご意見もお聞かせ下さい。

大変励みになります。

 

 

024【免疫力の高い人はアレルギーになりやすいの?】「免疫の『バランス』についての誤解に答えます!」

目次:

  1. やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

  2. 獲得免疫は「抗原特異的」!

  3. 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

  4. 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

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① やっぱ、免疫力は高い方がいいの?

 

世間では、「免疫力アップ」とか言って、免疫力は高ければ高いほどいいみたいに喧伝しているきらいが見られますね。

一方で、うがったところでは「免疫はバランスが大事」と言われます。

免疫のバランスとはどういうことでしょう?

 

以前は良く、こんな話を聞きました。

「免疫力の高い人は、がんや感染症には強いけれど、その代り、アレルギーや自己免疫疾患になりやすい」

「アレルギーや自己免疫疾患の人は、免疫力が高いので、がんになりにくい」

これらは、「免疫力というのは、強すぎても、弱すぎても具合が悪く、ほどほどにバランスを保っているのがよい」という考え方です。

つまり、免疫のバランスとは、下の図のように、高いか/低いかというシーソーのようなものだと言うのですね。

 

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免疫のバランス 右に傾いても、左に傾いても、どっちもよくない!?

 

この考え方では、免疫力が強すぎるとアレルギーや自己免疫疾患になりやすく、弱すぎるとがんや感染症にかかりやすくなるので、「強すぎず、弱すぎず」のバランスが重要、ということになります。

 

私はずっと、この考え方に疑問を持っていました。

なぜなら、アレルギーや自己免疫疾患知らずで、がんや感染症にも強い超健康な人っているはずだからです。

免疫のバランスがシーソーのように、強いか、弱いか、バランスのとれた真ん中か、のような塩梅(あんばい)だとすれば、このような超健康な人の免疫がどうなっているのか、説明できません。

また、免疫が強すぎてアレルギーになるのなら、いろんなものに対してアレルギーになるはず。

「ヒノキやブタクサやダニは全然平気なんだけど、スギ花粉だけはどうにもダメ」という人がいるのは変です。

説明できません。

 

② 獲得免疫は「抗原特異的」!

 

いきなり「抗原特異的」なんて難しい言葉で申し訳ありません。

 

はしかにかかったことのある人は、はしかに対する免疫を持っています。これは獲得免疫です。

019【免疫力の本来のパワー(その1)】「免疫系の仕組み」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

なので、次にはしかのウイルス(麻疹ウイルス)が侵入してきても、発病することなく撃退できます。

でも、この免疫は、他のウイルス、他の抗原(免疫系によって認識される異物のこと)には全くの無力です。

麻疹ウイルスに対する免疫は、麻疹ウイルスの抗原にしか反応しません。

 

特定の抗原にだけ反応すること、これが「抗原特異的」ということです。

 

マクロ―ファージとかの自然免疫の細胞は、基本的に非自己であれば何でも食べます。

つまり、自然免疫は「非特異的」です。

でも、獲得免疫は、一度覚えた特定の抗原にしか反応しません。

つまり、獲得免疫は「抗原特異的」です。

 

③ 抗原特異的に免疫反応を抑える制御性T細胞は存在するのか?

 

ここから少し難しくなります。

 

自己免疫疾患やアレルギー性疾患は、抗体を作るB細胞や、がんやウイルス感染細胞など異常な細胞を攻撃するキラーT細胞の仕業です。

B細胞とT細胞による免疫は獲得免疫ですね。

 

制御性T細胞(Treg)もT細胞ですから、獲得免疫の細胞ということになります。

だったら、Tregも抗原特異的に機能するんじゃないのか?

つまり、Tregはある特定の好ましくない免疫反応だけを「特異的」に抑えることができるんじゃないのか?ということです。

 

たとえば、はしかにかかったとします。

当然、免疫系は活発になり、免疫力は高い状態になります。

「免疫力の高い人はアレルギーになりやすい」という理屈が正しいのなら、感染症にかかる度にアレルギーになる人が普通にいるはずです。

でも、そんな人、実際に見たことも聞いたこともありません

 

これはつまり、感染症にかかって免疫力が高まった状態でも、アレルギーや自己免疫疾患などの原因となる好ましくない免疫反応を「特異的に」Tregが抑えてくれているんじゃないかと考えられます。

 

本ブログ【010】で、アレルギー性疾患の少ないアーミッシュの人たちにはTregが多いとか、【017】では、妊婦では免疫系が胎児を攻撃しないようにTregがたくさん子宮に集まっているとかいいました。

010【清潔はビョーキだ!!(その2)】We need 菌 and 毒 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

017【自己免疫疾患と制御性T細胞】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

これまでの多くの研究では、Tregの数が多いか少ないかが盛んに調べられてきました。

でも、本当にTregの働きを知るには、特定のTregが特定の好ましくない抗原に対する免疫反応を抑えているという、Tregの「特異性」を証明することが重要だと思います。

 

たとえば、「ヒノキもブタクサも問題ないんだけど、スギだけはダメ」なんて人もいる訳です。

このような人の場合、スギ花粉に対する免疫反応だけを抑える「特異的な」Tregが、何らかの原因でうまく働いていないのだと考えると説明がつきます。

 

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如何なゴルゴ13と言えども、何らかの原因で自己免疫反応を抑える抗原特異的Tregが上手く働いていないと、自己免疫疾患にもなり得る!

 

ヒトの抗原特異的制御性T細胞の働きは、技術的な問題から、まだ充分には解明されていません。

でも最近、技術的ブレークスルーがあったとかで、その論文を読んでいるところです。

Cell 167, 1067-1078, 2016

難しくて、なかなか読み進められません、、、(涙)

 

④ 免疫系のバランスは「シーソー」じゃない!!

 

Tregの抗原特異的な働きについては、これから解明されるものと期待します。

そしてその結果、超健康な人の免疫とは、「がんや感染症に対する免疫力は強く、同時に抗原特異的なTregが働いて、好ましくない免疫反応は抑えている状態である」ということが証明されるのではと予想しています。

 

病気やケガをすれば、免疫系が活性化して炎症反応を引き起こします。

でも、快方に向かえば、炎症反応は速やかに鎮めなければなりません。

このように、免疫というのは、攻撃するべきときには攻撃し、攻撃してはいけないもの、攻撃してはいけないときには、攻撃は抑えなければなりません。

このように免疫系が絶妙に制御されている状態、これが免疫系の「バランス」がいい状態なのだと思います。

「強い or 弱い」という2元的な単純なものでは決してありません。

そして、そこで重要な働きをしているのが、恐らく抗原特異的なTregです。

(これはまだ仮説であり、実証されている訳ではありませんので、ご注意下さい)

 

ですから、健康のために大切なことは、免疫力をアップさせるというより、免疫力を「調整」することなのです。

 

で、話はまたここに帰着します。

免疫調整のために重要なのは、食事・運動・休息・βグルカンなのですね(笑)

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡

 

是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

また、学問には異なる見解があって然るべきです。そのようなご意見もお聞かせ下さい。

大変励みになります。

 

 

023【腸内細菌と心】「乱れた細菌叢から慢性炎症へ」

目次:

  • 心と腸はつながっている

  • 細菌叢が悪いとどうなる?

  • 結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事

 

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① 心と腸はつながっている

 

心と腸

全然関係ないと思われていたもの同士が、今では切っても切れない、というか、むしろ密接に関わり合っていることが確実になりました。

いや、つながっているというより、対話していると言えるかもしれません。

 

腸内で発生する様々な物質、それらが幼少期の脳の発達に影響し、性格の形成や精神疾患の発症に大きく関わってきます。

好ましくない腸内環境が、うつ、統合失調症自閉症なんかの引き金になります。

 

腸内で発生する多くの物質が、腸内に共生する細菌によって作り出されます。

これらの物質が脳の働きに影響することが、多くの動物実験で明らかにされています。

 

マウスの腸内細菌を入れ替えるとか、無菌のマウスに別のマウスの腸内細菌を移植するとかの実験です。

実際、このような実験をすると、マウスの性格に変化が出るのですが、マウスの性格の変化は行動に現れますので、行動を観察します。

 

例えば、下の写真はNHKスペシャル「腸内フローラ~解明!驚異の細菌パワー~」からですが、いつもおどおどした臆病なマウスと、好奇心いっぱい、全然ひとっところに留まっていられない活発マウスというのがいて、これらの腸内細菌をお互いに入れ替えてみた実験です。

 

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マウスを高さ数センチの台に載せます。

活発マウスは、もう下に降りたくて仕方がありません。ものの10数秒で難なく降りて、どっかに行ってしまいます。

一方、臆病マウス。降りたいのはやまやまですが、何度も下を覗いては見るものの、怖くて降りられません。結局7分経っても降りられませんでした。

このマウスの腸内細菌を入れ替えたらどうなるか?

臆病マウスの菌を移植された活発マウス。ビビってしまって、降りるのに数分もかかるようになりました。

一方、活発マウスの菌を移植された臆病マウス。最後まで降りられなかったのが、数分はかかりますが、それでも降りられるようにはなりました。

結果は何度やっても同じです!

 

さらに同番組から。

異性に積極的なマウスと消極的なマウス。

積極的なマウスは、盛んにメスに呼びかけます。

一方で、シャイなマウスは、極端に呼びかける回数が少ないです。

 

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人間の耳には聞こえないマウスの鳴き声を、特殊な装置で検出

一定時間あたりの呼びかけの回数を測定

 

このシャイなマウスの腸内には、ある種の腸内細菌が作り出す4EPSという物質が多いことが分かりました。

この4EPSという物質を阻害する薬品を投与したところ、どうなったか?

なんとメスに呼びかける回数が格段に増えました。

何度やっても同じ結果です!

 

異性に対して積極的になれない方。

お友達にイケイケドンドンのナンパ野郎がおられたら、その方からウンコをもらって下さい。

昨日までのシャイな自分とはおさらばです(笑)

 

ただし、これらの結果はマウスの話であって、人間が簡単に「シャイな自分とはおさらば」と行くとは限りません。

 

そこで次のステップとして、神経疾患のヒトの腸内細菌を無菌のマウスに移植する実験が行われています。

不安障害の人の腸内細菌を無菌マウスに移植すると、マウスに不安行動が現れることが分かりました。

不安障害の人の腸内細菌が、不安障害の症状を引き起こす何らかの物質を作り出していると考えられます。

 

現在では、ヒトの腸内細菌が作り出す、心に影響を及ぼす物質がいくつか突き止められています。

例えば、アメリカの研究グループが、自閉症の子供の尿には、クロストリジアという腸内細菌が作り出すHPHPAという物質が多く含まれることを報告しました。

 

そこで、深刻な強迫性障害や多動性障害をもち、尿中HPHPAが高い10代の女性患者に、HPHPAを作り出す細菌の増殖を抑える抗生物質を投与し、同時にプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など、腸内フローラに良い影響を与える微生物)を摂り続けたところ、徐々にHPHPAが下がり始め、1年後には病気の症状が完全になくなったと言います。

 

② 細菌叢が悪いとどうなる?

 

ヒトでも、腸内細菌が心に影響を及ぼすことは確実になりましたが、腸の細菌だけでなく、口の中にも細菌叢があり、歯周病なんかがあると、糖尿病はじめ、様々な病気の原因となりますので、口腔ケアも非常に重要です。

 

ここでは、ご腸内の話をしますが、基本的には口腔も同じです。

 

腸内フローラの状態が悪いというのは、悪い菌が優勢になって、いい菌が虐げられている状態です。

この状態では、腸の内容物が腐敗して、有害物質がどんどん作り出されています。

腸管のバリア機能は低下し、悪い菌が作る毒素、特にLPSという毒素が腸管から血管内に侵入しやすくなります。

なんと、毒素だけでなく、悪い菌そのものも血管に侵入します。

無菌であると言われている血管内に菌が入り込むのです!!

 

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当然、これに免疫系が反応し、炎症性物質を出します。

いつまでも腸内環境の改善がないと、この状態が続くか、ますます悪化します。

そして、体のあちこちで異常な炎症状態が続くことに。。。

これが「慢性炎症」の状態であり、体に様々な悪いレスポンスを引き起こさせます。

 

口の中も同じです。

歯周病菌などの悪い菌と毒素が、バリア機能の低下した歯ぐきから血管内に侵入し、慢性炎症を引き起こします。

歯周病が糖尿病の原因になっていることは、前にお話ししました。

011【昔の常識、今非常識】「糖尿病患者は内科に行くな!?」 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

③ 結論:乳幼児期の食事と衛生環境が大事 大人になってからも「腸活」は大事

 

体の病気だけでなく、心にも影響を及ぼす私たちの共生細菌。非常に大切です。

 

まず、小さなお子さんをお持ちの親御さん。

腸内フローラを構築する乳幼児期の食事と衛生環境は非常に大切です。

衛生環境というのは、前に「清潔はビョーキだ」と言ったように、過度に清潔にするのは好ましくなく、自然に菌や毒素を取り込むくらいの環境の方がよいということです。

009【清潔はビョーキだ!!(その1)】We love 菌 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

成人してからは、出来上がってしまった腸内フローラを劇的に変更することはできませんが、良い食事、良い生活習慣で、その人なりのベストな腸内環境を維持することが重要です。

018【便移植から腸内細菌を考える】 - Dr.やまけんの【いつまでも健康に過ごすために大切なこと】

 

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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022【慢性炎症】「ほとんどすべての病気に共通した本当の原因とは?」

  1. 「慢性炎症」とは?

  2. 慢性炎症の原因

  3. 次回:腸内細菌と心 乱れた細菌叢から慢性炎症へ

 

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1.「慢性炎症」とは?

 

糖尿病や心臓疾患、関節リウマチなんて、かつては腸内フローラや歯周病なんかと全然関係のない事象だと思われていました。

ましてや心の病気が、腸や口の中が密接に関係しているなんて、誰が想像したでしょう?

 

最近では、症状も病態も全然違う病気が、実は共通の原因をもっており、その共通の原因にフォーカスした治療が重要だという考えが出てきました。

 

その共通の原因とは「慢性炎症」です。

体の病気だけでなく、心の病気でさえ、体の慢性炎症から精神に不調をもたらしていることが分かってきました。

 

「炎症」というと、皆さんはどんな印象を持つでしょうか?

 

風邪をひいて熱がでます。熱が出るのは炎症反応のためです。

で、お医者さんに行くと、解熱剤(抗炎症剤)を出してくれます。

ということは、熱は下げるべきもの(炎症は良くないもの)なのでしょうかね?

 

感染症なんかで引き起こされる炎症は「急性炎症」です。

体温を上げることによってウイルスの活動を弱め、同時に免疫力を高めます。

なので、やたらと解熱剤を飲んで熱を下げるのは、好ましいことではありません。

 

ケガをすると、患部が熱をもって赤く腫れたりします。

これも急性炎症です。

ケガの修復では、血液凝固による止血の後、免疫細胞が患部に集まり、たくさんの炎症性物質(サイトカインや成長因子というタンパク質)を出して、細胞の増殖と組織の再生が始まります。

 

今では、ケガをしても(感染症のリスクが高い場合を除いて)基本的に消毒はしません。

消毒液によって様々な細胞にダメージを負わせ、その結果、初期の正しい炎症反応の成立に失敗してしまうと、傷の治りが悪くなることが知られているからです。

つまり、急性炎症というのは病気やケガからの回復になくてはならないものなのですね。

 

そして、ケガや病気が快方に向かい始めたら、速やかに炎症は静まらなければなりません。

治りかけているのに、いつまでも炎症反応が続くのは病的な状態です。

 

例えば、炎症など必要ないのに、くすぶるような小さな炎症反応が続いている状態

これが「慢性炎症」であり、多くの病気の引き金になります。

 

で、慢性炎症の大きな原因はというと、「腸内フローラの乱れ」と「免疫系の不調」です。

(最近では、「口腔内フローラ」も重要であることが分かってきました)

さらに、腸内フローラの乱れと免疫系の不調をもたらすのは、過食や偏食などの不適切な食事や、運動不足、不十分な休息などの好ましくない生活習慣です。

 

肥満の人は、多くの場合で過食か運動不足のどちらか、あるいはその両方です。

肥満では、ほぼ確実に慢性炎症が起きており、多くの病気の原因となるため、最近では「肥満自体が病気である」という考え方が出てきており、「肥満症」という言葉もあります。

「太ってはいるけど、別にどこも悪くないから病気じゃない」と言うかもしれませんが、それは違います。

「血糖値は高いけど、別にどこも悪くない」というのと同じです。

糖尿病は糖尿病、肥満は肥満であり、将来、深刻な事態になるリスクが高い状態ですので、あなどってはいけません。

 

2. 慢性炎症の原因

 

慢性炎症の原因は、腸内フローラの乱れと免疫系の不調だと言いました。

繰り返しになりますが、この2つの原因は何かというと、様々ありますが、過食など不適切な食事、運動不足、休息不足などの不適切な生活習慣です。

 

本ブログ003と話が重なりますが、重要なことですので、もう一度確認しておきましょう。

 

過食などで中性脂肪コレステロールが高い状態が続くと、脂肪細胞がこれを取り込み、肥大化します。

肥満の人の内臓脂肪には、この肥大化脂肪細胞がいっぱい詰まっています。

 

この状態になると、脂肪細胞をはじめ、様々な免疫細胞が分泌する物質の内容が変わってきます。

脂肪細胞では、良い物質のアディポネクチンとレプチンが出にくくなり、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなり、血糖値が下がりにくくなること)や血圧上昇、血栓形成を引き起こす、TNF-α、遊離脂肪酸、アンジオテンシノーゲン、PAI-1などの悪い物質が出るようになります。

 

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免疫細胞でも、IL-1β、TNF-αなどの炎症性物質の産生が優位になり、体のあちこちで慢性炎症の状態です。

 

様々な組織は、長い間炎症性物質にさらされ続けると、その機能や構造に好ましくない変化が起こります。

その変化は、長期的には様々な生活習慣病につながるので、放置は非常に危険です。

 

以前は、「肥満」は単なる栄養過多の状態と思われていましたが、現在では、慢性炎症を伴った「病気の状態」と言えます。

 

しかし幸い、内臓脂肪は付きやすいが、取れやすい。

努力の成果が体重や腹囲の減少という形で目に見えて分かるので、それを励みに頑張ってみましょう。

 

食事・運動・生活習慣の改善です。

 

3. 次回:腸内細菌と心 乱れた細菌叢から慢性炎症へ

 

次回は、腸内フローラがどのような心の状態に影響を及ぼすのか?

それから、細菌叢の乱れた腸や口の中の状態がどういう風になっていて、どんなことが起こって慢性炎症が引き起こされるのかを見ていきましょう。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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是非、お読みになったご感想やご意見、ご批判をコメントでお寄せ下さい。

大変励みになります。

 

 

号外【私の師匠が本出版&テレビ出演】

皆さん、こんにちは

 

お知らせです。

私の師匠である飯沼一茂博士が2月に本を出版されました。

遅ればせながらご紹介いたします。

www.wani.co.jp

 

小難しい内容ではなく、日頃の生活で皆さんができることや、「へぇ~、そうなの?」みたいなお役立ち情報をご紹介、みたいな内容です。

 

続いて、5月4日(木)23:17~関西のみですが、朝日放送ビーバップ!ハイヒールに飯沼先生が出演されます。

朝日放送 | ビーバップ!ハイヒール

メインMCのハイヒールや、ブラマヨなどの出演者が、飯沼先生に健康と免疫の問題について質問し、飯沼先生が答えるというもの。

 

すでに収録済み。

飯沼先生ご本人の談によると、台本はあってないようなもの。

関西芸人さんたちのアドリブで、話は二転三転。

編集されたものを見てないので、どんな風に仕上がるのか怖いそうです(笑)

是非ご覧下さい。

 

飯沼先生は、その他にも別所哲也さんのラジオ番組に出演されたりもしています。

J-WAVE TOKYO MORNING RADIO | J-WAVE | radioinfo.radiko.jp ラジオウェブ

 

「健康、病気、免疫」に関心のある方は、「飯沼一茂」でチェックしてみて下さい。

 

お知らせでした。

 

 

021【免疫力の本来のパワー(その3)】「免疫力だけで末期ガンから生還できる!!」

目次:

  • ガン免疫療法は「オオカミ少年」?

  • 全く新しい考え方のガン免疫療法

  • 免疫細胞にはブレーキボタンが付いている!?

  • ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!

  • 免疫力本来のパワー!!

結論:日頃から免疫本来の力を発揮できるように努めましょう!

 

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前回の最後で、「次回は免疫のブレーキとアクセルの話をする」と言いましたっけ?

確かに言いましたが、内容変更させて下さい。

ブレーキの話をします。アクセルは出てきません。

 

今回は、ガンと免疫のブレーキの話を中心に、私たちが本来もつ免疫の力がどれほど強力かというお話を致します。

 

① ガン免疫療法は「オオカミ少年」?

 

免疫力を増強することでガンをやっつける「免疫療法」という考え方は、何十年も前からありました。

しかし、どの方法もあまりうまくいかず、「効く、効く」と言っているうちに、ついには「オオカミ少年化」してしまい、「新しい免疫療法」が出てきても、「眉唾モノ」みたくみられるようになりました。

そう、「免疫療法」というだけで、なんか「代替療法」か「民間療法」みたいに、胡散臭さを感じる人も多かったのです。

 

例えば、ガン患者の血液から免疫細胞を取り出して、免疫力を増強する試薬を加えて試験管の中で培養し、充分パワーアップしたところで患者の体内に戻す免疫療法があります。

パワーアップした免疫細胞は、活発に炎症性物質やなんかを出しているので、体に戻すと強い炎症が起こり、高熱が出たりします。

 

こんな感じで使えなかったり、何かしらの問題があって、費用が高い割に決め手に欠けるのが従来のガン免疫療法でした。

 

② 全く新しい考え方のガン免疫療法

 

従来のガン免疫療法は、どうにかして免疫力をアップさせてやろうという考え方でした。

皆、やたらアクセルを踏むことばかり考えていた訳です。

 

今話題の新しいガン免疫療法の考え方は、アクセルを踏み込むのではなく、免疫系にかかっているブレーキを外してやろうというものです。

逆の発想です。

 

私たちの免疫系は当然、ガン細胞をやっつけようと頑張ります。

一方で、ガン細胞もなかなか賢くて、何とか免疫系をだまくらかして、生き延びてやろうとします。

 

実は、免疫系から逃れるために、ガン細胞が免疫系の司令塔であるヘルパーT細胞にブレーキをかけていることが分かりました。

ヘルパーT細胞が機能しないと、免疫系全体がダウンすることは、前回のAIDSのお話の通りです。

だったら、このブレーキを解除する方法を見つければ、私たちが本来持つ免疫力が回復するのではないかという訳です。

 

この考えに基づいた新しいガン免疫療法の薬は「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、非常に関心が高まっています。

 

③ 免疫細胞にはブレーキボタンが付いている?

 

制御性T細胞(Treg)は免疫系のブレーキだと言いました。

もっと正確に言うと、Tregは免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」を持っているということです。

本当のブレーキボタンは免疫細胞の表面に付いていて、Tregがそれを押すことによって免疫反応を抑える仕組みです。

 

免疫細胞の表面にあるブレーキボタンとは、PD-1というタンパク質です。

Tregは、このPD-1と結合するタンパク質(PD-L1)を持っていますが、言ってみれば、このPD-L1が免疫細胞のブレーキボタンを押すことのできる「手」だということですね。

 

アレルギーとか自己免疫疾患とか、好ましくない免疫反応を抑えたいとき、Tregの「手」(PD-L1)がヘルパーT細胞の「ブレーキボタン」(PD-1)を押すことで、ヘルパーT細胞に活動停止命令が出されます。

これが、Tregがアレルギーとか自己免疫疾患の余剰な免疫反応を抑える仕組みのひとつです。

 

で、我々の免疫系が自らの免疫反応を抑えるこの仕組みを、ガン細胞は巧みに利用しているのです。

 

④ ガン細胞もブレーキボタンを押す「手」を持っている!

 

ある種のガン細胞は、Tregの「手」と同様のものを持っていて、ヘルパーT細胞のブレーキボタンを押すことができるのです。

これを押されては、免疫系の攻撃力は著しくパワーダウンです。

なんと狡猾なことでしょう!

 

ガン細胞も賢いが、しかし人間も賢い!

そこで人間が考えたのは、「ヘルパーT細胞のブレーキボタンにカバーをかけて、ガン細胞がボタンを押せないようにすればいいんだ」ということです。

そのカバーというのが、タンパク質でできた抗体です。

 

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人工的に作られた抗体が、ヘルパーT細胞のブレーキボタンであるPD-1と結合して、カバーします

カバーで守られていては、ガン細胞はブレーキボタンに手出しができません。

これで免疫系は本来の力を発揮できます。

 

この抗体が「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しいタイプの薬なわけです。

 

⑤ 免疫力本来のパワー!!

 

免疫チェックポイント阻害剤が初めて認可されたのは、末期のメラノーマ(悪性黒色腫;ホクロからガン化して、転移しやすい)患者に対してでした。

抗がん剤療法、放射線療法とも期待できず、打つ手がない患者のみを対象にして約40%の人に延命効果がありました。

この40%という数字が高いとみるのか、低いとみるのか?

従来なら助からなかったはずの人のうちの40%です。

 

さて、私が言いたいのは40%という数字の評価ではなく、従来の医療で助からないはずだった人でも、「免疫だけの力」で回復するのだということです。

末期がんから回復するのですから、免疫力のパワーというのは、改めて凄いのだということが分かりますね。

 

病気になったときはもちろんですが、日頃から免疫力をバランスのいい状態に保つことがいかに重要かということ。

これが今回の結論です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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020【免疫力の本来のパワー(その2)】「AIDSが明らかにした免疫系の“アキレス腱”ヘルパーT細胞!」

結論:

1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!

2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!

 

次回予告:

免疫系のアクセルとブレーキ

 

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1.ヘルパーT細胞は免疫系の中田ヒデ!

 

前回、本ブログ019で、免疫系の全体像をお話しました。

 

免疫系には、「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えの備えがあること。

そして、獲得免疫は、敵の種類や性質に応じて、「細胞性免疫」と「液性免疫」の2つのパターンを駆使して戦うことです。

 

そして、敵に応じて、獲得免疫を駆使して、どう戦うかを決めるのは「ヘルパーT細胞」と呼ばれる「免疫系の司令塔」だということでした。

 

いわば、「自然免疫」はゲリラ戦です。

出現した敵に対して、なりふり構わず攻撃しますが、必ずしも効率的に戦果を挙げられるわけではありません。

 

そこで、敵の種類や性質に応じて適宜に対応した戦略を駆使して「獲得免疫」が戦線防衛に重要な役割を担うわけです。

ゲリラ戦の自然免疫に対して、獲得免疫は戦術的な組織戦ですね。

そして、その戦術を決定し、獲得免疫に作戦司令を出すのが「ヘルパーT細胞」なのですね。

凄くないですか? ヘルパーT細胞!!

 

それだけに、ヘルパーT細胞は免疫系の「アキレス腱」とも言えます。

アキレス腱とは? つまり、免疫系の弱点にもなるということです。

 

ここを責められると、獲得免疫は機能しない!!

中田ヒデを失ったトルシエ・ジャパンか!?(古い!!)

 

そのことを、我々人類が改めて思い知ったのは、1980年代前半に突如、人類の前に出現した「AIDS」ではないでしょうか?

 

2.AIDSで分かるヘルパーT細胞の大切さ!

 

AIDSは、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」が、実はヘルパーT細胞に感染することで引き起こされる病気です。

 

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HIV感染を抑える種々の薬

 

HIVはヘルパーT細胞に感染し、ヘルパーT細胞をゆっくりと死滅させながら増殖したウイルスは、また別のヘルパーT細胞に感染して、それを繰り返します。

 

その結果どうなるか? 知れたことですね。

どんどんヘルパーT細胞が死んでいき、減っていきます。

そして、何年も経ったころには、獲得免疫はそれこそ「機能不全」に陥ります。

免疫が十分に働かない「免疫不全」の状態であり、そのために何らかの病気を発症した状態がAIDS(後天性免疫不全症候群)です。

 

そのために、普通では見られないような珍しい悪性腫瘍(カポジ肉腫とか)になったり、健康な人なら死なないような感染症(カリニ肺炎とか)で死んだりします。

ヘルパーT細胞が機能しなくなると、こんな状態になるんだということが、AIDSによって明らかになったわけです。

 

AIDSの原因がまだ分からなかったとき、いや、分かった後ですら、AIDSは「20世紀の黒死病」と言われて、専門家すら恐怖しました。

「司令塔を狙い撃ちするウイルスだって!?」 「どうすりゃいいんだ!?」

 

そして、そこから得たものは、「免疫系の司令塔」の重要性です。

それは、ヘルパーT細胞!!

 

時を経て1990年代後半、制御性T細胞(Treg)の発見によって、ヘルパーT細胞の重要性が、さらに強化されたのでした。

 

次回予告:

免疫系のアクセルとブレーキ

 

さて、話が複雑になるので、これまでお話しませんでしたが、実はヘルパーT細胞には何種類かあります。

それらは1型、2型、17型と呼ばれます。(3型とか4型とかはなくって、2型の次はいきなり17型です(笑))

 

Tregが免疫系のブレーキならば、17型ヘルパーT細胞はアクセルと言えます。

このアクセルとブレーキの踏み具合で、免疫の攻撃力をパワーアップしたり、余計な免疫反応を抑えたりしています。

実際、自己免疫疾患の人は、アクセルである17型ヘルパーT細胞が優勢になっています。

こういう時にはTregに頑張ってもらって、過剰な免疫反応にブレーキをかけてもらわなければならないのですね。

 

健康で免疫系のバランスがいい人では、このアクセルとブレーキの踏み具合が絶妙に制御されています。

このバランスを崩すような原因があると、様々な健康トラブルが発生します。

 

次回は免疫系のアクセルとブレーキのお話です。

 

今回も最後までお読み頂き、ありがとう御座います。

 

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